富士フイルム XFレンズコンパクトプライムシリーズ|XF16mmF2.8 R WR レビュー
はじめに
富士フイルムのXマウントコンパクトプライムシリーズ単焦点レンズと歩く第三弾は、広角らしいパースが効いてダイナミックな広がりを感じながら撮影が楽しめる、XF16mmF2.8 R WR(35mm判換算:24mm相当)。今回もミニマルボディのX-E4と共に街中をスナップして歩いてみました。〝広角レンズの標準レンズ〟として位置付けられる焦点距離24mm。その使いこなしと合わせてレビューいたします。
■第一弾のXF35mmF2 R WR編はこちら
■第二弾のXF23mmF2 R WR編はこちら
描写力に優れた軽量・小型の広角レンズ
XF16mmF2.8 R WRは、2019年3月に発売されたレンズです。これまでご紹介した「F2シリーズ」と言われるXF23mmF2 R WR、XF35mmF2 R WRと同様の高級感と堅牢性を兼ね備えたスタイリッシュなデザインで、その操作感も変わることなく慣れ親しんだスムーズな撮影が楽しめます。
静粛性に優れているステッピングモーターで駆動させるインナーフォーカス方式AFや、防塵・防滴・-10℃の耐低温構造のタフネス性能も同様の仕様であり、悪天候時に心強く幅広い撮影シーンに対応してくれます。
非球面レンズ2枚を含む8群10枚のレンズ構成により、広角レンズで起こりやすい像面湾曲や球面収差を効果的に抑制し、画像中心部から周辺部まで高い解像性能を発揮するため、その小ささから想像し難い描写力に優れたレンズです。
レンズデザインも「F2シリーズ」と合わせて統一感があり、愛用しているX-E4とコンパクトプライムシリーズとの組み合わせは、かなりスタイリッシュ。広角レンズのラインナップに富んでいるXFレンズの中でも最小の広角レンズであり、その求めやすい価格も大きな魅力と言えるでしょう。
広角レンズの中の標準レンズとなる24mmの画角
ミラーレスカメラでの動画撮影も一般的となり、広角ズームレンズが35mm判換算で16mm前後から始まるレンズが増えた昨今、24mmは超広角ではありませんが、この焦点距離は〝広角レンズの標準レンズ〟といった意味合いを担っているように感じます。広角レンズに慣れていない人にはかなり広く感じるかもしれませんが、21mmほどパースペクティブの誇張される感じを受けず、動画、セルフィーがメインという方にも使いやすい画角です。さらに、28mmだと「ちょっと狭い」「画面に迫力が足りない」と感じていた人にはちょうど良い画角と言えます。
被写体と背景の遠近感が強調されるため、風景、スナップなどに使用されることの多い広角レンズですが、最近では狭い室内や背景を取り入れたポートレート撮影でも活用されることも多くなりました。
高さ・広がり・奥行きの強調でダイナミックに写し込む
撮影時の姿勢を大きく変えることなく立ったまま見上げる、手首のスナップでアングルや角度を変える、ピントを置く距離によるパースペクティブを活かした撮影が可能なXF16mmF2.8 R WRは、足元から頭上まであらゆるアングルでダイナミックな画作りが楽しめます。
近くのものが大きく、遠くのものが小さく見えるパースペクティブ効果を活かした撮影は、焦点距離28mmでは画面に収まりきらない被写体、無理な体勢で撮影しなければならない狭く限られた状況下でも余裕のある撮影が可能。広がる風景や大きく高さのある建造物、狭い室内などでもダイナミックなアングルで狙うことができるなど撮影シーンの幅広さも特徴です。
高架下の自転車置き場の様子。ここでは金網柵を利用して長秒撮影をしてみました。広角レンズで気になるのは歪曲収差(ディストーション)ですが、高速道路の支柱や街灯を見ると歪曲収差は非常に少なく、画面の周囲が多少流れていく程度です。
床屋さんのサインポールにピントを置き、手前から奥へ視線誘導を促すような撮影をしてみました。平面的にならないよう、画面に入り込む直線を活かして奥行きを作ることができます。
ビルからの反射光と二人の影がシンクロして印象的だったので、瞬時に手首をスナップさせて足元に広がりのある一枚に。
様々なアングル、角度によってダイナミックに変化する「面」の動きを感じながら撮影していることが体感できるレンズです。
開放値F2.8と最短撮影距離
最短撮影距離は17cm。広角レンズは漠然とした撮影になりがちで苦手という声も少なくありませんが、まずは「寄る」を重視して撮影してみることからはじめるのが良いと思います。私自身もそのことから広角レンズの良さ、楽しさを知りました。メインとなる被写体を大きめに撮影する、一歩前へ出ることでテーマが明確になります。
深度の深い広角レンズの開放F値では、ボケを重視した表現よりも周囲の雰囲気を活かした撮影がポイントです。
最短撮影距離では開放F値の魅力が発揮されます。じんわりと余韻のあるボケによって場所の雰囲気が生かされてきます。
テーブルフォトでは、メインの丼物だけでなくテーブルの上も程よく取り入れることができました。どんなお店で食べたのか後で見返したときにも思い出せます。
ADV.フィルターを活用してインパクトのある画作りを
Xシリーズにもデジタルフィルターである「ADV.(アドバンスト)フィルター」が搭載されているのをご存知でしょうか。普段使われている方はほとんどいないようですが、この機能を合わせて使うことにより、広角の迫力+インパクトのある画作りができます。ADV.フィルターはRAWファイル記録撮影に対応しているので、後からフィルムシミュレーションへ置き換えて現像することもできます。
(X-T2、T3、T4、T30、T30Ⅱ、Pro2、Pro3、E3、E4、H1、S10、100vに対応)
ポップカラーを使用して、支柱の黄色、電車の高架下に並ぶバスのインパクトを強めてみました。フロントガラスに写り込んだ空や、画面奥の郵便ポストにも目が留まるようになり、手前から奥へテンポのある視線の動きが生まれました。
実物大に再現された土俵に窓から差す光が印象的で、ダイナミックトーンを使って荘厳なイメージに仕上げてみました。V字のように鋭く切れ込む直線が広角レンズらしい写りです。
隅田川にかかる蔵前橋。24mmという画角によってその大きさを強調することができている上、写り込む光の色を印象的に仕上げるためにここでもポップカラーを使用しました。
被写体のダイナミックさに加え、色や画作りのインパクトを与えることができるADV.フィルターは、撮影する中で「ピンと来ないな。」と感じるようなシーンで活用することで思いがけず力強い印象を与えてくれます。
おわりに
APS-Cサイズのセンサー「X-Trans CMOS 4」と画像処理エンジン「X-Processor 4」によって解像力を発揮し、広角レンズらしいヌケのよい鮮明な印象を与えることができるXF16mmF2.8 R WRは、パンフォーカスの効いた写真らしい表現のできるレンズ。使いやすい画角でシーンを選ばないところが大きな魅力です。
1mm変わると画が大きく変わるといわれる広角レンズは、自分自身の立ち位置と被写体の大きさ、距離、そしてアングルを大きく変化させながらスナップや日常的に写真を楽しみたい人にピッタリ。XF16mmF2.8 R WRはそんな広角レンズが初めての方にもお勧めしたい1本です。
■写真家:こばやしかをる
デジタル写真の黎明期よりプリントデータを製作する現場で写真を学ぶ。スマホ~一眼レフまで幅広く指導。プロデューサー、ディレクター、アドバイザーとして企業とのコラボ企画・運営を手がけるなど写真を通じて活躍するクリエイターでもあり、ライターとしても活動中。