富士フイルム XF16-50mmF2.8-4.8 R LM WR|F2.8が使える超軽量コンパクトな標準レンズ
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はじめに
こんにちは。旅写真家の三田崇博です。今回は今年6月に発売された富士フイルム XF16-50mmF2.8-4.8 R LM WRをレビューします。このレンズの前身であるXF18-55mmF2.8-4 R LM OISはXマウント初のズームレンズとして登場しました。小型軽量かつF2.8始まりのズームは他のメーカーにはなく、当時はこのレンズを使うために富士フイルムのカメラを買ったと言っても過言ではありません。
本レンズの特徴
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広角側が16mm始まりになり、前モデルの不満点だった18mm始まりが解消されました。その分望遠側が5mm短くなり50mmとなりましたが広角側が広くなったメリットの方が大きいと思います。X-T5など4000万画素の高画素機にも対応した解像度を有しており、軽さや最短撮影距離なども前モデルを上回っています。レンズに手ブレ補正が搭載されていませんが、最近のカメラはほとんどがボディ内手ブレ補正があるので問題ないと思います。
12年前の製品と比べるのは酷かも知れませんが、このレンズはコンセプトこそ同じですがXF18-55mmF2.8-4 R LM OISとは全く違うレンズに生まれ変わったように感じました。
XF16-50mmF2.8-4.8 R LM WR | XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS | |
焦点距離(フルサイズ換算) | 24-76mm | 27-84mm |
重量 | 240g | 310g |
最短撮影距離 | 24cm | (W)30cm、(T)40cm |
開放F値 | 2.8-4.8 | 2.8-4 |
手ブレ補正 | – | ○ |
フィルターサイズ | 58mm | 58mm |
発売時期 | 2024.6 | 2012.11 |
解像度比較
4000万画素に対応しているということで、第五世代センサー搭載のX-T5を使って前モデルと撮り比べてみました。やはりこのレンズは小型軽量ながらF2.8の明るさがあることが最大の特徴なので星空を撮影してみました。
左がXF16-50mmF2.8-4.8 R LM WR、右がXF18-55mmF2.8-4 R LM OISで撮影したものです。最広角の焦点距離が異なるため違った画角になっています。中心部は両レンズとも綺麗に解像していましたが、写真の端の部分を拡大してみると、前モデルのXF18-55mmF2.8-4 R LM OISは少し流れていますが、XF16-50mmF2.8-4.8 R LM WRは星がちゃんと点として写っているのが分かります。
▼上の写真端を拡大比較
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近接撮影比較
焦点距離が異なるので全くの同一条件ではありませんが、特に花などを撮影する際には望遠側で寄るシチュエーションが多いと思います。望遠側の最短撮影距離はXF16-50mmF2.8-4.8 R LM WRがズーム全域で24cmであるのに対して、XF18-55mmF2.8-4 R LM OISは広角側で30cm、望遠側になると40cmになってしまいます。
望遠側で撮影する時にこの差は歴然で、XF18-55mmF2.8-4 R LM OISのほうが望遠側が5mm長いのに、XF16-50mmF2.8-4.8 R LM WRの50mmで撮ったほうが被写体をより大きくとらえていることが分かります。小さな昆虫などもわりと大きく撮ることができますし、最短撮影距離が短いので旅の食事や現地でのお土産などを撮影する際にも重宝しますね。
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■撮影環境:F4.8 SS1/420秒 ISO640 焦点距離50mm
作例
本レンズを持って(私の住む奈良を基準として)西へ東へと撮影に出かけてきました。撮影期間中の天候が安定せず曇りや雨の日が多かったのですが、それだからこそ撮れる絶景もありましたので紹介させていただきます。
まずは西に向かいました。備中国分寺にはキバナコスモスが咲き誇っていました。絞り開放にしてキバナコスモスを前景にして五重塔を狙いましたが、綺麗な前ボケになりました。
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■撮影環境:F4.8 SS1/200秒 ISO1600 焦点距離50mm
■撮影地:備中国分寺(岡山県総社市)
翌日は天気が悪かったので朝はホテルの部屋でゆっくりしていると、みるみるうちに空が染まりました。慌ててカメラだけを持って駅前にある三原城跡までダッシュしました。小型軽量の組み合わせだったので(体力がもち)ギリギリ間に合い撮影することができました。
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■撮影環境:F7.1 SS1/20秒 ISO200 焦点距離16mm
■撮影地:三原城跡(広島県三原市)
その後撮影を予定していた筆影山展望台に向かいましたが、色付いたのは一瞬だけでその後は雲に覆われてしまいました。しかし、雲が迫ってくる感じが面白かったので撮影を続けました。やはりダメだと思っても行ってみることが大切だと実感した次第です。
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■撮影環境:F7.1 SS1/420秒 ISO125 焦点距離30mm
■撮影地:筆影山展望台(広島県三原市)
広島に到着し世界遺産の原爆ドームを撮影。事情があり三脚なしでの撮影で手ブレ補正非搭載に不安もありましたが、ボディ側の手ブレ補正が効くので遅いシャッター速度でもブレなく撮影することができました。
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■撮影環境:F5 SS1/3秒 ISO1600 焦点距離17mm
■撮影地:原爆ドーム(広島県広島市)
少し足を伸ばして廿日市市にある羅漢峡に行きました。紅葉の名所として有名ですが雨上がりの緑の木々もとても美しかったです。時折小雨の降る状況でしたがレンズは防塵・防滴仕様になっているため安心して撮影に集中することができました。
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■撮影環境:F8 SS1/120秒 ISO400 焦点距離36mm
■撮影地:羅漢峡(広島県廿日市市)
三脚を使ってスローシャッターで撮影しましたが、小型の三脚でもブレることはありませんでした。カメラとレンズが小型軽量だと、三脚やカメラバッグなどいろいろなものも同時に小型化することができますね。
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■撮影環境:F18 SS1/4秒 ISO64 焦点距離37mm
■撮影地:羅漢峡(広島県廿日市市)
世界遺産「厳島神社」へ。コンパクトな組み合わせができるこのレンズはスナップ撮影にも重宝しました。鹿と鳥居の記念撮影です(笑)。
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■撮影環境:F7.1 SS1/550秒 ISO640 焦点距離26mm
■撮影地:厳島神社(広島県廿日市市)
夕方には鳥居の奥に沈みゆく夕日を撮影したかったのですが天気は回復せず。少し晴れ間も出る予報だっただけに残念でした。その代わりにライトアップされた鳥居の映り込みを撮影しました。ハーフフィルターを使っていますが、フィルター径が58mmなので丸型フィルターもハーフフィルターも小さなサイズで対応できます。
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■撮影環境:F8 SS5.3秒 ISO200 焦点距離18mm
■撮影地:厳島神社(広島県廿日市市)
広島からの帰りに世界遺産「姫路城」に立ち寄りました。予想通り天気が悪く期待していませんでしたが、以前の失敗もあるのでダメ元で撮影ポイントへ。太陽は拝めない日没でしたがその後にドラマがありました。空が真っ赤に染まり、まるで姫路城が燃えているかのような写真を撮ることができました。やはり行ってみるものですね。
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■撮影環境:F9 SS5秒 ISO400 焦点距離41mm
■撮影地:姫路城(兵庫県姫路市)
西への旅が終わり慌ただしく次は東へ。日本三大砂丘のひとつでもある中田島砂丘に立ち寄りました。天気が悪く夕日は望めませんでしたが、暗くなるまで砂遊びをしている男の子がいたので撮影させてもらいました。
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■撮影環境:F4.8 SS1/2200秒 ISO3200 焦点距離50mm
■撮影地:中田島砂丘(静岡県浜松市)
次に向かったのは世界遺産「富士山」でしたが、やはり天気が悪く富士山はずっと雲に隠れたままでした。しかし、山麓には霧が立ち込め幻想的な光景が広がりました。
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■撮影環境:F8 SS1/20秒 ISO800 焦点距離31mm
■撮影地:富士山麓(静岡県富士市)
今回のメインの目的地である、日本一の彼岸花の名所「巾着田」に到着しました。今年は開花が遅れたせいで運よく満開の時期に来ることができました。焦点距離が16mmスタートになったことで、一面に広がる彼岸花の群生を広く捉えることができました。
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■撮影環境:F8 SS1/26秒 ISO400 焦点距離18mm
■撮影地:巾着田(埼玉県日高市)
近接撮影で彼岸花の一本一本を捉えることもできます。24cmの最短撮影距離はかなり寄ってもピントが合います。
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■撮影環境:F8 SS1/20秒 ISO400 焦点距離43mm
■撮影地:巾着田(埼玉県日高市)
埼玉県のもうひとつの彼岸花の名所でもある権現堂公園にも立ち寄りました。ここでは赤の彼岸花に交じって白の彼岸花が咲いていて、巾着田とはまた違った魅力がありました。初めて来ましたが桜と菜の花の景色もとても有名なのですね。
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■撮影環境:F4.8 SS1/750秒 ISO200 焦点距離50mm
■撮影地:権現堂公園(埼玉県幸手市)
少し立ち寄って帰路に着く予定でしたが、撮っていると夢中になり気が付けば日が西に傾き始めていました。そして結局日が暮れるまで撮影していました。
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■撮影環境:F13 SS4秒 ISO160 焦点距離16mm
■撮影地:権現堂公園(埼玉県幸手市)
帰りにもう一度富士山の撮影にリベンジしました。雲がかかりながらも星空と早朝の光景を撮影することができました。富士山の全景は見られませんでしたが頭を出してくれたので良しとしましょう。
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■撮影環境:F10 SS1/3秒 ISO125 焦点距離18mm
■撮影地:精進湖(山梨県南都留郡富士河口湖町)
最後に東海地方一と言われる彼岸花の名所、矢勝川を撮影しました。到着が日の入り時間ギリギリになってしまいましたが、マジックアワーの時間帯の彼岸花が撮影できました。
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■撮影環境:F8 SS2.3秒 ISO400 焦点距離16mm
■撮影地:矢勝川(愛知県半田市)
地元である奈良の行事も撮影しました。毎年中秋の名月の日に、例祭「采女祭」(うねめまつり)が行われます。クライマックスは2隻の管絃船が猿沢池を巡ります。望遠側ではF4.8になるので感度は上げざるを得ませんでしたが、広角側で撮影する際にはF2.8で感度を落として撮影ができます。比較的明るい標準ズームではあるものの、望遠側をよく使う撮影ではやはりF2.8通しのレンズにアドバンテージがあると感じます。
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■撮影環境:F4.8 SS1/60秒 ISO4000 焦点距離50mm
■撮影地:猿沢池(奈良県奈良市)
まとめ
2週間という限られた期間での撮影だったので天気に恵まれず暗めの作例が多くなってしまいましたが、このレンズはこれだけのコンパクトさにF2.8の明るさを持ち合わせているので、スナップ撮影から風景撮影まで万遍なく使えるレンズだと感じました。
F2.8通しの明るさやさらなる高画質を求める方は、レッドバッジズームのXF16-55mmF2.8 R LM WR IIを選ぶのがいいでしょう。一方で、小型軽量さはこのレンズの大きなメリットで、公共交通機関での移動や徒歩移動・トレッキングを伴う撮影にはとても重宝するレンズであることは間違いありません。
■写真家:三田崇博
1975年奈良県生駒市生まれ。世界遺産撮影をライフワークとし現在までに100を超える国と地域で400か所以上の世界遺産を撮影。定期的に全国各地で開催している写真展は100回を超える。各種雑誌やカレンダーへの作品掲載も多数。主な著書に「世界三十六景」「生駒の火祭り」がある。
日本写真家協会(JPS)会員・FUJIFILM X-Photographer