はじめに
私の住んでいる釧路エリアでは、お盆が過ぎれば秋がやってくると言われています。今年は気温が高い日が続いて秋の空気を感じるのも遅れ気味でしたが、それでも9月に入ると一気に朝の空気はひんやりとして、外出するときの服装も一枚増えました。
景色もちょっと変わってきて、夏とは違う被写体を探し始める時期でもあります。今回はNikon D7200を片手に秋の気配を探してみたいと思います。
秋の気配を感じよう
自然を撮影していて秋といえば、紅葉がもっとも代表的な被写体になると思います。しかし、晩夏や初秋ではまだ紅葉もはじまっていなくて、秋らしいといっても地味なものの方が多いです。そのため、ゆっくりと歩きながら、秋らしいものを探してみるのが第一歩になります。
本格的な秋のシーズンになる前に季節の移り変わりを撮影しておくと、作品としてまとめるときに変化をつけることができます。大きな風景ではどうしても定番の撮影ポイントになってしまうため似たような写真になりがちですが、それ以外の部分では、秋に対するイメージも人それぞれで微妙に違うので、自分の視点を感じてもらえる重要な一枚になっていきます。
こんなの撮っても意味がないなんて思わず、秋を感じたらどんどんシャッターを押していきましょう。
小さな秋から
ネイチャースナップ的には、身近なところで見られる小さな秋を探してみるのがおすすめです。
見つけやすい被写体としては、コスモスやサルビアのような季節の花などは誰が見ても秋を感じられ、色もきれいなので秋らしさを伝えられる被写体となるでしょう。そこにやってくる虫たちの姿などを加えられると、さらに動きも出てきます。街路樹の葉のちょっと色が変わり始めたようなものも、季節の移り変わりを感じられます。
また、視点を変えて空を見上げてみると、うろこ雲やすじ雲のように秋になると現れる雲などもあります。空は都会にいても見られるものですから、秋らしさを表現する脇役としてどんなジャンルの写真にも利用できます。
これらは近所の公園や空き地などでも見つけることができます。毎日の通勤の途中や買い物に行くときに撮れそうな場所を見つけておき、日々気にしていると変化にも気づけます。特別にすごいものである必要はなく、ちょっと感じた秋のようなもので十分です。
フレーミングで季節感を変える
季節の変わり目ということもあって、景色全体で秋という感じにすることはなかなか難しいと思います。部分的に秋っぽいということのほうが多いので、望遠やマクロで切り取る撮り方がメインになります。
撮影するときに、秋っぽい部分とまだ夏の部分をどのくらいの比率で画面に入れるかによって季節感が変わってきます。
ちょっと赤くなった葉を撮影するとしても、画面いっぱいに赤い葉を入れれば秋のピークの感じが出てきますし、周りに緑の葉が多ければ夏から秋への変化を感じられるようになります。
このフレーミングについては、撮影する人の意図がはっきりしていないと決められないと思います。ただ、あとからどちらの季節感でも使えるように、フレーミングを変えて両方撮っておくのが正解とも言えるでしょう。
色に注目しよう
季節の色を考えてみると、夏は緑ですが秋のイメージとしては赤や黄色です。こういった色を画面にちょっと入れるだけでも秋らしい感じは伝わるようになってきます。
主役となる被写体が赤や黄色ではなくてもいいのです。脇役としてポツンとアクセント的に色を入れることで画面に変化が生まれ、季節感も出てきます。
主役が秋らしいものではなくても、その周りに秋を感じられる色などがあれば、うまく画面に取り込んで季節感を表現しましょう。少し傷んだような形の悪い葉であっても、ぼかしてしまえば傷んでいるのも目立たずにいいアクセントにできます。
ボケても色はそのまま再現されます。枯れた色はそのまま見えてくるので、あまりきれいではありません。そのあたりはきちんと確認しましょう。
D7200の印象
今回撮影の相棒となったNikon D7200は、2015年3月発売で当時のAPS-Cハイエンド機。購入時はAF-S NIKKOR 200-500mm F5.6E ED VRでタンチョウの撮影に利用していました。
視野率100%のファインダーに51点のフォーカスポイントがあって画面内の広い範囲でAFが使え、3D-トラッキングにも対応しているので、動体撮影性能も良かったです。コンパクトなボディながら基本性能は十分で、2400万画素と風景でもいきものの撮影でもちょうど良い画素数があります。1.3倍のクロップをしたときにも約1500万画素あり、実用性が高いのもいいところです。
SDカードのダブルスロットに加えバッテリーの持ちが良いので、大量・長時間の撮影や旅のときも十分に対応できます。丸一日撮影して1000カット以上シャッターを押してもバッテリーがなくなることはありませんでした。最近のミラーレス一眼はバッテリーの減りが早いので、こんなにバッテリーが持つものなのだとびっくりしました。
連写速度は6コマ/秒と今のカメラと比べるとちょっと遅く感じたり、SDカードもUHS-I対応なのでバッファが詰まるとやや待たされたりすることがありました。動体の撮影ではシャッターチャンスを見極めて、バッファ容量を意識して撮影することが必要です。
発売から10年近く経っていても、現役で使えるいいカメラです。まだ修理にも対応していますので、愛用しているユーザーはオーバーホールしておいてもいいかもしれません。
まとめ
今回は気温も高く季節の狭間ということもあって、真剣に秋を探して撮影していました。その分、ふだん見ていないようなところに視点を向ける必要もあり、新しい発見もありました。秋本番になるといいタイミングを逃さないようにと定番の場所を一通り巡って終わりになることもあるので、近場を見直すという意味で自分にとってもいい勉強でした。
最近、東京あたりでは夏のあとに秋がなくて冬が来ると言われるようになっています。それでも秋らしい雰囲気を探すことはできると思うので、もう少し涼しくなったら、この記事を参考にして秋探しをしてみてほしいと思います。身近なところを見直すことで、新しい被写体にきっと出会えますよ。
■自然写真家:小林義明
1969年東京生まれ。自然の優しさを捉えた作品を得意とする。現在は北海道に住み、ゆっくりとしずかに自然を見つめながら「いのちの景色」をテーマに撮影。カメラメーカーの写真教室講師などのほか、自主的な勉強会なども開催し自分の視点で撮影できるアマチュアカメラマンの育成も行っている。