写真は“撮らない”ことが重要|余白を活かした撮影テクニック
はじめに
はじめまして。フォトグラファーのtomosakiと申します。普段は地元、福井の景色を背景にした人物写真を中心に撮影しています。
日頃から青春や物語を感じる写真をテーマにSNSに投稿しており、現在では多くの方に写真を見ていただけるようになりました。
写真を見ていただく方には、よく「物語性がある」「エモい」とお言葉をいただくことが多いです。
そう感じていただけるのは、私の写真には「余白」が存在するからだと考えています。
今回は、私が普段撮影の時に意識している余白について解説していきたいと思います。
写真の余白を極めることは、すなわち魅力的な写真を撮ることと同義です。
この記事が新たな表現の追求をされている方、写真が上達したい方への一助となれば嬉しいです。
余白について
“魅力的な写真”とは何か。
私はストーリー性のある写真だと考えています。
ストーリー性がある写真は、鑑賞者に想像の余地を与える写真です。
その要となるのが“余白”です。
写真を見ている人に想像の余地を与えるために余白は欠かせません。
撮影の前に「何を写さないか」を決めることが重要だと考えています。
顔を写さずに撮ってみる
まず、私が作品作りで意識していることは「人物の顔を写さない」ことです。
実際にこちらの作例で説明していきます。
無人駅に二人の学生が佇んでいる写真です。
この写真を見てあなたは何を想像をしましたか。
励ましているのかな?それとも仲良く戯れ合っているのか?
顔をうつすと、中のキャラクターの写真になりますが、顔を写さないことで鑑賞者が「私もこういった時があったな」と感情移入することができます。
この写真は被写体に夕日が当たる場所、伸びる影と背景の田んぼも捉えられるよう画角を探し、無人駅の隅に立って撮影しました。
続いての写真では、女の子二人が一冊の本を持ち顔を見合わせています。
この時二人はどんな表情をしているのか、気になりますよね。
人の脳は線が欠けているなどの中途半端な情報を見たときに、足りない部分を脳内で補完して、一つのグループとして認識する傾向があります。
この心理を写真にも応用することで、みる人の注意を引き印象的な作品を残すことができます。
この写真は窓から斜陽が入るギリギリの時間帯まで待ち、夕暮れ時に撮影しました。本がレフ板になるよう、できるだけ窓際に寄ってもらったこともポイントです。
部分的に光を写してみる
次に、想像の余地を与えるための工夫として、「光を部分的に写す」というものがあります。
上の写真を例に説明します。
ロケーションは先ほど紹介した女の子二人を撮影した場所と同様です。
今回は本にあたる光が美しかったので、光にフォーカスして写真を撮影しました。
見た方は「窓から入る光が本に当たっている写真だな」と思ったのではないでしょうか。しかし、この写真には一切窓が写っていません。先ほども紹介した通り、人は無意識に欠けている情報を補完しようとします。無意識に“窓”という情報を加えたのです。
光というのは、影の形・角度・色味に多くの情報が含まれており、想像の余地を一気に与える重要な要素となります。
光を切り取る方法として、私のおすすめは「木陰」を使うことです。
モデルさんには「光が当たるところで落ちた桜の花びら触ってて~」と声かけをしています。地面に散りばめられた光たちは写真に動きを与えます。
ストーリー性の観点から木陰を捉えると、「ここに光があるということは、木があるんだ。」と感じさせることができます。何を当たり前のことを言っているんだと思われるかもしれませんが、この一連の情報の処理が写真に物語を持たせる上で重要になってくるのです。
大切な人と思い出を残す際にも
普段作品撮りなんてしないよ!という方も、日常の写真で余白を意識するとグッと雰囲気の良い撮影ができますし、大切な人との思い出を残す際にも応用できると思います。
上二つの写真を例に、シルエット写真をおすすめする理由を説明します。
私が学生の時に友達と遊んでいる際に撮影した写真です。
実はこの時、顔を写されることに抵抗がある友達がいました。しかしシルエット撮影なので顔も写らないため、その友達も撮影を楽しんでくれました。しかも、体で感情を表現するため撮影も盛り上がります。そして写真を見てくださった方も「どんな表情なんだろう」と想像を掻き立てられます。
シルエット写真の撮影条件は、被写体と背景の明暗差が大きい「逆光」の時に撮影が可能です。夕暮れ時や日が沈んだ直後に撮影するのがおすすめです。
次におすすめする方法は「寄り」です。被写体に寄って写さない部分を作ることで画面に「余白」を生み出すことができます。
この写真でいうと、「奥に続くプール」「水が広範囲に飛び散っている」といった情報がポイントです。
画面に動きがあると想像力を掻き立てられるので、是非とも被写体には動いてもらうことをおすすめします。動きがあるということは、それと同時に「音」が発生します。視覚だけではなく、聴覚的にも想像を掻き立てる意識をすると、より素敵な写真になると思います。
写真がブレないようにシャッタースピードを上げて、被写体と共にカメラマンも動くとさらに空間に奥行きが出て余白を広げることができるのでおすすめです。
まとめ
以上が私が撮影の際、写真に余白を作るために意識していることです。
何を写さないかを考えることは、想像を掻き立てる写真を撮る第一歩です。
新しい表現を追求したい方、物語性のある写真を撮りたい方はぜひ挑戦してみてください。
■フォトグラファー:tomosaki
2000年生まれ、福井県出身。現在は福井県と神奈川県の二拠点を中心に活動中。「青春や物語を感じるシーン」をテーマに撮影している。2023年よりフリーランスフォトグラファーとして活動。2020年「東京カメラ部10選U-22 フォトコンテスト」に入選。2022年KADOKAWAより「あの頃にみた青は、」、モッシュブックスより「L&SCAPE 撮りたい世界が地元にある」を出版。