ライカとカレー。今日はあの駅で降りようか。vol.1|LEICA M10+SUMMARIT M f2.4/50mm
はじめに
ライカ。初めてその名前を聞いたのは、写真家に憧れていた20代前半の頃だったと思う。ロバート・キャパが戦場で撮影した写真を見た時、それを撮ったのがライカというカメラだと知った。それから古いフィルムカメラに興味を持ち、銀座の中古カメラ屋さんを、目をまんまるに輝かせて歩き回った記憶がある。
かっこよくて、高くて、名作をバンバン生み出し、世界の著名人がこぞって愛する、すごいカメラ。
そんな何だか抽象的な言葉の羅列でライカというカメラをモワモワと想像していたのだけれども、いつの日からか、ライカは憧れの象徴として私の心の真ん中にある。ズトンと、ある。
ライカで写真を撮りたい。
ライカを持って旅をしたい。そうずっと思っていた。
そんな私に2020年春、嬉しい知らせが舞い込んだ。
ライカを持って旅に出るというお仕事が決まったのだ。しかも、連載。それならば、旅先でカレーを食べて撮ってくるのはどうですかと提案すると即OKをいただいた。最終的に、毎回異なるライカカメラとレンズを持って、電車に乗って気になる駅で降り、ライカで写真を撮り、カレーを食べて帰ってくるという内容に決まった。
ライカに憧れ、カレーが大好きな私には、たまらなく嬉しい時間になる…に違いない。ああ、神様ありがとうございます。深く感謝。
でも、ライカについては初心者。初めてのことだらけ。知らないことだらけ。記事を書くというのはとても緊張する。毎回、少しずつ学んで行けたらと思う。これを読んで下さっているライカに興味がある皆さん、ライカに興味はあるけれどまだ手にしたことがない皆さんなどなど、ぜひ私と一緒に学びを深めていきましょう。
今回は、連載第一回目。伊豆半島へ。
春の始まりを感じる、3月。では、いざ旅へ。
ライカM10+ズマリット M f2.4/50mmを持って伊豆半島へ
今回の旅のお供をしてくれるのはライカ M10。レンズはズマリットMf2.4/50mm。
ボディの見た目は、スレンダー。他のフルサイズミラーレス一眼に比べてぐっと薄く小さい印象。持った感じは、見た目より重い。手にずっしりとくる感覚。調べてみると、ライカ M10のボディは高強度なマグネシウム合金製のフルメタル、トップカバーとベースプレートは無垢の真鍮から削り出されているそう。ボディ重量660g。納得。
実は、私はズマリットと名の付くライカのレンズを1本持っている。現行で発売されているフルサイズのミラーレス一眼につけて撮影している。だから、ズマリットという名前にはとても馴染みがあるのだけれど、名前の由来は知らない。調べてみると、ズマリットとは、ライカのレンズ群のうちのF1.5~F2.5のレンズの名称を言うのだと知る。その他、ズミルックスはF1.4、ズミクロンはF2、エルマリートはF2.8など、それぞれにつけられた名称がある。
名称をまとめてみると、
・ズミルックス:F1.4
・ズミクロン:F2
・エルマリート:F2.8
・ズマリット:F1.5~F2.5
・エルマー:F2.8~ など
となる。ふむふむ。F値によってレンズの名前があるなんて面白いなあと思う。旅に出る前に家で撮ってみたくなり、モノクロームに設定してシャッターを切る。
カッチッコッ。
ゆっくりとした重みのあるシャッター音。一枚一枚が力強く切り撮られていく感じ。
撮った写真を見てみる。なるほど。柔らかくも、力強くも自由自在。
JPEG設定からモノクロまたはカラーをセレクトでき、さらに、コントラスト・シャープネス・彩度
(カラーの時のみ)の設定で、柔らかくも、力強くも表現は自由にできる。特にこのズマリットは、コントラストに優れた描写が強みなのだそう。
さあ、準備は出来た。行こう。今日の伊豆半島は、晴れの予定。
何故伊豆半島に行くのを決めたかと言うと、大きな青い空と広い海が見たいと思ったから。
東海道線、伊東線に乗ってとことこと
お気に入りのカメラリュックにライカを入れ、JR二宮駅から東海道線に乗り込む。まずは熱海へ。リュックがいつもより軽い。ライカ一台とズマリット、それと、小さいカメラが一台だけなのでとても軽い。いつもはついついレンズを入れ過ぎてしまったりするから。リュックが軽いというのは何だか心がスカッとして気分がいい。そして、ライカを持っているというだけで、少し背筋がピンと伸びている気がする。
車窓に海が見えてくる。
最初は立っている人もいたけれど、一駅ごとに人が少なくなってゆく。どんどんゆったりとした空気になってゆく。
熱海駅で伊東線の伊豆急下田行に乗り込む。進むごとにさらに人が少なくなっていく。車窓には、海と温泉街の景色が流れてゆく。モクモクと蒸気が上がっている。温泉街がこんなに近くにあるなんて。
のんびりだなあ。ゆっくりだなあ。のどかだなあ。
ライカM10は、レンジファインダーである。レンジファインダーとは、はてさて。
まず、ミラーレス一眼の電子ビューファインダーや、一眼レフの光学ファインダーとは異なるものであるということ。ライカ M10のファインダーはガラス製で、覗くとガラスの向こう側の実際の景色がそのまま透けて見える。それは、レンズがとらえている景色とは別のもの。ファインダーを通して目で見ている景色と、レンズが捉えている景色は、光を通している穴が違うと言うこと。
そして、ファインダーの中を覗くと真ん中に小さな四角が見える。よく見ると、その四角の中には二重にずれた画像が見える。レンズの距離計を調整し、二重になっている像をぴったりと重ね合わせると、ピントが合った写真を撮ることが出来る。シャッターボタンを半押ししてピピっとピントを合わせて撮るという便利なピント合わせになれていると初めはちょっともどかしい気もする。でも、慣れくると自分で合わせることこそが面白く思えてくる。
さらに、ファインダーで見ている全景よりも、切り取られる景色は小さい。そのフレーミングは、ファインダー内で白い枠として見える。その枠をブライトフレームと言う。実際は、ファインダーよりも下の位置にレンズがついているので、ブライトフレームの画角と実際に写る画角とは少し差が生じる。レンズごとの視差を覚えて、それを見越して撮影しなければならない。ブライトフレームの大きさは、装着するレンズの焦点距離ごとに変わる。実際に撮れる画角よりも広く見えていえるので、それを理解して撮影するというテクニックが必要。
でも、切り取られる画角よりも外側が見えているので、そこに見えている被写体の動きを把握しやすいと言うのも長所の一つ。ちなみに、シャッターを切ってもファインダー内はブラックアウトしない。真っ暗にならないと言うこと。見ている穴と撮っている穴が違うため、シャッター幕が下りても暗くならないのは当然でもある。ブラックアウトしないので、いつの瞬間もとらえてシャッターを切ることが出来る。
なんだか、ライカM10はいろいろ自分で設定しなくてはいけないことがたくさんある。難しいこともたくさんある。でも、そこが楽しいのだと思う。自分で設定するのが、面白いんだきっと。
ライカと一緒に旅をしているというキラキラときめく心の中とは正反対に、電車が進むごとにぶ厚い雲が広がってどよんとした空になってゆく。晴れの予報だったのに。青い空と青い海が見たいのに。あああ。
今日はあの駅で降りよう
伊豆半島の南の方に行こうというのは決めているけれど、どの駅で降りると言うのはまだ決めていない。Googlemapを開いて先の地図を見ていると、ステキな名前の駅を見つけた。今井浜海岸駅(いまいはまかいがんえき)。その名の通り、海も駅から近いみたい。
決めた。今日はこの駅で降りよう。
小さいけれどもなかなか立派な今井浜海岸駅。駅から続く階段を降りて、海岸の方に歩いていく。国道135号線にはブンブンと車が走っているけれど、歩いている人は一人もいない。今井浜海岸という看板を見つけ、階段を降りる。緑のトンネルをくぐり、海の方に進む。
知らない場所を一人で歩くのはいつだってドキドキする。だって未知なる探検だもの。何が起こるのか分からないので期待と不安が入り混じる。だけど、今日はライカという強力なパートナーと一緒。期待の方が大きい。ああ早く海でシャッターを切りたい。ライカのシャッターを思い切り切りたい。
今井浜海岸にて
着いた。海だ。誰もいない。海だ。でも、空がどんより、している。
どよどとーんとしている。
でも、海を撮ろう。
何枚かシャッターを切る。
ぶ厚い雲の空と、荒々しい海の写真が撮れる。
ううう、そうだよなあ。どよんとしているものは、どよんと写るよなあ。
曇りの景色も美しいけれど、でも、楽しみにしていた連載の第一回目だから、晴れた青い空と青い海が撮りたかったなあ…とトボトボ歩いていると海水の水溜まりに足が浸かる。ポチャッ。ああ、やだ、空がどよんとしていてさらに水溜まりに足まで浸かっちゃってブーツがびっしょり…お気に入りのブーツなのに…もう…え、水溜まり。水溜まり。あ、そうだ。やった、水溜まり。嬉しい!
そう、空を水溜まりに写してリフレクションを利用した写真を撮ろう。
砂浜に近い位置にカメラを下ろし、ピントを無限遠にしてシャッターを切る。
ファインダーも覗けないし、液晶も見えないので、勘で位置を決めてシャッターを切る。切る。切る。切る。画像を確認する。切る。切る。切る。楽しい。切る。切る。楽しい。
リフレクションで水溜まりに写ったぶ厚い空の雲は、線対称に上下に写っている。きれいだ。雲があって良かった。どよんとした雲が、この写真の主役だ。遠くに利島(としま)が見える。小さな二等辺三角形で真ん中にぽつんとかわいらしく写っていている。私、この写真好きだ。うん、好き。ライカを持って旅をして、初めてこの写真が好きだと思える写真が撮れた。ああ嬉しいなあ、そんなことを思いながら、再び同じ構図で撮っていると、どこからともなく人の声が聞こえる。
さっきまで人っ子一人見えなかった海に、人がいる。しかも、親子連れ、三人。しかも、もうすぐ、フレーミングした中に入ってくるじゃない。
私の心臓はドキドキを加速させてドッキンドッキンとなり始める。
だって、このフレーミングの中に人が入ったらそれは絶対に美しいはずだから。
ドッキンドッキンドッキンドッキン
きた。フレームイン。切る。切る。切る。切る。切る。フレームアウト。
画像を確認する。再生ボタンを押す。
撮った写真を見て思った。ありがとう、って。
そう。いつだって、どんなときだって、その時の状況を味方につけていくことが大切。このぶ厚いどよんとした雲は、この写真を撮るためにいてくれたのね。そう思う。
さっきは晴れていたらなんて思ってしまってごめんなさい。ああ、好きな写真が撮れた。嬉しい。
カラーも撮ってみる。
カラーも好きだ。
カラーにすると、急に爽やかでエアリーな風が吹くから不思議。カメラを持ち上げると、液晶画面にキラキラとした光が見えた。
無限遠のままにしているので空にピントが合っていて、太陽の光を受けた近くの砂が光って玉ボケで写った。偶然見つけた世界の美しさに、思わず笑顔になった。人がいないから、波が作り出す砂浜の造形もそのまま残っていて美しかった。
キラキラと輝く玉ボケを液晶で確認しながら、今日ここに来て良かった、そう思った。
そう思いながら水溜まりを見ていたら、大きな波がザザーっとやって来て、一瞬で水溜まりを飲み込んだ。そして、水溜まりは消えた。跡形もなく。
河津へ
今井浜海岸駅の一つ南は、河津駅。あの河津桜で有名な河津だ。3月だけれど、もしかしたらまだ河津桜が咲いているかも知れない。淡い期待を持ちつつ、歩いて河津駅に向かう。
海岸沿いの道を歩く。歩道の崖の下はザバーンと荒々しく波がたっているのが見えるなかなかワイルドなお散歩道。ウグイスが目の前をビュンと横切る。1羽、2羽、3羽。ヒヨドリも横切る。ウグイスがホーホケキョと鳴く。ヒヨドリがピチピチと鳴く。なんてのどかなのだろう。
ススキとお月様。
と見せかけて、お月様に見えるのは実は街灯。ちょっと遊んでみたり。
河津の町で
海に鳥に見とれていたら、あっと言う間に河津駅に到着。閑散としていて、人はまばら。
河津桜は一体どこに咲いているのだろう。
しばらく駅の周りを歩いていると、河津桜並木と書かれた看板を発見。ふむふむ、その先にあるのは河津川で、その周りが河津桜の並木道なのね。歩いていくと、あった。ふさふさに葉を茂らせた河津桜の並木が。見事な葉桜。河津桜は、見事に散り終えていた。やっぱり。
でも、ここで諦めないわよ。きっと、どこかにまだ咲いているはず。少しでもいいから咲いている桜を撮りたい。そう思いながら川沿いをうろうろと歩いてみる。首を伸ばして、少し先まで眺めてみる。
あ、
あった。ピンク色。
きっと桜だ。
あそこに行こう。
足が自然に速く動く。あれは桜なのだろうか。
桜だったら、撮れる場所にあるのだろうか。
吸い寄せられるように向かった場所には、河津桜の木が一本あった。ピンク色の花びらをいっぱい抱えて。
川沿いの歩道の脇にどんと立っている桜の木の下で、無我夢中になりながら私はシャッターを切った。ズマリットMf2.4/50mmの最短撮影距離は80cm。レンズに近い桜の花がトロリと美しい前ボケになる。たくさんシャッターを切っていたら、雲間から青空が見えてきた。そして、どんどん青が広がっていって最後には雲一つない青空になった。ウグイスが飛んできた。1羽、2羽。しばらくして青空の中に飛んで消えて行った。
なんて美しい色。なんて嬉しいの。
さあ、カレーを食べて帰ろう
好きだと思える写真が撮れたし、美しい河津桜も撮れた。さあ、カレーを食べて帰ろう。河津駅周辺で美味しそうなカレーが食べられるお店を探してみる。でも、歩いても、ネットで検索しても、全く見つからない。うう、これはしょうがない。移動しよう。お腹も減ったし、まずは帰る方向の電車に乗って、それから考えよう。
とりあえず飛び乗った伊豆急行線の中でGoogle検索をする。マップで伊豆半島の右側部分を表示して、カレーと入力して検索すると、10件くらいのカレー屋さんが出てきた。この中から行きたいカレー屋さんを探してみよう。
いくつかの候補の中で、出来るだけ駅から近くて気になるカレーを探す。インドカレー屋さん、老舗の洋食屋さん、とんかつ屋さん、いろいろなカレーがあるのだなあ。迷ったけれど、
野菜を自家栽培しているというお店が気になった。今日開いているか電話をしてみる。電話口では、はい、やっていますよ~と明るい女性の声が聞こえた。「やさい料理の台所むーみんの森」という可愛らしい名前のお店。
ここにしよう。
窓の外には、大きな青い空と広い海が広がっている。そう、これが見たかったんだ。
こんなにかわいい駅の看板も。
まさかの道
そのカフェは、地図を見ると富戸駅と城ケ崎海岸駅のちょうど真ん中あたりにあって、でも若干富戸駅から近そうに見えたので、富戸駅でえいっと降りてみる。駅で降りたのは私一人。駅の周りにも誰もいない、小さな駅。Google mapを開いて検索すると、お店まで2kmちょっとと出てきた。
え、2km。地図上では近く見えたのに。こんなにお腹も空いているのに。これから2kmも歩くの。
2kmなんて普通に考えたら大したことのない距離。30分少々で歩くことができる。熊野古道を300km歩いた経験もあるので、2kmを歩くことなんてたやすい御用。でもそれは、歩くと決めた旅の中でならの話。歩くことなんて考えていないのに、カレーを食べるために2km歩きますか?と突然言われたら、あなたならどうする?
でも、電車も降りてしまった。次の電車までは30分もある。もちろんタクシーもいない。仕方がない、歩こう。
まず最初に坂道を上りましょうとGoogleさんが言ってくる。しょうがない、登りましょう。てくてく。てくてく。この道を左に曲がって、さらに坂を上りましょうとGoogleさんが言ってくる。はあ、しょうがない、登りましょう。てくてく。てくてく。この道をまっすぐ進んで、さらに坂を上って行きましょう。えええ、また坂道ですか。てくてく。てくてく。っていうか、どこまで登るのでしょうか、一体。ねえ、Googleさん。
結局、2kmの道のりの大体は上りの坂道だった。山の中の熊野古道のような細くて誰もいない道も度々あり、ドキドキの連続だった。そう、選んだお店は伊豆高原の高台にあったのだ。
予想していなかった高低差の坂を上り続け、くたくた汗だくになりながら、やっとの思いでお店にたどり着く。お店のドアをくぐった時は、やり切った達成感でいっぱいだった。
やっとカレーが食べられる
テラス席に座り、カレーが3種ついてくるセットを頼む。
待っている間、風が木々の葉をさらさらと揺らすのを見ていた。ああ、やっとカレーが食べられる。
しばらくすると、お茶とサラダが運ばれてきた。さらにしばらくすると、カレーが運ばれてきた。
どん。どん。どーーん。
びっくりするくらいの大きなプレートに載ってカレーがやってきた。思っていた以上に野菜がボリューミーに載っている。
す、す、すごいですねえ。
思わずお店の方に声をかける。
お店のオーナーらしい女性が、ゆっくりどうぞーとにっこり微笑む。
とにかく野菜のボリューミーさに感激して、気づくとそっちをメインにたくさん撮っていた。ケール、フェンネル、ルッコラ、パクチー、ニンジンの葉、かぼちゃ、などなど。さらにはルッコラのお花が可愛らしく載っている。食べてみると、しっかりとした歯ごたえと香りがあって、美味しい。このプレートにのっている野菜は全て食べることができ、そして、全て無農薬で自家栽培しているというから驚くばかり。
カレーは、グリーンカレー(辛口)、パキスタンカレー(中辛口)、ポークカレー(甘口)の3種。どのカレーもコクが深くて、しっかりとした甘みがある。野菜もたっぷりなので、食べ応えは抜群。私はパキスタンカレーが一番のお気に入り。フルーツの香りがするなあ何だろうと思ってお店の方に聞くと、りんごやマーマレードが入っていますとニコリ。水は入れず水分は野菜からのもので、ハチミツで甘みを出しているそう。こだわりがたくさん詰まった丁寧に作られたカレー。
自家栽培の畑は、今年さらに大きく広げる予定とのこと。写真を見せていただくと、整頓された畑はとても美しく、ここで育つ野菜たちは幸せだろうなあと思った。「無農薬だから、最初からしっかり作らないとすぐ虫が着いちゃうから。」とオーナーの鈴木敦子さん。お店のカウンターには、先ほどいただいたルッコラのお花が飾られていた。
ちなみにお店の名前の「むーみん」は飼っていたウサギの名前で、あのムーミンとは関係はないそう。
すっかりゆっくりさせていただいて、お話も聞いて、facebookでもお友達になって、お店を後にする。なんだかいい時間だったなあ。2km坂道を上ったけれど来てよかったなあ、そう思った。
帰りは、迷ったもう一つの城ヶ崎海岸駅を選択。大きな緩い坂道を下って行くという、とっても楽な道だった。こっちの駅から来たら楽だったのに…。いや、そんなことはもう考えない。素敵な時間を過ごせたから、もういいの。
城ヶ崎海岸駅から伊東線に乗り込む。車内は人が、1人、2人。ボックス席の進行方向に座る。静かに走り出す。
今日は結構歩いたなあ。どのくらい歩いたかなと、携帯の歩数計をチェックしてみる。約14km、20,000歩。ああやっぱり。良く歩きました。撮った枚数も見てみる。約450枚。いつもの旅の撮影枚数に比べたら、衝撃的に少ない。多分、1/5くらいの枚数だと思う。それだけ、一枚ずつしっかり撮ろうと意識を集中させていたのだと思う。
窓の外には、大きな青い空と広い海が広がっている。そう、これが見たかったんだ。
あたたかい光が射す車内でいつの間にかうとうとと眠りこんでいた。ライカM10をしっかり抱えながら。
おわりに
初めてのライカとの旅が終わった。改めて、ライカと言うカメラの底知れぬ魅力を感じる旅になった。
だって、あっちもこっちも自分で設定しないと撮れないという大変なことばかりなのだけど、ライカを持っているというだけで何だか誇らしい気分になる。そして、背筋がピンと伸びたような気がする。
さらには、ちょっと違う自分になれたような気分にもなっている。撮り終えた後、自分で頑張って設定して撮った写真を見返すと、なんだかとても満足な気分になるのだ。あそこで、ああ思ったから、こんな写真を、こんな風に撮ったんだ。そんな記憶がものすごくはっきりと残っている。体中に、心いっぱいに、ジンジンと音が聞こえそうなくらい強く残っている。ライカと旅をすると、撮った時の記憶が鮮明に残る、そう思う。
だからまたライカで撮ってみたい、ライカと一緒に旅をしたいと思う。
少しずつ学びながら、いろいろなライカを楽しんでいきたい。次の旅も楽しみだ。
次はあの駅で降りようか。
■「やさい料理の台所むーみんの森」
住所:静岡県伊東市富戸1095-184
TEL:0557-51-4765
HP:https://asian-restaurant-451.business.site/