富士フイルム XF8mmF3.5 R WR|超広角で超コンパクトな新レンズレビュー
はじめに
こんにちは。旅写真家の三田崇博です。今回は発売されたばかりの富士フイルムXマウント用の超広角レンズ「XF8mmF3.5 R WR」をレビューします。以前レビューした、同じ焦点距離を持つズームレンズ「XF8-16mmF2.8 R LM WR」との違いを交えながら見ていきたいと思います。今回はすこし前にはなりますが夏のお盆の期間を中心に、このレンズとX-T5を持って出かけました。
本レンズの特徴
まずはレンズがとても小さなことに驚きました。重さはわずか215gでズボンのポケットに入ってしまうようなコンパクトさです。XF8-16mmF2.8 R LM WRは高性能なレンズですが、その大きさが旅に持っていく際のネックになっていました。その悩みを見事に解決してくれたのが本レンズです。
下の写真で見比べるとそのサイズの小ささに驚くばかりです。重量に関しては3.7倍もの差があります。そのトレードオフとしてF値が3.5に抑えられていますが、カメラの高感度耐性もよくなった今の時代にマッチした設計ではないでしょうか。またもう一つの気に入った点は、レンズ前玉が出っ張っているXF8-16mmF2.8 R LM WRとは違いレンズ前面に各種フィルターが使用できるところです。
■XF8-16mmF2.8 R LM WRとの比較
XF8mmF3.5 R WR | XF8-16mmF2.8 R LM WR | |
焦点距離(フルサイズ換算) | 12mm | 12-24mm |
重量 | 215g | 805g |
最短撮影距離 | 18cm | 25cm |
F値 | 3.5 | 2.8 |
手振れ補正 | 非搭載 | 非搭載 |
フィルターサイズ | 62mm | 装着不可 |
絞り羽 | 9枚 | 9枚 |
防塵防滴 | あり | あり |
発売時期 | 2023.6 | 2018.11 |
この2つのレンズを持って星空撮影に出かけてきました。それぞれのレンズを解放F値で撮影しました。明るさを合わせるために感度を変えていますが、ここではやはりXF8-16mmF2.8 R LM WRの方が細かな星まで再現できているという結果になりました。ただXF8mmF3.5 R WRもかなり健闘しているように思いました。
▼XF8mmF3.5 R WR
▼XF8-16mmF2.8 R LM WR
それぞれの中心部分を拡大してみました。左がXF8mmF3.5 R WR、右がXF8-16mmF2.8 R LM WRです。右のほうが小さな星まで写っているのが分かります。
XF8mmF3.5 R WRの作例
自宅から近く、よく日の出の時間に撮影する薬師寺を望む大池です。この日は台風一過で空がまるで炎のように焼けました。8mmの超広角だと空全体が写り込むかのようなダイナミックな瞬間を捉えることができました。
平城京跡の夏の風物詩ともいえる「ツバメのねぐら入り」。多いときには6万羽ものツバメが巣に帰る様子を見ることができます。通常は標準~望遠レンズを使い密集している様子を撮影することが多いのですが、広角レンズで捉えると空いっぱいにツバメが飛び交う姿を撮影することができました。
同じ時期に平城京跡で行われる「天平たなばた祭り」では復元された朱雀門前にろうそくの灯りが並びます。空の青さの残る時間帯を狙って撮影しました。超広角で撮影することで遠近感がとても強調された写真を撮ることができます。
その後に行われる天平行列では、奈良時代の衣装を身にまとった人々が周辺を練り歩きます。ローアングルで撮影することによって、迫ってくるような迫力のある写真を撮ることができました。このような場面ではもう少しF値が明るければとも思いますが、小型軽量のお陰で動き回って手持ちで撮影しても疲れないというメリットがありました。
こちらも奈良の夏の風物詩として定着している「なら燈花会」での一コマです。猿沢池に映るロウソクの灯りが美しいですが、この光景は今後数年間見ることができなくなります。右に写っている興福寺五重塔が長期の修復に入るためです。
このイベントは三脚の使用が禁じられているため手持ち撮影が基本となります。レンズ側に手ブレ防止機能は搭載されていませんが、ボディ側の手ブレ補正と軽量レンズのお陰で、遅いシャッタースピードの場合でもブレずに撮ることができます。
世界遺産の元興寺で2日間に渡り開催される地蔵会万燈供養です。無数の石仏が幻想的なロウソクの光に包まれ、とてもフォトジェニックです。このレンズで俯瞰で撮ると画面いっぱいに石仏が入るので、その数の多さを見せることができます。
今年はお盆時期が台風にあたってしまったので中止や延期になった花火大会も多かったのですが、バラで有名な霊仙寺で開催された花火大会を撮影しました。規模は小さいのですがたくさんの提灯が脇役として彩りを添えてくれました。8mmだと自分の頭上の提灯まで画角に入ってきます。
地元の生駒にある生駒山上遊園地。標高642mの生駒山山頂に位置するので、今年のような暑い夏でも比較的過ごしやすい場所です。夕闇の迫る中ほのかに電飾が灯りだす頃合いに撮影しました。近くからでも全体を画角に収めることができます。
遊園地で夜に行われたランタンイベント。激しく揺れるランタンの撮影では、被写体ブレを防ぐためにもう少しレンズの明るさがあれば…という場面もありました。
少し足を延ばして世界遺産高野山のろうそく祭りに。雰囲気はとてもいいのですが久しぶりの開催ということもありとても人が多く、奇跡的に人が途切れた瞬間に撮れた一枚です。
初秋の景色を求めて早咲きのキバナコスモスの撮影に。オレンジ色と空の青さの対比がとても綺麗でした。下から煽ると空を目いっぱい収めることができます。
四季折々で工夫を凝らし、様々なフォトジェニックな光景を演出してくれるおふさ観音。夏には無数の風鈴で涼しさを届けてくれます。手前から奥まで無数に風鈴が並べられた天井全体を画角に入れることができます。
こちらは毎年奈良で開催されているバサラ祭りでの一コマです。風になびく旗や衣装を強調するために下から撮影しました。
最後に大台ケ原と大池で撮影したタイムラプス動画をご覧ください。画角が広いので、空を広く入れたタイムラプス動画を作るのにも最適なレンズだと思います。
まとめ
焦点距離が8mm(フルサイズ換算12mm)で固定なので使う場面を選ぶレンズではありますが、これだけ軽量コンパクトなのでカメラバッグの片隅に入れておいても持ち運びが苦になりません。画質や明るさにおいてはXF8-16mmF2.8 R LM WRに軍配が上がりますが、星撮りや夜間の動体撮影などでなければ十分に対応できます。
広角がこれ一本というのは極端かも知れませんが、現在XF10-24mmF4 R OISなどの広角ズームレンズをお使いであればおすすめできるレンズです。広角側2mmの違い(8mmと10mm)は新しい世界を見せてくれることと思います。
■写真家:三田崇博
1975年奈良県生駒市生まれ。旅好きが高じ、現在までに100を超える国と地域で350か所以上の世界遺産の撮影を行う。作品は各種雑誌やカレンダーへの掲載に加え全国各地で写真展を開催している。
日本写真家協会(JPS)会員・FUJIFILM X-Photographer・アカデミーX講師