オリンパス M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 ISレビュー|PROレンズに肉薄する画質を誇る超望遠ズームレンズ
マイクロフォーサーズ最長焦点距離のズームレンズが誕生
オリンパスから「M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS」が発表された。35mm判換算で200mmから800mm相当の焦点距離域をカバーする、マイクロフォーサーズマウント用の超望遠ズームレンズだ。
これまで同社のマイクロフォーサーズマウント用レンズでは「M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 II」がもっとも焦点距離の長いズームレンズであったが、それを上回る長い焦点距離を採用したことで、より遠くのものを大きく撮影することができるレンズの登場となった。
主なスペックと外観
M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 ISの主なスペック
■マイクロフォーサーズ規格マウント
■広角端100mm〜望遠端400mm (35mm判換算200〜800mm相当)
■レンズ構成 15群21枚(EDレンズ4枚、スーパーHRレンズ2枚、HRレンズ2枚含む)
■最短撮影距離 1.3m(ズーム全域)
■最大撮影倍率 0.09倍(Wide)/ 0.29倍(Tele)(35mm判換算0.17倍相当(Wide)/ 0.57倍相当(Tele))
■フォーカシング方式 ハイスピードイメージャAF(MSC)
■絞り羽枚数 9枚(円形絞り)
■開放絞り値 F5.0 (100mm) – F6.3 (400mm)
■最小絞り値 F22
■レンズ内手ぶれ補正機構 あり(VCM機構)レンズ手ぶれ補正時 3段分の補正効果
■大きさ 最大径86.4mm 全長205.7mm
■質量 1,120g (三脚座除く)/ 1,325g (三脚座含む)
■フィルターサイズ 72mm
■防塵防滴仕様 防滴保護等級1級(IPX1)*オリンパス製防滴対応カメラとの組み合わせ時に有効、防塵機構搭載
外観
M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 ISをE-M1 MarkIIIと組み合わせた。フード(付属品)装着(広角端100mm時)。同じくオリンパスの望遠ズームレンズであるM.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO(最大径79.4×長さ160mm・質量三脚座込み880g)と比べると太さ・長さ共にひと回り大きく重く、M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO(最大径92.5×長さ227mm・質量三脚座込み1475g)よりは若干細く短く軽い。鏡筒は焦点距離に応じて伸縮するタイプで広角100mmから望遠端400mmで約60mmの伸縮となる。
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さすがに開放絞り値は暗くなってしまうが、最大望遠で1600mm相当の撮影が可能となるメリットはとても大きいと言える。なお同じく100-400mmの焦点距離を持つパナソニックのマイクロフォーサーズ用交換レンズ「100-400mm F4.0-6.3」は装着可能なテレコンバーターが存在しない。
その為、M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 ISと純正テレコンバーターの組み合わせは、現状ではもっとも長焦点撮影が可能なAFレンズシステムである。
実写にて画質を検証
今回発表されたM.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 ISはオリンパスの交換レンズのなかではスタンダードクラスのレンズとなる。だがレンズ構成を見るとEDレンズ4枚、スーパーHRレンズ2枚、HRレンズ2枚とPROグレードのレンズにも負けない程の構成となっている。そこでここでは100mmと400mmそれぞれの焦点距離での描写力を確認するテストを行なった。
広角端100mmの解像力検証
広角端100mmで撮影。開放絞りF6.3から最小絞りF22まで撮影して、画像の中央部の解像状態を等倍表示して確認する。以下画像は等倍で該当箇所を切り出したものだ。
画像中央部
開放絞りF5.0でも工場の配管や手すりなどの細い線が細かく解像している。F8.0からF11の間はさらに解像力が高まる。F16で若干緩くなるがまだ十分に解像しているが、最小絞り値のF22では像の緩さが認められる。
画像周辺部
画像中央部同様に周辺画像でも開放絞りF5.0から細かく解像しており、F5.6からF8.0にかけて解像力がピークを迎える。F11からF16でも高い解像力を保っているが、F22では小絞りによる回折現象による解像力低下が目立っている。
望遠端400mmの解像力検証
望遠端400mmで撮影。ここでは開放絞りF6.3から最小絞りF22まで絞りを変化させ撮影して、画像中央部の解像状況を等倍表示して確認する。以下画像は等倍で該当箇所を切り出したものだ。
画像中央部
開放絞りF6.3から手摺りが腐食して破断した箇所や鎖なども十分に解像しており、F8.0からF11で非常に高い解像力が見られる。F16でもまだしっかりと解像しているが、最小絞り値のF22ではさすがに緩さが認められるものの実用範囲に収まっている。
検証の結果として、広角端・望遠端共に開放絞りからとても優れた解像力を発揮しており、さらにF8.0まで絞り込むことでこのレンズが最も解像力が上がるピークを迎えることが判った。F11からF16まで絞っても十分な高画質をキープしていることからも、撮影状況に応じて撮影者は躊躇することなく最適な絞り値を選択できるはずだ。
超望遠レンズであるという特性から、手ぶれを抑制するためにシャッター速度を少しでも速くするべく、極力絞りを開けて撮影する機会が多くなると思われるが、解像力の面では安心して開放絞りから使用できるレンズといえるだろう。
レンズ内に手ぶれ補正機構を搭載
M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 ISには、これまでPROレンズの一部製品にのみ採用されていたレンズ内手ぶれ補正機構が搭載されている。これによりレンズ単体でシャッター速度3段分の手ぶれ補正効果を得ることができる。
また、組み合わせるカメラが対応製品である場合、カメラ内の手ぶれ補正機構と合わせてより効果的な手ぶれ補正がなされるという。具体的にはレンズ内の手ぶれ補正機構でカメラのぶれを補正し、カメラ内の手ぶれ補正機構によりカメラの回転ぶれを補正するという。
これは他のレンズ内手ぶれ補正機構を搭載したレンズと対応カメラとの組み合わせで使用可能な「5軸シンクロ手ぶれ補正」とは異なる補正技術とのことだ。
これにより最大400mm(35mm判換算で800mm相当)、さらにMC-20とも組み合わせると最大800mm(35mm判換算で1600mm相当)といった超望遠撮影においても、条件さえ整えば手持ちでの撮影が可能となる。これは私も正直驚かされてしまった。
短い最短撮影距離を活かしたテレマクロ撮影が可能
M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 ISは超望遠のズームレンズでありながら、最短撮影距離がズーム全域で1.3mと短いのも特徴の一つだ。それにより最大撮影倍率が35mm判換算では広角端100mmで0.17倍相当、望遠端の400mmでは0.57倍相当となる。
またテレコンバーターMC-14、MC-20を装着することで、最短撮影距離はそのままで画像をより拡大して撮影することもできる。たとえば柵越しに花をクローズアップ撮影することや、人物撮影でも手元のみのクローズアップ撮影などに応用することも可能だ。なお、このレンズは対応カメラとの組み合わせであれば、深度合成機能にも使用可能だ。テレマクロ撮影と併せて使うことで手前から奥までもピントの合ったミニチュア撮影なども可能だろう。
■撮影環境:ISO200 F6.3 1/1250 絞り優先AE +1EV WBオート
M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS 実写作例
■撮影環境:ISO800 F7.1 1/1000 シャッター優先AE +0.3EV WBオート
■撮影環境:ISO800 F6.3 1/1250 シャッター優先AE +0.3EV WBオート
■撮影環境:ISO200 F6.3 1/160 絞り優先AE +0.7EV WBオート
■撮影環境:ISO800 F5.0 1/200 絞り優先AE WBオート
■撮影環境:ISO200 F5.0 1/1250 絞り優先AE -0.3EV WBオート
■撮影環境:ISO200 F8.0 1/500 絞り優先AE WBオート
■撮影環境:ISO200 F5.6 1/500 絞り優先AE +0.7EV WBオート
■撮影環境:ISO200 F6.3 1/400 絞り優先AE +0.7EV WBオート
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■撮影環境:ISO200 F6.3 1/60 絞り優先AE +1.3EV WBオート
■撮影環境:ISO800 F13 1/100 絞り優先AE -0.7EV WBオート
テレコンバーター使用作例
■撮影環境:ISO1600 F9.0 1/1250 絞り優先AE WBオート
■撮影環境:ISO1600 F13 1/500 絞り優先AE +0.7EV WBオート
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■撮影環境:ISO800 F13 1/1000 絞り優先AE +0.3EV WBオート
■撮影環境:ISO200 F18 1/50 マニュアルモード WB晴天
不可能を可能にしてくれる新次元の超望遠ズームレンズ
M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 ISは35mm判換算で200mmから800mm相当の焦点距離を持つ超望遠ズームレンズだ。しかも1.4倍や2倍のテレコンバーターを併用することで、これまでには考えられない焦点距離での撮影が可能となる。
これは望遠側に強いマイクロフォーサーズ規格ならではのメリットを、最大限に活かしたことにより可能となったレンズだといえる。
しかし、ただ単に「凄い望遠」というだけではなくズーム全域における解像力の高さや、短い最短撮影距離によるテレマクロ性能、そしてレンズ内に組み込まれた手振れ補正機構など、これまでにオリンパスが磨き上げてきた技術が惜しみなく投入された結果生み出された製品だと言える。
おなじく超望遠ズームレンズとして、オリンパスから年内発売が予定されている「150-400mm F4.5 TC1.25× IS PRO」が控えているが、あちらはPROレンズかつ1.25倍のテレコンバーターが内蔵されていることからも、おそらく販売価格はかなりの高価になるのではないかと予想されている。
その点、M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 ISはPROレンズでこそないが、これまでのスタンダードクラスを超える画質と防塵防滴構造の設計などを考えると、現在想定されている販売価格での発売は決して高い買い物とは言えないのではないだろうか。
ところで、先日カメラ業界を駆け抜けたオリンパスの映像部門分社化のニュースは、とても大きなショックを写真家・写真愛好家にも与えた。しかしオリンパスからは公式に今後も製品開発とサポートを継続するとの声明が出されていることを忘れてはならない。
今回、このようなある意味「攻撃的」な製品を発表してきたことは、オリンパスが今後どのような「カメラメーカーになっていくか」のメッセージとして受け取ることもできるのではないだろうか。M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 ISはこれからの新製品開発にも期待したくなるレンズである。
■モデル:夏弥(https://ameblo.jp/beautiful-summer12/)