望遠で切り取る夏の景色|望遠レンズ撮影テクニック
はじめに
こんにちは、フォトグラファーのtomosakiです。普段は青春や物語を感じるシーンをテーマに写真を撮影しており、風景の中に人物を置いた作品撮りをしています。
今回は私が普段から愛用しているニコンの「NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR」と、お借りした「NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S」の2本のズームレンズで夏を切り取ってきました。私が夏の撮影で意識していることを踏まえながら、作例と共にお話しさせていただきます。
望遠レンズを使用する理由
普段は広角から標準で撮影することが多いのですが、夏になると望遠レンズで撮影することが多くなります。理由としては二つです。
【1】入道雲と人の構図が撮りやすい
【2】玉ボケが撮りやすい
それでは一つずつ、作例を挙げながら説明していきます。
入道雲と人物の撮影方法
入道雲の形は1秒ごとに変化をしていきます。縦に伸びる雲もあれば、横に広がり消えていったりとさまざまです。そのため、美しい入道雲の形を逃さないためにも、さまざまな画角で撮影ができるズームレンズがおすすめです。
また、人物を主題にする際に背景に大きな入道雲があるとより夏らしさを演出することができます。そこで活躍するのが、望遠レンズによる「圧縮効果」です。
圧縮効果とは
▼130mm
▼40mm
1枚目は焦点距離が130mm、2枚目は焦点距離が40mmで撮影しました。
1枚目は被写体から少し離れて撮影したもので、2枚目は被写体の後ろに立って撮影したものになります。1枚目は2枚目に比べて、遠くにある背景が手前に引き寄せられた圧迫感があると思います。これが望遠レンズによる「圧縮効果」です。
こちらは望遠レンズによる圧縮効果を活かして、背景に広がる坂道を手前に引き寄せました。実際はそこまで急な坂ではないのですが、まるで急勾配な坂が立ちはだっているように見えます。
入道雲と人を撮る際に考えていること
入道雲には二つの種類があると思っています。綿菓子のようなフワフワな入道雲と、ゴジラのようなゴツゴツした入道雲です。
●フワフワな入道雲の撮り方
フワフワな入道雲だと、雲の線が細かくないためディテールを強調してもあまり夏雲感は出ません。ですのでボケ感を出して大きい雲が後ろにあるという情報を強調したいために、ボケが美しく描写できる「NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S」を選択しました。
肉眼で見えるような迫力のある入道雲でなくても、遠くにあるフワッとした塊の雲であれば、入道雲のように撮影することが可能です。ボケをうまく使うことにより“夏の空気感”を1枚に収めることができます。「NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S」は開放F値2.8ということもあり自然なボケ感と、被写体をシャープに捉え印象的に主題を引き立たせることができました。
●ゴツゴツした入道雲の撮り方
逆に、ゴジラのようなゴツゴツとした入道雲であれば絞って(F値を大きくして)撮影してみましょう。そうすることで背景の輪郭もくっきり捉えることができます。夏雲らしい雄大さや迫力が強調されるのでおすすめです。
望遠レンズで花火を撮影しよう
夏と言えば花火ということで、今回は「NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S」で手持ち花火を撮影してみました。
私は手持ち花火を撮影する際に、二つの条件を満たしているレンズを選択しています。
一つ目は「焦点距離が85mm以上をカバーできる中望遠レンズであるか」です。
理由としては、火の粉から身を守るためです。過去に手持ち花火を撮影していた際に、Tシャツを火の粉で穴だらけにした経験があります。花火に近づいて撮影するのは危険なので、安全を確保するという理由から、中望遠以上のレンズで撮影しましょう。
二つ目は「開放F値が2.8以下の明るいレンズであるか」です。
夜に撮影をする場合、基本的にシャッタースピードは遅くなりますが、手持ち花火を撮影する際はなるべく速いシャッタースピードにするのがポイントです。
スローシャッターになってしまうと、手持ち花火の光が線状になるため綺麗に描写できません。
暗い環境でも手ブレを抑えて、かつ花火の光を綺麗に撮影するには、少なくともシャッタースピードを1/100より速い設定にする必要があるため、絞りを開けて(F値を小さくして)光量を確保する必要があります。ですので、開放F値が小さいレンズを選択して撮影に挑んでみましょう。
おわりに
望遠レンズで切り取る夏をテーマにお話をさせていただきましたが、いかがでしたでしょうか。望遠レンズを活かすことで、この季節だけの魅力的な写真を撮影することが可能なので、ぜひ皆さんも記事で解説した内容を意識して撮影に臨んでみてください。最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
■フォトグラファー:tomosaki
2000年生まれ、福井県出身。現在は福井県と神奈川県の二拠点を中心に活動中。「青春や物語を感じるシーン」をテーマに撮影している。2023年よりフリーランスフォトグラファーとして活動。2020年「東京カメラ部10選U-22 フォトコンテスト」に入選。2022年KADOKAWAより「あの頃にみた青は、」、モッシュブックスより「L&SCAPE 撮りたい世界が地元にある」を出版。