ZHIYUNの小型LEDライトを使って簡単ライティング
はじめに
ケンコー・トキナーから販売されているZHIYUN (ジーウン)の「MOLUS X100」は、手のひらサイズながら最大100Wの高い出力と、2700K~6500Kの色温度に対応したバイカラーの小型LEDライトです。同じくZHIYUN「MOLUS X60 RGB」は、「MOLUS X100」よりも更にコンパクトなサイズながら、60W出力、RGBカラー対応と、使い勝手の良い性能をぎゅっと詰め込んだようなLEDライトです。
今回はこの2つの小型LEDライトを使って、気軽にできるテーブルフォトとポートレートのライティングについてお話しいたします。
2灯で基本のテーブルフォト
まずはライト2灯で、テーブルフォトを撮影してみましょう。今回は、LEDライトのみで光をコントロールしたいので、自然光が入らない場所で撮影しています。室内の照明は意図しない影ができたり、被写体の色味を変えてしまうことがありますので、すべて消しましょう。
メインのライトは「MOLUS X100」を色温度5200K、調光範囲100%にし、専用アクセサリーの「ZYマウントミニソフトボックス」を装着して、被写体の斜め後ろに設置します。柔らかい光を全体に回すセッティングです。
サブのライト「MOLUS X60 RGB」を、色温度はメインライトと同じ5200K、調光範囲は70%にし、専用アクセサリーの「ドームディフューザー」を装着して、被写体の斜め後ろに設置します。後ろのグラスのキラキラ感を強くするためと、パンケーキに影を作って、構図全体の陰影を増すセッティングです。
カメラ位置は構図手前側です。テーブルフォトは、自分が机に向かって座っているような角度の、斜め45度くらいから見下ろして撮ると自然な構図になりやすいです。
また、なぜ後ろからライトを当てて、あえて被写体に影を作っているのかというと、前からの光だけだと被写体の質感がわかりにくくなって、ベタッとした写真になってしまうからです。
こちらの写真は、サブライトを被写体の斜め前側に移動させて撮りました。全体に明るいイメージなりましたが、パンケーキの影がなくなったことで、ケーキの厚みがわかりにくくなり、シロップのテカリも消えて立体感が無くなってしまいました。
RGBカラーで遊んだテーブルフォト
こちらは、サブライトの色味を赤っぽくして、夕方のイメージにしてみました。テーブルフォトで、被写体に赤い色味のライトを当てることはあまりないのですが、せっかくのフルカラーLEDライトなので遊んでみましょう!
メインライトは最初の基本セッティングと同じで、「MOLUS X100」を色温度5200K、調光範囲100%にし、専用アクセサリーの「ZYマウントミニソフトボックス」を装着して、被写体の斜め後ろに設置しています。
サブライトの「MOLUS X60 RGB」は、ディフューザーを外してミニリフレクターを装着し、基本編よりもダイレクトに光を当てています。色味は専用アプリ「ZY Vega」を使用すると、同じ赤色でも彩度などの細かい設定を感覚的に行えて便利です。
メインライトの設置設定はそのままで、サブライト「MOLUS X60 RGB」の色味を少しだけ青色が混ざった白に近い色味にしました。基本編よりも透明感が増して、早朝のようなムードが出てきました。
2灯の照明を使う場合は、1灯をフルカラー仕様のものにすると色々遊べるのでお勧めです。
ゼリーをムーディーに撮ってみよう!
それではここで、ゼリーをムーディーに撮ってみましょう。まずは基本のセッティングを作るために、メインライト「MOLUS X100」とサブライト「MOLUS X60 RGB」の色温度を5200Kにします。フルカラーで遊ぶ場合も、最初のセッティングは自然な色味にして光の当たり具合を見るようにしましょう。
メインライト「MOLUS X100」には「ZYマウントミニソフトボックス」を、サブライト「MOLUS X60 RGB」には「ドームディフューザー」を装着。調光範囲は両方とも60%にして、両サイドから被写体を挟み込むように設置します。
セッティングができたら、サブライトの色味を色々と変えてみましょう。背景のグリーンの色味も変化して、なんでもないゼリーなのにちょっとムーディーな写真が撮れます。
フルカラーのLEDライトで遊ぶときは、まず、本来の色味をしっかりと出す当て方をしてから、自分が面白いなと思う色味を出したり、好みのムードになるように様々な色味を試して遊んでみましょう!仕事で納品するような正規のメニュー写真撮影でなければ、思いっきり遊んでしまうのも楽しいですよ。
キリッとかっこいいポートレートライティング
自然光の入るスタジオで、顔の半分が暗くなるようにライティングして、かっこいい系のポートレートを撮ってみましょう。
メインライトの「MOLUS X100」は、色温度5200K、調光範囲100%にして「ZYマウントミニソフトボックス」を装着。モデルの左顔を照らすように、斜め前から照射します。このメインライト、通常はもっと上から照らすのですが、今回は顔の半分に影を作りたいので、モデルの右の顔を暗くするために、左の顔に光が強く当たるセッティングにしています。
トップライトの「MOLUS X60 RGB」の役割は、髪がベタッとして質感が損なわれないように、モデルの後頭部を照らしています。頭頂部が写るシーンでは髪に天使の輪を作り、アップのシーンでは構図右側、モデルの左半身が逆光になるため、髪や衣装の輪郭がくっきりする効果があります。
色温度はメインライト同じ5200K、調光範囲は70%。真上から当てると顔にも光が当たってしまっていらない影が出てしまうので、少し後ろから逆光気味に当てるのがポイントです。
また、モデルの右半身を暗くするために、照明の反対位置に黒レフを設置します。これで、さらに暗い部分を引き締めてかっこよくすることができます。
光に包まれるふんわりポートレートライティング
続いて、光に包まれるような優しいムードのポートレートを撮ってみましょう。自然光が沢山入るスタジオでしたら自然光だけでも優しいムードに撮れますが、LEDライトを使用することで、一味プラスしたポートレートにできます。
自然光はレースのカーテンを使ってディフューズします。その光を反射させるために、白レフを窓と平行に置きます。そして、モデル後方から「MOLUS X60 RGB」を調光範囲100%で照射しましょう。トップライトと言っていますが上からというよりも、モデルの髪の後れ毛を狙うように、後頭部から首筋あたりに当たるようにすると丁度いいです。
このトップライトの狙いは、「もうひとつの太陽」を作り出すことです。自然光と白レフの反射だけで十分に明るいのですが、背後からの光があると、被写体が立体的に見える効果があります。ポートレートのセオリーでもある逆光での撮影は、モデルの顔に嫌な影を作らないためでもありますが、立体感を作るためでもあります。
ですので、人工的に「もうひとつの太陽」を設置して、透け感が出やすい髪に当てることで、光が頭を縁取ってくれる立体効果が生まれます。
トップライトの色味ですが、自然光に合わせて5700Kくらいでもいいですが、温かいオレンジ系の色にすると髪色が柔らかくなるのでお勧めです。
さいごに
撮影のライティングというと、大きな照明機材を購入して、スタジオで大掛かりにセッティングをしなくちゃいけないかと、なかなか踏み出せない方もいらっしゃるかもしれませんが、今回撮影したテーブルフォトとポートレートは、ご自宅のリビングでも撮影可能なレシピばかりです。
ZHIYUN の「MOLUS X100」と「MOLUS X60 RGB」の2台があれば、バイカラーのセッティングと、フルカラーも混ぜたセッティングの両方が楽しめます。手のひらサイズの高性能LEDライトを使って、ぜひ、いつもの写真に一味加えた撮影を楽しんでください!
■モデル:山上ひかり
https://www.instagram.com/hikarixx7
https://x.com/HikariYamagami
■写真家:水咲奈々
東京都出身。大学卒業後、舞台俳優として活動するがモデルとしてカメラの前に立つうちに撮る側に興味が湧き、作品を持ち込んだカメラ雑誌の出版社に入社し編集と写真を学ぶ。現在はフリーの写真家として雑誌やWEB、イベントや写真教室など多方面で活動中。興味を持った被写体に積極的にアプローチするので撮影ジャンルは赤ちゃんから戦闘機までと幅広い。日本写真家協会(JPS)会員。