#03 なんでもないただの道が好き 街撮り講座|コハラタケル
はじめに
みなさん、こんにちは。フォトグラファーのコハラタケルです。「なんでもないただの道が好き 街撮り講座」ですが、今回でいよいよ3回目です! 引き続き僕が大好きな街撮りについて解説していきますので、過去記事と合わせて読んでいただけると嬉しいです。
「垂直水平」と「アイレベル」を中心に考えない
例えばですが、ここで撮りたいと思ったとします。
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■撮影環境:F7.1 1/1000秒 ISO160
次に人物をどこに配置して撮ろうかと考えたとき、よくやってしまいがちなのが……
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■撮影環境:F5.6 1/2000秒 ISO160
■モデル:五味未知子
※2枚とも同じ設定
このような感じではないでしょうか?こういう写真の撮り方になってしまう人は写真を撮るときに「垂直水平を取ること」や「アイレベル」を中心で考えている人に多い気がしています。
もちろん、この撮り方が悪いというわけではなく、僕もよく撮りますしこういう写真も残しておきます。ただ、写真は写真集のように組んで考えるのが大切だと考えているため、バリエーションが欲しいです。
そこで垂直水平を取ることやアイレベルで考えるのではなく、余計なものを排除してみようという考え方で画角を決めてみます。
今回は上部に情報が密集していると感じたため、大胆に上半分を削ってみました。完成した写真がこちらです。
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■撮影環境:F5.6 1/2000秒 ISO160
■モデル:五味未知子
垂直水平を取ることとアイレベルを無視したことで、先ほどまでの写真とは違う雰囲気の写真になりました。
「垂直水平ってそんなにずらしてるんですか?」と思う人もいるかもしれないので最初の写真で解説すると……
これだけ傾いています。ちなみに完成写真のモデルさんがしゃがんでいる写真は現像で垂直水平を整えているのではなく、撮るときにカメラを傾けて撮影しています。
最近は高画素のカメラが増え、トリミングの自由度も高くなりましたが、”撮ったときに完成していること”を意識できているかどうかはとても大切です。「あとからトリミングすればいいや」という考えは、僕は捨てたほうが良いと思っています。
ちなみにですが、僕はEVF(電子ビューファインダー)や液晶モニターに電子水準器を表示させていません。電子水準器が表示されていると、無意識のうちに水平を取ろうとしてしまうことがあります。
基本はOFFにしておき、「ここはしっかり水平を合わせたい」というシーンでは電子水準器を表示させるというやり方のほうがおすすめです。
目立たせたい色だけを写真に入れる
最初に失敗写真をご覧ください。
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■撮影環境:F3.2 1/125秒 ISO160
■モデル:五味未知子
このときの僕の気持ちは「赤い実とモデルさんを一緒に撮ろう」です。この二つを中心に画面を構成していくことになります。赤色は危険を察知させる色のため目立ちます。失敗写真では赤い実のほかにも赤色が入っていますよね。
赤い実とモデルさんを目立たせるためには右側の車や左の赤色の塗装の壁面を画角に入れないようにしなければいけません。まずは右側の車が入らないよう縦にして撮影してみました。
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■撮影環境:F3.2 1/125秒 ISO160
■モデル:五味未知子
うん。悪くはないのですが、やはり左の赤色の塗装に目移りしてしまいます。あとは右上の離れている赤い実も気になるところです。一ヶ所に赤色がまとまっているほうがその周囲に視線誘導しやすいので、もう少し寄ってみましょう。
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■撮影環境:F3.2 1/125秒 ISO160
■モデル:五味未知子
ここまで情報を整理すると「赤い実とモデルさん」を主題にしたいというのが伝わるのではないかと思います。
隙間を無くしてみる
先ほどの写真なのですが、もうひとつ覚えておいて欲しいことがあります。それは”隙間を無くす”です。
このような隙間を無くすだけでも写真の見え方が変わるので実践してみてください。
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■撮影環境:F3.2 1/125秒 ISO160
■モデル:五味未知子
この隙間を無くすという撮り方はいろんなシーンで役に立ちます。「撮り方どうしよう……」と迷ってしまったときに一度は実践して欲しい撮り方です。
反射光を発見したら積極的に使っていこう
次は反射光を使った撮影です。みなさん、反射光ってご存知ですか?
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■撮影環境:F5.6 1/1000秒 ISO160
中央の四角い光に注目してください。これは反射光で太陽の光がガラス面や金属面などに当たって反射して起きる光です。
狙って撮りに行けば出会える確率も高いのかもしれませんが、僕のようにあくまで街撮りがメインで撮りにいく場合、何回も出会えるような光ではありません。だからこそ発見したときは積極的に写真を残しておきます。実際に撮影した写真がこちらです。
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■撮影環境:F5.6 1/250秒 ISO160
■モデル:五味未知子
※2枚とも同じ設定
反射光の位置がちょうどモデルさんの顔の位置に近かったため、今回は顔に光が当たるようにしました。さらにこのロケーションでは右側半分の影が濃かったので、明暗差が出てよかったですね。
反射光で撮影するときは、モデルさんを反射光が当たる位置に立たせると太陽の光そのものは逆光になる可能性が高いため、面白い写真を撮ることができます。
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■撮影環境:F5.6 1/250秒 ISO160
■モデル:五味未知子
逆光にも関わらず、まるでレフ板を当てたかのように顔に綺麗な光が当たっています。今回は街撮りということもあり、寄りではなくちょっと引いた写真を掲載していますが、最初に話した通り反射光に出会える確率が低いので、発見したら寄り引き両方の写真を残しておきます。
偶然をいかに発見できるか
最後に掲載した反射光を使った逆光写真ですが、僕も前回、いつ撮れたのか覚えていないぐらい久しぶりに撮影することができました。街撮りではこのような偶然の光を探す力が大切で、僕も撮影時はモデルさんと会話をしつつも良いロケーション・良い光を見逃していないかどうか常にチェックしています。「あ、なんかあそこの光、良いかも」と少しでも思ったら、必ず一度は写真を撮ってみましょう。
■モデル:五味未知子
■写真家:コハラタケル
1984年生まれ、長崎県出身。大学卒業後、建築業の職人を経てフリーのライターに。ライター時代に写真の勉強を始め、その後フォトグラファーに転身。企業案件の撮影ほか、セミナー講師や月額制noteサークルを運営している。ハッシュタグ#なんでもないただの道が好き の発案者。
コハラタケルさんの連載記事はこちら
#01 なんでもないただの道が好き 街撮り講座|コハラタケル
https://www.kitamura.jp/shasha/fujifilm/x-pro3-6-20210912/
#02 なんでもないただの道が好き 街撮り講座|コハラタケル
https://www.kitamura.jp/shasha/fujifilm/x-pro3-5-20210918/