ニコン NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR Sで切り取る美しい世界 ―高解像度で個性を引き出す望遠ズームの魅力―

鎌田風花
ニコン NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR Sで切り取る美しい世界 ―高解像度で個性を引き出す望遠ズームの魅力―

はじめに

ニコンZマウントの大三元レンズのひとつ、大口径望遠ズーム「NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S」。今回は、私自身も愛用しているこのレンズについて、作例を交えながらその魅力をご紹介します。2020年8月に発売されて以来、現在も多くのニコンユーザーにとって憧れのレンズである理由は、実際に手に取って使うことで明確に感じられます。その圧倒的な解像力と美しいボケ感は、ズームレンズであることを忘れさせるほどです。私も「ここ一番」という時の作品撮影では、このレンズを選択することが多々あります。

70-200mmの望遠ズームレンズと聞いて、皆さんはどんな使用シーンを思い浮かべるでしょうか?運動会やスポーツなど、被写体との距離が少し離れているシーンが想像しやすいかと思いますが、私はこのレンズを花撮影や身の回りの風景撮影に使うことも多いです。それでは特徴やおすすめの撮影シーンを、写真と共にご紹介します。

NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S

Z 7IIにNIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR Sを装着(三脚座を外している状態)

三脚座なしで重量は約1360gと、決して軽くはない重さですが、グリップが深いカメラに装着することで手持ち撮影でも使えるサイズ感となります。そして強力な手ブレ補正が搭載されているので、安心して様々なシチュエーションでの撮影に対応できます。機動力のある望遠ズームレンズという印象が強く、実際に私もこのレンズを手持ちで使用することが多いです。

また、独立したコントロールリングは絞り、ISO感度、露出補正のどれかを当てることができ、ユーザーの使いやすさも考えられています。

望遠ズームレンズは被写体にあまり寄ることができないものが多いというイメージがありますが、このレンズは焦点距離70mmで最短撮影距離が0.5mと、ある程度寄って撮影することができます。写真の歪みをできるだけ抑えたいテーブルフォトや商品撮影などにも使い勝手が良いように思います。

大きく美しいボケ感

私がこのレンズに魅了された理由のひとつは、自然で美しいボケ感でした。

■撮影機材:Nikon Z 7II + NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S
■撮影環境:1/2000秒 f/2.8 ISO80 焦点距離200mm

ボケ感を活かすために単焦点レンズを使用することが多いものの、時として被写体との距離調整が難しい場合があります。例えば、高い木に咲く桜などは近付きたくても簡単には近付けないことがあるため、そのような場面では望遠ズームレンズが重宝します。

青空を背景に美しく咲く桜を切り取った一枚です。桜の木を見上げた時に、ちょうど隙間から綺麗に咲いている花を見つけたので、枝の一部にピントを合わせて撮影しました。前ボケが大きく、柔らかく描写され、被写体の立体感を強調してくれました。ボケ感は柔らかいですが、ピント面は花びらやしべなど細かい部分まで捉えられています。

■撮影機材:Nikon Z 7II + NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S
■撮影環境:1/800秒 f/2.8 ISO80 焦点距離125mm

焦点距離が長いことで、近寄ってしまうと警戒してしまう動物撮影にも向いています。佇む鹿を主役にしつつ、少し引いて桜並木を写し、静かで穏やかな春の陽気を表現したいと考えこの1枚を切り取りました。距離が取れる場所だからこそ、望遠レンズらしい背景との圧縮感や、鹿を警戒させることなく穏やかな表情で撮影することができたのだと思います。

光の向きを意識することで、被写体を立体的に見せることができます。サイド光から半逆光を意識しつつ、背景とのバランスも考えアングルと構図を決めました。

■撮影機材:Nikon Z 7II + NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S
■撮影環境:1/800秒 f/2.8 ISO100 焦点距離200mm

もう一枚、警戒心の強い野良猫の写真をご紹介します。撮影するにあたり、動物たちへはストレスや負担をかけないように努めています。また、この時はカラフルな野花も含めてその場の空気感なども一緒に切り取りたかったので、余白を意識して撮影しました。主人公でもある猫の目線で、写真にストーリー性を感じてもらえると嬉しいです。望遠端200mmでの撮影ですが、背景のボケ方が自然でうるささを感じません。

クリアで緻密な描写力

■撮影機材:Nikon Z f + NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S
■撮影環境:1/5000秒 f/2.8 ISO500 焦点距離200mm

晩秋、雨あがりの光の中で撮影をしました。手前の白い玉ボケはレンズ付近にある葉っぱに付いていた雫が光を含み、それが白くボケています。望遠レンズによる背景との圧縮効果とボケで、紅葉を際立たせました。

この一枚を撮影して実感したのは、クリアな描写とディテールの繊細な表現です。枝に残った紅葉一枚一枚の葉の輪郭がシャープで、逆光時でも光に透けた葉っぱの質感などがクリアに描写されています。逆光時は滲んだり、白く霞んだりすることもありますが、この時は紅葉の鮮やかさを表現したかったので、逆光時のクリアさと忠実な色の再現に感動したのを覚えています。

■撮影機材:Nikon Z f + NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S
■撮影環境:1/5000秒 f/2.8 ISO250 焦点距離200mm

ニコンのS Lineは逆光耐性に強く、いかなるシチュエーションでも写真表現の幅を広げてくれます。茂みに隠れるように伸びていた葉っぱも立派な被写体になるのがこのレンズの魅力です。葉の葉脈など細部まできっちりと描写されており、手で触れられそうな質感がお気に入りの一枚です。逆光気味のシーンですが、クリアでスッキリとした印象を受けます。写真中心部は正円の玉ボケで、端に行くほどレモン型になっているのも特徴的かと思います。

また、緻密な描写力が強みのレンズなので、小さな被写体を撮影するのにも向いていると考えています。

■撮影機材:Nikon Z f + NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S
■撮影環境:1/3200秒 f/2.8 ISO125 焦点距離200mm

私たちの身近な鳥でもあるハクセキレイも、お花見しているのかな?と想像しながら撮影をした写真です。鳥が逃げない距離で、かつ背景に桜が写ることを考えこの画角にしましたが、トリミングした写真もご覧ください。

▼上の写真をトリミング

大きくトリミングした写真ですが、ハクセキレイの毛並みが繊細に描写されています。ピント面はシャープで解像度の高さを実感できる一方、前景と背景は柔らかくとろけるようなボケ感が広がっています。このコントラストは、ズームレンズであることを忘れてしまうほど印象的な描写です。

手ブレ補正でアクティブに

■撮影機材:Nikon Z 7II + NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S
■撮影環境:1/1600秒 f/2.8 ISO400 焦点距離200mm

望遠ズームレンズを手持ちで撮影する時の心強い味方が、手ブレ補正です。シャッターチャンスは突然やって来るものです。この写真の時も同様で、桜のトンネルを自転車が走り去る様子を咄嗟に撮影しました。光量が少なくなる夕方の時間帯は、動いている被写体をブレずに撮影することがどんどん難しくなってきます。そんなシーンでも手持ちで撮影できたのは搭載されている手ブレ補正のおかげでもあります。また、F2.8通しなので望遠端でも明るさを確保できるのも嬉しいです。進むスピードの速い自転車ですが、ファインダー越しでもスムーズにAFが効き、被写体を追いかけ続けました。

自転車に乗る人と歩行者で、写真に動きと日常感というストーリー性を伝えたいと思いました。また、桜のトンネルの真ん中に人物を配置することで見る人の視線を自然と誘導するようにフレーミングしています。

■撮影機材:Nikon Z f + NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S
■撮影環境:1/3200秒 f/2.8 ISO125 焦点距離200mm

風に揺れる花を、幻想的な雰囲気で切り取りました。柔らかなボケ感が美しいレンズなので、その特性を活かし、花が密集する場所で花と同じ高さでカメラを構え被写体に立体感が生まれるアングルを探しました。

ローポジションでカメラを不安定な位置で構えていたこと、風で花が大きく揺れていたことを考えると、このシーンでも手ブレ補正の恩恵を受けていたと考えられます。

望遠レンズで切り取る魅力

■撮影機材:Nikon Z 7II + NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S
■撮影環境:1/800秒 f/4 ISO100 焦点距離155mm

望遠ズームレンズは、切り取り方次第で写真に個性を与えられる点が魅力です。満開の桜風景はつい広角で撮影したくなりますが、あえて俯瞰の視点から望遠で切り取ることで、桜の広がりや密度、遊歩道に落ちる影など繊細なディテールまで表現できるよう意識しました。

■撮影機材:Nikon Z f + NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S
■撮影環境:1/8000秒 f/2.8 ISO125 焦点距離200mm

映る範囲が狭くなり、自然と主役に目がいきやすくなるので、同じ花がたくさん咲いているような花畑で望遠ズームレンズを使用することもおすすめです。圧縮効果を使い密集度を出しつつ、自然で滑らかなボケ感により柔らかな印象を与えます。

■撮影機材:Nikon Z f + NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S
■撮影環境:1/800秒 f/2.8 ISO100 焦点距離165mm

ズームレンズのメリットは、撮影者が大きく動かなくても構図を細かく調整できる点です。そして望遠であることによって、普段私たちが見慣れている風景よりも、遠くのものを迫力ある描写で切り取ることができます。F2.8通しのこのレンズは、70-200mmのどの焦点距離で撮っても単焦点レンズで切り取っているような感覚があります。どの焦点距離でも緻密な描写は変わらず、被写体の立体感を生み出します。

さいごに

NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR Sで撮影した、風景や花写真を中心にご紹介しました。切り取り方や撮影者の個性を出せるのが望遠ズームレンズの良さだと感じています。さらにこのレンズは画面内の隅々まで高解像度という安心感があり、撮りたいと感じた美しい世界をそのまま切り取ってくれます。描写性能と使い心地、ともに満足感のあるレンズです。最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

■撮影機材:Nikon Z f + NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S
■撮影環境:1/1250秒 f/2.8 ISO125 焦点距離135mm
■撮影機材:Nikon Z f + NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S
■撮影環境:1/1000秒 f/2.8 ISO100 焦点距離200mm
■撮影機材:Nikon Z f + NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S
■撮影環境:1/2500秒 f/2.8 ISO100 焦点距離165mm

 

 

■フォトグラファー:鎌田風花
兵庫県在住。一般企業への就職を経て2017年よりフォトグラファーとして活動。ナチュラルで透明感のあるポートレートや風景写真を得意とし、家族写真の出張撮影や広告撮影、写真セミナーの講師などを務める。
近畿日本鉄道「わたしは奈良派」広告掲示(2023年春/夏)その他カメラ、レンズのパンフレット撮影など。Nikon CP+ステージ登壇(2022年/2023年/2024年)

 

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