#04 なんでもないただの道が好き 街撮り講座|コハラタケル
はじめに
みなさん、こんにちは。フォトグラファーのコハラタケルです。「なんでもないただの道が好き 街撮り講座」4回目の記事です! 今回は光条を利用したポートレートや街の背景色について解説しています。背景色に関しては僕が街撮りにおいて、もっとも気をつけているポイントですので参考にしていただけると嬉しいです。
フロントガラス×光条×ポートレート
みなさん、光条をご存知でしょうか?
主に風景写真やスナップの写真で太陽から放射状の光の線が伸びているのを見たことがあると思います。
光条の有無で写真の印象は異なります。またレンズによって光条の出方が変わりますので、是非一度、自分が使っているレンズがどのような光条が出るのか調べてみてください。
光条はポートレートにおいても利用することがあります。太陽を使うこともあるのですが、街中で撮影する場合はビルの窓ガラスや車のフロントガラスを利用することもあります。
太陽は位置が高く、光条+人物で撮影しようと思うと人物よりも高い位置にあるため、ローアングルで撮らない限り光条を人物の近くに配置するのが難しいです。
また、ローアングルでの撮影はフェイスラインやモデルさんの顔の角度などに気をつけないと顎のラインが消えてしまうことで顔が大きく見えることもあります。
ポートレート、とくに女性を撮影する場合は小顔に見せるためにも少し見下ろすような角度で撮影することが多いのですが、そうなると太陽の光を使った光条を見せるのは難しくなります。
しかし、ビルの窓ガラスの光やとくに車のフロントガラスは人物の顔の高さとほぼ同じ位置にあるため、光条+人物で撮影しやすいです。実際に撮影した写真がこちらです。
アイレベルで撮影していますが、光条を顔の近くに配置することができました。
レンズの絞りを開放だけで撮影しているとこのような写真は撮れません。「#03 なんでもないただの道が好き 街撮り講座」でも話しましたが、写真は写真集のように組んで考えるのが大切だと考えているため、一度の撮影でなるべくバリエーション豊富に撮ることを心がけています。
強い光源を発見したら開放だけでなく、絞って撮ることもチャレンジしてみてください。
背景に入る色をなるべく淡色にする
まずはこちらの3枚の写真をご覧ください。
<1枚目>
<2枚目>
<3枚目>
どれも何気ないただの道の写真に見えるかもしれませんが、実は僕のなかで順位があります。
結果は2枚目に見せた写真がもっとも好きな背景です。ちなみにそれ以外の写真に関しては失敗写真です。
「えっ? 何が違うんですか?」と思う人も多いかもしれません。
僕は街で写真を撮るとき”背景に入る色がなるべく淡色で構成されるようにしています。別の言い方をするならば、原色や二次色のなかでも色が強い(濃い)ものが入らないようにしています。
改めてそれぞれの写真をご覧ください。
1枚目に見せたこの写真はわかりやすいですね。右手前にオレンジ・赤・青の3色が大きい範囲で写っています。ほかにもいろんな場所に原色・二次色が入っており、ここに記していない箇所もあります。
僕は原色・二次色は淡色よりも目立つ色だと考えています。人物はどのロケーションにおいても目立つ存在ではありますが、原色・二次色が強すぎるとそちらに視線が奪われることも少なくありません。より主題である人物を目立たせるためにも、僕は背景色はなるべく淡色になるようにしているのです。
次の写真も見ていきましょう。
さきほどの写真に比べると小さい範囲ではありますが、この写真にも多くの原色・二次色が含まれています。
気にならない人もいるかもしれませんが、このような細かいこだわりが自分以外の人との写真に差を生むと考えています。
もちろん妥協することもあります。例えば、この写真を背景にしてモデルさんがすごく良い表情をしている場合、そちらを優先して写真を残すこともあります。しかし、欲を言えば背景も整理されていてモデルさんの表情も良いというのがベストだというのは間違いありません。
次に成功写真を見ていきましょう。
こちらも原色・二次色が含まれていますが、全体的に背景が淡い色で構成されているのがわかると思います。
背景に関しては歩いている人や走っている車、洗濯物も重要です。
右側に布団が干されていますが、もしもこの布団が原色や二次色だったら、おそらく僕はこの場所で写真を撮っていません。
建物の色や看板はそう簡単に短い期間で変わることはありませんが、歩いている人や走っている車、洗濯物などはその日・時間帯によって異なります。右手前に白い車、そして、道路をシルバーの車が走っていますが、もしもこの車がもっと派手な色だったら、僕はここで写真を撮りません。奥にいるサラリーマンの方達ですかね。この方達の服の色も重要です。
もちろん妥協点を見つけるのも重要で、様々な色が混在する街撮りにおいてはあまりにもこだわりすぎると、全然シャッターを切れない状態になってしまうこともあります。
また、写真に絶対はないと僕は考えています。僕とは逆に原色を入れた撮影をしている人もいますし、それ以外の色の組み合わせで背景を選んでいる人もいます。
さらに原色が目を引くということは、逆にそれを利用して写真を撮ることもあります。こちらに関してはまた別の機会にお話しできれば良いなと思っています。
シャッターはたくさん切るが、1ヶ所で粘らない
最終的に選んだのがこちらの写真となります。
残念ながら道路を赤いバイクと奥からこちらに向かって走ってきているトラックの前面が赤色なので、これらが写真に入っていなければと思うところなのですが、これが僕の妥協点ですね。モデルさんの立ち位置・動き・ほかの車の色などを優先しました。
このように車の通りや人通りが多い道では何度もシャッターを切ることが多いです。実際このときは……
これだけシャッターを切っています。
途中では大胆に空を入れない構図も考えたのですが、「これじゃないな……」と思い、最終的に空を入れた構図へ変更しています。
僕は街撮りにおいてシャッターを切る回数は多いものの、2回・3回と同じ場所で何度もチャレンジすることは少ないです。このときもこの場所では1度しか撮影していません。
絶景と違い、街撮りでは数十メートル歩けば景色が変わっていきます。1ヶ所で粘って撮影するよりはどんどん歩いて次の場所で撮影するほうが僕は好きです。さらにモデルさんのテンションを考えると、何度も何度も同じ場所で撮影するよりは、いろんな場所で撮影したほうが飽きもこないし、楽しいのではないかと僕は考えています。
もちろん人によってこだわりたいポイントは違うと思いますので、1ヶ所で何度も撮影にチャレンジすることも素晴らしいと思います。
まとめ
写真を撮っている人は皆、こだわりのポイントがあると思います。しかし、そのポイントを自身が把握しているかというと把握できていない人もいます。今回の記事を通して、自分が写真において何にこだわって撮影しているのか振り返るきっかけになれば幸いです。
■モデル:五味未知子
■写真家:コハラタケル
1984年生まれ、長崎県出身。大学卒業後、建築業の職人を経てフリーのライターに。ライター時代に写真の勉強を始め、その後フォトグラファーに転身。企業案件の撮影ほか、セミナー講師や月額制noteサークルを運営している。ハッシュタグ#なんでもないただの道が好き の発案者。
コハラタケルさんの連載記事はこちら
#01 なんでもないただの道が好き 街撮り講座|コハラタケル
https://www.kitamura.jp/shasha/fujifilm/x-pro3-6-20210912/
#02 なんでもないただの道が好き 街撮り講座|コハラタケル
https://www.kitamura.jp/shasha/fujifilm/x-pro3-5-20210918/
#03 なんでもないただの道が好き 街撮り講座|コハラタケル
https://www.kitamura.jp/shasha/fujifilm/x-pro3-4-20211105/