富士フイルム X100F レビュー|お散歩やスナップで持ち歩きたいカメラの決定版

ShaSha編集部

逆光で落ち葉を撮影した写真.JPG

X100Fとは?

 富士フイルムは2019年11月現在、ミラーレスカメラとコンパクトデジタルカメラを発売しています。ラインナップを見てみると、中判サイズ相当のラージフォーマットセンサーを搭載したGFXシステムと、APS-Cサイズのセンサーを搭載したXシステムがあります。

 GFXシステムでは、GFX100が1億200万画素を達成したことで話題を呼び、その圧倒的な画素数から得られる描写は、以前の記事でご紹介した通り、細部に至るまで非常に高精細なものでした。
 Xシステムでは、写真を楽しむことに特化したような最新機種のX-Pro3や、高い基本性能を持つX-T3、そして、よりお求めやすい価格のX-T30が人気を博しています。実は今回ご紹介するX100Fも同じXシステムに属しており、カテゴリ-としては”Xプレミアムコンパクト”に属しています。

X100Fとは?

X100Fを並べて撮影した写真.JPG
 X100FはXプレミアムコンパクトに属している、X100シリーズの4代目となるコンパクトデジタルカメラで、Fは4代目を意味する“Fourth”から付けられています。

 そもそもX100シリーズとは、初代のFinePix X100が2011年に発売されたことから始まったもので、2013年には2代目のX100Sが発売。2014年には前モデルで3代目となるX100Tが発売され、2017年に4代目としてX100Fが発売されました。
 シリーズの特徴を簡単にまとめると、レンジファインダーのような外観で、光学式(OVF)と電子式(EVF)を切り替えられるファインダー。APS-Cサイズセンサーに、フジノン23mmの単焦点レンズを搭載したカメラであることです。

X100Tとの比較

アクロスで街を撮影した写真.JPG

■撮影環境:1/125秒 F2.8 ISO200
■使用したフィルムシミュレーション:ACROS

 前モデルのX100Tと比較して特に変わったと思う部分は、有効画素数が約1630万画素から約2430万画素になったことで、より高精細に撮れるようになっただけでなく、フィルムシミュレーションにはモノクロフィルムで有名なACROSが追加されました。
 ACROSは階調の豊かさに加えて、フィルムが持つ粒状感ならではの、被写体を立体的に表現できることから人気なモノクロフィルムです。一度は生産を終了してしまったものの、その人気から復活を遂げ、現行のACROSIIが発売されました。

 富士フイルムのデジタルカメラで、初めてACROSを搭載したのは当時、ミラーレスカメラのハイエンドモデルで、2019年12月現在も発売されているX-Pro2です。ハイエンドモデルの技術だとしても、惜しみなく入れているあたり、こだわりを感じます。

 あまり連写する機会は少ないかもしれませんが、連写コマ数が6コマ/秒から8コマ/秒に変わり、よりシャッターチャンスを逃しにくくなりました。
 X100Tでは拡張感度だったISO12800が、X100Fでは通常ISO感度として使用できるようになりました。また、人物の顔検出ができるようになったこともあり、あらゆるシーンや被写体を問わず撮影しやすくなったという印象です。

単焦点レンズ搭載のコンパクトカメラ

公園を撮影した写真.JPG

■撮影環境:1/500秒 F5.6 ISO200
■使用したフィルムシミュレーション:PROVIA

 X100シリーズの特徴でも挙げた通り、レンズはフジノン23mmの単焦点レンズが採用されています。
 APS-Cセンサーで23mmの焦点距離ですから、35ミリフルサイズ換算にすると、約35mmのレンズです。以前、別の記事でもお伝えしましたが、35mmという焦点距離は、標準レンズの中でも基準のような存在である、50mmよりもやや広めな焦点距離です。
 やや広めであることを活かして、風景やスナップの撮影ではかなり扱いやすいと感じます。ポートレートでは、全身を入れたものはもちろん、バストアップもこなせられるので、使っていると「かなり便利だな」と思うことがかなりあります。

 コンパクトデジタルカメラと聞くと、センサーサイズのコンパクトさを活かして、ズーム幅が広い高倍率ズーム機が多いイメージをお持ちの方もいらっしゃるかと思います。
 しかし、本機種はセンサーサイズがAPS-Cサイズで、単焦点レンズを搭載。あらゆるシーンでも撮りやすい高倍率ズームコンパクトカメラと比べると、“より美しい写真を撮ることに特化したカメラ“と言っても過言ではないのでしょうか。

レンジファインダータイプのレトロ調な外観

ボディを正面から撮影した写真.JPG

 X100Fの外観を見てみると、ボディの左肩にファインダーがあることが特徴的でしょう。というのもフィルムカメラや、ライカのカメラであれば見慣れたものかもしれません。しかし、コンパクトデジタルカメラで、レンジファインダースタイルの外観であることはX100シリーズならではの特徴だと思います。

 そのおかげか見た目がレトロ調な感じでお洒落な外観のように感じます。もちろん、ただお洒落なだけでなく、ファインダーにもこだわりの部分があります。
というのもこのファインダーはOVFとEVF、さらにOVFを使用しながら、右下にEVFの窓を表示しピント位置の確認がしやすい“エレクトロニックレンジファインダー(ERF)”を切り替えることができるもので、X-Proシリーズのような特徴を持っています。

 例えば、「絶対にOVFでないと嫌だ!」とこだわりを持っている方も、「より情報量の多いEVFでないとどこか心配」と感じる方でも、両方欲しい欲張りさんも満足する仕様です。
 もちろん撮影シーンによって切り替えて撮影するのも良いと思います。例えば、日中で撮影する時に抜けがよく見やすいときはOVFで、暗いシーンや、手持ち撮影時でも水平をより慎重に取りたいシーンはEVFなど使い勝手が良いのも良いと思いました。
 ERFは、OVFを使用しつつ、MF使用時のフォーカスピーキングでピントの位置を確認する使い方が可能です。抜けが良いOVFで、撮影している感じを楽しめるMF撮影でもピントずれの可能性を減らせられるので、安心してMF撮影ができます。

背面のフォーカスレバーのおかげで、さらに使いやすく

ボディ背面を撮影した写真.JPG

 X100Fでは、背面の親指で押しやすい位置にフォーカスレバーがあります。このフォーカスレバーでは、AF時のピント位置を決めることができ、よりスピーディーにピント位置の変更ができるようになりました。

フィルムシミュレーション

青空と木を撮影した写真.JPG

■撮影環境:1/640秒 F4 ISO100
■使用したフィルムシミュレーション:Velvia

 富士フイルムのJpeg撮って出しの絵作りは、全てフィルムシミュレーションによって生み出されています。このフィルムシミュレーションは、フィルムを作っているメーカーならではのこだわりとノウハウが詰まっています。それぞれが特色を生かした表現をしてくれます。その表現力は非常に高く、それぞれのフィルムシミュレーションに味があることからファンも多いです。

雨の日をACROSで撮影した写真.JPG

■撮影環境:1/125秒 F2.8 ISO200
■使用したフィルムシミュレーション:ACROS

 中でも新搭載されたACROSはモノクロでありながら、豊かな階調があるおかげで、被写体の陰影をより滑らかに表現してくれます。モノクロは“白と黒”を意味していますが、グレーも大切だと思います。
 ACROSでは、グレーと一口にいっても “白よりのグレー”や“黒よりのグレー”の階調が豊かなことから、被写体だけでなく当たっている光の強弱も鮮明に描写してくれることから立体感も表現できていると感じました。

フジノンレンズの魅力

逆光で緑葉を撮影した写真.JPG

■撮影環境:1/500 F2 ISO200
■使用したフィルムシミュレーション:Velvia

 X100Fに搭載されているレンズは冒頭でもお伝えした通り、フジノンレンズ23mmの単焦点レンズとなっており、35mmフルサイズ換算をすると約35mmのレンズになります。
 絞り羽根は9枚使用しており、開放F2の性能を持つレンズです。開放F値が2であることに関して、最初は「焦点距離が換算35mmならF1.8でも良かったのでは?」と思ったこともありました。
 それは、私が普段フルサイズセンサーのカメラを使用しており、大きな背景ボケのある写真を撮ることが多いからだと思います。
 しかし、実際に使用してみると、開放F2でもしっかりと主題を置いて撮影すれば大きなボケ味を得ることも可能ですし、むしろ主題を合成したようなものでなく、ピント面からなだらかにボケるようなもので、より被写体の立体感のある描写をしてくれていると思いました。

逆光のシーンも美しく

逆光のシーンで木を撮影した写真.JPG

■撮影環境:1/1000 F2 ISO200
■使用したフィルムシミュレーション:Velvia

 使用していてボケ感以上に良いなと思ったのは、逆光のシーンでも表現力が高いことです。
 作例では、公園にて逆光のシーンを撮影したものです。フレアやゴーストがどれほど出るかを確かめるためにも、構図の中で太陽をかなり入れました。思ったこととしてはフレアは出ることがあったものの、ゴーストが比較的現れにくいように感じました。

普段使用の逆光で紅葉を撮影した写真.JPG

■撮影環境:1/250 F43.6 ISO200
■使用したフィルムシミュレーション:Velvia

 しかし、上の作例はフレアやゴーストを意図的に出そうとしたためかなり出ているように感じますが、通常の使用シーンでは許容の方もいらっしゃるかもしれません。また、私は逆光シーンのポートレートで撮影することも多いのですが、ふんわりした印象を与えることもできるので、時としてフレアが良い方向に働くこともあります。今回搭載された顔検出機能も相まって非常に良いと思いました。

NDフィルター機能内蔵

 X100Fには、内蔵で光量を1/8にするNDフィルター機能を搭載しています。上記の逆光での撮影シーンや日中での撮影では、シャッタースピード、F値を調整してもイメージより明るい場合が起こることもありますよね。

 例えば風景の撮影では、F値を絞って撮影することもあるので良いのですが、シャッタースピードを遅くして川や滝などを、糸のように表現したいときもありますよね。
 逆に日中のポートレートでは、シャッタースピードは速くても良いのですが、F値は開放にしたいという方も多いと思います。

 結構あるようなシーンですが、“撮りたい写真のイメージはできているのに、カメラの設定で難しい”というのは、できる限り避けたいところです。NDフィルター機能ではこのようなシーンでも、より撮影者のイメージ通りに近づけるサポートをしてくれると感じました。

絞りのダイヤル操作で絞りの操作がより直感的に

絞りリングを撮影した写真.JPG

 レンズの根元には絞りリングが付いています。他社製のカメラでは、絞り値をダイヤルで変更する仕様の機種が多いイメージですが、富士フイルムのカメラといえば、絞りやシャッタースピード、ISO感度を絞りリングやフィルムカメラのようなダイヤルで切り替えられるのも特徴の一つだと思います。

 この絞りリングには、回しやすいように指をかける部分があり、さらに滑り止めのための加工もされています。絞りリングは回すと程よいクリック感があるので撮る気分が上がりました。

撮影後記

木の根をアクロスで撮影した写真.JPG
木とカラフルな背景を撮影した写真.JPG
葉っぱの上のクモの巣を撮影した写真.JPG

 コンパクトデジタルカメラの中では、ボディサイズが一回り大きいように感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、普段の撮影で一眼レフカメラやミラーレスカメラを使用している私にとっては、ちょうど良く馴染むサイズだと思いました。

 使い勝手とすれば以前お借りしたX-Pro3に近いような印象ですが、モニターがチルト可動式だったらもっと撮影しやすく感じるシーンがあったので、後継機はそのあたりも期待したいと思いました。

いつでも持ち歩いて、日常を美しく切り取りませんか?

逆光で赤紅葉を撮影した写真.JPG
重量を計測した写真.JPG
 しかし、ミラーレスカメラに匹敵するほどの性能を持ちながら、バッテリーとSDカードとストラップ込みで約494gと軽量なのは魅力だと思いました。というのもお借りしている期間を思い返すと、撮影の際はもちろん、通勤用のリュックにも「とりあえず持っていこう!」と持ち出す機会が多かったです。
 ふと見た時に見た美しい景色を描く性能は十分高いです。あとは持ち出す機会を作れるかですが、X100Fは作ってくれると思います。ぜひ実際に手に取ってみてください!

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