ニコン NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S レビュー|待ち焦がれた超広角ズームはモンスターレンズだった!

三井公一

ニコン NIKKOR Z 14-24mm f28 S製品画像.JPG

はじめに

 ついにニコンZマウントに待望の超広角ズームレンズが登場した。この「NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S」は、ニコンFマウント時代の銘レンズ「AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED」を上回る描写特性を持ち、なおかつ軽量コンパクトに仕上げたモンスター超広角ズームレンズだった。

「神レンズ」の系譜がようやくニコンZマウントに

 ニコンZユーザー待望の超広角ズームレンズ「NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S」は、F2.8通しの明るくて高性能な1本だ。2019年4月に発売された「NIKKOR Z 14-30mm f/4 S」というレンズを使っている人も多いだろう。このレンズも軽量コンパクトかつ円形フィルターが装着可能で、描写も素晴らしいものがあった。しかしF4通しとやや暗いのである。「NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S」や「NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S」が続々と発売されて「F2.8」通しの「14-24mm」を熱望するユーザーが多かった。それがようやくこのレンズで叶ったのである。

 ニコンの超広角ズームレンズといえば誉れ高き「AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED」を思い浮かべるだろう。2007年11月30日発売のニコンFマウントのレンズだが、筆者も「ニコンD3」と「AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED」と発売日に同時に購入して愛用していた。このレンズの描写はとても素晴らしく、マウントコンバーターを介して他社のカメラに装着して使う人もいたほどである。「神レンズ」と呼ばれるくらい写りの評価が高かったのだ。その銘レンズがようやくニコンZマウントに降臨したのである。

ミラーレス一眼カメラ専用設計で軽量コンパクトに

 「NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S」を手にするとそのサイズに驚かされる。「AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED 」は約970gだったのが、同じ明るさと焦点距離で約650gと大幅な軽量化を果たしているのである。もちろんサイズ感も一回り、いや二回り程度小さくなっている。これはスゴい。大口径、ショートフランジバックのミラーレス一眼カメラ専用設計になったことによりこのようなサイズダウンに成功しているのだ。それでいて画質に妥協がないところが恐れ入る。

 レンズ構成はEDレンズ4枚、前玉の両面非球面レンズを含む非球面レンズ3枚4面とし、あらゆる部分で「神レンズ」と呼ばれた「AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED」の性能を上回っているのだ。ニコン独自のナノクリスタルコートとアルネオコートも施されており、厳しい条件下でもクリアな画質を誇る。逆光時に撮影したが「AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED 」よりヌケのいい画質であった。また軸上色収差を徹底的に排除し、サジタルコマフレアを効果的に抑制したレンズ設計は極上の写りを約束してくれるだろう。高周波の被写体から、満天の星空まで美しく撮影することが可能だ。まさに待ち焦がれた超広角ズームレンズだと言えよう。

使い勝手も良好な超広角ズームレンズ

 このレンズのトピックは大きく張りだしていた通称「出目金」レンズをやめ、大口径の両面非球面レンズを採用したことだ。これにより前面にフィルターを装着することが可能になったのだ。付属する「バヨネットフード HB-97」を使用して、レンズ先端部にニコン純正の112mmネジ込み式フィルターがつけられるのである。もちろんレンズマウント部にもシートタイプのゼラチンフィルターを挿入できるフィルター枠も装備されている。またよりコンパクトな「バヨネットフード HB-96」も付属している。こちらは常時装着できる一般的なレンズフードとなる。

 Zの「F2.8」通しのズームレンズ同様に、「NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S」にも「情報パネル」が装備されている。これは絞り値、撮影距離と被写界深度などを鏡筒部のパネルに表示できるもので、EVFを覗くことなく設定した値を確認できる便利装備だ。またサイドにはカメラで設定したファンクションを割り当てられる「L-Fnボタン」も装備。撮影をスムーズに行えるようになっている。手に馴染むサイズ感だし、いろいろと使いやすい高性能なレンズになっていると感じた。

実写

 ここからは「NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S」の写りをご覧いただこう。使用したカメラは「Z 7II」(サンプル機)と「Z 6II」の2台である。

 14-24mmという画角はとても重宝する。引きのない室内や広大な風景を撮る場合などだ。長野県・松本にある旧跡を「NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S」のワイド端で撮影したが、14mmらしいパースペクティブとフルサイズらしいボケ感が好ましい。夕暮れ時の微妙な色合いもうまく再現されている。

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■撮影機材:ニコン Z 7II + NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S
■撮影環境:f/2.8 1/400秒 ISO100 焦点距離14mm

 松本城をフレーム下部に配置してやや露出アンダーのシルエット気味に表現した。それでもシャドウ部の瓦屋根や城壁、お濠で泳ぐ白鳥までカッチリとこのレンズは捉えてくれた。空のヌケ感もイメージどおりである。

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■撮影機材:ニコン Z 7II + NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S
■撮影環境:f/11 1/30秒 ISO100 焦点距離14mm

 安曇野の清流を撮影。流れに身を任せる水草の浮遊感、手前から画面奥の木々の解像感がリアルでいい感じだ。木の葉までしっかりと解像しているところがこのレンズの威力であろう。

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■撮影機材:ニコン Z 7II + NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S
■撮影環境:f/6.3 1/80秒 ISO100 焦点距離14mm

 森の中にあった狛犬(?)の眼にフォーカスし、絞り開放でググッと接近してシャッターを切った。超広角ズームレンズでもF2.8で接近すれば、このようにボケ味とワイド感の両方を演出することが可能だ。

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■撮影機材:ニコン Z 7II + NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S
■撮影環境:f/2.8 1/250秒 ISO100 焦点距離14mm

 山上湖の夕暮れ。湖面を渡る風が冷たい。日没直前の澄んだ空気の一瞬を捉えた。「NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S」のクリアかつクリーンなヌケ感が気持ちいい。水面に映った山の端もしっかりと解像している。空のグラデーションも美しいではないか。

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■撮影機材:ニコン Z 7II + NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S
■撮影環境:f/11 1/160秒 ISO100 焦点距離14mm

 14-24mmというズームレンジは実に使い勝手がいい。とても広大な14mmから日常的なワイド感の24mmまで、広角レンズの醍醐味を余すところなく味わえるからだ。このカットはローカル線の旧駅舎を撮ったものだが、あまりパースをつけず24mmという画角で撮影した。強くデフォルメした写真から自然なワイド感まで自在に演出できるのが「NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S」である。

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■撮影機材:ニコン Z 7II + NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S
■撮影環境:f/11 1/500秒 ISO100 焦点距離24mm

 F2.8通しながら軽量コンパクトになった「NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S」はいつでも持ち歩きたいレンズに仕上がっている。旅はもちろん登山やアウトドアスポーツにも連れて行きたいものだ。約650gという軽さと、埃や水滴の侵入を防ぐシーリングを各所に配した防塵・防滴性能は心強い。清流を渡る小橋から川面を撮影したが、そのきらめきと透明感をこのレンズはよく写しとってくれた。

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■撮影機材:ニコン Z 7II + NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S
■撮影環境:f/5.6 1/640秒 ISO100 焦点距離14mm

 ホリデーシーズンを控え、街ではイルミネーションの準備が始まっていた。薄暮に点灯し始めたLEDが踊り、やや寂しいライトアップの中撮影を試みた。画面中央部はもちろんとして、隅に近い部分でもLEDの形が崩れずにしっかりと写っている。さすが神レンズの系統である。F2.8という明るさもこのようなシチュエーションで威力を発揮する。

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■撮影機材:ニコン Z 6II + NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S
■撮影環境:f/2.8 1/60秒 ISO100 焦点距離14mm

 夕闇迫る中、ダイナミックな空と雲を14mmというワイド端でうまく表現できた。濃厚で色のりのいい写りは美しい。「Z」シリーズボディにベストマッチするレンズサイズもフィールドでのフットワークを軽くしてくれる。「NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S」は必携の1本と言えるだろう

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■撮影機材:ニコン Z 6II + NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S
■撮影環境:f/11 1/2000秒 ISO800 焦点距離14mm

 休日、銀座の歩行者天国をワイド端で撮った。初冬の澄み始めた空気感をクリアに「NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S」は捉えた。ハイライト部のヌケ感、空のグラデーション、建物の直線感など文句のつけようがない描写である。風景、スナップ、建築、天体など超広角ズームレンズが活躍するシーンは多い。写りが際立つこの銘レンズをぜひとも使ってみてほしいものだ。

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■撮影機材:ニコン Z 6II + NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S
■撮影環境:f/8 1/4000秒 ISO800 焦点距離14mm

まとめ

 「NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S」は全Zユーザーが待ち焦がれた超広角ズームレンズだ。明るくて描写も最高だし、前玉にフィルターも装着でき、防塵防滴仕様で厳しい環境下でも真価を発揮できる。しかも軽く小さい。いつでも気軽に持ち出せるサイズ感なのだ。すなわち最高の描写をいつでも味わえることになるのである。この卓越した写りを多くのZユーザーに味わっていただきたいものだ。

■写真家:三井公一
新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。雑誌、広告、Web、ストックフォト、ムービー、執筆、セミナーなどで活躍中。有限会社サスラウ 代表。

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