今から実践できる「春の花」撮影|鎌田風花
はじめに
みなさんこんにちは、フォトグラファーの鎌田風花です。春の訪れを、日々の暮らしの中に感じられるようになってきました。花撮影が大好きな人にとって、たくさん咲き始める春は待ち望んでいた季節ですよね。すでに各地へ花を撮りに出掛けている方も多いと思います。今回は写真で印象的に切り取るコツを、春の花ごとに紹介したいと思います。
花を印象的に切り取るコツ
花の撮り方を解説する前に、少しお話ししたいことがあります。
目の前の花を撮ろうと思った時に、漠然と撮影してもありきたりな感じになってしまう、どう切り取れば魅力的に写すことができるのかピンと来ない…という経験はありませんか?私はその経験を何度も繰り返して、今は花を撮ることが大好きになりました。いくつか撮影する時に気をつけていることがあります。
花の魅力を見つける
人と同じで、花もそれぞれに魅力があります。例えばカモミールは春になると花畑や寄せ植えなどでよく見かける花ですが、花びらが均一に並んでいる様子が可愛いです。その可愛さを伝えたいので花びらが綺麗に見えるよう俯瞰で撮影しました。まずは花が魅力的に写る向きや角度を探してみてください。
他と違う花を見つける
他の花よりも背が高く目立っていました。他にも色が異なる、他の花と違う方向を向いて咲いているなど、よく観察すると同じ花が咲いている中に違う特性を持つ花がある場合があります。花や花畑をじっくりと観察することが大切です。ネモフィラは地面低く咲いているので、この時私はしゃがみ込んで地面スレスレでカメラを構え、できるだけ花と同じ目線になるようにしていました。
春の花別 撮影Tips
【桜】
◎桜撮影のポイントは、露出設定と望遠レンズでふんわり撮影
桜は明るめに撮影したいところですが、ソメイヨシノのような淡い色の桜はハイキーに撮影してしまうと白飛びしてディテールが失われてしまいます。撮影環境によって適正露出は変わるので、都度設定しつつ露出に注意してください。
花がたくさん付く木は望遠で少し遠くの花を狙ってみましょう。綺麗な前ボケが生まれ、ふんわりとした雰囲気で主役を際立たせてくれます。また、前ボケがあることで、うるさくなってしまう濃い色の枝が隠れすっきりとした印象にもなります。
地面に落ちた桜もこうして手のひらに乗せて撮るなど、いろんなバリエーションで切り取ることができます。
ちなみに…望遠レンズをおすすめしましたが広角で撮る桜も迫力が出て臨場感が生まれます。しゃがんで空を見上げる様にカメラを構えました。全てを桜にすると圧迫感が出てしまうので少し余白を取っています。
【ポピー】
◎ポピー撮影のポイントは、花の見極めと天候に合わせてイメージを決めること
カラフルなポピーは晴れた日との相性が良く、ポップで可愛い印象になります。色を際立たせたい時は順光で、立体感を出したい時は逆光気味で撮影してみましょう。踊るように伸びる茎が特徴的なのでポピーと同じ目線で撮影してみました。F値は開放で、自然と花に目が行くよう適度にボカしました。
ポピーは特に主役になりそうな花を見つけることを優先しています。見つけるポイントとしては上述した通り。この写真では白や黄色が多い中、赤系のポピーが一輪混ざっていたので主役にしました。見つけたら、その花が美しく見える位置や光の当たり方を調整します。
花の真ん中にあるしべの影が美しいと感じたので寄って撮影しました。F1.8のボケ感が背景をすっきりとさせ、少し癖のあるポピーの蕾や茎の存在感を抑えています。
曇りの日は花に寄って撮影するのがおすすめです。広く写すと曇りのどんより感やのっぺりとした印象が強くなってしまうことが多いですが、曇りの日の撮影のメリットもあります。白飛びを抑えられる、優しくふんわりとした雰囲気で撮ることができる、この2点は晴れた日よりも表現しやすいです。
この写真では思い切り花に寄って、花びらの透け感やしずくの瑞々しさを表現しました。ポピーは色がはっきりしているものも多く曇りでも撮りやすいので、諦めずチャレンジしてみてください。
【ネモフィラ】
◎ネモフィラ撮影のポイントは、寄り引きで魅力を引き立たせる
可憐なネモフィラをふんわり柔らかなイメージで表現するため、ソフトフィルター(KenkoホワイトミストNo.1)を使用しています。奥の花にピントを合わせ、柔らかな前ボケが作れるようにF値は開放です。ソフトフィルターを使っていて、かつ逆光気味なので背景が白いとネモフィラの存在感が少々薄くなってしまいます。そのため、背景は同色にならないように色の濃い場所を探して画角を調整しています。
ひとつ前の寄り写真とは異なり、引いてネモフィラが群生している様子を撮りました。その花がどんな風に咲いているのかなど、引いて撮ると場所の雰囲気が伝わりやすく、寄って撮ると花の質感が伝わりやすいです。被写体との距離感によって写真のイメージは大きく変わるので、撮りたいイメージに合わせて寄り引きすると良いかなと思います。
さらに引いて、大きな木の下で家族写真を撮らせて頂きました。物語のワンシーンのような風景をイメージし、主役が引き立つようローポジションでネモフィラをボカしています。被写体が小さく、オートフォーカスではピントが合っているか不安な場合はマニュアルで合わせるようにしています。
ボケ感はレンズの焦点距離、F値、カメラや被写体との距離感などで変化していきます。
140mm(35mm換算で210mm)で撮影していますが、F6.3でも被写体と背景の距離が遠いので綺麗にボカすことができます。距離感を意識して撮影をしてみてください。
さいごに
花を撮る角度、光、寄り引き、様々な要素が合わさって一枚の写真が生まれます。ここで紹介した花撮影はほんの一例にすぎませんが、撮影するにあたり何か参考になるものがあると幸いです。晴れた日はもちろん撮影日和ですが、私は曇りだからと撮影を諦めず、曇りだから撮影できる写真を撮るようにしています。
草花が一気に芽吹き、彩りが溢れる季節。素敵な春の写真ライフを過ごしてくださいね。
■フォトグラファー:鎌田風花
兵庫県在住。一般企業への就職を経て2017年よりフォトグラファーとして活動。ナチュラルで透明感のあるポートレートや風景写真を得意とし、家族写真の出張撮影や広告撮影、写真セミナーの講師などを務める。
近畿日本鉄道「わたしは奈良派」広告掲示(2023年春/夏)その他カメラ、レンズのパンフレット撮影など。Nikon CP+ステージ登壇(2022年/2023年/2024年)