富士フイルム X-S20 レビュー|野生鳥獣までカバーする最強の多用途カメラの実力とは?
はじめに
富士フイルムから6月下旬に発売された、最新のXシリーズAPS-C機「X-S20」を大自然のフィールドで使用しました。同社が「小が大を兼ねる」と呼称する「X-S20」は、小型・軽量はもちろん、オールインワンのスペックが詰め込まれています。そんな、何でも撮れちゃう多用途カメラ「X-S20」を用いて野生鳥獣を撮影してきましたので、ご紹介します。
スリムな外観
カメラボディはとてもスリムです。厚みはご覧の通り、SDカードと変わりません。重さは僅か「約491g」と小型・軽量です。女性やお年寄りにとって小型・軽量であることは、一日中持ち歩いても重さを感じることなく、継続して楽しく撮影できることにも繋がるので、とても重要な要素です。
また、これだけ沢山の機能を詰め込んだにも関わらず、小型・軽量化を実現しているカメラだからこそ、「X-S20」は、海外旅行などのシビアな重量制限を伴う際の「旅カメラ」としても、最強のポテンシャルを発揮してくれそうです。
大型グリップの採用で女性の手でもホールド感は抜群。様々なシーンでも安定して、アグレッシブに撮影できるのが魅力です。
また、大容量のNP-W235バッテリー採用により、従来機種X-S10から2倍以上も撮影枚数が増えただけではなく、同種バッテリーを使用している「X-H2S」や「X-T5」とのバッテリー互換が可能になったことも、ユーザーの経済的な負担軽減に繋がっていて、とても嬉しい部分です。
光量の足りない場面や急な逆光シーンに柔軟に対応できる、ポップアップのストロボが装備されているのも、多用途な使用シーンを想定して設計されており、非常に嬉しいアイテムです。
動物撮影に有利なカスタムモード
「X-S20」は右天面のモードダイヤルに「カスタムモード」が搭載されており、より多くのシャッターチャンスを逃さず撮影できるようになりました。
カスタムモードのC1~C4に任意の撮影設定を割り当てることが可能になったので、「被写体の発見」~「カメラ操作」~「撮影の開始」に関わる時間を大幅に短縮させることが可能となりました。
C1に記憶させた動体に特化した設定から、C2に記憶させた静止に特化させた設定に瞬時に切り替えて手持ちで撮影。
「カスタムモード」のおかげで、不意に出現する野生鳥獣の状態に合わせて設定を変える手間が大幅に短縮され、発見と同時に素早くシャッターが切れるので、シャッターチャンスを確実にモノにしてくれるようになりました。
被写体の様々な動きにも、「カスタムモード」の切り替え一つで楽々食らいついていけるので、多種多様な野生鳥獣が容易に撮影できます。
野生鳥獣の撮影をしていると、その周辺環境の撮影も必要になります。「カスタムモード」の使用により、一瞬の良い光を逃すことなく、スピーディーにフォーカスまで導いてくれました。
進化したAF予測アルゴリズム
「X-H2S」で新規開発されたAF予測アルゴリズムが「X-S20」にも搭載されており、動体への追従性などのAF精度が大幅に向上しています。
不規則に舞うサンコウチョウ。枝止まりした一瞬のチャンスを「X-S20」の精度の高いAFが確実に捉えてくれました。
「X-S20」は高いヒット率のAF精度を実現するとともに、長年培われてきた富士フイルムの美しい「記憶色」で、撮影地の臨場感を忠実に伝えることができるのは大きな魅力です。
ツキノワグマが好んで食べるヤマザクラの実。今年は不作と言われていましたが、たわわに実った貴重な木に出会うことができました。
「X-S20」を用いて、望遠手持ち撮影でも、精細な写真が簡単に撮影できました。
5軸・最大7段の強力なボディ内手ブレ補正機能
低照度かつ、極力感度を上げたくない場合は、どうしても低速シャッターで撮影しなければなりません。また、動きが素早い野鳥は、三脚操作が追いつかない場合も多いので、柔軟性がある手持ち撮影に頼る場面も発生します。
そうした状況でも、X-S20は5軸・最大7段の強力なボディ内手ブレ補正のおかげで、手持ちでもブレることなく撮影することができました。暗い森に生息するサンコウチョウの撮影でも、余裕を持って撮影できる安心感を実感することができました。
日陰に佇むニホンカモシカ。低照度の中、難しい体勢で手持ち撮影をしましたが、「X-S20」に搭載された強力なボディ内手ブレ補正の効果が実感できました。
まとめ
「X-S20」で撮影した野生鳥獣の写真を交え、機能や描画力をご紹介しましたが、いかがだったでしょうか。小型・軽量でオールインワンスペックを誇る「X-S20」は多用途で非常に優秀な万能なカメラであることが実感できました。加えて、APS-C機での野生鳥獣撮影は、フルサイズ機に比べ焦点距離が1.5倍になり、より被写体に迫った迫力ある写真が撮影できることも、大きな魅力です。
性能だけではなく価格面でも非常に魅力的な「X-S20」は全世界で大人気となっており、実際に野生鳥獣の撮影で使ってみてもおすすめできるカメラだと感じました。フルサイズ機の半分の価格にも関わらず、この能力でこれだけの被写体がシャープに手持ちで簡単に、しかも富士フイルムの誇る「記憶色」でより「キレイに撮れる」となると、一度試してみる価値は十分にあるのではないでしょうか。
■自然写真家:高橋忠照
1982年北海道札幌市生まれ・山形県育ち。上富良野町在住。陸上自衛隊勤務を経て、2019年自然写真家に転向。自衛隊時代に培ったスナイパー(狙撃手)の技能を生かし、自然の中に同化して野生動物を探し出す独自のスタイルでの撮影を得意とする。作品は小学館、チャイルド本社、フレーベル館等の児童書や雑誌、カレンダーなど掲載多数。
公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員・富士フイルムアカデミーX講師