ニコン AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED レビュー|マクロレンズで自分らしく食べ物を撮ってみよう

水咲奈々

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はじめに

 外に行かなくても、家の中でも撮影は楽しむことができます。今回は、マクロレンズの使い方とともに、自分らしく身近な食べ物を撮る方法をレクチャーします。カメラはニコンZ 6、レンズは「AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED」にFTZアダプターを装着して使用しました。ニコンのマクロレンズは正式には「マイクロレンズ」と表記されますが、ここでは一般的な「マクロ」の名称を使用してお話します。

それが何かなんて、わからなくていい

01_ニコン Z6_AF-S Micro NIKKOR 60mm f28G EDで撮影した写真.jpg
■撮影機材:ニコン Z 6 + FTZ + AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED
■撮影環境:絞り開放(有効F値:F4.8) 1/60秒 +1EV ISO100 WB:5000K
■ピクチャーコントロール:ポートレート 三脚使用

 今回のテーマは、食べ物をいかにおいしそうに撮ることや、どんな料理かが分かるように撮ることではありません。自分らしく撮ることです。お店のメニューに載せる写真を頼まれて撮る場合はそうはいきませんが、家で遊びで撮るのなら、いっそ何の食べ物かわからないくらい、自分好みの写真に仕上げてしまいましょう!

 こちらは何かわかりますか? 正解はご飯です。炊き立てのご飯を、スプーン大さじ1杯分くらい、お皿に山盛りにして撮影しました。マクロレンズは被写体にくっ付くくらいまで近付けるので、主役の被写体以外のお皿や背景をぐっとボカして、存在感を無くすことができます。

 今回使用している「AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED」は、ニコンFマウントのマクロレンズです。焦点距離は60mmで、開放絞りはF2.8、絞り羽根枚数は9枚で円形絞りを採用しているので、光源の丸ボケの美しさはもちろん、滑らかで優しいボケ味が特徴的な、筆者イチオシのマクロレンズです。グラデーションを綺麗に描き出してくれるレンズなので、作例のような優しい白色も繊細に描写しています。

 いざ自宅で撮影するとなると、撮影するスペースがない、片付けをしなくちゃいけないと躊躇されるかも知れませんが、マクロレンズなら、30cm四方の小さなテーブルを窓際に置いて、小型な三脚にカメラを設置したら、すぐに撮影が始められます。特に今回は、被写体にぐっと近付いて撮ることをメインとしていますので、撮影スペースは1m以下で十分です。

 作例は、白いご飯に透明感を感じたので、窓辺でカーテンを開けて強い逆光の状態にし、一番手前の立っているご飯にピントを合わせて、絞りを開放にし、その他のご飯と背景を明るく、そして大きくボカしました。

 画面内を明るい白と、影の部分のグレーの2色で抑えることで、構図全体にまとまりが出ます。この被写体がご飯かがわかることなんてどうでも良くて、なんとなくふんわりと優しい写真にしたいと思って撮りました。

ムードを変えて遊ぼう

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■撮影機材:ニコン Z 6 + FTZ + AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED
■撮影環境:絞り開放(有効F値:F4.8) 1/60秒 -1EV ISO100 WB:5000K
■クリエイティブピクチャーコントロール:ソンバー 三脚使用
03_お米を俯瞰的に撮影した画像.jpg
■F8で撮影

 こちらも先ほどと同じご飯を撮影しました。盛り方も変えていない、そのままです。ただ、お皿を回して違う方向から撮影しました。先ほどのふんわりご飯はサンゴのようなイメージだったのですが、こちらは露出を落としてシックにして、山のようなイメージで撮ってみました。

 逆光の状態で撮っているので、ご飯の上のほうは光が当たってテカり、手前側は暗く影になっています。通常ならレフ板を使う場合や、ストロボを使って手前の暗い部分を明るくするところなのですが、黒、白、青の3色グラデーションが面白かったので、あえて黒い部分がしっかりと暗くなるアンダー露出にしました。美味しそうに見えるかなんて、まったく考えていません。いかに自分好みに仕上げるかだけを考えています。

 ここで「AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED」のレンズについて、豆知識をひとつ。本レンズの開放F値はF2.8ですが、被写体に近付くにつれてカメラに表示されるF値の数字が大きくなります。これは有効F値といって、被写体とレンズの距離が近くなるのに従って、像の明るさがF2.8から減少して、実際のF値が大きく表示されます。

 ですので、開放で撮影しているはずなのに、表示されているF値がF2.8よりも大きくなっているときは、まずは絞りが開放かを確認したほうがいいですが、どんなにダイヤルを回しても数字が小さくならないときは、開放でちゃんと撮影できていますので、安心してください。この記事の作例キャプションも、絞り開放で撮影している場合はその旨と、EXIF情報に表示される有効F値の両方を記載しています。

何を撮るか迷ったら果物がオススメ

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■撮影機材:ニコン Z 6 + FTZ + AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED
■撮影環境:絞り開放(有効F値:F4.8) 1/60秒 +1EV ISO100 WB:5000K
■クリエイティブピクチャーコントロール:ポップ 三脚使用

 いざ、身近な食べ物をといわれても、何を撮っていいか思いつかない…そんなときは果物がお勧めです。どこからどんなふうに撮っても、画になりやすいです。

 また、撮り方で迷った場合は、逆光か半逆光の状態で、被写体と同じ高さかちょっと高いくらいの位置から、絞りを開放にして、構図の80%以上を被写体が占めるように近付いて撮影してみましょう。

 明るさは見た目よりもぐっと明るくなるように露出を調整して、画づくり設定は、鮮やかさを強調できるようなビビッド系を使用すると、果物の明るいイメージを表現しやすいです。

 被写体の置き方ですが、真横に配置するよりも斜めに配置したほうが、自分から近い部分と遠い部分ができるので、被写体だけで奥行き感を表現できます。その配置も、少し回したり前後させたりと、カメラの背面液晶を見ながら微調整をすると、意外な方向からの視点が美しかったりと新たな発見がありますので、三脚を使用して、カメラをいちいち上げたり下ろしたりしないで調整できると、とても撮影がしやすいです。

ピント位置は自分が魅力を感じたところに

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■撮影機材:ニコン Z 6 + FTZ + AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED
■撮影環境:絞り開放(有効F値:F4.8) 1/60秒 +0.3EV ISO200 WB:5000K
■クリエイティブピクチャーコントロール:ドリーム 三脚使用

 ピントの位置は、まずは自分が美しい、可愛らしい、面白いと思ったところにしましょう。作例は卵ですが、黄身と白身の間に気泡ができていたので、そこにピントを合わせました。光の状態は逆光で、かなり低い位置から撮影しています。

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■撮影機材:ニコン Z 6 + FTZ + AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED
■撮影環境:絞り開放(有効F値:F3.8) 1/60秒 ISO100 WB:5000K
■ピクチャーコントロール:ビビッド 三脚使用

 こちらも同じ卵ですが、半逆光になる位置に自分が移動して、黄身の盛り上がった部分の一番上にある小さな気泡に目が行ったので、そちらにピントを合わせました。同じ卵ですが、先ほどの作例よりも黄身が盛り上がって見えますね。

 Z 6の設定は静物を撮るシングルAFサーボで、AFエリアモードは一番小さいピンポイントAFを使用して、背面液晶を見ながら任意の個所をタッチして、AFポイントを移動させています。

 FTZアダプターを使用すると、AFの精度が落ちるのではないかという質問も良く受けるのですが、筆者は暗い水族館で、動き回る小さな魚をZ 6とFTZアダプター、今回使用した「AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED」のセットで問題なく撮影しています。ですので、今回のような明るくて動かない被写体は、微塵も心配せずに撮影できます。

ピント位置違いを撮ると新鮮な発見が!

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■撮影機材:ニコン Z 6 + FTZ + AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED
■撮影環境:絞り開放(有効F値:F4.8) 1/60秒 +0.7EV ISO200 WB:5000K
■クリエイティブピクチャーコントロール:サンデー 三脚使用

 被写体によっては、切った断面図の撮影も楽しいです。ここでも綺麗に切る必要はありません。多少ギザギザしても、光の乱反射が面白くなるかも知れません。細かく考えずに、気軽にセッティングと撮影をしましょう。

 また、せっかくセッティングしたのですから、一枚撮って終わりではなく、ピントの位置を好みの場所、カメラに一番近い目立つところ、その奥の目立つところ、またのその奥の目立つところというように、3~4ヶ所変えてみると、写真のイメージがガラッと変わるので新鮮ですよ。

柔らかい食材はふんわり仕上げてみよう

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■撮影機材:ニコン Z 6 + FTZ + AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED
■撮影環境:絞り開放(有効F値:F4.8) 1/60秒 +0.3EV ISO100 WB:5000K 
■ピクチャーコントロール:ポートレート 三脚使用

 さて、これはなんでしょう? 正解は生ハムです。2枚の生ハムを、波打つようにお皿に置いて撮影しました。マクロレンズの楽しさは、どこまでも近付けることです。被写体が何だかわからなくなるくらいまで、ぐぐっと近付いてみましょう。

 色々な撮影パターンで撮れるようになったら、今度は色味にもこだわってみましょう。被写体が食べ物ですと、ビビッド系の色味が鮮やかで美味しそうに見えるため、鮮やか系の画づくり設定の使用が多くなりがちですが、淡い色合いや、触って柔らかい食べ物は、ふんわりと優しい画づくり設定が似合います。

 作例はピクチャーコントロールのポートレートを使用して、スタンダードよりも優しい輪郭、淡い色合いに仕上げました。いつ、どんなものを撮ってもビビッドばかり使用してしまう方は、ぜひポートレートやニュートラルを使用した、ふんわり食べ物写真にもチャレンジしてみてください!

白いお皿でレフ板効果

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■撮影機材:ニコン Z 6 + FTZ + AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED
■撮影環境:絞り開放(有効F値:F4.2) 1/60秒 +1EV ISO200 WB:5000K
■ピクチャーコントロール:スタンダード 三脚使用

 これまでの作例はすべて、ベランダの窓辺でカーテンを開けて、自然光のみで撮影しています。背景は窓の向こう側のベランダになりますが、ボケさせて、さらに白とびさせているので、この作例を見ただけでは、どんなベランダかはわからないと思います。自宅撮影だと、室内やそこからの景色が写り込んで、プライベートな情報の流出が心配な方もいらっしゃると思いますが、この撮り方なら、その心配は無用です。

 また、逆光の撮影で起こりやすいゴーストやフレアなどの現象も、本レンズはナノクリスタルコートを配合しているので、低減してくれています。余計なことに気を取られずに撮影できるのはありがたいですね。

 レフ板は使用してもいいのですが、お持ちでない方もいらっしゃると思いますので、なくても撮影できる方法でお話ししました。ただ、レフ板替わりに白いお皿を使用しています。お皿はほとんど写り込まないのでどんな物でもいいですし、逆に柄を写し込ませたい場合は、お好みのお皿を使って頂いていいのですが、特に意図がないときは、柄のない真っ白なお皿を使用すると、下からの光の反射を利用できます。特に、作例のピーマンのような丸い被写体は、多方向から光を浴びることによって、陰影が出て格好良くなります。

でこぼこのある被写体はモノクロも似合う!

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■撮影機材:ニコン Z 6 + FTZ + AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED
■撮影環境:絞り開放(有効F値:F4.8) 1/60秒 -0.7EV ISO200 WB:5000K 
■ピクチャーコントロール:モノクローム 三脚使用

 こちらも、上の作例で使用したのと同じピーマンです。ピーマンの不規則なでこぼこと、そこに当たる光の質感に惹かれてモノクロで撮影してみたところ、筆者の好みにぴったりでした。手前の暗い部分は、引き締まった黒になるように、露出をアンダーにしています。

 カラフルも、シックも、可愛らしくも、格好良くも、被写体の食べ物をどのように仕上げるかは自分次第です。お家でも、マクロレンズが一本あれば楽しく撮影ができます。ぜひ、自分好みのフード・フォトを作り出してください。

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