ネイチャースナップのすすめ|ニコン D7200で探す秋の気配

小林義明
ネイチャースナップのすすめ|ニコン D7200で探す秋の気配

はじめに

私の住んでいる釧路エリアでは、お盆が過ぎれば秋がやってくると言われています。今年は気温が高い日が続いて秋の空気を感じるのも遅れ気味でしたが、それでも9月に入ると一気に朝の空気はひんやりとして、外出するときの服装も一枚増えました。

景色もちょっと変わってきて、夏とは違う被写体を探し始める時期でもあります。今回はNikon D7200を片手に秋の気配を探してみたいと思います。

秋が近づいてくると、湿原のキタヨシが穂を広げ始める。湖面に反射する夕陽を背景に、キタヨシの穂をシルエットで捉え印象的な画面とした。秋が近づいてきたことを感じられる時期でもあり、夕方の風もちょっと寒く感じるようになる。
■撮影機材:Nikon D7200 + AF-S NIKKOR 200-500mm F5.6E ED VR
■撮影環境:F5.6 1/500秒 +0.7EV ISO450 WB太陽光

秋の気配を感じよう

自然を撮影していて秋といえば、紅葉がもっとも代表的な被写体になると思います。しかし、晩夏や初秋ではまだ紅葉もはじまっていなくて、秋らしいといっても地味なものの方が多いです。そのため、ゆっくりと歩きながら、秋らしいものを探してみるのが第一歩になります。

本格的な秋のシーズンになる前に季節の移り変わりを撮影しておくと、作品としてまとめるときに変化をつけることができます。大きな風景ではどうしても定番の撮影ポイントになってしまうため似たような写真になりがちですが、それ以外の部分では、秋に対するイメージも人それぞれで微妙に違うので、自分の視点を感じてもらえる重要な一枚になっていきます。

こんなの撮っても意味がないなんて思わず、秋を感じたらどんどんシャッターを押していきましょう。

道東で早い秋を感じられるオホーツク海のサンゴソウ。8月後半から赤くなってきて、ピークは9月中頃からだ。この頃、大雪山の山頂から中腹にかけて紅葉が始まっているが、平地で紅葉の見頃となるのはまだまだ先。それまでは秋の気配を探しながらの撮影となる。
■撮影機材:Nikon D7200 + AF-S DX NIKKOR 18-140mm F3.5-5.6G ED VR
■撮影環境:F13 1/40秒 +1EV ISO200 WB太陽光
サクラの赤い葉が木の根元のシダの下に落ちていた。ちょうど木漏れ日があたって森の中でその存在感を強調していたので、光が動いてしまわないうちに素早く撮影した。このようなちょっとしたものでも撮影しておくと、組み写真のなかで変化をつける大切な一枚となる。
■撮影機材:Nikon D7200 + AF-S DX NIKKOR 18-140mm F3.5-5.6G ED VR
■撮影環境:F5.6 1/200秒 -0.3EV ISO1600 WB太陽光
シラカバに巻き付いたツタの葉が、一部黄色くなっていた。黄葉というより天気の悪い日が続いていたため傷んで色が変わってきたのかもしれないが、このさりげない感じが季節の変化を伝えることができていいと思う。
■撮影機材:Nikon D7200 + AF-S NIKKOR 200-500mm F5.6E ED VR
■撮影環境:F5.6 1/160秒 +0.7EV ISO1600 WB太陽光

小さな秋から

ネイチャースナップ的には、身近なところで見られる小さな秋を探してみるのがおすすめです。

見つけやすい被写体としては、コスモスやサルビアのような季節の花などは誰が見ても秋を感じられ、色もきれいなので秋らしさを伝えられる被写体となるでしょう。そこにやってくる虫たちの姿などを加えられると、さらに動きも出てきます。街路樹の葉のちょっと色が変わり始めたようなものも、季節の移り変わりを感じられます。

また、視点を変えて空を見上げてみると、うろこ雲やすじ雲のように秋になると現れる雲などもあります。空は都会にいても見られるものですから、秋らしさを表現する脇役としてどんなジャンルの写真にも利用できます。

これらは近所の公園や空き地などでも見つけることができます。毎日の通勤の途中や買い物に行くときに撮れそうな場所を見つけておき、日々気にしていると変化にも気づけます。特別にすごいものである必要はなく、ちょっと感じた秋のようなもので十分です。

身近な公園に植えられていたコスモス。漢字では秋桜と表記するだけあり、秋の代表的な花だ。大きな花壇なのだが、やっと咲き始めたばかりで、数輪が咲いているだけだった。蕾も一緒に画面に入れたことで、咲き始めの雰囲気を伝えるカットとした。可能なら満開のたくさんの花が咲いている時期も撮影しておきたい。
■撮影機材:Nikon D7200 + SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary
■撮影環境:F7.1 1/640秒 +0.3EV ISO560 WB太陽光
サルビアの花壇を見ていると、イナゴが交尾をしていた。イナゴを大きくフレーミングすることもできたが、花を多く入れたほう赤の面積が増えて秋の雰囲気が強くなるので、このカットを選んだ。季節感を感じられるものに一つアクセントを加えると、変化を出せる。
■撮影機材:Nikon D7200 + SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary
■撮影環境:F5.6 1/320秒 ISO900 WB太陽光
空を見上げると、秋らしいうろこ雲が出てきていた。雲の形は季節によって特徴があって、季節感を表現するのに適している。雲は主役にも脇役にもできるので、空が開けているところでは、雲の様子もしっかり観察してみよう。
■撮影機材:Nikon D7200 + AF-S DX NIKKOR 18-140mm F3.5-5.6G ED VR
■撮影環境:F11 1/60秒 +1EV ISO200 WB太陽光
ため池の水面に、色とりどりの落ち葉と小さな花がたくさん浮かんでいた。まわりはまだ緑の葉のほうが多く夏のような景色なのだが、ここだけは完全に秋の雰囲気になっていた。探してみると小さな秋はあちこちにあるので、いろいろなところをゆっくり見ながら歩いてみると、意外な発見があって楽しいものだ。
■撮影機材:Nikon D7200 + AF-S DX NIKKOR 18-140mm F3.5-5.6G ED VR
■撮影環境:F11 1/80秒 -0.7EV ISO1600 WB太陽光

フレーミングで季節感を変える

季節の変わり目ということもあって、景色全体で秋という感じにすることはなかなか難しいと思います。部分的に秋っぽいということのほうが多いので、望遠やマクロで切り取る撮り方がメインになります。

撮影するときに、秋っぽい部分とまだ夏の部分をどのくらいの比率で画面に入れるかによって季節感が変わってきます。

ちょっと赤くなった葉を撮影するとしても、画面いっぱいに赤い葉を入れれば秋のピークの感じが出てきますし、周りに緑の葉が多ければ夏から秋への変化を感じられるようになります。

このフレーミングについては、撮影する人の意図がはっきりしていないと決められないと思います。ただ、あとからどちらの季節感でも使えるように、フレーミングを変えて両方撮っておくのが正解とも言えるでしょう。

部分的に色づき始めたモミジを違うフレーミングで撮影した。左側は緑の部分も多く画面に入れていて、色づき始めという感じや季節の移り変わりを伝えられる画面となっている。右側では色づきのきれいな部分だけを切り取っていて、もう紅葉シーズンといった雰囲気で見せることができている。どちらの雰囲気を伝えたいのかによって、同じ被写体でもフレーミングを変える必要があることがわかるだろう。
■撮影機材:Nikon D7200 + AF-S DX NIKKOR 18-140mm F3.5-5.6G ED VR
■撮影環境:F10 1/80秒 +0.7EV ISO200 WB太陽光
ツリバナの実ができ始めていた。実が小さく葉のほうが目立つため、木全体を見せると何を撮っているのかわからなくなってしまうので、実がまとまっている部分だけを切り取った。肉眼で見ていると赤い色はとても目立つのだが、写真として目立つような切り取り方を考える必要があるので、背景の色なども含めて画面構成を考えるようにしよう。
■撮影機材:Nikon D7200 + SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary
■撮影環境:F6.3 1/250秒 -0.3EV ISO1600 WB太陽光
ススキの穂が広がりはじめ、夕陽に輝いていた。穂が輝いて見える範囲は太陽の正面にあたる部分だけなので、穂が画面の中でなるべく多く見え、背景の山が適度な大きさになるようズームで焦点距離を調節してフレーミングを決めた。ズームレンズは自分が動かずに楽をするためのレンズではなく、フットワークも活かして理想的な画面構成するために必要なレンズなのだ。
■撮影機材:Nikon D7200 + AF-S DX NIKKOR 18-140mm F3.5-5.6G ED VR
■撮影環境:F14 1/400秒 ISO100 WB太陽光

色に注目しよう

季節の色を考えてみると、夏は緑ですが秋のイメージとしては赤や黄色です。こういった色を画面にちょっと入れるだけでも秋らしい感じは伝わるようになってきます。

主役となる被写体が赤や黄色ではなくてもいいのです。脇役としてポツンとアクセント的に色を入れることで画面に変化が生まれ、季節感も出てきます。

主役が秋らしいものではなくても、その周りに秋を感じられる色などがあれば、うまく画面に取り込んで季節感を表現しましょう。少し傷んだような形の悪い葉であっても、ぼかしてしまえば傷んでいるのも目立たずにいいアクセントにできます。

ボケても色はそのまま再現されます。枯れた色はそのまま見えてくるので、あまりきれいではありません。そのあたりはきちんと確認しましょう。

晩夏から初秋に咲くトリカブト。秋の雰囲気をより強く感じられるようにするために、黄色っぽい落ち葉が近くにある花を選んで撮影している。脇役としての落ち葉があるおかげで、意図した季節感を表現できた。脇役は欲張って入れると目立ちすぎることもあるので、控えめくらいがちょうど良いと思う。
■撮影機材:Nikon D7200 + AF-S DX NIKKOR 18-140mm F3.5-5.6G ED VR
■撮影環境:F5.6 1/200秒 -0.3EV ISO1100 WB太陽光
木の上でウトウトしているシマリス。まだ周りは緑の葉ばかりだったのだが、運良く近くにちょっと傷んで黄色くなった葉があったので、前ボケとして画面に加えた。この色により秋が近づいている雰囲気を表現できたと思う。
■撮影機材:Nikon D7200 + TAMRON SP 150-600mm F5-6.3 Di VC USD G2
■撮影環境:F5.6 1/320秒 +2EV ISO3200 WB太陽光
北海道では街路樹としても植えられているナナカマドの実は、比較的早く色づきを始めるので、秋を感じやすい。秋晴れの日に良い雲が流れていたので、空を多く画面に入れて気持ち良い秋の空気感も表現した。青空と赤い実のコントラストはそれぞれの色を引き立てあっていて、見た目も鮮やかに感じる。
■撮影機材:Nikon D7200 + AF-S DX NIKKOR 18-140mm F3.5-5.6G ED VR
■撮影環境:F13 1/100秒 ISO400 WB太陽光

D7200の印象

今回撮影の相棒となったNikon D7200は、2015年3月発売で当時のAPS-Cハイエンド機。購入時はAF-S NIKKOR 200-500mm F5.6E ED VRでタンチョウの撮影に利用していました。

視野率100%のファインダーに51点のフォーカスポイントがあって画面内の広い範囲でAFが使え、3D-トラッキングにも対応しているので、動体撮影性能も良かったです。コンパクトなボディながら基本性能は十分で、2400万画素と風景でもいきものの撮影でもちょうど良い画素数があります。1.3倍のクロップをしたときにも約1500万画素あり、実用性が高いのもいいところです。

いきものの撮影が多くなる冬では、コンパクトなボディに大容量のメディアを準備できるD7200はとても便利だった。当時、純正の望遠ズームで500mmまでカバーしているものは他になかったし、コスパにも優れていて、こんなタンチョウの撮影もしっかりこなしてくれた。
■撮影機材:Nikon D7200 + AF-S NIKKOR 200-500mm F5.6E ED VR
■撮影環境:F8 1/2000秒 ISO500 WB太陽光

SDカードのダブルスロットに加えバッテリーの持ちが良いので、大量・長時間の撮影や旅のときも十分に対応できます。丸一日撮影して1000カット以上シャッターを押してもバッテリーがなくなることはありませんでした。最近のミラーレス一眼はバッテリーの減りが早いので、こんなにバッテリーが持つものなのだとびっくりしました。

連写速度は6コマ/秒と今のカメラと比べるとちょっと遅く感じたり、SDカードもUHS-I対応なのでバッファが詰まるとやや待たされたりすることがありました。動体の撮影ではシャッターチャンスを見極めて、バッファ容量を意識して撮影することが必要です。

発売から10年近く経っていても、現役で使えるいいカメラです。まだ修理にも対応していますので、愛用しているユーザーはオーバーホールしておいてもいいかもしれません。

SDカードスロットが2つ備わっていて、大量の撮影をするときにも便利。動きのあるシーンでは思いの外たくさんシャッターを押してしまうことがあり、寒い冬でもカード交換をしないで済むのはありがたい。
ユーザーモードが2つあり、風景用と動体撮影用の2つを登録している。シーンモードも搭載されていて、初心者でも簡単に使えるようになっているところもいい。スペシャルエフェクトモードではフィルター効果を楽しめるので、スマホからのステップアップにも向いているだろう。
動体撮影時には「AFロックオン」の設定を「1(弱め)」にしている。その方がピント位置が移動したときの反応が良く、被写体を追い続けてくれる感じがしている。小鳥やリスのような小動物の撮影向きの設定だ。
望遠レンズを付けているときに、なるべく右手側だけでカメラを操作したいので、「Fnボタンの機能」には「再生」を割り当てている。撮影後の画像チェックを、カメラを持ち替えることなく行える。ちなみに、「撮影直後の画面確認」はオフにしている。
「プレビューボタンの機能」には「ファインダー内水準器」を設定している。個人的には常時水準器が表示されるようにしたいのだが、それができない感じなのでここに割り当てている。できる方法があれば、教えてほしい。
エゾリスがクルミの実を取りに来ているところ。意外とじっとしていないので、AF-Cでピント合わせをしている。このときに「AFロックオン」が強いとピントの追従性が良くなかったので、現在の設定になっている。ISO3200での撮影だが、高感度での画質も悪くない。
■撮影機材:Nikon D7200 + AF-S DX NIKKOR 18-140mm F3.5-5.6G ED VR
■撮影環境:F5.6 1/320秒 +0.3EV ISO3200 WB太陽光
秋らしい色の夕焼けになった。自宅前のこれといって景色の良いところではなかったので、身近に生えていたオオアワダチソウをシルエットにして絵を作った。キットレンズの18-140mmは広角から望遠までカバーしていて、ネイチャースナップで重宝する。
■撮影機材:Nikon D7200 + AF-S DX NIKKOR 18-140mm F3.5-5.6G ED VR
■撮影環境:F7.1 1/30秒 -0.3EV ISO1600 WB太陽光
ジニアの花壇に来て蜜を吸っていたキアゲハ。何カットか連写しているなかで、飛び上がった瞬間を捉えていた。6コマ/秒の連写速度は決して速い方ではないが、動きを読みながら撮影すれば、こんなシーンも撮影できる。
■撮影機材:Nikon D7200 + SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary
■撮影環境:F7.1 1/640秒 +1EV ISO720 WB太陽光

まとめ

今回は気温も高く季節の狭間ということもあって、真剣に秋を探して撮影していました。その分、ふだん見ていないようなところに視点を向ける必要もあり、新しい発見もありました。秋本番になるといいタイミングを逃さないようにと定番の場所を一通り巡って終わりになることもあるので、近場を見直すという意味で自分にとってもいい勉強でした。

最近、東京あたりでは夏のあとに秋がなくて冬が来ると言われるようになっています。それでも秋らしい雰囲気を探すことはできると思うので、もう少し涼しくなったら、この記事を参考にして秋探しをしてみてほしいと思います。身近なところを見直すことで、新しい被写体にきっと出会えますよ。

 

 

■自然写真家:小林義明
1969年東京生まれ。自然の優しさを捉えた作品を得意とする。現在は北海道に住み、ゆっくりとしずかに自然を見つめながら「いのちの景色」をテーマに撮影。カメラメーカーの写真教室講師などのほか、自主的な勉強会なども開催し自分の視点で撮影できるアマチュアカメラマンの育成も行っている。

 

関連記事

人気記事