手のひらサイズの小型軽量・超望遠レンズ「トキナー SZ 300mm PRO Reflex F7.1 MF CF」
はじめに
今回紹介するのは、ケンコー・トキナーから2023年2月3日に発売になった、圧倒的に軽量・コンパクトな超望遠ミラーレンズ「SZ 300mm PRO Reflex F7.1 MF CF」です。
「SZ 300mm PRO Reflex F7.1 MF CF」は、2022年に応援購入サイト「Makuake」で好評を博して今回一般販売の流れになったレンズ。2023年3月に横浜で行われた「カメラと写真映像のワールドプレミアショー CP+2023」のケンコー・トキナーブースの中でも、人だかりができる人気のレンズになっていました。筆者も、この時初めて手にしてレンズの小ささに驚愕しました。
もともとミラーレンズは、フィルム一眼レフカメラの全盛期の1970年代~1980年代に、比較的手軽な価格で超望遠の世界が楽しめるレンズとして登場したもの。今回の「SZ 300mm PRO Reflex F7.1 MF CF」は、現代のAPS-Cサイズミラーレスカメラに合わせて更に小型化されています。そんなミラーレンズ「SZ 300mm PRO Reflex F7.1 MF CF」がどんな写りをするのか、早速使ってみました。
SZ 300mm PRO Reflex F7.1 MF CFの魅力
「SZ PRO」シリーズには、「SZ 300mm PRO Reflex F7.1 MF CF」「SZ 600mm PRO Reflex F8 MF CF」「SZ 900mm PRO Reflex F11 MF CF」の3本が先に発売されていますが、小ささや使い勝手を考えると圧倒的に「SZ 300mm PRO Reflex F7.1 MF CF」がおすすめです。
どのレンズも非常に小型軽量のレンズですが、APS-Cサイズのレンズなので、フルサイズ換算になると「450mm相当」「900mm相当」「1350㎜相当」になるので、なかなか使うのが難しい画角になってきます。「SZ PRO」シリーズのマウントは、「Canon EF-Mマウント」「Sony Eマウント」「Fuji Xマウント」の3種類で販売されています。
とにかく小さくて軽い「SZ 300mm PRO Reflex F7.1 MF CF」ですが、その小ささを実感する為に手元にあった望遠ズームレンズ「FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS」と並べてみました。
「FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS」はフィルター径77mmのフルサイズ望遠400mmのレンズです。「SZ 300mm PRO Reflex F7.1 MF CF」は、フルサイズ換算で450mmのレンズで全長「74.5mm」です。これでフルサイズ換算の焦点距離「450mm」相当なのは本当に凄いですね。
「SZ 300mm PRO Reflex F7.1 MF CF」の仕様です。
SZ 300mm PRO Reflex F7.1 MF CF | |
焦点距離 | 300mm ※フルサイズ換算450mm相当 |
レンズ構成 | 8群8枚 |
フィルター径 | 46mm(前側)34mm(リア側) |
最近接距離 | 0.92m |
最大撮影倍率 | 1:2.5 |
フォーカス方式 | 前玉繰り出し式・マニュアルフォーカス |
絞り羽根 | なし |
全長×最大径 | 74.5×61mm |
重 量 | 235g |
絞りは固定、マニュアルフォーカスの「SZ 300mm PRO Reflex F7.1 MF CF」は、最初は撮影に戸惑うことが多いレンズかもしれませんが、この小型軽量という武器を最大限に活用するのがこのレンズの使い方だと思います。超望遠のピント合わせに関しては、なかなか難しいので慣れるまで扱いに少し手こずるかもしれません。
小型軽量なミラーレンズですが、その構造によって写りに独特な特徴があります。
レンズの正面からみれば、その特徴が発生する理由が分かるのですが、通常のカメラレンズで使用する光学レンズではなく、ミラーを利用して光を収束するレンズです。レンズ内の奥の主鏡で一度反射させ、レンズ中心部にある副鏡に反射して像を収束する構造です。この反射を利用することで、レンズが短い筐体でも望遠レンズを作ることが可能になっています。
このレンズの中心部にある副鏡が、ミラーレンズでの写りの特徴を表す要因になっています。ミラーレンズでは「リングボケ」と言われる独特なボケがあらわれます。名前の通り、点光源などがボケると中空のリング状のボケが発生します。これは副鏡が入射光の中心部を遮っていることが原因になります。
このリングボケが、ミラーレンズの好き嫌いの好みがハッキリするところの一番の要因になっています。ちなみに筆者は、ボケはそのレンズの最大の個性の現れの一つとして考えているので、ミラーレンズの「リングボケ」は大好きなボケの一つです。
ミラーレンズは小さくて軽く、比較的お値段も手頃な価格の超望遠レンズなのですが、ちょっと扱いが難しいレンズでもあります。ほとんどのミラーレンズがそうなのですが、この「SZ 300mm PRO Reflex F7.1 MF CF」はマニュアルフォーカスで絞りも固定です。超望遠レンズのマニュアルフォーカスは、広角レンズや標準レンズをマニュアルフォーカスで扱うのとは違って、ピント合わせが非常にシビアで難しい撮影になります。よって手持ちで撮影するのはかなり難しい事が想定されます。
絞りもF7.1固定なので、絞って被写界深度を少しでも稼ぐことはできません。普段からマニュアルフォーカスを使用していないユーザーには少しハードルが高いポイントになってしまいます。しかし、扱いこなすには少し慣れが必要になりますが、独特なリングボケを楽しんだりできるユニークなレンズです。
SZ 300mm PRO Reflex F7.1 MF CFで小牧基地オープンベース撮影
ちょうど「SZ 300mm PRO Reflex F7.1 MF CF」を入手したタイミングで、愛知県小牧市の小牧基地オープンベースのイベントがあったので、この小さな超望遠で撮影をしてみました。「SZ 300mm PRO Reflex F7.1 MF CF」はAPS-C用のレンズですが、今回はフルサイズミラーレス機のソニー α7R Vに装着し、カメラ側のAPS-Cクロップモードで撮影をしました。α7R Vのボディ手ブレ補正を活用したかったのが選択の理由です。またα7R Vの様な高画素機であれば、APS-Cクロップで撮影しても約2600万画素相当の画素があるので、大きなプリントにも耐えられる画素をキープする事ができます。
撮影当日はあいにくのどんよりした曇り空でコントラストが低い状態だったので、カメラ側の設定で少しコントラストを上げた設定で撮影をしています。久しぶりに450mm(フルサイズ換算)をマニュアルフォーカスで手持ち撮影したので、飛行している状態の航空機にピントを合わせるのにはやはり苦戦しました。
超望遠である「SZ 300mm PRO Reflex F7.1 MF CF」の圧縮効果は、イベント時に人の多さや奥行き感を表現するのに非常に効果を発揮します。「SZ 300mm PRO Reflex F7.1 MF CF」は動きものの撮影には少々難しいレンズですが、撮影の範囲を広げてくれる小型軽量の超望遠レンズです。上着のポケットにもいれて持ち運べるレンズは魅力が詰まっています。
SZ 300mm PRO Reflex F7.1 MF CFで横浜中華街スナップ撮影
人出の多い場所での圧縮効果を狙ったシーンを撮りたかったので、横浜中華街に出向いて撮影をしてみました。下の写真は、「SZ 300mm PRO Reflex F7.1 MF CF」を付けたカメラを頭の上まで持ち上げて少し高い位置からのアングルで撮影しています。小型軽量の「SZ 300mm PRO Reflex F7.1 MF CF」ならではのアングル撮影ではないでしょうか?
通常400mmクラスの望遠レンズの重量は1kgを超えるレンズが多い中、「SZ 300mm PRO Reflex F7.1 MF CF」はレンズ重量235gという超軽量。マニュアルフォーカスなのでピント合わせに注意が必要ですが、両手でカメラを持ち上げてハイアングルでの撮影も楽々こなすことができるレンズです。この撮影方法は、小さくて軽いレンズの魅力ポイントの一つです。
フルサイズ換算で450mmの焦点距離は、見えている世界が肉眼とは大きくかけ離れてくるので、大胆に街中の一部分を切りとって撮影すると面白い撮影をする事ができます。
街中での撮影での注意点として上げるとすれば、細かな要素があるようなシーンで発生するリングボケに関してうるさくも感じる事もあるかもしれません。しかし、それも含めてミラーレンズ「SZ 300mm PRO Reflex F7.1 MF CF」の写りの特徴なので、リングボケを楽しむような被写体を探し構図を考えて撮る事をおすすめします。
SZ 300mm PRO Reflex F7.1 MF CFでリングボケを楽しむ
「SZ 300mm PRO Reflex F7.1 MF CF」で積極的にリングボケを楽しむ様な撮り方をしてみました。撮影場所は都内での桜の名所「千鳥ヶ淵」です。リングボケを多用して春の陽気をイメージするような感じで撮影してみました。全体的に柔らかさを表現するために、カメラ側の設定で「Dレンジオプティマイザー」の設定をLV5にして、シャドー部分が明るくなるような撮り方をしています。
ファインダーを覗きながら、リングボケがどんな感じになるかアングルを少しづつ変えたりして撮影をします。背景になる部分の光の当たり方と、被写体との距離の関係でリングボケの大きさやボケ具合が変わってきます。そういったポイントで被写体を探しながら撮影するのも、この「SZ 300mm PRO Reflex F7.1 MF CF」レンズの楽しみ方の一つだと思います。
まとめ
「SZ 300mm PRO Reflex F7.1 MF CF」は独特の癖のある写りをするレンズなので、好き嫌いの好みがハッキリするレンズかもしれません。個性のあるレンズを求めている人にはおすすめできますが、通常の撮影を好む方には向かないレンズだと感じます。現在発売されている各メーカーのレンズは非常に優秀でオートフォーカスや光学手ブレ補正機構が搭載されたものなど、良く写るレンズがほとんどです。
そんな中、マニュアルフォーカス、絞り固定、手ブレ補正無しの「SZ 300mm PRO Reflex F7.1 MF CF」は、超硬派な個性的なレンズの一つです。人とは少し違った写真表現をしてみたいという方、是非「SZ 300mm PRO Reflex F7.1 MF CF」を使ってみてはいかがでしょうか。
■写真家:坂井田富三
写真小売業界で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ・ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。
・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
・EIZO認定ColorEdgeアンバサダー
・ソニーαアカデミー講師