【オールドレンズ】ライカの味わいを感じるスタンダードレンズ「Leica SUMMICRON-R 50mm F2」
はじめに
今回のオールドレンズのセレクトは、「Leica SUMMICRON-R 50mm F2」です。各種あるズミクロンの中でも比較的お安く購入できるRマウントのズミクロンです。
以前の「ELMARIT-R 35mm F2.8」の記事でも書きましたが、ライカRマウントレンズの人気が薄いのは、ライカRマウントを採用するライカの一眼レフカメラの「ライカフレックス」・「R」シリーズ自体が、ライカのレンジファインダーのMシリーズよりも市場での人気が薄いところに起因しています。
「Leica SUMMICRON-R 50mm F2」は、Mマウントのズミクロンよりもお手頃な価格で購入できる魅力あるレンズです。そんな「Leica SUMMICRON-R 50mm F2」の特徴とその写りを紹介いたします。
Leica SUMMICRON-R 50mm F2の魅力
ライカRマウントのオールドレンズを検討する際に必ず出てくるのが「カム」や「ROM」の言葉。以前の記事でも書きましたが、あらためて少し解説します。この「カム」や「ROM」はレンズのデータをライカの「R」ボディに伝える手段で「1カム」、「2カム」、「3カム」、「R-Only」、「ROM」の種類があります。フイルム一眼レフの「ライカフレックス」・ライカ「R」ボディを使用する場合には、注意が必要になってきますが、マウントアダプターを使用してミラーレス機で使用する場合はどのタイプでも問題にはなりません。
ライカRマウントのレンズの種類によって発売年が少し変わってきますが、概ね下記の年からタイプが変更されています。
「1カム」レンズ 1965年~
「2カム」レンズ 1968年~
「3カム」レンズ 1976年~
「R-Only」レンズ 1986年~
「ROM」レンズ 1997年~
今回撮影に使用したのは、筆者が所有している「Leica SUMMICRON-R 50mm F2」2カムタイプのレンズになります。この「Leica SUMMICRON-R 50mm F2」は、「1カム」の当初から「ROM」まで常にラインナップされた定番レンズです。
「Leica SUMMICRON-R 50mm F2」の基本的なスペックは、
・焦点距離:50mm
・最短撮影距離:0.5m
・絞り開放:F2
・レンズ構成:4群6枚
・絞り羽根枚数:6枚
・フィルター径:55mm
・マウント:ライカRマウント
この「Leica SUMMICRON-R 50mm F2」も「ELMARIT-R 35mm F2.8」同様にレンズの重さがずっしりとしていますが、「ELMARIT-R 35mm F2.8」よりは少し軽く全長も短くなります。
フードを単体で入手しようとするとライカ製は高価なので、レンズを入手する際にはフードもセットになった個体を入手することをおすすめします。
今回使用したマウントアダプターは、「TECHART LM-EA7」と「K&F Concept Leica L/R-L/M」を合わせて使用し撮影をしています。この「TECHART LM-EA7」は、マニュアルのオールドレンズをオートフォーカスとして使用できる便利なマウントアダプターです。ただこのマウントアダプター「TECHART LM-EA7」のオートフォーカスの挙動に関しては制限があり、重量500gを超えるレンズに使用する場合、動作不良や正常に駆動しない場合があります。
それから「Leica SUMMICRON-R 50mm F2」では、ピント合わせの為のレンズの繰り出しが「TECHART LM-EA7」では対応できない量なので、完全にオートフォーカスで使用する事はできません。マニュアルフォーカスの補助的な使い方で今回は使用しています。
Leica SUMMICRON-R 50mm F2で房総のむらをスナップ撮影
「Leica SUMMICRON-R 50mm F2」を持って、千葉県印旛郡にある「千葉県立房総のむら」で撮影をしてみました。この施設は武家・商家・農家などを展示している場所で、筆者がよく訪れる場所です。
今回の撮影では「Leica SUMMICRON-R 50mm F2」の特性を見るために、ほとんどは絞りを開けて撮影をしていますが、下の写真はしっかりと絞って撮影した写真になります。当たり前ですが、しっかりと絞りを絞って撮影したものは、周辺までしっかりと解像しています。
絞りを開けて撮影した場合には中心部はシャープに解像していますが、周辺部は滲みが発生し甘くなります。建物などの風景を撮影する場合は、絞って撮影した方が賢明です。
「Leica SUMMICRON-R 50mm F2」は最短撮影距離が0.50mで、このクラスでは標準的な感じです。気になった被写体を少しアップ気味で撮るのには十分なレベルです。また最短撮影距離で絞りを開放で撮影すれば、前後に大きなボケが発生し深みのある立体感を演出してくれます。
あえて強い太陽光を入れて、盛大なゴーストが出る状態で撮影してみました。背景の玉ボケもあいまって面白い表現ができました。こういった写真はオールドレンズならでは楽しみ方です。
Leica SUMMICRON-R 50mm F2 都内でスナップ撮影
撮影場所を変えて都内でスナップ撮影をしてみましたが、ボケの処理には少し注意した方が良さそうです。都会風景スナップでは、絞りを開けて撮影した場合の二線ボケが気になる場合が多く発生します。電線などが背景に入ってくるような場合や、直線基調な背景の場合は少しだけ絞りを絞って撮影した方がよいでしょう。
陽当りのいい場所や、明るめの場所では程よいライトな雰囲気で撮影ができる「Leica SUMMICRON-R 50mm F2」ですが、シャドウ部が画面に多く入ってくる場合や原色の派手な色が入ってくると、その描写はとても濃厚な描写に変わります。個人的には、この濃厚な発色と質感がとても気に入っています。
まとめ
「Leica SUMMICRON-R 50mm F2」の写りは、撮り方によってライトな感じでも重厚な感じでも撮れるレンズです。前回、初めてのライカオールドレンズにおすすめという事で「ELMARIT-R 35mm F2.8」を紹介しましたが、「Leica SUMMICRON-R 50mm F2」も同様におすすめできるレンズです。
ライカの標準スタンダードレンズの「ズミクロン」は、50mmの標準レンズがゆえに市場での流通も多く、Rマウントレンズはお手頃に購入できる個体も多い状態です。「Leica SUMMICRON-R 50mm F2」は現代のレンズに比べ劣る部分も多いですが、それも含めてオールドレンズの味わいであり個性です。その個性を活かした撮影ができればとても素敵な撮影ライフが送れるのではないでしょうか。ズミクロンはそんな魅力を持ったレンズです。
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■写真家:坂井田富三
写真小売業会で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。 撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ、ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。
・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
・日本風景写真家協会 会員
・NPO法人 フォトカルチャー倶楽部 参事
・一般社団法人 日本フォトコンテスト協会 理事
・一般社団法人 日本写真講師協会 理事
・ソニーαアカデミー講師
・クラブツーリズム写真撮影の旅・ツアー講師