まるで海に潜って撮影したかのような写真が撮れる!?水族館撮影テクニックをご紹介
はじめに
多くの場合、水族館というと暗い部屋でお魚を見学する場所というイメージですよね。しかし最近のスマホやカメラ機材を使用すると暗い場所でも簡単に海に潜って撮影したかのような写真が撮れるのです。
この魚は熱帯の海域でよくみられる、レインボーカラーで絵になるマンダリンフィッシュ(日本名:ニシキテグリ)です。小さな魚ですがアップで撮影すると背景のボケも大きくなり、絵になります。小さな魚こそ、実はよく観察すると案外絵になる魚が多いです。見逃さないように。
最近の水族館事情
最近できた水族館はただ単に水槽に魚が泳いでいるような展示はしていない水族館が多く、魚が住んでいる自然環境に合わせた景観を考えて作られていますので、以下の写真のように本当の海や川で撮影したような雰囲気で撮影できる場所が多々あります。
この水槽は淡水魚の水槽であたかも実際の渓谷に居るような感じに見学できるように岩の色や質感、空気の泡などをうまく取り入れているので撮影するとご覧の通りです。
水族館撮影におすすめのカメラ機材
水族館の撮影でお勧めできる機材なのですが最近の最新スマホは暗いところでも撮影できるモードがあり、スマホの液晶で見るとびっくりするほど奇麗に撮影できますが最終的に大きなプリントをするときにはまだまだ解像度が足らないスマホが多いのです。ミラーレス一眼カメラならきちんとファインダーから目を離さずに作画しやすく、解像度も高いので展示用に大きくプリントしても奇麗なのでお勧めです。カメラ内部に手振れ補正機能があるカメラならより失敗しにくくなります。
推奨できるレンズは屋内撮影の場合、基本的にはより手ブレを少なくするため、広角気味でしっかり構えて撮影します。また、出来るだけ開放F値が明るい(数字が小さい)レンズが早いシャッタースピードを稼げて良いのですが、逆に開放F値が暗い(数字が大きい)レンズはシャッタースピードが遅くなり、動いている魚はブレすぎて失敗しやすくなります。その際、ISO感度を思いっきり上げてシャッター速度を速くする方法がありますがあまり上げすぎるとざらついた写真になりやすいです。また、極端に暗い水槽(深海)ではどうやってもブレますのでガラスの縁などを利用し、カメラを固定してシャッターを切るというような撮影方法もあります。
注意:水族館ではストロボは基本的には禁止のところが多いですし、使わないようにしましょう。動物にストレスを感じさせますし、もし、ストロボを焚いたとしても記念写真になりがちです。
今回筆者が撮影したカメラ:ミラーレス一眼カメラOM-D E-M1 Mark IIIはカメラ本体に強力な手振れ防止機能があり、本体は軽量で撮影がしやすいです。
※一部の写真はE-M1 Mark IIで撮影しています。
撮影レンズは主にM.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PROです。このレンズは高倍率ズームでしかも接写も得意とするレンズでガラス越しの撮影には便利です。
水族館撮影のポイント
水族館の撮影では場所によっては狭い通路で撮影することとなりますから、三脚を広げてじっくりというスタイルは一般見学者の邪魔になりやすいので手持ち撮影を推奨します。まずは受付で水族館マップを貰いましょう。マップには地図のほか、餌やりイベントなどの開催時間が記載されていますので撮影にまわる順番を決めるには好都合です。
水槽に着いたらまずはインフォメーションを見て、魚を観察することをお勧めします。どんな動きでどんな生体かがわかることでその被写体の興味が倍増し、撮影するモチベーションも上がります。
主にガラス越しでの撮影となりますのでレンズをガラスにぴったりと付けると反射なく撮影できますがレンズを動かすことが出来なくなりますから画角が制限されます。その際、ゴム素材で出来たラバーレンズフードや忍者レフなどを取り付けると良いでしょう。
また、ガラスの反射をとるPLフィルターも効果的ですが暗い屋内だとシャッタースピードがより遅くなるので不向きです。明るい屋外での使用を推奨します。
混雑時など、水槽から離れて撮影する場合、じっくりとファインダーで水槽のガラス面の映り込みを確認して自分や、周りの建造物等ができるだけ目立たない角度で撮影します。また、場合によっては映り込みを逆に取り入れた作品も成功することがありますので映り込み=悪いというイメージを捨てることも考えてみるといいでしょう。この作例ように映り込みをわざと取り入れることで奇麗さが強調されることがあります。
大きな大水槽では悠然と大きな魚が泳いでいて圧倒されますが、水槽を見ている観客を取り入れることで物語性がプラスされた作品に出来ることがあります。この作例では大水槽の前に人が入り逆光になり、人がシルエットになり、また天井と床を多く取り入れることでハイビジョンTVを見ているような広がり感も強調出来ました。
動画を見ていただくと人物が入ると雰囲気が変わることを実感できると思いますので是非見てください。
■撮影場所:四国水族館
水槽の上部に強いライトがあると魚がシルエットになり、まるで太陽の下で魚が泳いでいるかのような写真が撮れます。
動画を見ていただくとわかりますがこの頭の形に特徴のある魚は常に早く動いているのであまりにブレすぎると何の魚か判別がつきにくくなるのでこの水槽では少しISO感度を上げつつ、露出補正をマイナスにしてシャッタースピードはある程度速くする必要があります。
■撮影場所:四国水族館
写真のように出来たばかりの水族館や、リニューアルした水族館はガラスや水も奇麗なので驚くほどクリヤーな写真が撮れます。あと、古くても水を変えたばかりの水槽も奇麗な写真が撮れますから事前に調べていくのも良いと思います。
水族館撮影テクニックあれこれ
クラゲの展示などはクラゲ自体が幻想的な被写体ですから、多重露出機能が付いたカメラならより幻想的な作品に仕上げることも出来ます。
この作例はカメラを多重露光モードにセットして1枚目はピントを合わせて撮影し、2枚目はピンボケにして撮影したものです。この撮影で注意したことは2枚目の撮影時に、1枚目の主役となるクラゲを配置してからピントのずらし加減でボケの大きさを調節してシャッターを切ることです。また、ライトの当たり具合でタコクラゲが真っ白になったりしますので、露出補正はその都度変更してきちんと模様がで出るようにしました。
最近の水族館の照明はLEDを使用した太陽光を基準となるように設計されている水族館が多いのでホワイトバランスはオートではなく、基本的に全ての場面は晴天(☀)マークで撮影しています。RAWで撮影して後から色温度を微調整すれば、より自分が表現したい色に仕上げることができるためです。このクラゲの写真はあえてピンク色を少し強調しました。
実際には以下の動画のように見えています。撮影当時、タコクラゲは沢山泳いでいなかったので多重を使うとタコクラゲの量を2倍に増やすこともできますよ。(多重露光の回数により3倍とか4倍とかもできるカメラがありますが重なった部分に違和感が出ることがありますので注意してください)
■撮影場所:四国水族館
動画を見ていただくとわかりますが、クラゲだけでもユニークな形なので絵にはなりますが静止画だと多重露出機能を使用して作品に変化を加えました。クラゲの水槽は暗いのでISO感度を多少上げつつ、露出補正をマイナス気味での撮影を推奨します。
また、水族館でしか表現できないユニークな展示物を取り入れた撮影も効果的です。水槽の周りが奇麗なピュアホワイトの壁でしたので額縁効果を考えてフレーミングしました。
動画を見ていただくとわかりますが、この水槽のアシカは同じ動作を繰り返しているのがわかります。ですので慌てず、じっくりとフレーミングをしてチャンスを待ちましょう。この撮影では額縁構図にするためにカメラ位置が真正面でしたのでPLフィルターなどで反射を防ぐことが出来ないですが、自分の足の影をわざと取り入れて作画してみました。
■撮影場所:四国水族館
この写真のように魚の紹介写真になりがちなときは自分の体の一部などを取り入れてみるアイデアも面白く表現できます。
まとめ
水族館なら外の天候に左右されず、寒い時には暖かく、暑いときには涼しく楽に気分よく撮影できる場所ですし、家族サービスにもお勧めです。また、いつ行っても同じ魚が展示しているとは限りませんので一期一会、是非その時に出会った気に入った被写体を出来る限り撮影してくださいね。最後に私が撮影した水族館写真を楽しんでもらえたら幸いです。
イトヒキアジはなかなか海に潜っても見られない絵になる魚なのですが、背景が黒でしかもペアで撮影できた時は大変嬉しかったです。この後、数か月後にもう一度この水族館に行ったのですが、もうイトヒキアジはいませんでした。
実際に瀬戸内海に潜るとこのような同じ光景を目にします。キヌバリとアマモのコラボとか瀬戸内に潜っても濁っててこんな感じにはなかなか撮影できないんですよ(;^_^A
テトラポッドにメバルが居る光景は釣り人やダイバーなら想像がつきますが実際、海に潜ってもこのような場所はやっぱり濁っていてなかなか撮影は出来ないんです。この作品はテトラの白い部分にメバルが来るチャンスを狙いました。
餌やりのタイミング時にモモイロペリカンが1匹の魚を巡って争っています。一瞬のチャンスでしたがモノに出来て良かったです。それにしても水が奇麗なのと大水槽の下から見られるこの展示方法には脱帽ですね。
大都会をまるで飛んでいるかのようなペンギン!静止画だと不思議な写真になりました。こちらも同じようなユニークな展示方法に脱帽。
最後に合わせて読みたい単行本をご紹介します。この本は全国の水族館を対象に沢山の素晴らしい写真と詳しい解説で構成されていて絵になりそうな魚や各水族館のアイドル的な魚の紹介など、これからどの水族館に行ってみようかな?と思う方にとても参考になる本です。因みに私も作品を提供しておりますので探してみてください^^。
■写真家:虫上智
1968年岡山県生まれ。高校を卒業後、写真家 緑川洋一氏に師事。地元のカメラ店で撮影業務などを学び2000年に独立。現在はスタジオ撮影、フォト講座、執筆、フォトコン審査、講演等を受け持つ。ライフワークでは心象風景、自然写真、水中写真を撮影。
日本写真家協会(JPS)会員、日本写真講師協会 認定フォトインストラクター、OM SYSTEMゼミ講師、フォトカルチャークラブ講師、フォトマスターEX(総合)一級