ネイチャースナップのすすめ|初冬の湖畔で宝探し
はじめに
一年の半分が冬のような北海道。とくに雪の少ない道東では紅葉が終わり、雪が積もるまでの期間は意外とめぼしい被写体が少なくなるのですが、気温がマイナス10℃くらいになってくると、水辺の変化が楽しい時期となります。今回は初冬の湖畔でネイチャースナップしてみたので、そのときに気をつけていた撮影ポイントを解説していきたいと思います。
初冬の湖畔はタイミング勝負
気温が氷点下になり始めると、湖畔では景色がどんどん変わります。冷え始めのときは湖畔に近い木々や草に飛沫氷ができるようになります。凪いだ水深の浅いところでは薄い氷もはり、さらに冷えると湖面がどんどん凍っていき、ついに全面凍結となります。その後、雪が積もれば湖面は白く雪に覆われ、安定した景色に変わっていきます。
このような変化は日々の気温や風の具合などによって変わるので、現場に行ってみないことにはどうなっているか分かりません。なので、気温が下がり始めると、あちこちの水辺の様子が気になります。やっと凍ったなぁと思った翌日に雪が降ってしまうことなどもあり、気に入った景色に会えるかは運次第というところです。
氷のデザイン
この時期に一番楽しみにしているのが氷です。北海道では12月にもなると真冬日ということも珍しくないので、日中でも探すことができますが、暖かいところでは朝限定となってしまうでしょう。
氷はできる場所によってデザインがさまざまで、ひとつとして同じ形はないので一期一会の被写体ともいえます。湖畔をゆっくり歩きながら、美しい氷ができていないかを探すのは、まさに宝探しをしているかのようです。
氷は立体的なものや平面的なものなどさまざまです。基本的にはなるべく全体にピントを合わせたいので、平面的なものでは真上に近い角度から撮影すると全体にピントを合わせやすいです。立体的なものはある程度絞り込むことも必要になってきます。日影など暗い場所も多いので、必要であれば三脚を使うことも多いです。
映り込みをアクセントに
氷はアップ系の切り取りになりやすいので、それだけだと変化に乏しい感じです。湖畔にできた氷であれば、氷や水面に映り込む景色を利用すると、周りの様子を感じられる絵作りが可能になります。
カッチリと風景的に周りの様子をパンフォーカスで見せようとすると、かなり絞り込む必要があったり、広角レンズで撮るなど制約がでてきますが、映り込みだとぼけていても雰囲気さえ伝われば十分ですから、望遠レンズやマクロレンズでも変化を付けられます。切り取りながら周りの様子も伝えるようにすれば、作品のバリエーションも広がります。
いきものの気配を感じてみる
私のテーマである「いのちの景色」では、いきものの姿が写っていなくても、いきものがイメージできればいいと思っています。もちろん、大きな風景もいのちの集合体ですが、よりこまかな部分も見せられたらと思っています。
北海道はいきものの密度も高いので、よく見ていると姿はなくても足跡とか抜け毛とか、いきものの痕跡を見つけることも多いです。また植物の姿もいのちのひとつの形ですから、気持を広く持つことで、いろいろなものが見えてきます。そんなシーンも見逃さず、こまめに拾っていくと面白いです。
光と影
氷は日影の青い光で撮影するのもきれいですが、直接当たる光を利用することできらめきや透明感を演出できます。また、雪景色になってくると、曇天のようなフラットな光線状態ではベタッとして立体感も質感も出しにくくなるので、光と影を利用することが魅力的な作品に仕上げるポイントとなります。
冬になると太陽は低く、日照があれば影も長く出てくるので、立体感も表現しやすくなります。山の近くや谷間では、光が山に遮られて光を利用できる時間帯も限られてしまうので、太陽の動きを考えて行動することも必要になります。朝や夕方は開けた場所、日中は光の射し込む場所を意識して撮影するようにすると、効果的に光や影を利用できます。
まとめ
一見地味な初冬の景色も、いろいろなところに視点を向けるようにすると、たくさんの被写体を見つけることができます。大きな景色を捉えたら細部に視点を向けていく基本を忘れずに、ゆっくり景色の声を聞くようにしてみましょう。冬は日照時間も短くなるので、一日であちこちを回るような撮影プランよりも、一カ所に半日は腰を据えるようにした方が、いろいろなものが見えてきますよ。
■自然写真家:小林義明
1969年東京生まれ。自然の優しさを捉えた作品を得意とする。現在は北海道に住み、ゆっくりとしずかに自然を見つめながら「いのちの景色」をテーマに撮影。カメラメーカーの写真教室講師などのほか、自主的な勉強会なども開催し自分の視点で撮影できるアマチュアカメラマンの育成も行っている。