ハッセルブラッド X1D II 50C レビュー | 大幅に進化した中判デジタルカメラの魅力!
はじめに
筆者はフォトグラファーになる前からハッセルブラッドを長年愛用している。Vシリーズはもちろんのこと、Hシリーズ、XPan、Xシリーズとほぼすべてのハッセルブラッドを使っており、2015年ハッセルブラッドローカルアンバサダーでもある。Xシリーズに関しては初期から使用しており個人的にはX1D-50c 4116 Editionを使用して仕事と作品作りを行っている。
中判デジタルカメラの魅力は圧倒的な描写力と豊かなダイナミックレンジ、独特の立体感、16bit RAWの安心感など沢山ある。X1Dは世界最小の中判デジタルカメラであり、ハッセルブラッドらしいデザインと質感が魅力だ。
そんなX1Dがかなりブラッシュアップされ2019年 7月にHasselblad X1D IIとして発売になった。Hasselblad X1D IIは初期モデルの良さやデザインは引き継ぎ圧倒的な進化をしている。今回はリアルハッセルブラッドユーザーとして本機の魅力をご紹介したいと思う。
散歩中に愛犬をスナップした。5000万画素もある中判デジタルカメラにもかかわらず一般的な一眼レフやミラーレス機なみの機動力があり使い易い。写りは驚くほど繊細で中判ならではの立体感を楽しめる。
X1D IIの概要
X1D II 50Cは5000万画素の中判CMOSセンサーを搭載。センサーサイズは43.8×32.9 mmと非常に大きいことが分かるだろう。ダイナミックレンジはなんと14段と非常に広く安心感がある。RAWで撮影すると16bitで記録されるためRAW現像時にはハッセルブラッドの豊かな表現力を感じられるはずだ。
もちろん、JPEGのみでの撮影も可能で5000万画素のフルのJPEGが撮影できハッセルブラッドのナチュラルカラーソリューションにより美しいナチュラルな色で撮影可能だ。
小湊鐵道の駅舎を撮影した。駅舎の中から撮影したので輝度差があるが、ハッセルブラッドのRAWはデータを豊富にもっているためPhocusで現像する際にシャドウ部分を少し上げるだけで肉眼に近いダイナミックレンジで表現することができた。
JPEG撮って出しでも十分美しくシャープな写真が撮れるのもハッセルブラッドの魅力だ。ハッセルブラッドナチュラルソリューションによるナチュラルで深みのある色合いが魅力的だ。作例は近所の漁港をスナップ的に撮影した写真だ。手持ちでもブレることなくシャープに切り取ることができるのもX1D IIの魅力だ。
雨が上がり緑が印象的な田んぼと家屋を撮影した。X1D IIの圧倒的な画質はさすがだ。画面の端の端までシャープに解像し、木々のディテールまで確認することができる。XCD 1,9/80はF5.6まで絞れば解像感がグッと増しパンフォーカスでも立体的だ。
去年、台湾に行った時にスナップした1枚。暗いシーンだったのでISO800にして撮影したが全くノイズが確認できないほど綺麗だ。一昔前の中判デジタルカメラはISOを上げられなかったがX1D IIは高感度にも強い。
外観+機能
外観は堅牢性に優れたアルミ製だ。カメラを手にしただけでハッセルブラッドの造りの良さを体感できるはずだ。細部まで拘った繊細な造りは所有欲がくすぐられるはずだ。液晶モニターは前機種よりも大きくなり3.6インチ236万画素のタッチパネルを採用。電子ビューファインダーは369万画素の有機ELになっている。ファインダー倍率は0.87倍に向上しており驚くほど見やすい。
ライブビューのフレームレートも37fpsから60fpsへと大幅に進化しておりカメラを上下左右に動かした際のかくつきも気にならずとても撮影しやすい。初期モデルを使用しているユーザー目線で見ると、軌道のスピードやブラックアウトに時間など小さなことではあるが短縮されておりストレスも感じられない。今までは起動時間が10秒ほど掛かっていたが半分の5秒くらいになっている。非常に完成度が高く中判のデジタルカメラとしてはキビキビ動いてくれる印象だ。
操作
操作感はシンプル。ボタン類は最小限に抑えられ、殆どをタッチパネルで行うことができる。液晶は大きく反応速度がよくストレスなく操作できる。スマートフォンのような直感的操作が魅力だ。
もちろん、ユーザーインターフェースはカスタマイズでき自分の好きなようにできるのもポイントだ。頻繁に変更するシャッター速度や絞り値は前後のダイヤルで調整できるようになっており、ISOの変更やWBなどはタッチパネルでの操作はもちろんのこと物理的なボタンにも割り当てられている。国産の多くの一眼レフやミラーレス機の多くは様々な機能を搭載しているが本機は最小限の機能のみ。
写真を撮影するためのシャッター速度、絞り値、ISO、WB、露出補正の調整が主なので撮影に集中できるのも魅力だ。
操作は基本的にタッチパネルでの操作になる。大きな画面は設定を把握しやすくダイレクトに変えたい項目をタッチするだけなので直感的に操作できる。
X1D IIにはAF-Cの機能はないので動き物を撮影する時は置きピンがオススメ。列車など通過する所が分かる乗り物は予めピントを合わせておくことで問題なく撮影できる。
拡張性
X1D IIは撮影に必要な最小限の機能が搭載されているが拡張性は十分。初期モデルでは外付けだったGPSは内蔵になりスマートになった。SDカードはデュアルスロットのSDカードを採用。UHS-IIに対応しているので高速転送が可能になった。テザー撮影や本体からデータを取り出すにはUSB-Cを使うので高速でのデータ転送ができのも魅力だ。テザー撮影ではPC & MACを使用する場合はPhocusが使用できる。
そしてX1D IIよりiPad ProとiPad Airに対応したPHOCUS MOBILE 2を使うことでiPadを使った撮影やカメラコントロールを可能にしている。実際に筆者も使用しているがPCやMACと同等にサクサクと動いてくれる。このUSB-C端子は充電も可能なので旅先に充電器を持って行きたくない場合などでも使える。さらにWiFi機能も搭載しているので直接スマートフォンに画像データを送ったり、カメラをコントロールすることもできる。
進化
Hasselbladの魅力の1つが進化だ。購入後もファームウェアアップデートが頻繁に行われるのでただのバグの修正だけではなく機能も大幅にアップする。最新のメジャーファームアップはファームウェアアップデート1.2.0 があり、動画撮影機能が動くようになった。大きなセンサーを活かした2.7K(2720 x 1530)およびHD(1920 x 1080)の動画は今までにない中判デジタルカメラの良さを活かしたものとなり、とても魅力的である。立体感などはさすが中判デジタルの動画機能だ。
動画収録は4:2:0 8ビットカラーで29.97 fpsで録画できる。2.7KはFHDよりも面積が広いのでクロップ用途にも使えるだろう。その他にもホワイトバランスツールが搭載されホワイトバランスを簡単かつ直感的に調整できるようになっている。また、初期モデルには搭載されていたフォーカスブラケットが再度X1D IIにも搭載された。画像の選択を楽にしてくれる画像のレーティングも直感的に行えるように進化しているのもポイントだ。
XCDレンズ
ハッセルブラッドのXシリーズは進化し続け、新しいレンズも出続けている。現在レンズは21mmから135mmの単焦点レンズがあり、一本の35-70mmのズームレンズとテレコンバーターとズームレンズを入れると11本のラインアップがある。
ハッセルブラッドの特長としてシャッターはレンズシャッターとなっており、ストロボ撮影でも1/2000秒で同調してくれる。一般的なフォーカルプレーン・シャッターの場合は速くても1/250秒なので約3段分のアドバンテージがる。筆者は人物撮影ではストロボを多用するので非常に助かっている。
筆者はほぼすべてのレンズを使用しているが、今回レビュー用に使用したのが中判カメラのレンズとは思えないXCD 4/45のパンケーキと標準レンズになるXCD 2,8/65、圧倒的なボケ感と明るさが魅力のXCD 1,9/80を使用して作例を撮影している。
特にパンケーキのXCD 4/45は重量がわずか320gと軽量でX1D IIとの相性は抜群。開放F値はF4ではあるが中判なので大きなボケ感も堪能できる。35mm判換算で36mm相当の画角はスナップからトラベル、日常使いまで遊べる最高の一本だ。
XCD 2,8/65は筆者が愛用している常用レンズ。50mm相当の画角は使い勝手がよくF2.8のお陰でボケを活かしたポートレートからスナップまで楽しめる。最短は50cmなのでテーブルフォトなどにも活用できる一本だ。
XCD 1,9/80は誰もが憧れる一本で、このレンズにしか表現できない独特の世界感がある。重量は1044gとヘビーではあるが写りは最強だ。35mm判換算で63mmの画角になり、開放F1.9の明るさととろけるような大きなボケは圧倒的で被写界深度は恐ろしく浅い。X1D IIの正確なピント合わせのお陰で本レンズの魅力をしっかり引き出すことができる。
愛車を撮影した。ヴィヴィッドな赤が印象的な車なので赤が非常に美しく表現できているので満足だ。XCD 1,9/80は多少被写体から離れても背景をぼかすことができるので使い勝手抜群だ。このようなシーンを撮影する際はややローポジションで撮影すると良い。
あじさいを撮影した。最短距離近辺で絞り開放と難しいシーンではあるが、圧倒的なピント精度により思い通りの場所にピント合わせすることができた。ピント位置はシャープでボケはとろけるような品のあるボケ感だ。
砂浜に咲いていた細かい草花を撮影した。俯瞰で絞りをF8.0まで絞って撮影した。XCD 4/45は圧倒的にシャープで花のディテールや砂の細かさまでしっかりと表現できている。
まとめ
今回リアルハッセルブラッドユーザーとしてHasselblad X1D IIのレビューをさせていただいたが、Xシリーズになり驚くほどコンパクトになり35mmのデジタル一眼レフやミラーレス機と変わらない機動力を得ることができた。小さくなったとは言え、さすがは中判デジタルカメラ。圧倒的な画質とデータの豊富さは本カメラの魅力と言えるだろう。ハッセルブラッドにしか撮れない、表現できない世界があるので是非、皆さんもラージフォーマットの世界に挑戦していただきたい。