ニコン NIKKOR Z 26mm f/2.8 パンケーキレンズで楽しむエジプトの旅

水咲奈々
ニコン NIKKOR Z 26mm f/2.8 パンケーキレンズで楽しむエジプトの旅

はじめに

2023年3月に発売されたニコン「NIKKOR Z 26mm f/2.8」は、常に持ち歩ける携行性の高い広角単焦点レンズです。小型軽量ながら高い描写性能を保つ本レンズのレビューを、エジプトの写真と共にお送りいたします。

カメラの存在感を薄めてくれる薄型レンズ

■撮影機材:Nikon Z6III + NIKKOR Z 26mm f/2.8
■撮影環境:絞りF8 1/250秒 ISO250 AWB ピクチャーコントロール:スタンダード
■アスワンのヌビア村

エジプト南部のアスワンにあるヌビア村は、パステル調のカラフルな色味が好みのヌビア人によって、村全体がポップなカラーに彩られています。アスワンには2つのヌビア村があるのですが、こちらはナイル川西岸の「Nagaa Suhayl Gharb」地区にある、カラフルな方のヌビア村「Nubian Village Aswan」です。

どこを見てもフォトジェニックで、観光客を乗せて村を歩くラクダもカラフルに装っています。観光地なので、カメラを持った観光客は少なくないのですが、あまり大きなレンズを持っていると、目立ってしまうような状況ではありました。そこで活躍したのが本レンズです。

最大径約70mm×23.5mmの薄型レンズは、Nikon Z6IIIに装着するとレンズ一体型のカメラのようにボディに馴染み、カメラの存在感を薄めてくれます。重さも約125gととても軽いので、長時間持ち歩いての撮影でも疲れを感じにくいです。

■撮影機材:Nikon Z6III + NIKKOR Z 26mm f/2.8
■撮影環境:絞りF11 1/200秒 ISO100 AWB ピクチャーコントロール:風景
■アスワンのヌビア村

村のメインストリートは、お土産屋さんが軒を連ねています。これは日が落ちてきた夕方の時間ですが、お店の方が水をまいていました。村の道は砂場が多く、ここをラクダや車が通ると砂埃が舞うので、涼しくするためと砂埃防止の役目があるそうです。

F11の絞りで沈みゆく太陽の光芒を描くとともに、手前の品物から奥のカラフルな壁までをパンフォーカス気味に撮影。水をまいている瞬間を撮りたかったのですが、長時間道の真ん中にいるとラクダに轢かれてしまうので、素速いAF性能に頼って、ささっと撮影することがポイントです。

■撮影機材:Nikon Z6III + NIKKOR Z 26mm f/2.8
■撮影環境:絞りF11 1/250秒 ISO250 AWB ピクチャーコントロール:スタンダード
■アスワンのヌビア村

エジプトの太陽は力強いので、夕方ですがまだまだ猛威を振るっています。街なかの撮影は明暗差の強いシチュエーションが多かったのですが、6群8枚(非球面レンズ3枚)の高性能なレンズ構成のお陰で、ハイライトもシャドー部も高い解像度で被写体を綺麗に描いてくれました。

防塵・防滴性能で砂漠での撮影も楽しめる!

■撮影機材:Nikon Z6III + NIKKOR Z 26mm f/2.8
■撮影環境:絞りF11 1/320秒 ISO100 AWB ピクチャーコントロール:ビビッド
■白砂漠

防塵・防滴設計のお陰で、砂漠での撮影でも大活躍しました。揺れる4WDに乗りながら、砂漠から砂漠へ観光するので、レンズがコンパクトなのはとても便利です。

こちらは白砂漠のキノコと鳥のような形をしていますが、人間が作ったのではなく、長年の風で自然に作られた奇岩です。雲ひとつない青空と白い岩のコントラストは、ファインダーを覗くだけでもとても綺麗でした。

■撮影機材:Nikon Z6III + NIKKOR Z 26mm f/2.8
■撮影環境:絞りF11 1/200秒 ISO400 AWB ピクチャーコントロール:風景
■白砂漠

砂漠ではテントで一泊しました。翌日は太陽が昇る前に起きて、生き物の気配のしない砂漠を歩き回ったり。昇りきる前の太陽が赤く照らす白砂漠は、とても美しかったです。どこを切り取ろうか迷いながらも、26mmの焦点距離の広さに助けられて、沢山シャッターを切りました。

白い部分は岩で、茶色い部分は砂なのですが、このように見ると、まるで雪の中にいるようですね。日本よりも暑い夏のエジプトの砂漠ですが、朝だけは日本よりも涼しく、半袖では肌寒いほどでした。

■撮影機材:Nikon Z6III + NIKKOR Z 26mm f/2.8
■撮影環境:絞りF11 1/200秒 ISO400 AWB ピクチャーコントロール:風景
■白砂漠

太陽が地平線から顔を出してきました。強い逆光の状態ながら、フレアーやゴーストは出ず、ピントも素早く目当ての岩に合ってくれました。太陽の出方を見ながらジリジリと前後左右のポジションを探って、中腰で撮影しました。

■撮影機材:Nikon Z6III + NIKKOR Z 26mm f/2.8
■撮影環境:絞りF2.8 1/200秒 ISO160 AWB ピクチャーコントロール:スタンダード
■白砂漠の朝食のぶどう

朝食はガイドの方が用意してくれます。まずはぶどうがテーブルに並べられたのですが、これが冷たくて美味しい!砂漠の中なので水は潤沢にある訳ではなく、キャンプの後半は、残りの水を計算しながら計画的に飲んでいました。そんな状況下の、クーラーボックスで冷やされたぶどうは、とても心と喉に染みました。

本レンズは最短撮影距離が20cmなので、テーブルフォトも楽しめます。F2.8の開放値は、ナチュラルに背景をボカしてくれます。太陽に反射したぶどうの粒の光が丸ボケになり、いいアクセントになりました。

■撮影機材:Nikon Z6III + NIKKOR Z 26mm f/2.8
■撮影環境:絞りF11 1/200秒 ISO100 AWB ピクチャーコントロール:風景
■白砂漠

今回の旅で使用したカメラボディはNikon Z6IIIですが、眩しい状況での撮影が多く、視認性の高いNikon Z6IIIのEVFが大活躍しました。特にこの白砂漠は、上からは太陽、下からは白い岩がまるでレフ板のように強い太陽を反射するので、目を開けているだけで精一杯の状況です。

そんな状況下で、液晶モニターを見ながらの撮影は困難を極めます。隅々まで見やすく高い解像度は、上下から照り返しのある状況での撮影を可能にしてくれました。

F5.6の絞りでエジプトの街なかスナップ

■撮影機材:Nikon Z6III + NIKKOR Z 26mm f/2.8
■撮影環境:絞りF5.6 1/400秒 ISO100 AWB ピクチャーコントロール:スタンダード
■ギザのホテル近くの駄菓子屋に集まる人々

26mmの焦点距離と薄型形状のレンズは、街歩きのスナップでとても重宝しました。エジプトは車社会なので車やバイクはもちろん、観光地のギザ周辺ではトゥクトゥクもよく見かけました。彼らが乗り付けて買い物をしているのは、水やコーラなどのジュース、スナック類を売っている、駄菓子屋と呼ばれているコンビニのような小さなお店です。

筆者は街なかのスナップ撮影ではF5.6の絞り値を多用するので、今回も絞りを決めて撮影してみました。ピント面はシャープながら、なだらかにボケていく描写は演出され過ぎず、スナップにちょうど良いグラデーションで被写体を描いてくれました。

■撮影機材:Nikon Z6III + NIKKOR Z 26mm f/2.8
■撮影環境:絞りF5.6 1/200秒 ISO160 AWB ピクチャーコントロール:スタンダード
■カイロ中心地

カイロの中心地は信号があるのですが、ないかのように道を渡るのが普通です。車の運転手は常にクラクションに手を置き、周りの車とセッションするかのようにクラクションを鳴らし続けます。「通るからどいてくれ」という意味よりも、「ここにいるよ、動いているよ」というアピールの意味合いが強いように感じます。

それ以外でも、タクシーが「乗れるよ!乗りなよ!」という客引きの意味合いで鳴らしたり、友達や同業種がすれ違うときに、挨拶代りに鳴らしたりしています。音もビーッという短い音ではなく、ビーーーーーーーーーーーや、ビッビッビーーービーーーなどと、リズミカルに長く鳴らすのがエジプト流です。

道を渡る人も、立ち止まらなければ死なないぐらいの気持ちで、車の間をすり抜けて行きます。急に走り出したり、方向を転換すると危ないそうです。この道の渡り方にまだ慣れていない、旅の前半にこの写真を撮ったので、筆者は歩道から撮影しています。

■撮影機材:Nikon Z6III + NIKKOR Z 26mm f/2.8
■撮影環境:絞りF5.6 1/200秒 ISO100 AWB ピクチャーコントロール:スタンダード
■ハン・ハリーリ市場

エジプトに有名な市場は沢山ありますが、このハン・ハリーリ市場は、そのなかでも一番有名なのではないでしょうか。路地も多くて迷子になるほど巨大な市場で、主に観光客向けのお土産物を扱っている店が多いです。

立ち止まっていると「見るだけタダ」「全部1ドル」や、「山本山」「おっぱっぴー」「バザールでござーる」と日本語で話しかけられ、囲まれてしまうので、ここもぱっと撮影するほうが良策。顔認識や、タッチAFで任意の箇所をタッチする方式で、素速くピント合わせが行えました。

開放絞りで香水瓶の煌めきを表現

■撮影機材:Nikon Z6III + NIKKOR Z 26mm f/2.8
■撮影環境:絞りF2.8 1/200秒 ISO500 AWB ピクチャーコントロール:スタンダード
■ギフトショップの香水瓶

最短撮影距離20cmと、絞り羽根枚数7枚の円形絞りの仕様を体感できた一枚です。香水瓶の棚を下から見上げて撮影しています。棚の奥と上は鏡になっているので、反射した香水瓶も丸ボケとなって写り、無限の香水瓶のようになりました。

18日間の滞在中、エジプト考古学博物館の近くにお気に入りのギフトショップを見つけて、複数回足を運びました。そのお店の2階に、エジプトのお土産として有名な香水瓶が沢山並んでいて、様々な色と形の瓶がキラキラと輝いていました。通い詰めるうちに欲しくなり、自分と友達のお土産用に数種類購入しました。

解像度の高い広角レンズの良さを再認識!

■撮影機材:Nikon Z6III + NIKKOR Z 26mm f/2.8
■撮影環境:絞りF11 1/500秒 ISO160 AWB ピクチャーコントロール:風景
■カフラー王のピラミッド

ギザの3大ピラミッドのひとつ、カフラー王のピラミッドは高さ約143mで、頂上部には化粧板が残っているのが特徴です。この化粧板は、本来ならピラミッドの下まで覆っていたのですが、今は剥がれて、積み上げた石がむき出しになっている状態です。

この積み上げた石は、場所によって積み方や材質が違うそうです。明るい日中の観光では太陽が眩しくて、肉眼でそこまでじっくり確認できなかったのですが、こうやって写真で見直してみると、遠目でも色味が違うし、拡大すると積み方が均一ではないことが見て取れて、解像度の高いカメラとレンズを使って、写真に残すことの意味をあらためて感じました。

■撮影機材:Nikon Z6III + NIKKOR Z 26mm f/2.8
■撮影環境:絞りF11 1/500秒 ISO200 AWB ピクチャーコントロール:風景
■クフ王のピラミッドの足元

ピラミッド観光ではピラミッドの足元に行くことが多いので、26mmの焦点距離は本当に重宝しました。エジプト観光は遠くから何かを眺めるよりも、触れるほど近付いて観ることのほうが多いので、行かれる方は、広角レンズをレンズラインナップに入れることを強くお勧めします。

このクフ王のピラミッドは通称「大ピラミッド」と呼ばれ、高さ約146m(現在は頂上部がなくなったので約137m)の記録的な建造物です。本来は、右奥に見えるカフラー王のピラミッドの頂上部にもある化粧板で、全体が覆われていたのですが、全部盗まれてしまって岩がむき出しになっています。

このピラミッドの内部は常に見学ができる(2024年8月現在)ので、3つのピラミッドのなかでも一番観光客が多く、ピラミッドの足元にはターバンやキーホルダー、置物などのお土産を手売りする売り子さんも沢山います。

エジプトで大活躍したレンズフードとレンズキャップ

■撮影機材:Nikon Z6III + NIKKOR Z 26mm f/2.8
■撮影環境:絞りF11 1/500秒 ISO125 AWB ピクチャーコントロール:風景
■参道入口のラクダ乗り場

カフラー王のピラミッドとクフ王のピラミッドが見える参道の入り口には、観光用のラクダの乗り場があります。ラクダに乗ってピラミッドを周ることもできますが、価格交渉は必ずしましょう。通常の数倍の値段を提示してきます。でもラクダには罪がないです。眠たそうな顔が可愛らしくてシャッターを切りました。

この撮影時はまだ日が高くない朝だったのですが、太陽の近さと大きさはしっかり感じられる天気の良さでした。本レンズのレンズフード(HB-111)は大きくせり出した形ではなく、フジツボのような形なのですが、これでよく防げるなと思うくらい、フレアーとゴーストの発生率は低かったです。上位レンズ並みのコーティングが施されている訳でもないのに、よくできたレンズだと思いました。

また、レンズキャップ(LC-K108)は、つまんでレンズにはめる方式ではなくフードに被せる方式なので、フードを外さずに装着ができてとても便利でした。このレンズキャップ、装着時の見た目がプラスチッキーになるので賛否両論かもしれませんが、レンズフード必須、保安的にキャップを装着してバッグへの出し入れが頻繁という今回の撮影状況では、何度もこの形状に感謝しました。

海外旅行では持っていくレンズに悩むと思いますが、スナップを沢山撮りたい方、近寄れる観光地が多かったり、大きなレンズで目立つことに不安がある方は、ズームレンズの他にこのパンケーキレンズがあると、料理写真なども撮れるので、より楽しい旅の写真が増えると思いますよ。

 

 

■写真家:水咲奈々
東京都出身。大学卒業後、舞台俳優として活動するがモデルとしてカメラの前に立つうちに撮る側に興味が湧き、作品を持ち込んだカメラ雑誌の出版社に入社し編集と写真を学ぶ。現在はフリーの写真家として雑誌やWEB、イベントや写真教室など多方面で活動中。興味を持った被写体に積極的にアプローチするので撮影ジャンルは赤ちゃんから戦闘機までと幅広い。日本写真家協会(JPS)会員。

 

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