この冬ナイトスナップ・イルミネーション撮影におすすめのケンコー フィルター3選
はじめに
イルミネーションが華やかに輝く冬、夜のスナップ撮影が楽しい季節がやってきました。普通に撮影しても十分に絵になるシチュエーションが多いのですが、より雰囲気を印象的に描写したいと思う方も多いのではないでしょうか。今回はこの冬、人とは少し違ったナイトスナップ・イルミネーション写真を撮ってみたい方におすすめの、特徴的な描写をするフィルターをセレクトしてみました。それぞれのフィルター効果の特徴と写りをご紹介します。
この冬ナイトスナップ撮影におすすめのフィルター3選
今回おすすめするフィルターは、ケンコーから発売されている「ブラックミストNo.05 N」、「アナモフレア」、「PRO1D R-トゥインクル・スター(W)」の3種のフィルターです。どれも写真に独特の効果を加えてくれ、特に夜のスナップ撮影やイルミネーション撮影に活用できるフィルターです。
▼ブラックミストNo.05 N
「ブラックミストNo.05 N」はソフトフィルターの一種で、ハイライトとシャドウ部のコントラストを抑える効果があり、シネマチックな質感が得られるソフトフィルターです。ケンコーのブラックミストフィルターには「No.1」と「No.05」の2種類があり、今回紹介するのは「No.1」の効果が半分になった「No.05」で、常用でも使いやすくなったタイプのフィルターです。
強い光源もソフトな描写に変えてくれるので、街の明かりがつき始める夕方からの街スナップ撮影に効果的で、優しい雰囲気の写真を撮ることができます。
「ブラックミスト No.05 N」は、レンズの焦点距離によってソフト効果の強弱の差があります。望遠側ではソフト効果が高くなりますが、広角側ではソフト効果は弱くなる傾向があるので、より効果を感じる撮り方をしたい場合は、中望遠・望遠レンズを使用するのがおすすめです。
▼PRO1D R-トゥインクル・スター(W)
「PRO1D R-トゥインクル・スター(W)」はクロスフィルターの一種です。従来の一般的なクロスフィルターは光源によっては光の線が長く出すぎるため、光源が密集しているイルミネーションではくどくなる傾向にあり、イルミネーション撮影では少し使いにくい感じがしていました。「PRO1D R-トゥインクル・スター(W)」は、一般的なクロスフィルターとは異なる製法で強い点光源でもクロスの線が長く出すぎることがない仕様になって、イルミネーション撮影においては非常に使いやすいフィルターです。
また、「PRO1D R-トゥインクル・スター(W)」は枠が回転するタイプのフィルターなので、撮影する際にクロスの角度を自由に調整する事が可能です。
下の写真は一般的なクロスフィルター「PRO1D R-クロススクリーン(W) N」と、「PRO1D R-トゥインクル・スター(W)」を同じシーンで撮影したものの比較です。「PRO1D R-トゥインクル・スター(W)」の線が短いのがわかります。
「PRO1D R-トゥインクル・スター(W)」を使用する際に少し注意するポイントとしては、クロスフィルター系には共通で発生するのですが、玉ボケ部分などにフィルターガラスの表面に施した網目状のパターンが、上の写真のような感じで写り込む場合があるので知っておくと良いでしょう。
▼アナモフレア
「アナモフレア」フィルターは、アナモルフィックレンズのような光線状のフレア効果を手軽に得られるフィルターです。アナモルフィックレンズは非常に高価な映画用レンズですが、アナモフレアならレンズの前に取り付けるだけで印象的な光線を手軽に演出することができます。
アナモルフィックレンズのフレアは通常ブルーになりますが、「アナモフレア」フィルターはブルー、グリーン、イエロー、レッド、クリア、レインボーの6種類をラインナップしているのが特徴で、お好みの色に合わせてアレンジすることができます。
「アナモフレア」は点光源だけでなく面光源にも反応するのが特徴です。光源が大きいほど太い線が発生します。前枠(回転枠)を回すと光線の向きを変えることができます。フィルターガラス上のラインが垂直方向の時、光線は水平に出ます。
使用する際の注意ポイントとしては、玉ボケ部分などにフィルターガラスの表面に施した縞模様のパターンが写り込みます。下の写真はその症状がわかりやすいように撮影したものになります。
また「アナモフレア」は、広角で使用すると光線に歪みが発生します。歪みが気になる場合は50mm以上の焦点距離での使用をおすすめします。下の写真は焦点距離24mmで撮影したものになりますが、「アナモフレア」で発生した光線が大きく歪んでしまっています。ケンコーでは焦点距離50mm以上での使用を推奨しています。
「アナモフレア」のカラーバリエーションは6種類ありますが、フィルターサイズは82mm径のみの仕様になっているので、利用するレンズに合わせてステップアップリングで調整する必要があります。
ケンコーソフトフィルター「ブラックミスト No.05 N」
「ブラックミスト No.05 N」を持って酉の市に出かけてみました。酉の市には多くの露店が並び、電球が多くぶら下がっていて情緒あふれる風景です。昨今は電球もLEDになり明るさも増し、クールな明かりになっているので「ブラックミスト No.05 N」を使用してソフトな描写にするには丁度良い被写体です。
今回は夜の撮影のみに使用していますが、もちろん昼の撮影でもソフト効果を発揮するフィルターとして使えるフィルターです。
ケンコークロスフィルター「PRO1D R-トゥインクル・スター(W)」
イルミネーション撮影の定番とも言えるクロスフィルターですが、色々な種類があり少々悩む事も。たくさんあるクロスフィルターの中から、今回は「PRO1D R-トゥインクル・スター(W)」を選んでみました。このフィルターを選んだ理由は強い点光源でもクロスの線が長く出すぎることがなく、絵に描いたようなかわいい形のクロスが描写され、派手なイルミネーションでも使いやすい点にあります。
点光源が密集したイルミネーションで従来のクロスフィルターを使用すると、光の線が長く出すぎるためクロスフィルターの効果が強くなりすぎ、画面が煩雑になりやすい傾向がありましたが、「PRO1D R-トゥインクル・スター(W)」は、その効果を抑えることで非常に扱いやすいフィルターです。
ケンコークロスフィルター「アナモフレア」
光線状のフレア効果が手軽に得られる「アナモフレア」を使えば、いつもの夜の街並みも少し違った雰囲気で撮影する事ができます。信号の明かり、街灯の明かり、車のヘッドライト、お店の看板などの光源から光線状のフレアを発生させ、写真に強いアクセントを加えることができるので独特の表現が可能になります。
光線の向きはフィルターの回転枠を回すことで任意の方向に入れることができますが、光源の種類など撮影条件によってフレアの色の出方が変わったり、効果が異なったりする場合があります。同じ場所でも光線状のフレアを伸ばす方向を変えたりするだけでも、写真の表情は大きく変化します。
下の写真は先に紹介した「PRO1D R-トゥインクル・スター(W)」と「アナモフレア・グリーン」の2枚のフィルターを重ねて撮影したものになります。「PRO1D R-トゥインクル・スター(W)」の線が伸びる方向と「アナモフレア・グリーン」の線が伸びる方向が重ならない様に設定したので、点光源から伸びる線の数は6本になっています。
次の写真も「PRO1D R-トゥインクル・スター(W)」と「アナモフレア・グリーン」の2枚のフィルターを重ねて撮影していますが、「PRO1D R-トゥインクル・スター(W)」の線が伸びる方向と「アナモフレア・グリーン」の線が伸びる方向を重なるようにしたため、点光源から伸びる線の数は4本ですが「アナモフレア」が重なった方の線は長く伸びています。
フィルターを単体で使ってもいろいろな効果を楽しめますが、重ねて使って効果をアレンジするのも一つの方法です。ただフィルターを重ねて使用する際にはケラレに注意する必要があります。特に広角レンズを使用する際にはケラレが発生しやすくなりますので、今回の場合のフィルター効果特性も考えると中望遠・望遠領域の焦点距離を活用した方が安心です。
まとめ
今回はナイトスナップ・イルミネーション撮影におすすめケンコーのフィルター三選として「ブラックミスト No.05 N」、「PRO1D R-トゥインクル・スター(W)」、「アナモフレア」を紹介しましたが、どれも個性的な描写をしてくれるフィルターです。
夜のスナップ撮影・イルミネーション撮影の機会があれば、街中のいろいろな光源を探しフィルターを使ってオリジナリティ溢れる作品作りにチャレンジしてみてはどうでしょうか。
■写真家:坂井田富三
写真小売業界で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ・ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。
・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
・EIZO認定ColorEdgeアンバサダー
・ソニーαアカデミー講師