「Z」標準ズームレンズの新基軸|ニコン NIKKOR Z 24-120mm f/4 Sで撮る
超高性能な標準5倍ズームレンズ
プロフェッショナル向けフルサイズミラーレス一眼カメラ「Z 9」が絶好調のニコンから、その「Z 9」に最適な標準ズームレンズが登場しました。5倍のズーム比を誇るこの「NIKKOR Z 24-120mm f/4 S」は、描写もよく、寄れて軽く、過酷なシチュエーションでも安心して使えるレンズに仕上がっていました。
NIKKOR Z 24-120mm f/4 Sは使い勝手がいい
プロフェッショナル・フォトグラファーの機材は、通常「大三元」と呼ばれる3本のズームレンズを基本に構成されます。ニコンの「Z」シリーズですと、広角ズームレンズの「NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S」、標準ズームレンズの「NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S」、望遠ズームレンズの「NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S」となります。どれも「F2.8」通しの明るくて高性能な「S-Line」レンズです。さらに、これにプラスして被写体に合った単焦点レンズを加えて現場に持参します。
撮影対象にもよりますが、ほとんどの現場では標準ズームの「NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S」がメインになることが多いでしょう。例えばインタビューやドキュメンタリー撮影の場合、単焦点ではなく焦点距離を変えられるズームレンズがやはり活躍します。現場では撮影ポジションを変えられない、逆に移動を繰り返したり撮影時間に制約がある、などシチュエーションはさまざまです。そんな時に「NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S」では「ちょっと望遠側が足りないな」と感じるシーンも多いものです。「もう少しアップで撮りたい」、「ちょっと望遠でシェイプをきれいに見せたい」と思って、単焦点望遠レンズにレンズ交換をするか、サブボディに付けた「NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S」にスイッチするか悩むシーンがあります。
そんな時にこの「NIKKOR Z 24-120mm f/4 S」ならスッとズーミングするだけで悩み解消です。「F4」と1段暗くはなりますが、シームレスに撮影できるというのは時間の制約が厳しい現場ではとても重宝するはずです。バリバリと仕事をするフォトグラファーや、高性能なズームレンズ1本で機材を済ませたいというフォトグラファーには大いに役立つレンズと言えるでしょう。
NIKKOR Z 24-120mm f/4 Sの高スペックさ
5倍のズーム比となる「NIKKOR Z 24-120mm f/4 S」ですが、実写してみてその写りに驚きました。とんでもなく素晴らしいからです。絞り開放からとてもシャープですし、被写体にグッと寄れて使い勝手も抜群でした。
そのスペックは、ED非球面レンズ1枚とEDレンズ3枚というレンズ構成で、マルチフォーカス方式を採用し正確で高速なオートフォーカス性能も有しています。ニコンのお家芸、斜めからの光に有効なナノクリスタルコートと、垂直に入射する光に有効なアルネオコートも採用されており、ゴーストやフレアを効果的に防いでいます。また、さまざま収差も抑えられていて、あらゆるシーンで頼りになる1本だと感じました。
ブラブラ実写スナップ!
ワイド端24mmでのカットです。ヌケ感のあるクリアなブルーが心地よいですね。波の描写も繊細でしっかりとしている印象です。遠くに富士山が見えるのにお気づきでしょうか?
先ほどのカットと同じ場所からテレ端120mmまでズーミングしてみましたが、これだけ富士山を大きく捉えることができました。24-70mmの標準ズームレンズだとこうはいきません。「もうちょっと!」に手が届くのがこの「NIKKOR Z 24-120mm f/4 S」なのです。
停まっていた外国車のヘッドライト周りを撮りました。豊かなコントラストと塗装の微妙なグラデーションが実に見事ですね。目を引く写りだと言えます。
「NIKKOR Z 24-120mm f/4 S」は約630gと携行しやすい軽さとサイズ感になっています。お使いのニコン「Z」のファーストレンズとしてチョイスするのもいいでしょう。24mm〜120mmというズームレンジがあれば日常的な撮影はほぼこなせるからです。何気ないカットも情感豊かに捉えることができました。
川崎港にやってきました。ニコン独自のナノクリスタルコートとアルネオコートはこのような逆光時撮影にとても有効です。強烈な海の反射をフレーム内に入れてもクリアな絵を約束してくれるからです。コントラストの低下もなく、海の向こうに見える房総半島までクッキリと判別できますね。
マルチフォーカス方式採用のこのレンズですが、頭上を旋回するトビを正確にフォーカスして捉えてくれました。瞳が実に鋭いですね!このように「Z 9」との相性は抜群と言えるでしょう。このカットも24-70mm標準ズームレンズだと寄れずに、やや迫力が少ない絵になったに違いありません。
「NIKKOR Z 24-120mm f/4 S」は防塵防滴構造で、最前面のレンズにはニコン独自のフッ素コートが施されています。前玉が汚れても軽く拭くだけでOKです。海辺や砂浜での撮影でも安心です。ガラス越しにボートのコックピットを撮りましたが、ステアリングのキリッとした感じがたまりませんね。
走行中の江ノ電を「Z 9」で連続撮影しました。高速走行する電車ではないので当然ですが、「NIKKOR Z 24-120mm f/4 S」は全フレームにおいてパーフェクトに合焦しました。ボディの質感と写り込みの様子が気に入りました。
ズーム全域で最大撮影倍率0.39倍、最短撮影距離0.35mまで被写体に寄れる性能は実に重宝します。しかも、その写りは精細感と立体感富んでいるからです。ボケ感もスムーズでいい雰囲気だと思いませんか?
やはりテレ端が120mmというのは大きなアドバンテージと言えるでしょう。自然な望遠感の描写をちょっとズーミングするだけで手にできるのはうれしいですね。レンズ交換の手間もなく、思った瞬間に「Z 9」のシャッターを切れました。
「NIKKOR Z 24-120mm f/4 S」は5倍の使いやすいズーム比と、立体感と精細感のある描写、そしてこの山門のカットのように深い色再現性を高次元で達成した新世代のミラーレス用標準ズームレンズだという印象を受けました。
NIKKOR Z 24-120mm f/4 Sの主要諸元
レンズマウント:ニコン Z マウント
焦点距離:24mm-120mm
レンズ構成:13群16枚
(EDレンズ3枚、ED非球面レンズ1枚、非球面レンズ3枚、ナノクリスタルコートあり、アルネオコートあり、最前面のレンズ面にフッ素コートあり)
画角:84° – 20°20′(撮像範囲FX)
61° – 13°20′(撮像範囲DX)
焦点距離目盛:24、28、35、50、70、85、120mm
ズーミング:ズームリングによる回転式
ピント合わせ:マルチフォーカス方式、IF(インターナルフォーカス)方式
最短撮影距離:撮像面から0.35m(ズーム全域)
最大撮影倍率:0.39倍
絞り羽根枚数:9枚(円形絞り)
絞り方式:電磁絞りによる自動絞り
最大絞り:f/4
最小絞り:f/22
アタッチメントサイズ(フィルターサイズ):77mm
寸法:約84mm(最大径)×118mm(レンズマウント基準面からレンズ先端まで)
質量:約630g
付属品:
・レンズキャップ77mm LC-77B(スプリング式)
・裏ぶた LF-N1
・バヨネットフード HB-102
・レンズケース CL-C2
まとめ
このレンズは「Z 9」にピッタリで機動性を活かした撮影で生きるレンズだと感じました。F4通しなのでマニュアルでのフラッシュ撮影時でも撮影がラクですし、レンズの重量バランス、開放絞りからの高い描写力、リッチな色再現性と、ポートレート、スナップ、風景、報道、スポーツ撮影までオールラウンドにこなす高性能標準ズームレンズになっています。ニコン「Z」シリーズをお使いのフォトグラファーは愛用の1本に加えることをオススメします。
■写真家:三井公一
新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。雑誌、広告、Web、ストックフォト、ムービー、執筆、セミナーなどで活躍中。有限会社サスラウ 代表。