ニコン「Z fc」はブラブラスナップが面白い!|三井公一
大人気のニコン「Z fc」は街の遊撃手
ニコンの「Z fc」が話題になっています。その美しいデザインは発表と同時に予約が殺到しました。発売後ひと月ほど経ちますがバックオーダーがいまだに解消しないほど人気です。
それもそのはず。このカメラは見た目もバツグンですが、本当に写真を撮るのが楽しく、撮り手をワクワクさせてくれるからです。画質に定評がある「Z 50」と同等の写り、アナログ機のようなわかりやすい操作感、どこまでも持って行ける軽さと小ささなど、魅力がたくさん詰まっているのです。なので必然的に街へと連れ出すことが増え結果的にいい写真が撮れる、というわけなのです。これで人気が出ない理由がありませんね。
「Z fc」のスペックをおさらい
そんな人気者の「Z fc」のスペックを確認してみましょう。
・レンズマウント:ニコン Z マウント
・総画素数:2151万画素
・有効画素数:2088万画素
・撮像素子:23.5×15.7mmサイズCMOSセンサー ニコンDXフォーマット(APS-C)
・手ブレ補正:レンズ手ブレ補正 レンズシフト方式(VRレンズ使用時)
・低速連続撮影:約1~4コマ/秒
・高速連続撮影:約5コマ/秒
・高速連続撮影(拡張):約11コマ/秒 ※ ニコン試験条件での最大撮影速度
・記録媒体:SDメモリーカード、SDHCメモリーカード、SDXCメモリーカード(SDHCメモリーカード、SDXCメモリーカードはUHS-I規格に対応)
・ファインダー:電子ビューファインダー、0.39型XGA OLED、約236万ドット、明るさ調整可能(オート、マニュアル7段階)、カラーカスタマイズ可能
・視野率:上下左右とも約100%(対実画面)
・倍率:約1.02倍(50mmレンズ使用時、∞、-1.0m-1のとき)
・モニター:バリアングル式3.0型TFT液晶モニター(タッチパネル)、約104万ドット、視野角170°、視野率約100%
・ISO感度:ISO 100~51200(ステップ幅:1/3ステップ)、ISO 51200に対し約1段(ISO 102400相当)、約2段(ISO 204800相当)の増感、感度自動制御が可能
・寸法(幅×高さ×奥行き):約134.5×93.5×43.5mm
・質量:約445g(バッテリーおよびメモリーカードを含む、ボディーキャップを除く)、約390g(本体のみ)
・付属品:Li-ion リチャージャブルバッテリー EN-EL25、バッテリーチャージャー MH-32、ストラップ AN-DC23、ボディーキャップ BF-N1、接眼目当て DK-32
スペックから読み取れるように、Z fcはデザイン性に優れているだけでなく、APS-Cフォーマットで高性能かつ軽量コンパクトなミラーレス一眼カメラだということがわかりますね。写りは評価の高いZ 50と同等なので問題ないでしょう。2088万画素のセンサーは画像処理エンジン EXPEED 6とともに、精細感あふれ豊かな写真をキャプチャー可能です。何よりも採用する大口径、ショートフランジバックのニコン Z マウントは、優れた光学性能のNIKKOR Zレンズがラインアップされており、明るさ、解像度、ピント精度、ボケの美しさをZ fcで堪能できます。
オートフォーカス性能も魅力です。人物だけでなくペットのネコやイヌにも対応した「瞳AF/動物AF」は、動き回る被写体でも高速かつ正確にフォーカスしてくれます。これにAF/AE追従で最大約11コマ/秒の高速連続撮影(拡張時)と、シャッターチャンスを逃さない仕様がうれしいですね。高感度もISO 100~51200と強いです。さらに拡張することもできますよ。
中身は最新のミラーレス一眼カメラですが、Z fcのルックスは往年のフィルム一眼レフ・ニコンFMシリーズのようです。手に取ってみるとわかりますが、大きさや重量感、とくに薄さがそれを彷彿とさせます。軽快感がありいつでもどこにでも持ち出せるコンパクトさが魅力になっています。軍艦部に目を移すとアナログなダイヤルが並んでいます。各々のシャッタースピードダイヤルやISO感度ダイヤルは、節度感高くなっており使いやすくなっています。カチカチとセッティングするのが楽しくなってきますね。
初心者は「カッコいいけどダイヤルがわからない!」と思ってしまうかもしれませんが、撮影もカメラに全てお任せの「AUTO」モードがあるので安心です。これにセットしておけばあとはシャッターを切るだけ!Z fcを被写体に向けてドンドンと写真を撮影しましょう。上級者は「P」「S」「A」「M」とおなじみのモードがあるので、表現手法に応じて切り替えて撮影すればいいでしょう。露出補正ダイヤルもあるのでカンタンに明るさも調節可能です。
また、ニコン「Z」として初採用となるバリアングル式の液晶モニターも特徴です。クルリと回してセッティングをして、ローアングルやハイアングル時だけでなく、セルフィー(自撮り)も可能になっています。これなら4KムービーモードでYouTube用のクリップもラクに撮影することもできますね。スゴいのはインスパイアしているニコン「FM」シリーズの雰囲気を損なわず、薄いボディのままバリアングル液晶モニターを実装したところでしょう。ニコンの技術力がキラリと垣間見えました。Z fcはデザインと技術が融合したミラーレス一眼カメラなのです。
「Z fc」でブラブラ実写!描写バツグン!
肩から提げて歩くだけでフォトウォークが楽しくなるZ fc。同時に発表された「NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR」と「NIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)」をつけてブラブラとスナップ撮影してみました。
Z fcは本当に小さくて軽いので、ちょっとしたお出かけや散歩にも気軽に連れ出せます。特にNIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)とのマッチングは最高です。「Creative Picture Control」のセピアで小旅行を演出してみました。いい雰囲気です。
クラシカルなルックスのZ fcですが、中身は最新のミラーレス一眼カメラです。速く正確なオートフォーカスと的確なホワイトバランスと露出は、旅のワンシーンをしっかりと捉えてくれました。シャープかつリアリティのある描写は記憶より鮮明です。
Z fcにテイストを合わせたNIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)は写りも極上です。瓦にググッと寄って、F2.8の絞り開放でシャッターを切りましたがご覧のようなリッチなボケ感となりました。ピンポイントのフォーカス位置とシルキーな”Bokeh(ボケ)”が魅力的ですね。
ニコン「Z」シリーズ初となるバリアングル式液晶モニターはなかなか使いやすいです。このようにノラネコをローアングルで撮るときに威力を発揮しました。もちろん「動物AF」も効果バツグン!しっかりとその瞳を捉えてくれました。素晴らしい。
Z fcの描写がとても気に入りました。Z 50と同等の質感表現は実に豊かで精細感あふれています。小旅行でのワンカットですが、錆びた郵便受けと朽ちた壁、そしてシダの様子を克明に捉えてくれました。ルックスが注目されますが、その実力も申し分ありません。
とても軽く小さいZ fcは、旅はもちろん散歩にも気軽に持ち出せるカメラになっています。動作のレスポンスもよく、「あ!」と心が動いたシーンを直ぐさま撮影可能です。こちらも小旅行でのカットですが、オートホワイトバランスが的確で見た目同様に撮影できました。初心者でも安心して使えるカメラになっています。
有効2088万画素のセンサーは実にシャープに思い出を記録してくれます。湖上をいくボート、対岸の木々、青い空など、フォトグラファーが受けた印象そのままにキャプチャーしてくれます。発色も素晴らしく、オールマイティーに使える1台でしょう。
NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VRの写りも秀逸です。16mmワイド端でのカットですが、湖面の波の様子、手前の緑の解像感、遠景の対岸まで申し分ない描写ですね。これで重量約135gというのですから驚きです。沈胴機構なので携行時にコンパクトになるのもいいですね。
同じくNIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VRでのカットです。苔むした岩の上にトカゲを発見してシャッターを切りました。一瞬の出来事でしたが。Z fcとこのレンズはその瞬間を鮮明に捉えてくれました。実に機動性の高い組み合わせと言えるでしょう。トカゲの身体と苔の描写が見事です。
Z fcとNIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VRは日常的なシーンを余すところなく撮影可能でしょう。フルサイズ換算24mm〜75mm相当なので、スナップやポートレート、風景までカバーできます。このカットは箱根・芦ノ湖でのものですが、遊覧船と湖上の鳥居までシャープかつ色鮮やかに撮影できました。富士山が雲に隠れていたのが残念でしたね。
まとめ
ニコン「Z fc」はその美しいデザインがとても魅力です。眺めているだけでも楽しいですし、手に取ってもニヤニヤが止まらないですし、シャッターを切っても楽しいカメラに仕上がっています。見た目、使い勝手、撮り心地、そして描写が高次元にまとまったスタイリッシュなミラーレス一眼カメラだと言えるでしょう。広い世代に受け入れられて大人気になるのも納得できます。
このカメラがあれば、撮影するという行為が今以上に深く豊かになるのは間違いありません。ぜひキタムラの店頭で実機を手に取って、そのオーラを体感してみてください。
■写真家:三井公一
新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。雑誌、広告、Web、ストックフォト、ムービー、執筆、セミナーなどで活躍中。有限会社サスラウ 代表。
ニコン Z fcはこちらの記事でも紹介中
■ニコン Z fc レビュー|上田晃司
https://www.kitamura.jp/shasha/article/482757772/