富士フイルム XF50-140mmF2.8 R LM OIR WR|不意に訪れる近距離のシャッターチャンス!持ってて良かったこの1本

高橋忠照
富士フイルム XF50-140mmF2.8 R LM OIR WR|不意に訪れる近距離のシャッターチャンス!持ってて良かったこの1本

はじめに

近年人気の野生動物撮影。超望遠ズーム等、長玉を用いて撮影するのが一般的ですが、年間を通じて撮影していると不意に、近距離で撮影できるシャッターチャンスが訪れることもあったりします。

しかし、カメラボディーに付いているレンズは超望遠・・・

最短撮影距離よりも被写体が近すぎてピントが合わない、若しくは、何とか撮影できたものの超どアップ・・・

そんな苦い経験をされている方も少なくないのではないでしょうか?

今回は、そんな「千載一遇」の場面で、サブ機に装着したり、カメラバックに忍ばせていることにより、何度も「ピンチをチャンス」に変えてくれた、富士フイルムの望遠ズームレンズ「XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR」をご紹介したいと思います。

コンパクトで携行性に優れたズームレンズ

私も使用している「XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR」の良さは、大口径の望遠ズームレンズでありながら、長さが僅か175.9mm(フード除く)と非常にコンパクトなことです。メイン機とサブ機2台持ちの場合や、カメラバッグに入れている時など邪魔にならず、内筒部も伸縮せず長さが固定されているので携行性に優れています。

野生動物の撮影は、錯雑地のヤブ漕ぎやフィールドまでの徒歩による長距離の移動、また被写体の動きに合わせた小移動等、機材をコンパクトに纏め、機動力を発揮しなければならない場面がいくつも存在します。

そのような時でも「XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR」のコンパクトな携行性のお陰で、長時間持ち歩いても苦にならず体力も温存できるので、疲労感で集中力を切らすことなく、決定的な場面でも素早い反射でシャッターが切り出せます。

不意に被写体が現れ、迅速かつ冷静にレンズ交換する際も「XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR」は全長が短くコンパクトなので、最小限の身体の動きでレンズ交換が可能です。

野生動物は、素早く大きな身体の動きに対しては非常に敏感な反応を示すため、「焦らず・慌てず」適切に対処することが極めて重要になってきます。

開放F値2.8のアドバンテージ

開放F値2.8の明るさを誇る「XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR」は、薄明・薄暮等の低照度で活発に行動する野生動物を撮影するのに最適な望遠ズームレンズです。また、被写体の表情を作るために絞り込んだり、シャッター速度の選択肢が増えたりと、表現者として想い描いたイメージをカタチとしてしっかりと捉えてくれます。

ニホンザル
■撮影機材:FUJIFILM X-H2S + XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR
■撮影場所:ISO1600 F2.8 1/110 被写体検出「動物」手持ち撮影

厳しい冬の訪れを告げる初冬の東北地方で、吹雪の寒さにじっと耐えるニホンザル。この日は非常に光が弱く視界も悪いため、撮影しづらい条件でしたが、ニホンザルは寒さをしのぐため、家族で集まり猿ダンゴを近距離で作り始めました。

近距離で低照度という撮影条件が揃ったため「XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR」の出番となりました。

ニホンザル
■撮影機材:FUJIFILM X-H2S + XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR
■撮影場所:ISO200 F2.8 1/160 AF-S.シングル 手持ち撮影

大雪が降り始めたタイミングで塒(ねぐら)の杉林から一斉に里に下りるニホンザル。

絞り込んで平面的な撮影をしても、大雪の影響で背景のボケ具合の変化にはあまり差異が現れないこと、しかも低照度であったことから「XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR」の明るさの強みを活かして開放で撮影しました。

超望遠レンズの画角では撮影できない、広範囲に広がったニホンザルの群れが冬景色を大移動する圧巻の情景を「XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR」がまるごと切り取ってくれました。

エゾシマリス
■撮影機材:FUJIFILM X-T4 + XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR
■撮影場所:ISO1250 F13 1/150 AF-S.シングル 手持ち撮影

明るいレンズ「XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR」は、シャッター速度が稼げるだけではなく、絞りの調整幅が大きくなることも強みです。

エゾシマリスが突然、目の前の岩穴から姿を現しました。

ファインダーを覗き、背景の山のボケ具合を「何か分からない塊」から「山や火山」と認識でき、自分が理想とするボケ具合になるようにF値を2.8から数字の大きい方に絞り込んで調整します。

絞り値が理想の値まで行くように、状況により必要な分だけ感度も増感します。そうすればその分、適正露出を維持しながら、さらに絞り込んでいくことができます。その際、被写体が動き出す可能性があるので、動いてもしっかり被写体ブレを起こすことなく撮影できる、最低限のシャッター速度にしておく着意も忘れてはいけません。

上記の動作を被写体を認識してから一瞬でできるように、機材操作に習熟していきましょう。

クリアで高い描画性能

色収差を抑制する「スーパーEDレンズ」や「EDレンズ」6枚を含む、総数23枚ものレンズを惜しみなく使用した「XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR」はクリアで立体感ある高い描画性能を誇ります。

エゾユキウサギ
■撮影機材:FUJIFILM X-T4 + XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR
■撮影場所:ISO800 F2.8 1/240 AF-S.シングル 手持ち撮影

残雪の斜面を進んでいると、塒の前に佇んでいる換毛期のエゾユキウサギが突然視界に入ってきました。

エゾユキウサギは夜行性のため、日中は写真のように休息しています。普段は、距離が離れていても危険を察知すると素早く逃げていきますが、じっと動かず危険をやり過ごす個体だったため、私も発見が遅れてしまい、結果的に「XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR」で十分撮影可能な距離になりました。

エゾユキウサギの瞳や繊細な毛並みの質感を「XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR」を通して、リアルに表現することができました。

ニホンカモシカ
■撮影機材:FUJIFILM X-H2S + XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR
■撮影場所:ISO400 F2.8 1/250 被写体検出「動物」手持ち撮影

晩秋の山道で、こちらを窺うニホンカモシカの親子と出会いました。

被写体との間合いをはかり、躊躇なく「XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR」を選択します。美しくシャープに撮れるレンズであることは使う前から既に分かっているので、フィールドでは高い信頼を寄せています。

レンズを酷使する最前線でも強い堅牢性

ニホンザル
■撮影機材:FUJIFILM X-H2S + XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR
■撮影場所:ISO200 F2.8 1/110 AF-S.シングル 手持ち撮影

大雪の中、ニホンザルが柿に群がり食事を始めます。

冬季の撮影では、機材を風雪に晒した状態で撮影のタイミングを待つことも非常に多くなります。そんな過酷な環境でも、「XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR」は、防塵・防滴に加え-10℃の耐低温構造であるため、レンズのケアに気を使わず撮影に集中することができます。

エゾシカ
■撮影機材:FUJIFILM X-T4 + XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR
■撮影場所:ISO1250 F20 1/25 AF-S.シングル 手持ち撮影

数日前から、見晴らしの良い場所を塒にしているエゾシカを確認していました。この個体を日の出前の情景で撮影するために選んだレンズが、明るく低照度に強い「XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR」でした。

機材が泥まみれになる体勢で気配を消し、徐々に間合いを詰めていきます。そんなレンズを酷使する最前線でも「XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR」は、魂の1カットを誤作動や故障を起こすことなくダイナミックに捉えてくれました。

まとめ

不意に訪れる近距離のシャッターチャンス!持ってて良かったこの1本と題して、「XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR」が必要となった場面で撮影した野生動物写真をご紹介しましたが、いかがだったでしょうか?

超望遠レンズのみで撮影していると単調な写真になってしまい、被写体が近距離に現れた際のシャッターチャンスも逃してしまう原因となってしまいます。

「XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR」で撮影した写真は被写体が近距離であるにも関わらず、画角が超望遠レンズよりも広いため、生息環境を含めた、ダイナミックで奥行きある写真が撮れるのも魅力の一つです。

近距離に現れた被写体の撮り漏らしを防ぎつつ、今までの単調な写真から脱却し、写真のカットバリエーションを増やすためにも価値のある1本を是非お手に取って頂き、新たな作品づくりに活かして頂ければ幸いです。

 

 

■自然写真家:高橋忠照
1982年北海道札幌市生まれ・山形県育ち。上富良野町在住。陸上自衛隊勤務を経て、2019年自然写真家に転向。自衛隊時代に培ったスナイパー(狙撃手)の技能を生かし、自然の中に同化して野生動物を探し出す独自のスタイルでの撮影を得意とする。作品は小学館、チャイルド本社、フレーベル館等の児童書や雑誌、カレンダーなど掲載多数。
公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員

 

 

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