富士フイルム XF8mmF3.5 R WRが登場|目に見えるすべてを写し取るコンパクトな超広角単焦点
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はじめに
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2023年5月24日に開催されたオンラインイベント、「X Summit BKK 2023」でお披露目された超広角単焦点レンズ「XF8mmF3.5 R WR」。レンズロードマップには2022年の5月に追加されており、今か今かと待ちわびていたユーザーもいたのではないでしょうか。
このXF8mmF3.5 R WRは富士フイルムのミラーレスカメラ、Xシリーズの単焦点レンズで最広角となる8mm(35mm判換算12mm相当)という超ワイドな焦点距離と、手軽に持ち歩ける小型軽量さが特徴のレンズです。これだけ画角が広いと風景撮影はもちろん、手持ちの自撮りも余裕ででき、同時に登場したX-S20に組み合わせてVlog撮影に持ち出すのも良さそうですね。
超コンパクトな超広角
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XFレンズで8mmといえば超広角ズームの「XF8-16mmF2.8 R LM WR」がすでにありますが、今回のXF8mmF3.5 R WRはそれと比べて格段にコンパクト。もちろん開放F値の違いはありますが、超広角とあって絞ってパンフォーカスで撮ることが多いことを考えると開放F3.5という数字も気にならないでしょう。むしろ8mmの超広角をこのサイズで持ち歩けることの喜びの方が圧倒的に大きいと感じます。
それぞれのスペックを表で見比べてみると…
XF8mmF3.5 R WR | XF8-16mmF2.8 R LM WR | |
最大径×長さ | Ø68mm × 52.8mm | Ø88mm x 121.5mm |
質量 | 約215g | 約805g |
フィルターサイズ | Ø62mm | – |
焦点距離 | 8mm(12mm相当) | 8-16mm (12-24mm相当) |
開放絞り | F3.5 | F2.8 |
最小絞り | F22 | F22 |
絞り羽根 | 9枚(円形絞り) | 9枚(円形絞り) |
最短撮影距離 | 18cm | 25cm |
最大撮影倍率 | 0.07倍 | 0.1倍(テレ端) |
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今までは超ワイドで撮りたいとなると、比較的大きくて重たいXF8-16mmF2.8 R LM WRを持ち出すしかありませんでしたが、XF8mmF3.5 R WRの登場によりついに超広角の選択肢が拡充されました。XF8-16mmF2.8 R LM WRもズームの利便性や開放F値の明るさなど優位性は大きいですが、より荷物を軽くしたい人や、実際はワイド端8mmばかり使っていたという人はXF8mmF3.5 R WRがおすすめです。
加えて、XF8-16mmF2.8 R LM WRではできなかったレンズ前面へのフィルター装着も可能に。風景撮影でのPLフィルター、夜景撮影でのソフトフィルター、長秒露光でのNDフィルターなどがこの超広角で使えるようになり、表現の幅もさらに広がっています。
最新のレンズとあって絞りリングにはAポジションでのロックスイッチも搭載。もちろんモデル名のWR(Weather Resistant)の通り、防塵・防滴・-10℃の耐低温構造になっており、悪天候でも安心して使用することができます。
超広角で切り取る楽しさ
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■撮影設定:F3.5 1/15秒 ISO250
■フィルムシミュレーション:ノスタルジックネガ
これだけコンパクトなレンズとあって機動力は抜群。超広角ながらレンズの前玉も出っ張ることなく、フィッシュアイ(魚眼)レンズのような見た目の存在感もないため街中で変に目立つこともありません。ですので、今回のようにスナップ撮影に持ち出すのもおすすめです。
まずは12mm相当という画角がどれくらい広いのか、東京のシンボルとも言える場所で試してみました。「画面端はここまで写るのか!」と想像以上の画角の広さに、カメラを構えながら驚いてしまいました。建物を見上げるようにあおりで撮影することで、ダイナミックにそびえ立つ印象が際立っていると思います。
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■撮影設定:F11 1.2秒 ISO2000
■フィルムシミュレーション:クラシッククローム
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■撮影設定:F8 1/3秒 ISO6400
■フィルムシミュレーション:クラシッククローム
やはり超広角は建造物を撮影するのにぴったり。観光地では人混みや場所の都合でそこまで後ろに引けない、ということもあるかと思いますが、12mm相当の広さであればむしろちょっと寄って撮影しようかと思うほど。大きな建物も端が切れることなくきれいに画面に収めることができます。ただ、画角の広さゆえに画面端にいくほど引き伸ばされるような効果が生まれるので被写体の配置には注意が必要です。
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■撮影設定:F8 1/100秒 ISO320
■フィルムシミュレーション:ノスタルジックネガ
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■撮影設定:F8 1/420秒 ISO160
■フィルムシミュレーション:ノスタルジックネガ
もちろん、風景を端から端まで余すことなく記録したいシーンでも大活躍します。ビルの高層階から見下ろすように東京の街並みを撮影しましたが、小さく写る建物もきっちり解像しており、単焦点レンズらしい描写性能の高さを感じます。
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■撮影設定:F8 1/450秒 ISO160
■フィルムシミュレーション:Velvia
最短撮影距離も18cmと短く、レンズ先端から10cm程度まで近寄って撮影することが可能です。下の作例は開放F3.5で撮影してみましたが、これだけ寄れると広角と言えどしっかり背景をぼかした撮影もできますね。超広角の引き伸ばし効果でデフォルメされるような感じもあり、何気ないシーンもより印象的に切り取れるのではないでしょうか。
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■撮影設定:F3.5 1/125秒 ISO160
■フィルムシミュレーション:PROVIA
画角の広さを活かして情報量の多い作品にするのもいいですが、シンプルな広角スナップを楽しんでもいいと思います。下の作例はビルの屋根やガラスや柱が複雑に写っているせいで、建物がどの向きで建っているのか一瞬分からなくなるような感覚になりませんか。一方で、引き算していくと一つの被写体を力強く見せることもできると思います。太陽からの強い光を正面に入れてみてもフレア・ゴーストは発生しておらず、かつ嫌な歪みもなく写せていることも分かりますね。
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■撮影設定:F5.6 1/6秒 ISO3200
■フィルムシミュレーション:クラシッククローム
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■撮影設定:F8 1/800秒 ISO125
■フィルムシミュレーション:クラシックネガ
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■撮影設定:F11 1/450秒 ISO125
■フィルムシミュレーション:クラシックネガ
さいごに
Xシリーズの単焦点で最も広い画角を持つレンズとして登場した「XF8mmF3.5 R WR」。あまりの画角の広さに最初は戸惑ってしまいましたが、見ている範囲全てを写し取れるような圧倒的なワイド感は爽快です。
しかも、これだけ広角でも画面周辺までしっかり高画質が保たれており、小型ながら確かな性能の高さを感じることができました。超広角のレンズとなると選択肢は少ないので、この画角に魅力を感じたら迷わずXF8mmF3.5 R WRを手に取ってほしいと思います。
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■撮影設定:F10 1/20秒 ISO125
■フィルムシミュレーション:クラシックネガ