この魚の写真どうやって撮影したの?全国絵になる水族館めぐり撮影旅~中国地方編~
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はじめに
全国の水族館ファンの皆さん、こんにちは。写真家の虫上です。毎日暑い季節がやってまいりました。そんな時には涼しい水族館での撮影をお勧めします。人気のある大規模な水族館はとても人気で、夏休みの期間中は午前中には大変な人々で賑わっていますので、閉館数時間前がゆっくりできて撮影には良いですよ。
さて、おかげさまで全国絵になる水族館めぐりも前回の九州編から私の地元、中国地方へと辿り着きました!今回は数ある中国地方の水族館の中でも、とても絵になりやすかった水族館・5館を紹介します。
【山口】魚群や水槽の美しさを満喫できる!
市立しものせき水族館・海響館
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水族館に早速入って、先ずはスマホアプリの「LINNÉ LENS(リンネレンズ)」を立ち上げました。このアプリは前回の福岡マリンワールドでも紹介したアプリで、Aiで魚や動物を判別して名前を教えてくれる優れモノなんです。生きものの認識はスマートフォン上でリアルタイムに処理されるので、なんとオフライン・携帯電波の届かない水中でも使用できるのです。個人的にいつかダイビングに使用してみたいです。
まずはここの水族館で一番凄いなと思ったのが、こちらのイワシ玉とアカエイの競演が楽しめる水槽。水槽の上部に太陽らしき光源がとても自然に表現できていて、まるで本当の海の中で見ているような錯覚に陥ります。実はここでの撮影は3回目になりますがいつ見ても感動します。1枚目は縦位置で奥行き感を、2枚目は横位置で広がり感を表現してみました。
縦構図か横構図かを迷っていたらどちらも撮影することをお勧めします。
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■撮影環境:F2.5 1/40秒 ISO500
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■撮影環境:F3.2 1/125秒 ISO1600
続きまして、暗い水槽におられたこの巨大なお魚は何でしょうか?実はマンボウなんです。スポット照明で且つかなり暗い水槽なので、来館された皆さんは「可愛いイメージだったのになんかイメージと違う」と口々に言っていました……でも私はこのようなグロテスクな表現がしたかったので満足です(笑)。
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■撮影環境:F1.2 1/250秒 ISO400
スナメリの水槽。丁度撮影していた人物がいましたのでシルエットにして撮影しました。スナメリがいい感じに2頭、愛らしい動きでしたのでいいタイミングで撮影できました。
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■撮影環境:F1.2 1/400秒 ISO400
こちらはイルカの水槽です。手前と奥に人物のシルエットを配置することで奥行き感を表現出来ました。
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■撮影環境:F4 1/100秒 ISO400
この水族館のもう一つの目玉は上部から光が差し込むペンギン水槽です。天気が良ければこのような水中版・天使のはしごの中をペンギンが泳ぐ姿を撮影できます。
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■撮影環境:F2.8 1/400秒 ISO200
因みにペンギンはシルエットも特徴的な形なので絵になります。
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■撮影環境:F7.1 1/500秒 ISO400
■市立しものせき水族館「海響館」
入館料金は大人(高校生以上)2090円、小・中学生940円、幼児(3才以上)410円。営業時間は9時30分~17時30分(入場は17時まで)。有料駐車場あり。
展示規模 ★★★★☆
コストパフォーマンス ★★☆☆☆
撮影向き ★★★★☆
お勧め度 ★★★☆☆
【島根】珍しい白イルカのバブルリングを撮影!
島根県立しまね海洋館アクアス
次に訪れたのは山陰では知らない人がいないくらい、白イルカのバブルリングが有名なアクアス。私も自宅からそう遠くないので何回も訪れたことがあります。今回はメインの白イルカ狙いで訪れました。
実はアクアスの隠れた目玉はリアルな水中でもなかなか見られることが無いトビウオ。この水槽、じっくりとトビウオを観察出来てとても満足します。羽を広げた時がシャッターチャンス。
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■撮影環境:F4 1/250秒 ISO6400
ハゼ科の仲間のチャガラがアマモの上を泳いでいたので、OM-1の被写体認識AFでばっちり撮影できました。この水槽は光源がちょっとピンク色でしたのでそのままWBを変更せず、かわいらしい表現にしました。
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■撮影環境:F1.2 1/5000秒 ISO400
こちらはコウイカが水面近くを浮遊していましたのでシンメトリーに。
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■撮影環境:F1.4 1/40秒 ISO400
ダイナミックな表現になり易い水槽です。魚眼レンズを使用して不思議な空間に仕立て上げてみました。
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■撮影環境:F1.8 1/25秒 ISO400
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■撮影環境:F1.8 1/30秒 ISO400
有名な白イルカのパフォーマンスを撮影しましたが、水が少し汚れていたのでモノクロ変換して水の色を無くすことにより主役が際立ってインパクトのある作品になりました。
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■撮影環境:F5 1/125秒 ISO3200
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■撮影環境:F5 1/100秒 ISO3200
パフォーマンスが終わってから誰も居なくなったので魚眼レンズで全体を撮影。なかなか近未来的に表現出来ました。
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■撮影環境:F2.8 1/50秒 ISO400
水族館では目玉のクラゲの水槽。どちらの作品も多重露光機能を使用して、1枚目はピントを合わせた写真を撮影後、2枚目にピントをぼかした写真を合成。幻想的に表現しました。
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■撮影環境:F3.2 1/13秒 ISO400
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■撮影環境:F1.2 1/1600秒 ISO400
■島根県立しまね海洋館アクアス
入館料金は大人1550円、小・中・高校生500円、幼児(未就学児童)無料。営業時間は9時~17時(入館は閉館の1時間前まで)。無料駐車場あり。
展示規模 ★★★☆☆
コストパフォーマンス ★★★★☆
撮影向き ★★★★☆
お勧め度 ★★★☆☆
【島根】ここは水族館?ストロボ撮影がし放題の「海とくらしの史料館」
島根半島の境港付近に、水族館ではないけれど日本最大の数を誇る魚の剥製の博物館があります。通常の水族館では生魚にダメージがあるためストロボは発光禁止ですが、剥製ならストロボを使用した面白い表現ができるので、私も気に入っている場所の一つです。
海のギャング・シュモクザメですが剥製ならば動きませんし、落ち着いてじっくり撮影できますから、ストロボを使用したり多重露光したり様々なテクニックを試すことが出来ます。
この写真はストロボを発光させながらカメラを回して動感を表現しました。また、モノクロで表現することで魚の口の部分がより強調出来て怖さが倍増できました。
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■撮影環境:F22 1.6秒 ISO80
こちらはなんと深海魚の王様、リュウグウノツカイです。この写真もストロボを発光させながらカメラを左右に動かした作品です。因みにこの魚は色に特徴がありましたのでモノクロには変換しませんでした。
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■撮影環境:F22 0.8秒 ISO80
背後にライトアップを取り入れたハリセンボン玉。なかなか面白い表現になりました。
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■撮影環境:F4 1/50秒 ISO80
こちらは3mはあろうかという巨大なマンボウの剥製です。下関の水族館で見たマンボウとは全然違いますが、なぜかこちらの方がマンボウらしいですね。マンボウが斜め上に登っていくような感じで表現したかったのでカメラを少し斜めに傾け、目の部分にスポットライトを取り入れて光源をアクセントにしてみました。ちなみにスポットライトのような強い光を少し入れることで光源がクロスになります。
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■撮影環境:F22 0.8秒 ISO80
カジキの剥製と大漁旗。ナイスな組み合わせでした。
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■撮影環境:F4 1/100秒 ISO400
■海とくらしの史料館
入館料金は一般(高校生以上)410円、小中高生・外国人100円、幼児・70歳以上無料。営業時間は9時30分~16時30分。無料駐車場あり。
展示規模 ★★☆☆☆
コストパフォーマンス ★★★★★
撮影向き ★★★★☆
お勧め度 ★★★☆☆
【島根】ご当地・珍しい魚のアイデア展示で絵になる!
島根県立宍道湖自然館ゴビウス
次は同じ島根県にある、宍道湖付近の淡水系の魚を主に展示している自然館 ゴビウス。入口ではなぜかスズキがお出迎え(笑)。この作品はわざと通路を入れてみました。
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■撮影環境:F2.8 1/30秒 ISO400
ここの目玉は非常に珍しいシラウオの展示。この水槽は暗いのでなかなかピントが来なかったのですが、やっとピントが来た一枚です。
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■撮影環境:F2.8 1/80秒 ISO400
アップだとこんな顔をしているのです。暗い海での浮遊感を強調するために右上の空間をわざと空けています。
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■撮影環境:F2.8 1/40秒 ISO400
カギノテクラゲの乱舞。背景を暗くして黄色を目立たせるように露出補正をアンダー目に。
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■撮影環境:F2.8 1/13秒 ISO400
定番の被写体、ミズクラゲです。カラフルなライトも良いですがたまには自然な表現に。
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■撮影環境:F2.8 1/60秒 ISO800
オイカワもなかなか水族館ではお目にかかれない魚。同じような魚が沢山泳いでいるときは1匹のみに主役を絞るのがポイントです。
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■撮影環境:F1.2 1/1000秒 ISO400
奇麗な水の中で泳ぐアマゴを撮影しましたが、全体的に黄色くなってしまっていたため、Adobe Photoshop Lightroomでカラーバランスを調整しました。
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■撮影環境:F2.8 1/60秒 ISO400
ここまで色を調整できるので、撮影後に撮って出しの色がおかしいな?と感じたら是非レタッチをしてみてください。
珍しいザリガニの水槽です。全体がホワイトのいけすだったので、露出補正を+にして背景を真っ白にしたことで非常に面白い表現となりました。
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■撮影環境:F4 1/10秒 ISO400
金魚の水槽は背景がブルーなのでとても奇麗に表現できますね。
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■撮影環境:F4 1/80秒 ISO400
こちらは金魚の水槽。背景に祭りのぼんぼりが有ったので、取り入れてみるとこんな不思議な感じになりました。
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■撮影環境:F4 1/80秒 ISO400
■島根県立宍道湖自然館ゴビウス
入館料金は一般・大学生500円、小中高生200円、幼児・未就学児無料。営業時間は9時30分~17時00分。無料駐車場あり。
展示規模 ★★★☆☆
コストパフォーマンス ★★★★★
撮影向き ★★★☆☆
お勧め度 ★★★☆☆
【岡山】こじんまりとした老舗水族館
渋川マリン水族館
最後にご紹介するのは私の近所にある身近な水族館、その名も渋川マリン水族館です。子供のころからよく通っていたのですが、まったく昔のままで嬉しいやら悲しいやら複雑な気持ちで今回も行ってみました。
この水族館は目の前に瀬戸大橋が見えるビーチ沿いにあります。日本の渚百選や日本の白砂青松100選にも認定されているとても美しい環境です。
入り口では赤くライトアップされた赤クラゲが展示されていました。背景が黒だと赤がとても引き立ちますので絵になりますね。
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■撮影環境:F1.2 1/200秒 ISO400
この写真は前ボケを意識しながら撮影したものです。
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■撮影環境:F1.2 1/640秒 ISO400
アクリルの水槽は角度を変えれば虹色で表現できますから魚をシルエットで。
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■撮影環境:F4 1/400秒 ISO400
小さな水族館は水槽が少ないので、その分じっくりと撮影することができます。メバルを真正面からの表情を狙いました。
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■撮影環境:F1.2 1/25秒 ISO400
こちらはハナミノカサゴの幼魚を真正面から。
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■撮影環境:F1.2 1/100秒 ISO400
なんと、クリオネの展示がありました。北海道で見たクリオネ展示よりは数はかなり少ないですし、水槽も通り過ぎてしまうくらいに小さいですが、その分背景を簡素化出来て良い作品が出来ました。
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■撮影環境:F1.2 1/3200秒 ISO400
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■撮影環境:F1.2 1/2500秒 ISO400
ところで、下の2枚の写真は何か変だと思いませんか?実は変形魚なのです。飼育環境や捕獲状況によってはこのように悲しくなるような魚に出会うことがあります。
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■撮影環境:F1.2 1/160秒 ISO400
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■撮影環境:F1.2 1/400秒 ISO400
■渋川マリン水族館
入館料金は大人(15歳以上)500円、小人250円(5歳以上15歳未満)。営業時間は9時~17時(夏休み期間は8時30分~17時30分)。有料駐車場あり。
HP:https://www.city.tamano.lg.jp/site/kaihaku/
展示規模 ★★☆☆☆
コストパフォーマンス ★★★★★
撮影向き ★★★☆☆
お勧め度 ★★★☆☆
まとめ
中国地方は温暖な気候で、瀬戸内海と日本海に挟まれた独特な環境なのでそこに住む生き物たちも多種多様です。水族館もまた、その地域の特色を表した展示があり良かったです。なかでも剥製の博物館は日本最大規模ということもあり、入館料もリーズナブルで山陰地方に訪れる際は是非訪れて頂きたいおすすめの場所です。次回は四国地方を訪れる予定ですのでお楽しみに。
■写真家:虫上智
1968年岡山県生まれ。高校を卒業後、写真家 緑川洋一氏に師事。地元のカメラ店で撮影業務などを学び2000年に独立。現在はスタジオ撮影、フォト講座、執筆、フォトコン審査、講演等を受け持つ。ライフワークでは心象風景、自然写真、水中写真を撮影。
日本写真家協会(JPS)会員、日本写真講師協会 認定フォトインストラクター、OM SYSTEMゼミ講師、フォトカルチャークラブ講師、フォトマスターEX(総合)一級