まるで童話のような写真が撮れる!?魅力的な創作写真を作る撮影テクニックをご紹介
はじめに
皆さんこんにちは。今回は夢の中の出来事のような、幻想的な創作写真が撮影できるというテーマで話していこうと思います。
まず、幻想的な写真というとどんなイメージを想像するかですが、一言でいえば私の場合、童話の世界観を表現した写真とでも言いますでしょうか。たとえばこのような感じの写真とか。
この写真は明治時代に造られた検潮台ですが、今ではまったく使用されていなくてぽつんと瀬戸内海に取り残されています。上部の空間に生い茂る木々を取り入れたことで物語性を出してみました。
そしてこんな感じの写真はいかがでしょうか。
こちらの写真は室戸岬に撮影に行った時のもので、両端に迫る岩礁の間に一人寂しく佇んでいる女性を撮影しました。海を少し入れ、空の空間を多く取り入れて望郷に馳せる女性の想いという感じを表現すべく、撮影しました。
どちらの写真も何か物語を感じさせてくれませんか?私の普段撮影している写真はこのような視点で撮影していることが多いです。
インスタ映え写真・映える写真の紹介
世間ではその時代に流行があり、写真にもその影響が多々あります。インスタ映え写真というのが最近流行りですが、簡単にいうと目を引く奇麗な写真を指しているように私は思います。
よく目にする光景といえば、壁に絵を描いてそこに立っていただいて写真を撮影すると雰囲気のよい写真になるというもの。例えばこんな感じです。
この写真はクリスマス頃の岡山市内のライトアップイベントです。アシスタントさんにお願いして翼の真ん中に立ってもらい、多重露光機能を使用してソフトフォーカスにして幻想的にしました。周りの風景を多く取り入れてこれから空に羽ばたく感じを出してみました。
実は私も昔から目を引く写真撮影ばかりを追及していましたので、インスタ映え写真は新しい技術というイメージでは無いのです。結局、映え写真という目を引く写真を撮影することは写真撮影としての大切な要素の一つなのだと私は思っています。
幻想的撮影のポイント
童話のような幻想的な作品を撮影できるのには、まずは以下のような自然現象を利用するのがとてもお勧めです。
四国の紫雲出山は瀬戸内海に面しており、春の季節には満開の桜と同時に霧が良く発生します。天候が悪く瀬戸内海が望めないときも、霧と桜を利用してこのように人物を入れることでとても幻想的になりました。
紫雲出の山頂には弥生時代中期を再現した珍しい高地性遺跡もあり、同じ場所でまるで日本昔話のような写真も撮影できました。色をノスタルジックに変えることでレトロかつ、時間を感じさせる表現にしました。
道路もないのにバス停が出現???
こちらは地元・笠岡の道の駅の前でのショットです。ここは毎年、広大な干拓地内にポピー畑が出現します。また、観光客誘致のためにこの様に洒落たバス停などをおいて来る人を楽しませる工夫がされています。人工的に造られた風景も、夢の中の出来事のような幻想的写真を作ることができます。
※この写真、実は歩行者用の道が横にあるのですが、カメラアングルを工夫することで道を無くすことができます。カメラ位置も非常に大切ですから、一つの被写体をみつけたら色々なカメラアングルを試してみましょう。
この写真は4月末に北海道で撮影したもの。沢山のカタクリやエゾエンゴサクの花が同時に咲いているこの限られた時期、花畑にエゾリスが入り込むと物語性を強く感じる作品になります。
この場所のエゾリスは朝早くから行動することが多く、周回ルートで遭遇することが多いですが午後からでもたまに姿を見せることがあります。この日は午後から雨が降り出して周りには誰もいなくなり私一人椅子を置いて粘っていたところ、現れてくれました。まさに粘り勝ちですね。
次に雪の写真です。雪の中から出るかわいらしいフキノトウ。この写真は春の訪れを感じられる風景ですが、フキノトウをもう少しクローズアップして背後の青い川をもう少し強調すると……
こんな感じに表現出来ました。主役の大きさを変えるだけでフキノトウが家族に見えてきませんか??背景に写る青い川の奇麗さと雪の白さで春を表現できたと思います。
また、皆さんの身近にもあるトンネルも以下の写真のように幻想的に表現できます。
こちらは兵庫県の須磨離宮公園内にある古いトンネルです。皇室の別荘「武庫離宮」時(大正三年)に造られたもので、奇麗に敷き詰められたレンガがいい雰囲気を醸しています。向こうから知り合いが来たので逆光で……
こちらは同じく兵庫県の湊川隧道。武庫離宮よりも古く、明治時代に造られた日本初の河川トンネルだそうです。現在は使用されておらず、産業遺産としてひっそりと時を刻み続けています。今回は水たまりをアクセントにして撮影しましたが、人物を入れなくてもとても幻想的ですね。中に入れる日は決まっていますのでHPで事前確認を。
http://minatogawa-zuido.com/schedule/
こちらは鳥取県にある、廃校をリノベーションしたその名も「円形劇場くらよしフィギュアミュージアム」で撮影しました。その名の通り、内部には奇麗な螺旋階段があり、撮影した作品を見るとなんだか童話の中に出てくる怪獣の顔に見えませんか?このような何かの顔のように表現する撮影手法を擬人化法とも呼びます。
私の地元・岡山県の渋川海水浴場での一枚。コロナ禍で閑散とした近所の浜辺に鯉のぼりがとても映えました。遠くで一人寂しく遊んでいた子供を入れて撮影、空間に小さく子供を配置することで物語性がより強調できました。
こちらはアイスランドの氷河の洞窟です。想像を超える氷の壁ですね。氷のトンネルのみでも絵になりますが、ご一緒した方に立ってもらいました。また、いつか外国に行くことがあれば撮影したい場所の一つです。
幻想的撮影テクニックあれこれ
ここではなかなか遠方には撮影に行けない状況でも、時間帯やカメラ機能を駆使して幻想的な写真が撮れるテクニックを紹介します。
まずは、比較的簡単な夕暮れの時間帯での撮影です。近所の沙美海水浴場という場所で撮影しました。この作品は夕暮れ時、山に太陽が沈んだ直後に撮影したものです。太陽を入れると鳥の印象が弱くなりますので、太陽が沈んでから撮影するのがポイントです。夕暮れの時間帯での撮影をお勧めします。
次に夜の撮影です。コロナ禍で閑散とした街の中、夜はとても静かで私の住んでいる美観地区なども殆ど人気のない状態が続いています。しかし、街灯などの灯りはありますのでそれを利用すれば背景は暗く自然と幻想的な写真が撮れたりします。
この写真は私の近所の倉敷美観地区内での作品です。美観地区は近年、さまざまな土産物店が進出しており、夜はそのお店の雑貨などを照明している灯りが奇麗で絵になります。この写真は夜、人気のない中、散歩がてら撮影したものです。まるでベトナムのホイアンで撮影したかのような幻想的な写真が撮れました。
こちらは植物園での撮影ですが、多重露出機能が付いたカメラならばこのようなファンタジックな作品ができます。天井の窓をアクセントに周りの空間に沢山の花をちりばめました。この際のアドバイスとしては、2枚目の花写真の重ね具合をうまく調整することです。
こちらは四国の屋島水族館でのショットです。クラゲの水槽は近年、多くの水族館で見受けられます。どの水族館も様々な工夫をして見るものを楽しませてくれますね。この水槽は奇麗なパープルのライトアップがされていました。多重露出機能を利用して縦位置で、1枚目はクラゲのピントを暈した撮影をして、2枚目はピントの合ったクラゲと左上のライトを意識して撮影したものです。この作品は宇宙に飛んでいく様子をイメージして表現してみました。
最後にこれからの季節にぴったりな里山のホタル写真です。この日本昔話に出てきそうな家屋はもう人は住んでいないのですが、ホタルの乱舞のお陰で人が住んでいるようにも見えてきませんか?ホタル撮影は夜の撮影のために準備と忍耐が必要ですが見ても楽しく、撮影後の出来上がりの期待値も高くて是非挑戦してみることをお勧めします。
撮影方法ですが大きく分けて2種類あります。三脚に取り付けたカメラをバルブ機能にセットしてシャッター速度を遅くして(30秒程度まで)撮影する長時間露光法(ホタルが多い時に有効)と、数秒ずつ連写で撮影して後でPCで合成するコンポジット合成法(ホタルが少ない時に有効)の2種類があり、この画像は後者の方法でシャッター速度5秒の写真7枚をコンポジット合成しました。
※最近は後者の方法がカメラ内でも出来る便利な機種も存在します。ホタル撮影方法ですが詳しく書くと長くなりますので今回は省略しました。
幻想的写真撮影におすすめのカメラ機材
童話のような幻想的な作品を撮影するのにお勧めの機材を紹介します。私がよく使用するのは広角(28mm)くらいから望遠(200mm)程度の高倍率ズームレンズを使用します。なぜならとっさの判断で構図を決めたり空間の配分を決めたりするのにズームレンズがとても役に立つからなのです。
また、カメラ本体は多重露出機能がついたものなら上の水族館・植物園写真のような作品が出来ますので特にお勧めですね。
まとめ
最後まで読んでいただいてありがとうございました。童話のような物語性が高く表現された写真は味わい深く、見る人の足をとめる要素が高いので展示会などでは注目される可能性が高くなります。是非、皆さんも興味が出ましたら挑戦してみてくださいね。
■写真家:虫上智
1968年岡山県生まれ。高校を卒業後、写真家 緑川洋一氏に師事。地元のカメラ店で撮影業務などを学び2000年に独立。現在はスタジオ撮影、フォト講座、執筆、フォトコン審査、講演等を受け持つ。ライフワークでは心象風景、自然写真、水中写真を撮影。
日本写真家協会(JPS)会員、日本写真講師協会 認定フォトインストラクター、OM SYSTEMゼミ講師、フォトカルチャークラブ講師、フォトマスターEX(総合)一級