NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VRレビュー|日常を楽しく彩ってくれる高倍率ズームレンズ
はじめに
2020年7月3日に発売された「NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR」は、小型軽量ながら8.3倍の高倍率なZマウントのズームレンズで、レンズシフト方式VR機構を内蔵しており、5.0段の手ブレ補正効果を得られる利便性の高い製品となっています。今回は、この高性能ズームレンズを身近な被写体で楽しむ方法と共に、レビューしていきたいと思います。
ゴーストやフレアに負けない高い描写性能
広角24mmから望遠200mmまでの広範囲をカバーする高倍率ズームレンズなので、重いレンズを何本も持ち歩くのが大変な時や、レンズ交換を頻繁にできないような旅行で活躍することの多いレンズですが、描写性能が高いので、日常の身近な被写体を、彩り豊かな想い出に変えてくれるレンズでもあります。
本レンズは、逆光での撮影に効果を発揮する、反射防止効果の高い「アルネオコート」が採用されています。このコーティングは、レンズに対して垂直に入射する光に対して効果的で、ゴーストやフレアを低減してくれます。
例えば、まだ太陽が低い位置にあるような朝早い時間にカメラを持って散歩するとき、逆光の位置から被写体を印象的に捉えたいとき、太陽の光芒を木の葉の隙間から表現したいときなど、自分のイメージを具現化することを、このコーティング技術が手伝ってくれます。
作例は、鮮やかな花壇の花を同じ低さから狙って、どこまでも続くカラフルさを描きました。大きめの公園ですと、四季折々の花が咲いていたり、ボランティアの方が育てたり植え替えたりしてくれている花壇があったりします。普段は見過ごしがちな小さな植物の四季の移り変わりを、豊かなグラデーションと繊細な描写性能で色鮮やかに表現してくれました。
200mmの望遠側で撮影していますが、手ブレ補正効果で、手持ちながらシャープなピントが得られています。さらに、ボケの柔らかさが格別なことと、無駄な色にじみが軽減されていることを感じられました。
シャッターチャンスを逃さない軽やかなズーミング
軽やかなズーミングは、このレンズの使い勝手の良さのひとつでした。軽すぎるからといってスカスカと安っぽい感じでもないトルクは、筆者の好みです。
高倍率ズームレンズの場合、ズームのトルクが重すぎたり、軽すぎたり、引っ掛かりがあまりにも無かったりすると、とっさのシャッターチャンスを逃す可能性が高いのです。手に馴染みの良い引っ掛かりは、画角を手に覚えさせるのに調度良く、「これくらい回せば、この画角になるな」という感覚が掴みやすいのは、大変ありがたいです。
また、作例のように追えば逃げてしまうような動く被写体の撮影でも、静かににじり寄りながら、意図する構図になるように望遠側にズームする作業がしやすく、Z 6のAFの速さと正確さとの相性も良く、羽根の細部までしっかりと描き切ってくれました。
それと、これは撮影時よりも移動時のメリットなのですが、レンズ横にズームロックスイッチがあり、レンズを広角端の24mmにした状態でこのスイッチを「LOCK」に合わせると、ズームリングが勝手に繰り出さないようになります。
高倍率ズームでたまにあるのが、カメラバッグにレンズの前面を下に向けて入れている場合、カメラボディを掴んでバッグからカメラを取り出そうとするとき、レンズがバッグの底に引っかかって、にょーっとレンズが伸びてしまうこと……単純に格好悪いのと共に、レンズの損傷も気になります。この「LOCK」スイッチは、そんな地味ながら、実際に起こるとちょっと嫌な現象を防いでくれます。
小型軽量で撮影がしやすい!
本レンズは高倍率ズームながら小型軽量なのが大きな魅力です。約570gの軽さは持ち歩きももちろん、撮影時の腕への負担も小さいのがありがたいです。筆者個人的には、ズームを繰り出しても、不自然なほど先端側が伸びないのが好ましかったです。
これから本格的に暑くなってくると、太陽が高くなってから出歩くのは、たとえ短時間でも身体的に厳しくなってきます。そのためお勧めは朝早い時間か、夕方涼しくなってからなのですが、早起きが苦手ではない方は、朝早い時間を特にお勧めしたいです。公園などの昼間は人が多いような場所も、朝はまだ人も足跡も少なく、植物たちも強い光を受ける前で、元気なことが多いです。
撮影場所によっては、近所の建物が入り込んでしまったり、花壇の大きさがそれほどなくてこぢんまりと写ってしまう場合は、望遠側で圧縮効果を狙ったり、前ボケを使って肉眼と違うムードを作り上げると、さらに写真を撮るのが楽しくなります。
作例では、花壇の中心のほうに目立つ色合いの植物があり、手前には低い位置に違う植物が茂っていました。カラーだと散漫なイメージなってしまうので、クリエイティブピクチャーコントロールの「チャコール」を使用しました。
全体の色味を抜いて前ボケのトーンを統一することで、すっきりと見やすくなります。また、グリーンのフィルター効果をプラスして、奥の植物の色味を濃く味付けしています。
見たままを描くのも楽しいですが、そこに自分のイメージを味付けとしてプラスして描き出すのも、写真の楽しみ方のひとつです。
最短0.5mまで寄れる広角端
広角側は24mmと使いやすい画角で、風景撮影も楽しいですし、最短撮影距離が0.5mと短いので、被写体に近付いて画面いっぱいに表現することも可能です。細かい砂の描写、明暗の柔らかさの表現共に満足できる域でしたので、いずれ海外での風景やスナップ撮影に使うと楽しいだろうなと感じました。
作例は、クリエイティブピクチャーコントロールの「トイ」を使用しました。色味の濃度を濃くすることで、構図全体を落ち着かせました。撮影時には雨が上がっていたのですが、このトーンなら、雨が降っているシーンのほうが好みな画になったかな?と思いましたので、また雨の日に再訪したい場所としたいです。
雨や埃が大敵のレンズですが、本レンズは鏡筒の可動部分などにシーリングが施されており、防塵・防滴の設計となっています。横殴りの雨風はさすがに心配になってしまいそうですが、通常のしとしとと降る雨くらいでしたら、気にせず撮影できそうです。
前後のボケのグラデーションが美しい
望遠側の撮影最短距離も0.7mと短いので、ピントを合わせたい被写体にギリギリまで近付くことで、より大きなボケを生み出すことができます。筆者がこのレンズを使って楽しかったのが、前後のボケの深さと柔らかさでした。
前ボケは不思議な物体にならない程度に芯を残しつつ、優しい輪郭を描き、後ろボケは柔らかいグラデーションで、遠くなるにしたがってボケがぐっと深くなっていくので、奥行きのある自然な画を作り出しやすいのです。
そんな、優しい画を作り出したいときにお勧めのクリエイティブピクチャーコントロールが「ドリーム」です。全体に暖かい色合いになり、アンダー部分を少し持ち上げてくれると共に、輪郭を柔らかく描いてくれます。
ほんわりと優しい画ながら、被写体が小さな花なので、撮影している姿は地面に這いつくばるように低くなっています。上から撮ってしまうと地面の茶色が構図に入ってしまって、リアリティが出てしまうので、花の高さまで低くなって撮ることをお勧めします。背景を地面ではなく他の花にすることで、全体の色味が明るくなります。近所の公園でも、ご自宅の花壇でも使えるテクニックですので、ぜひ、どこまでも続く花畑をイメージして撮影してみてください。
望遠+絞り開放が楽しすぎるレンズ!
とにかくボケが美しいのと、望遠端で撮影していても手が疲れない小型軽量のお陰で、焦点距離200mm、絞り開放での撮影がとても楽しかったです。今年は大きな旅行に行けないなと、ちょっと寂しくなっている方も、近所の散歩や自宅のベランダでの撮影が楽しくなるレンズがあると、休日の気分も上がりそうですよ。