ニコン Z f レビュー|ポートレート撮影が楽しくなる秀逸なAF性能

高橋伸哉
ニコン Z f レビュー|ポートレート撮影が楽しくなる秀逸なAF性能

はじめに

今回は最近購入したニコンの「Z f」をレビューしていく。ニコンのカメラを手にするのは久しぶりだが、デザインや性能、そして価格を考えたときに今あるミラーレスカメラの中でも最高の選択肢となると考え購入に至った。実際に使ってみても文句の付け所はなく、非常に魅力的なカメラだと感じている。今や私のメインカメラの一つとなったZ fを、ポートレート撮影の視点から解説していこうと思う。

見た目のカッコ良さに大満足

マウントアダプター「TZM-02」を使いライカのズミルックスを装着。Z fのクラシカルな見た目にもマッチした組み合わせだ。

元々写真を撮り始めた頃にニコンのフィルムカメラ「New FM2」を購入して使っており、当時のデザインやフォルムを引き継いだZ fには自然と惹かれるものがあった。名機とも言われるFM2の無骨なフォルムを細部まで再現しており、クラシカルなルックスは往年のカメラファンにもレトロ回帰している若年層にもウケがいいだろう。老若男女が使えるデザイン性の高さはZ fの大きな特徴だ。

首から下げていてもお洒落に決まるので、ファッション感覚で持ち歩けるのも嬉しい点だ。しかも今回は、普段から愛用しているライカのズミルックスM f1.4/35mm ASPH.とズミルックスM f1.4/50mm ASPH.の2本を組み合わせており、ボディとレンズの見た目のマッチングも素晴らしい。レンズも小型なので街に溶け込んでスナップを撮るのにも最適だ。

こういったライカレンズやオールドレンズとの組み合わせでZ fを楽しんでいる人は身の回りに多いように感じるし、ニコンもそこを狙っているのではないだろうか。特にZ fはMFレンズでも被写体検出が可能で、かつ強力なボディ内手ブレ補正もあるのでオールドレンズでも安心して撮影することが可能だ。

ちなみにマウントアダプターはTECHART(テックアート)の「TZM-02」を使用している。ライカMマウントレンズをニコンZマウントのカメラでAF動作させる電子マウントアダプターだ。MFレンズであるライカのズミルックスがAFで使えるようになるとは、なんて魅力的だろう。正直言って安くはないアダプターだが、ライカレンズを使うユーザーならぜひ一度試してほしい製品だ。

理想的な操作性

■撮影機材:Nikon Z f + NIKKOR Z 40mm f/2 SE

New FM2を10数年使っていたこともあり、Z fを初めて手に取ってもすぐにその操作感に慣れることができた。軍幹部にあるダイヤルを操作する感覚は体に染みついており、ファインダーを覗きながらカチカチとダイヤルを回して瞬時に最適な設定で撮影することができる。フィルムカメラを長年使ってきた身からすると、何一つストレスのない操作性だ。

カメラに搭載されたシャッタースピードとISO感度のダイヤル、そしてズミルックスの絞りリングという3つを動かしながら、そのシーンで最適なものを選んでいく。こういったマニュアルな動作がさらに写欲を高めてくれる感じがして、撮っていて気分が上がるのもZ fの魅力のひとつだ。

瞬時にモノクローム撮影ができるのもZ fの特徴

ボディの重さは約710gで、今まで中判デジタルなど大型カメラも愛用してきた筆者からすると驚くほど取り回しが良い。FM2とは違って指がかかるグリップも備わっており、軽量なカメラとあって浅めなグリップでも撮影時のストレスは無い。むしろこれ以上大柄なグリップになってしまうと見た目のバランスが悪いので、絶妙なフォルムに仕上げているなと感心する部分だ。

瞬時にモノクローム撮影に移れる専用のレバーも便利だ。メニューから選ぶような煩わしさがなく、レバーをカチッとスライドするだけの簡単操作でモノクロになるので積極的に使いたくなる。モノクロ表現を取り入れることで作家性も高めてくれるし、特にスナップなどで光と影の陰影が美しいシーンではこのモノクロームが大活躍するだろう。

バチっと瞳にピントが合う被写体検出

冒頭でも言ったようにマウントアダプターのTZM-02によってズミルックスをAF化し撮影しているわけだが、使う前は半信半疑でどこまで使い物になるのか心配だった。しかし、マウントアダプターを装着してもZ fのAF性能が落ちることはなく、高速でフォーカスしてくれることに驚いた。あのズミルックスがこんなに瞬時に合焦するとは夢のようである。

ポートレート撮影ということでピントは基本瞳に合わせるが、Z fの被写体検出は非常に優秀で、フォーカスはカメラ任せでどんどんと撮っていける楽しさがある。魅力的な表情や雰囲気を引き出すために、横顔や俯いた角度、髪の毛が顔にかかるシーン、室内や逆光で顔が暗くなるシーン、様々なシチュエーションで撮影を行ったが、AFの検出枠がモデルさんの瞳から外れることは一切なかった。

常に瞳を捉え続けてくれ、場合によっては左右の瞳をセレクターで選べるので意図した写真も撮りやすい。もちろん後から拡大してみてもバチっと瞳にピントがきているので、安心してカメラ任せで撮ることができた。加えて、モデルさんの全身が写るような引きのシーンでも高精度に顔を検出してくれるので、撮影するときは構図決めだけに集中するだけでいい。

暗い環境でも瞳AFが外れないと書いたが、そんなシーンにおいてはZ fの強力なボディ内手ブレ補正も撮影を助けてくれた。Z fとズミルックスの組み合わせがかなりコンパクトで手ブレしにくいのもあるが、シャッタースピードを1/15秒くらいまで落としてもブレずに撮影することができるので、暗い室内でも特に気を遣う必要なく撮影できたのが良かった。

ポートレート撮影でも役立つ追従性能

Z fを導入した理由の一つに、今年はモデルさんに動きのある作品撮りがしたいというのがあった。というのも以前から愛用しているライカのカメラではMFしか使えず、歩いたり走ったり振り向いたりといった動きを瞬時に捉えるのが難しく、どうしてもモデルさんに一瞬止まってもらう必要があったのだ。

Z fのAF性能は上位機種のZ 9やZ 8と基本的に同等ということで、モデルさんに動いてもらっても瞳を捉えたままピントを外すことはなく、パシャパシャと気持ちよくシャッターを切っていける。連写性能も申し分ないので、動きの中で揺れる髪の毛の位置などもベストなものを選択できるのが嬉しい。もちろん一連の連写中に不意にピントが外れるようなこともなかった。

これならポートレートだけではなく、家族や友人と散歩をしながらパッとカメラを構えて撮るような、お互いに動きのある中でもその瞬間を逃さず撮影することができる。そんな日常のシーンも気軽に確実に撮り収めることができるのはZ fの魅力だろう。

優れた色再現性

画質に関しても作品を作る上で何も不満はなく素晴らしいと思う。その中でも特に発色の良さが好印象だ。今回の作品で言えば雪の中で映えるマフラーやモデルさんを引き立てる着物、季節を感じる紅葉など赤の色味がキレイに表現できていると思う。もちろん赤かぶりも無く、画面全体でクリアな描写をしているのが分かるだろう。

色乗りが良いので人物の肌は若干黄色みが強い感じがするが、逆にそれが好きな人もいるので特に気になるほどではない。色が強めに出るのは現代のミラーレスの特徴だろうか。光をくっきりと写してくれるので、斜光や逆光でも陰影を活かしたモデルさんが引き立つ描写ができていると思う。

ちなみにZ fはZ 8と同等の優れた防塵・防滴性能を有しており、このように雪が降ってカメラが濡れるような状況でも全く問題なく動作してくれた。見た目はお洒落なカメラだが、信頼性の高い作りになっておりタフな撮影にも安心して連れ出すことができた。

さいごに

デザインに惚れ込んで購入したZ fだが、ポートレート撮影でも高性能ぶりを発揮してくれ、最近使ったミラーレスカメラの中では群を抜いて良い製品だと感じられた。最新の被写体検出やAF性能は人物撮影をより快適なものにしてくれ、自身の作品の幅も今まで以上に広げていけそうだ。

私のようにマウントアダプターを使って、お気に入りのライカレンズやオールドレンズを最新機種で楽しみたいユーザーには特におすすめで、これだけの性能があればポートレートだけではなくあらゆるシーンに対応してくれる万能モデルとして活躍することだろう。

 

 

■モデル
KOTONE(@kotonefromjapan
北川朋果(@tomoka_0605
まゆめ(@mayume73
ふうこ(@fuko_photo
白川うみ(@umiiiii17
春日久瑠実(@kuuurumin321
加藤みゆ(@katomiyu612
橘エマ(@tachi_emma64

 

■写真家:高橋伸哉
スナップからポートレートまで幅広く撮影をする写真作家。写真集「impermanence」、書籍「写真からドラマを生み出すにはどう撮るのか?」「情景ポートレートの撮り方」など出版。共同執筆の書籍も多数。
写真教室も定期的に開催しており常に満員になるほどの人気。最近ではインドやタイを旅をしており世界中でスナップを撮るなど自分の好きを追求して写真を撮る日々。

 

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