富士フイルム X-T5|高画素×軽量のX-Tシリーズ最新機種レビュー
はじめに
こんにちは。旅写真家の三田崇博です。今回は富士フイルムから2022年11月に発売となったX-T5をレビューします。APS-Cサイズのミラーレスカメラとしては最高画素数となる4020万画素のセンサーを搭載しています。今回は次の世界遺産候補地でもある新潟県の佐渡島にX-T5を持って撮影に行きましたので、その作例を中心に使い勝手を見ていきたいと思います。
X-T5のスペック
撮像素子 | X-Trans CMOS 5 HRセンサー(APS-Cサイズ) |
有効画素数 | 約4020万画素 |
画像処理エンジン | X-Processor 5 |
撮影感度 | ISO125~12800(拡張:ISO64、80、100、25600、51200) |
手ブレ補正 | 7.0段(センサーシフト方式5軸補正) |
シャッタースピード | 電子シャッター:15分~1/180000秒 電子先幕・メカシャッター:15分~1/8000秒 |
連写 | 約20コマ/秒(電子シャッター、1.29Xクロップ時)、約15コマ/秒(メカシャッター) |
撮影可能枚数 | ノーマルモード時: 約580枚 |
ボディサイズ | 幅129.5 x 高さ91 x 奥行き63.8 mm |
質量 | 約557g(バッテリー、 メモリーカード含む) |
X-T4との比較
X-H2にも搭載された新型センサーで画素数が大幅に向上しました。画素数はもちろん、感度設定に関しても上限は同じですが、下限が常用でISO125に(X-T4はISO160)、拡張感度を設定するとISO64(X-T4はISO80)まで落とすことができます。これは日中にスローシャッターが必要な時などにはありがたいですね。
まったく新しい機能としては近年各社が搭載している被写体認識モードがあります。X-T5では動物・鳥・車・バイク・自転車・飛行機・電車を自動で認識することが可能です。
外観上の大きな変化は、背面液晶がX-T4のバリアングル方式からチルト方式に変更されたことです。X-T3まではチルト式だったので以前に戻ったとも言えますが、このカメラは写真(スチル)を撮ることに重点を置いていることもあり、写真撮影で使いやすいチルト式を採用しています。ここは賛否の分かれるところだと思いますが、バリアングル方式だと液晶を出してから角度を変えなくてはならなかったので瞬時に撮影したいときには手間でした。私自身はX-T4を長く使ってきたので慣れましたが・・・
そしてこれだけ性能面がアップしているにも関わらず重量はX-T4から50g軽くなっています。たかが50gと思われるかもしれませんが、グリップの形状の変更などもあり想像よりも軽さを感じることができます。
解像度比較
これは私の地元の生駒山から明石大橋を撮影したものです。撮影場所から橋までは約60kmあり、レンズはXF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WRを使い、絞りはF8で撮影しています。
赤線部分を拡大してみると画素数の差が表れているのが分かります。
画面下部の船の輪郭を比較していただくとよくわかるかと思います。
高感度での比較
次に同じ構図で感度を上げた場合を見ていきたいと思います。
▼X-T5
▼X-T4
普通に考えると画素数の高いX-T5のほうが高感度には弱いと思ったのですが、実際に撮り比べてみるとISO6400付近ではX-T4の方がいいように見えますが、ISO12800になるとX-T5の方がノイズが少ないように見えます。(画像をクリックして拡大して見てください)
撮影条件などによって変わってくるとは思いますが、新エンジンなどの恩恵もあり高感度もX-T4に負けず劣らずの耐性があるのではないかと感じました。
作例
まずは地元の奈良と京都の晩秋を撮影に出かけました。12月に入っていたので紅葉のピークは過ぎていますが、その分人が少なく撮影には悪くない条件でした。この写真は三脚を使って撮影していますが、あまりシャッター速度が遅いと風の影響で被写体ブレが起きてしまいます。ブレないシャッター速度まで感度を上げて撮影しましたが高画質をキープしています。
石庭で有名な京都の世界遺産の龍安寺です。12月だというのにまだまだ紅葉の見ごろが続いていました。特に境内一面の散りもみじは一見の価値ありです。
さていよいよ佐渡島に出発です。早朝に家を出ましたが地元の公園の前を通ったときに池から立ち昇る朝霧を発見しました。近くだからいつでも撮りに来れる場所ではありますが、これほど霧が発生するのは珍しいので車を停めて少し撮影しました。
奈良から京都、滋賀と走ってきました。湖西(琵琶湖の西岸)を走る時必ず立ち寄るのが湖に浮かぶ鳥居が有名な白髭神社です。以前は道路を渡って湖畔まで行けましたが今は横断禁止になっていました。SNSで人気になり撮影者が増えてしまったからでしょうか。
白髭神社から少し北上すると四季を通して人気のメタセコイア並木があります。特に紅葉シーズンは格別の美しさです。人が多いのがネックですが逆光で撮影することにより、人物がシルエットになり作品の中に溶け込んでいるように見えます。
福井県を走っていると空がオレンジ色に染まりだしました。海沿いだったので近くの海水浴場に立ち寄って撮影を始めました。最終的には太陽は雲に隠れてしまいましたが、とっさの判断で光芒を撮影することができました。
その海岸でハート型の石を見つけたので長秒撮影で波がフラットになるように撮影しました。X-T5は拡張最低感度がISO64なのでNDフィルターを使わずに撮ることができました。ちなみにこれは3つの岩が重なってハート型に見えています。
その後天気が悪くなり途中どこも立ち寄らずに新潟まで走りました。そしていよいよフェリーで佐渡島へ。佐渡金銀山は、「金を中心とする佐渡鉱山の遺産群」として次の世界遺産の候補になっています。その構成資産のひとつである「相川鶴子金銀山」の相川金銀山では江戸時代の坑道跡を見学することができます。坑道の総延長は約400キロメートル、最深部は海面下530メートル、採掘された鉱石は約1,500万トン。名実ともに日本最大の金銀山です。
かなり暗い条件でしたがシャッター速度7段分の手ブレ補正がよく効いてくれました。
佐渡島のシンボルとも言える北沢浮遊選鉱場は、日本で最初に金銀鉱石の浮遊選鉱法を採用した選鉱場です。昼間は天気が悪かったので夜の撮影に切り替えました。限られた日程の場合はこうした判断も必要になってきます。しかし逆に妖艶な雰囲気を出すことができたのではないかと思います。
ここでは毎年4月~翌年2月までの期間にライトアップを実施していて見ごたえがあります。(今年の開催については要確認)
いろいろな色に変化していくのですが、やはり金山だけに金色(黄色)のライトアップで撮影しました(笑)。
島の西岸にある「人面岩」。高さ10mほどの岩ですがイースター島のモアイ像を彷彿とさせる横顔です。天気が良ければ夕日との組み合わせもいいかも知れません。
X-T5の高画素を生かした新機能でもあるデジタルテレコンを使って撮影してみました。レンズの焦点距離は400mmですが、2倍のデジタルテレコンを使うことによって800mm相当となります。さらにセンサーがAPS-Cなのでフルサイズに換算すると1200mm相当という超望遠撮影が可能となります。それでも約1000万画素で撮影できるのでA3程度のプリントにするには問題ないかと思います。
佐渡島から本州に戻りました。天気予報を確認すると雪予報だったので、家とは反対方向にはなってしまいますがちょっと寄り道して帰ることに。目当ての場所では残念ながら積雪はありませんでしたが、そこに向かう途中にすばらしい雪景色に出会うことができました。
途中降雪もあり日の射す時間帯もあり撮影には最高の条件でした。X-T5は当然ながら防塵・防滴・-10℃の耐低温構造になっているため雪の中の撮影でも全く問題ありませんでした。
まとめ
センサーも前モデルから一新され確実に進化したX-T5は、高画素機の弱点でもある高感度耐性もX-T4並を維持しており非常にバランスの取れたカメラだと思います。現状4000万画素を超えるカメラを買おうとするとフルサイズ機以上しか選択肢がなく、X-T5はサイズ的・価格的にもとても魅力的な機種だと思います。
同じセンサーを搭載したX-H2と悩むところではありますが、X-H2は記録メディアに高速書き込みが可能なCFexpressが採用されていますので、連写をよく使う人や動画がメインの方はH2の方が適していると思います。しかしX-T5でも必要十分な性能を有し重量や価格も抑えられているので、ほとんどの撮影環境に適応できるカメラではないかと思います。
■写真家:三田崇博
1975年奈良県生駒市生まれ。旅好きが高じ、現在までに100を超える国と地域で350か所以上の世界遺産の撮影を行う。作品は各種雑誌やカレンダーへの掲載に加え全国各地で写真展を開催している。
日本写真家協会(JPS)会員・FUJIFILM X-Photographer・アカデミーX講師