ニコン Z6IIIと高倍率ズームレンズで楽しむエジプトの旅
はじめに
2024年7月12日に発売された「Nikon Z6III」は、有効画素数2450万画素、DCI-P3相当の広色域に対応した576万ドットの高解像度EVFを搭載した、フルサイズミラーレス機です。今回は、この「Nikon Z6III」と、旅行に便利な高倍率ズームレンズ「NIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VR」を持ってエジプトを旅してきました。
細部まで見やすく確認しやすい高性能EVF
エジプトの夏は日本の夏よりも暑く、首都のカイロでは最高気温が40度近くなることも稀ではありません。太陽も東京より近いというか、大きいというか、存在感をとても感じます。このスフィンクスがあるギザの3大ピラミッドの辺りも、日陰なんて当然のようにありません。
そのような明るすぎる撮影状況で苦労するのが、背面液晶が見辛い問題です。ですので、エジプトでの撮影はEVFを多用しました。
本機に搭載されているEVFは576万ドットの高解像度で、歪みや色収差を抑えて、細かい箇所までクリアーに確認することができます。DCI-P3相当の広色域に対応した最新のEVFは、撮影時も、再生時も「自分、写真上手くなったのかな?」と思ってしまうほど、とても綺麗な描写で感動しました。
ファインダーの設定を変更すれば、ミラーレスカメラ史上最高(2024年6月17日現在)の4000cd/m2の明るさに設定することも可能で、周囲が明るくて視認性の悪い状況でも、被写体の細部まで確認しながら撮影できます。
400mmの最望遠で、ギザの大スフィンクスの目とあごの部分をアップで撮影してみました。石灰岩を切り出して作られたその顔は、12世紀にアラブ語で「アブ・ホル(恐怖の父)」と呼ばれた畏怖のイメージに近いような、昔は付いていたという、ファラオが付けるような長いあごひげを取られて、ちょっとかわいらしいイメージになってしまったような。手持ちでも400mmの望遠カットが撮れるので、同行者にも顔のアップをその場で見せることができました。
レスポンスの速さと手ブレ補正でシャッターチャンスを逃さない!
まだ朝日が昇る前の早朝に訪れた、アブ・シンベル大神殿。正面の入口には青年期から壮年期までの、約20mの巨大なラムセス2世像が4体並んでいます。この神殿は、約3300年前に岩山を掘って作られた巨大な岩窟神殿で、世界遺産に認定されています。
写真内には人が写っていませんが、有名な観光地なので周りには沢山の人がいます。人が途切れた瞬間を狙って、さっと撮影しました。ニコンはどのカメラもそうですが、電源を入れてから撮影までのロスタイムがほとんどないので、シャッターチャンスを逃さずにすみます。
神殿の最深部には、年に2回だけ朝日の光が届く至聖所があります。右からラー・ホルアクティ神、神格化されたラムセス2世、王の守護神アメン・ラー、メンフィスの守護神プタハの順で並んでいます。このときは朝日が差し込む日ではありませんでしたが、座像はそれらしくライトアップされています。
一番左のプタハ神は、地下に住む冥界の神と言われているので、実際の太陽の光も届かない設計になっており、ライトもわざとプタハ神を照らさないようにしていました。
神殿内は結構暗く、観光の目玉である至聖所は並んで順番に撮影して、撮ったらすぐに移動するほどの流れ作業での撮影でしたが、手ブレ補正に助けられて難なく撮影できました。朝4時半起きだったので……報われました。
クルーズ船での撮影
アスワンからルクソールへは、クルーズ船で観光を兼ねながらゆっくりと移動しました。まだ朝日が昇りきらない早朝、甲板へ出て撮影。右下に写っているヌビアの子供たちは、サーフボードに乗って、板のようなもので漕いで進んでいます。停泊している船からの撮影なので揺れはないのですが、かなり薄暗かったのでISOを上げて撮影しています。
波の少ないナイル川ですが、船の速度が上がっているときは、100mm以上の画角になると不安を感じましたが、私の体感とは裏腹に、撮影した写真にブレを感じることが少なかったのは、カメラボディとレンズの高い手ブレ補正効果のお陰でしょう。
明るくて、そして暗いイシス神殿
アスワンハイダム建設で水没の危機にあったイシス神殿は、島ごと移転されていて、渡し船を使って行くことができます。列柱の黒ずみは、ハイダム建設前のアスワンロウダム建設で、半水没状態だったために変色してできたものだそうです。
列柱の変色具合と奥の塔門をクリアーに撮りたかったので、絞りをF11にして撮影。ピクチャーコントロールを風景にすると、光の当たっているところと影の部分のコントラストが高くなるので、メリハリの効いた画になります。
第1塔門を抜けた前庭には、ハトホル女神の顔が彫られた列柱がありました。お顔はかわいいのですが、耳が牛なのでちょっと奇妙。この写真を撮影したのは朝の10時頃ですが、影の強さでエジプトの太陽の強さをおわかりいただけそうですね。
本殿の中には、様々なモチーフが綺麗な状態で残っています。イシス神殿は屋根がしっかりしているお陰で、モチーフの保存状態が良いそうです。こちらはオシリス神を羽根で守るかのような、イシス女神のレリーフ。
光がほとんど入らない暗い室内のため、ISO感度を8000にして撮影しています。また室内は狭く、後ろへ下がれないことが多いので、このような壁面のレリーフは広角端の28mmで撮影することが多かったです。
エジプトで一番お勧めしたいもの
エジプトで印象強く美味しかったものが、マンゴージュースでした。レストランはもちろん、街なかのジューススタンドで、よく買って飲みました。ジュースと言うよりも、果肉がそのまま入っているようなドロっとしたテイストで、一瞬でなくなる美味しさです。
こちらは眩しくない室内と、お店の屋根があるところでの撮影だったので、背面液晶とタッチAFを使い、ピントを合わせたいところをタッチしてピントを合わせて、シャッターを切る方式で撮影しました。自分の意図する箇所にピントを合わせるのに、筆者が多用している方法です。
高倍率ズームレンズのセレクトは大成功!
エジプトの遺跡を巡っていると、とにかく見上げることが多い!遠くから見るのではなく、実際に中に入るのだから当然なのですが、数千年前の遺物を間近で見られる感動はもちろん、この大きな被写体をどうやってカメラの中に収めようかと、困惑するほど大きいことも多々あり。
今回、「Nikon Z6III」のパートナーとして「NIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VR」をメインレンズとして選択しましたが、これが大当たりでした。列柱の足元からの撮影も、遠くの船もこれ一本で捉えられて、最短撮影距離0.2mの近接撮影性能のお陰で、座ったまま料理の撮影も可能。治安的にレンズ交換に不安があるような場所でも、この一本で撮影すると心を決めてしまえば、ほとんどのものが撮影できました。
手持ちでの夜間撮影
クルーズ船の最終地、ルクソールの街の中心地にあるルクソール神殿。夕方から夜にかけて観光し、ライトアップを見ました。日が落ちるとかなり暗くなり、ライトアップといっても煌々と照らされる訳ではないので、ISO12800-20000と、かなりの高感度で撮影しました。
暗い状況での撮影に強い本機なので、AFのスピードには問題を感じませんでした。ちょっとノイズが気になるので、可能であれば三脚を使ってもっと低感度で撮影したいところですが、身軽に旅撮影が筆者のモットーなので、手持ち撮影の実力をご覧ください。
防塵・防滴仕様で砂漠での撮影もOK!
砂漠で一晩キャンプするツアーも体験してきました。黒砂漠では熱くて黒い砂にまみれて撮影し、クリスタルマウンテンではあちこちに転がっている水晶に興奮しながら、熱くて白い砂にまみれて撮影しました。防塵防滴で良かった……。
エジプトでは、このデーツ(ナツメヤシ)の実をよく見かけました。沖縄のバナナ並みにあちこちになっています。このデーツが中に入ったチョコレートのお菓子が、とても美味しかったです。
暑い国での撮影でしたがホットカード警告も出ず、砂漠の砂にも負けず、Nikon Z6IIIは18日間の旅を頑張ってくれました。ボディの大きさも斜め掛けのバッグに入るサイズで、治安の不安な場所でも持ち歩くことができました。これ以上大きかったら、ちょっと苦労したような気がします。タイトル通り、高い性能と利便性で、楽しい旅のアシストをしてくれたNikon Z6IIIでした。
■写真家:水咲奈々
東京都出身。大学卒業後、舞台俳優として活動するがモデルとしてカメラの前に立つうちに撮る側に興味が湧き、作品を持ち込んだカメラ雑誌の出版社に入社し編集と写真を学ぶ。現在はフリーの写真家として雑誌やWEB、イベントや写真教室など多方面で活動中。興味を持った被写体に積極的にアプローチするので撮影ジャンルは赤ちゃんから戦闘機までと幅広い。日本写真家協会(JPS)会員。