ニコン Z50IIで描く旅と日々のスナップ
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はじめに
Nikon ZシリーズのAPS-C規格のカメラとして、最近ではZ 30を所有し使っていましたが、やはりファインダーが欲しい!と思うことが多々ありました。そんな中で遂に発表されたZ50IIは、個人的にはまず真っ先にファインダーがあることが嬉しかったのですが、機能面でも驚くような進化を遂げており、迷わず予約を入れました。今回はそんなZ50IIの、発売から数ヶ月使ってみた印象をご紹介いたします。
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■撮影環境:Aモード, F4.2, 1/1600秒, -0.3段, ISO 640, WBオート, PC:Hidamari Color
多彩なピクチャーコントロールとイメージングレシピ
Z50IIの特徴のひとつに、色の仕上がり設定である「ピクチャーコントロール(PC)」の表現の幅が大きく広がったことが挙げられます。まず、DX機(APS-C規格)としては初めて「イメージングレシピ」に対応し、クリエイターが監修した様々な仕上がり設定を取り入れた絵づくりができるようになりました。また、ピクチャーコントロールの独立したボタンが搭載され、手軽に設定の変更ができるようになったことも大きな特徴です。
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クリエイターの個性が反映されたイメージングレシピは、昨年発売されたZ6IIIでも使うことができるものの、正直なところこれまでまともに使ったことがありませんでした。ですが今回、本機種の筆頭に挙げられる特徴のひとつとしてこの機能があることから、初めて真面目に使ってみることにしました。そしてその結果……「めっちゃ、ええやん!」というのが正直な感想でした。(笑)
▼PC:スタンダード
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■撮影環境:Aモード, F5, 1/250秒, +1.0段, ISO 200, WB自然光オート
▼PC:Kota-Green
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■撮影環境:Aモード, F5, 1/320秒, +0.7段, ISO 200, WB自然光オート
▼PC:Tender Clear
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■撮影環境:Aモード, F5, 1/500秒, 0段, ISO 200, WB自然光オート
▼PC:Turquoise Blue
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■撮影環境:Aモード, F5, 1/500秒, 0段, ISO 200, WB自然光オート
▼PC:Hidamari Color
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■撮影環境:Aモード, F5, 1/500秒, 0段, ISO 200, WB自然光オート
それぞれのレシピにかなり個性があり、被写体によって合う、合わないがあるのでレシピを選ぶ必要がありますが、それはもともと搭載されているクリエイティブピクチャーコントロールでも同じ。ファインダーやモニターで随時確認しながら設定を変えて、その被写体や自分の気持ちにピッタリな設定を探していく楽しさがあります。ちなみに筆者は「Hidamari Color」がかなり気に入り、使用頻度が高くなりました。尚、このイメージングレシピはNikon Imaging Cloudからダウンロードしてカメラに取り込む作業が必要です。
この「Hidamari Color」はコントラスト低めでやわらかく、また透明感のある仕上がりとなっていて、自然のものから街なかのスナップまで、幅広く使える印象です。
▼PC:スタンダード
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■撮影環境:Aモード, F5.6, 1/60秒, -0.3段, ISO 400, WB自然光オート
▼PC:Hidamari Color
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■撮影環境:Aモード, F5.6, 1/60秒, -0.3段, ISO 400, WB自然光オート
▼PC:ビビッド
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■撮影環境:Aモード, F5, 1/640秒, -0.3段, ISO 640, WBオート
▼PC:Hidamari Color
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■撮影環境:Aモード, F5, 1/640秒, -0.3段, ISO 640, WBオート
また、白黒の仕上がりもシンプルなモノクロームに加えてフラットモノクローム、ディープトーンモノクロームが追加されており、手軽に3つのトーンを楽しむことができます。
進化したオートモードと被写体検出機能
絞り・シャッター速度・ISO感度といった露出から、ホワイトバランス、そしてピント合わせまで、カメラにまるっとお任せできるオートモード(フルオート)は、カメラ初心者さんにはとても便利な機能であるものの、カメラの扱いに慣れてくると使わなくなるモードではないかと思います。
その理由はなんといってもカメラの決めた設定から動かせない、思い通りの設定で撮れない、ということですが、Z50IIのオートモードでは露出補正で明るさの調整ができ、ピント合わせの設定(フォーカスモード・AFエリアモードと被写体検出設定)も変えられます。そしてピクチャーコントロールも変更できることから、前述のイメージングレシピを使った撮影も楽しむことができます。
日頃はほぼ使うことのないオートモードですが、これを機に使ってみました。まず、マネキン人形ではありますが被写体検出機能により人として認識、迷わず顔にピントを合わせてくれました。また走り去る人力車にカメラを向けた際に、画面のどこにピントを合わせるかはカメラ任せのオートエリアAF設定でしたが、ちゃんと主役となる人力車にピントを合わせてくれました。
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■撮影環境:オートモード, F3.5, 1/160秒, 0段, ISO オート(400), WBオート, PC:オート
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■撮影環境:オートモード, F5.6, 1/250秒, 0段, ISO オート(125), WBオート, PC:オート
暗い時間帯は撮影が難しいシチュエーションですが、自動的にISO感度を上げてくれたり、ピントもカメラ任せできちんと合わせてくれたりと、夜の撮影のハードルが下がる印象でした。
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■撮影環境:オートモード, F8, 1/30秒, -1.3段, ISO オート(640), WBオート, PC:オート
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■撮影環境:オートモード, F5.6, 1/60秒, 0段, ISO オート(2800), WBオート, PC:Sunset Glow
また、 DX機の被写体検出機能はこれまで「人物」「動物」の2種類でしたが、「人物」「動物」「鳥」「乗り物」「飛行機」に増えました。更に「人物」では顔・瞳・頭部・胴体を、「動物」では犬・猫、「乗り物」では車・バイク・自転車・列車を検出してくれます。
尚、この被写体検出を「オート」にしておくことでカメラ任せでのピント合わせも可能です。ちなみにこの機能を有効的に使うには、AFエリアモードを「ワイドエリアAF」「オートエリアAF」、3D-トラッキング(静止画モードかつAF-C時のみ)、ターゲット追尾AF(動画モードのみ)にしておく必要がありますのでご注意を。
雪の中を走ってくる電車を撮影。迷わず正面にピントを合わせてくれています。
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■撮影環境:Aモード, F5.3, 1/200秒, +1.7段, ISO 1000, WB曇天, PC:スタンダード
猫のみならず、牛に対しても被写体検出機能が働き、目にピントを合わせてくれました。
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■撮影環境:Aモード, F5.6, 1/1250秒, +0.3段, ISO 800, WB自然光オート, PC:スタンダード
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■撮影環境:Aモード, F5.6, 1/25秒, -0.7段, ISO 800, WB自然光オート, PC:スタンダード
バリアングルモニターでローアングルの縦位置写真も撮りやすく!
初代のZ 50はモニターがチルト式でローアングルの縦位置が非常に撮りづらいことが難点でした。Z fcとZ 30はバリアングルモニターとなりましたが、Z fcはホールド感と操作性よりもクラシカルなデザインが優先となっており、Z 30はホールド感と操作性はよいものの、ファインダーがない!と、個人的にはそれぞれに小さな「あとちょっと足りない感」がありました。
それが今回、遂に「ファインダーがありつつ、バリアングルモニター搭載で操作性も申し分なし」と、いいところ取りとなり、これでファインダーを覗きながらの撮影からローアングルでの縦位置写真まで、どちらでもストレスなく撮れるようになりました。
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■撮影環境:Aモード, F3.5, 1/40秒, -0.3段, ISO 400, WB 4170K, PC:スタンダード
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■撮影環境:Aモード, F8, 1/320秒, +0.3段, ISO 200, WB自然光オート, PC:スタンダード
「その瞬間」を逃さないプリキャプチャー機能
鳥が飛び立つ瞬間を狙ってじっと待ち続け、ようやく飛び立った!と同時にシャッターを切っても時すでに遅し……。なんて経験のある方も多いのではないでしょうか。そんな場面で大活躍してくれるのがプリキャプチャー機能です。シャッターボタンを押し込んで撮影する前、つまりシャッターボタンの半押し状態の間も裏側で撮影してくれており、シャッターボタンを押し込んだ瞬間から遡って記録してくれるといった機能で、鳥が飛び立つ場面やスポーツ撮影などの決定的瞬間の撮影に適しています。
尚、撮影にはメニュー内「カスタムメニュー」の「d3 プリキャプチャー記録設定」で設定を行うことに加えて、レリーズモードを「ハイスピードフレームキャプチャー+(C15 または C30)」に設定する必要があります。ちなみに、iボタンを押した際に表示される項目に、iメニューのカスタマイズでこの機能を追加することができるため、よく使う方は登録しておくと非常に便利です。
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■撮影環境:Aモード, F5.6, 1/1000秒, 0段, ISO 800, WB オート, PC:Hidamari Color
旅と日々のスナップ
最後に地元・関西と、年明け早々に訪れた北陸旅のスナップをいくつかご紹介いたします。
大阪・御堂筋のイチョウがきれいな時期にスナップして歩いた際の1枚。色の仕上がり設定をイメージングレシピの「Hidamari Color」を用いたことで、全体的にやわらかい印象の中で背景のビルや後ろ姿のカップルのコートの色も青みがかり、イチョウの黄色を引き立ててくれました。
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■撮影環境:Aモード, F5.3, 1/400秒, +0.7段, ISO 400, WB オート, PC:Hidamari Color
神戸・ポートタワーの展望デッキから見下ろすと、ちょうど港めぐりの船が帰ってくるところでした。休日の夕方ということもあり、クリエイティブピクチャーコントロールの「サンデー」でちょっとまったりした印象の仕上がりに。
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■撮影環境:Aモード, F8, 1/125秒, -0.7段, ISO 400, WB 自然光オート, PC:サンデー
もともと全体的に赤い色のポートタワーですが、水平面は白い構造物でできています。そして通常のライトアップは白いライトが使われるところ、この日は特別に赤いライトで照らされていました。結果、この日はすべてが赤く、暗い夜空に赤が映える写真となりました。望遠側の72mm(35mm判換算108mm相当)、ISO感度1000、シャッター速度は1/25秒とかなり遅めですが、手持ちでもブレずに撮影することができました。
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■撮影環境:Aモード, F5.3, 1/25秒, -1.3段, ISO 1000, WB オート, PC:スタンダード
橋の周囲の電飾と奥の街灯に光条を出したくて絞りをF16まで絞り、ISO感度は6400に上げ、こちらも手持ちで撮影。1/2秒、手持ちでがんばりました!(笑)
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■撮影環境:Aモード, F16, 1/2秒, -1.3段, ISO 6400, WB自然光オート, PC:スタンダード
年明けに北陸・富山へ行きました。日頃あまり雪に馴染みがない地域に住んでいるので、この雪景色についテンションが上がってしまいました。小型のカメラだと荷物が軽くて済むのと同時に、旅の途中のちょっとした撮影もしやすい点がよいですね。
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■撮影環境:Aモード, F5.3, 1/400秒, +1.0段, ISO 400, WB自然光オート, PC:ビビッド
「日本のベニス」とも呼ばれる射水市の内川へ。ですが、この日はあいにくのお天気で撮影もなかなかままならず……。霙混じりの雪?雨?に悩まされたものの、防塵・防滴に配慮された設計となっていることから、ずぶ濡れにはならないように気を配りつつも、少々濡れることはあまり気にせず撮影することができました。
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■撮影環境:Aモード, F6.3, 1/640秒, +1.3段, ISO 400, WB自然光オート, PC:スタンダード
ほんの時折、雲が切れて青空が顔を出してくれました。貴重なその瞬間を逃さず撮影。ここはまた改めて訪れたい場所ですね。
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■撮影環境:Aモード, F8, 1/800秒, +1.3段, ISO 400, WB自然光オート, PC:ビビッド
本当はこの新湊大橋の向こうに壮大な立山連邦が見える予定だったものの……残念!ですが、この橋がとにかくカッコよく、道路の雪で季節感を出しつつ、クリエイティブピクチャーコントロールの「グラファイト」でコントラストの高い白黒にしてみました。
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■撮影環境:Aモード, F5.6, 1/100秒, +1.7段, ISO 400, WB曇天, PC:グラファイト
まとめ
小型・軽量でファインダーがあり、モニターはバリアングル式。センサーサイズはAPS-C規格ながらも、機能面ではフルサイズであるFX機の中でも上位クラスのものにも劣らないくらいと言えるほどの高スペックを誇るZ50IIは、FX機の価格と比較するとかなりお手頃でコストパフォーマンスのよいカメラといえるのではないでしょうか。多くの一眼カメラユーザーにとって、日常使いから旅のお供に非常にオススメの一台として推したいと思います。
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■撮影環境:Aモード, F6.3, 1/50秒, +0.3段, ISO 640, WB自然光オート, PC:Hidamari Color
■写真家:クキモトノリコ
学生時代に一眼レフカメラを手に入れて以来、海外ひとり旅を中心に作品撮りをしている。いくつかの職業を経て写真家へ転身。現在はニコンカレッジ、オリンパスカレッジ講師、専門学校講師の他、様々な写真講座やワークショップなどで『たのしく、わかりやすい』をモットーに写真の楽しみを伝えている。神戸出身・在住。晴れ女。
公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員