日常使いが可能な超広角ズーム OM SYSTEM M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO

日常使いが可能な超広角ズーム OM SYSTEM M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO

はじめに

OM SYSTEMのM.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PROは35mm判換算で16-50mm相当という超広角から標準域の画角を持ち、ズーム全域で開放F値4.0が使えるレンズです。今回は本レンズの特徴と使い勝手を、日々の撮影からご紹介します。

■撮影機材:OM SYSTEM OM-1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
■撮影環境:8mm, F9, 1/500秒, -1.0段, ISO 200, WB オート, Natural

35mm判換算で16-50mm、標準ズームとしても使える広角レンズ

多くの広角ズームレンズが35mm判換算の10mm台から、標準ズームレンズのワイド端である24mmや28mm近辺までという「広角に特化したレンズ」が多いように思います。そんな中で本レンズは8mm(35mm判換算で16mm)から25mm(同50mm)、つまり超広角から「標準」といわれる画角までを1本で賄える、このズーム幅が第一の特徴と言えます。

35mm判換算の50mmまで使えるとなると、風景のみならず日常でのスナップ撮影時も格段に出番が多くなることから、「標準ズームレンズとして日常使いしている」という声もちらほら耳にします。まずはその8mmと25mmの画角とは実際にどのようなものなのかを撮り比べてみました。

神戸港の岸壁に立ち、対岸のポートタワーを中心に撮ってみました。25mmだとポートタワーが周囲の光景とともにほどよい大きさに写せています。同時に「どんな場所から撮ったのだろう?もしかして海の上?」とも思わせてくれます。

■撮影機材:OM SYSTEM OM-1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
■撮影環境:25mm, F8, 1/800秒, -0.3段, ISO 200, WB 晴天, Natural

8mmではより周囲の環境が伝わる一方で、どんな場所から撮影しているのかがわかってしまうネタバレ感(笑)もあります。ここでは優劣を語るのではなく、それぞれの遠近感や被写体の大きさの違いから、撮影の目的や意図に合わせて焦点距離を決めたいものです。

■撮影機材:OM SYSTEM OM-1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
■撮影環境:8mm, F8, 1/500秒, -0.3段, ISO 200, WB 晴天, Natural

植物園内のライトアップされたトンネルを撮影しました。立ち位置は変えていないのですが、遠くの人物とトンネルの出口の大きさに明らかな差が出ると共に、8mmだと長く感じられるトンネルの長さが25mmになるとかなり短く感じられます。この遠近感の差がレンズの面白さのひとつですね。

■撮影機材:OM SYSTEM OM-1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
■撮影環境:8mm, F4, 1/20秒, -1.3段, ISO 640, WB 5600K, Natural
■撮影機材:OM SYSTEM OM-1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
■撮影環境:25mm, F4, 1/30秒, -1.3段, ISO 640, WB 5600K, Natural

牧場でのスナップ撮影のひとコマ。お馬さんに近づいて8mmで撮影したところ、広角は手前のものが大きく、奥のものが小さく写るレンズの特性から、胴体や脚に比べて顔が随分と大きく、文字通りの「馬ヅラ」となりました。

■撮影機材:OM SYSTEM OM-1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
■撮影環境:8mm, F4, 1/80秒, +0.7段, ISO 400, WB 曇天, Natural

羊さんたちが自由に歩き回る中に紛れて撮影。顔も脚も黒い子たちが3頭並んでいるところを収めるには25mmがちょうどピッタリでした。

■撮影機材:OM SYSTEM OM-1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
■撮影環境:25mm, F4, 1/125秒, 0段, ISO 400, WB 曇天, Natural

ズーム全域で開放F4.0、クリアでシャープ、防塵防滴の安心設計

本レンズはPROレンズシリーズとしてスーパーEDレンズやEDレンズ、EDAレンズといった特殊レンズを使用し、色収差をはじめとした諸収差を抑えることでズーム全域において優れた解像力を持つレンズとなっています。また、ズーム全域で開放絞り値F4.0が使えることも大きな特徴です。

8mmの状態で絞りを開放のF4.0と2段ほど絞った状態とで比較してみました。逆光時とサイドから光が差し込む状態のいずれでも画面の隅までしっかり解像しており、絞りが開放でも画面の隅の減光があまり見受けられないことがわかります。

▼逆光・F4

■撮影機材:OM SYSTEM OM-1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
■撮影環境:8mm, F4, 1/3200秒, +1.0段, ISO 400, WB 5800K, Natural

▼逆光・F9

■撮影機材:OM SYSTEM OM-1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
■撮影環境:8mm, F9, 1/640秒, +1.0段, ISO 400, WB 5800K, Natural

▼サイド光・F4

■撮影機材:OM SYSTEM OM-1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
■撮影環境:8mm, F4, 1/4000秒, 0段, ISO 400, WB 5800K, Natural

▼サイド光・F8

■撮影機材:OM SYSTEM OM-1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
■撮影環境:8mm, F8, 1/1000秒, 0段, ISO 400, WB 5800K, Natural

紅葉の始まりの頃、見上げると赤や緑の色鮮やかな世界が広がっていました。ワイド端の8mm、絞りは開放のF4.0で撮影。等倍まで拡大すると端の方はどうしても多少流れはするものの、葉が細かくしっかり描写されています。

■撮影機材:OM SYSTEM OM-1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
■撮影環境:8mm, F4, 1/1600秒, -0.3段, ISO 400, WB 5600K, Natural

紅葉越しに真正面からの逆光で絞りをF16まで絞ってみたところ、14本のきれいな光条(光芒)が出ました。本レンズは絞り羽根枚数が7枚の奇数なので、その2倍となる14本の光条が現れます。なお、絞り羽根が偶数の場合はそれと同数の光条が出ます。

■撮影機材:OM SYSTEM OM-1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
■撮影環境:8mm, F16, 1/160秒, -0.7段, ISO 400, WB 5600K, Natural

開放F値4.0と防塵・防滴(さらに耐低温-10度)、またレンズ表面のフッ素コーティングにより、冬の雨の夜のスナップも安心して撮影できました。

■撮影機材:OM SYSTEM OM-5 + M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
■撮影環境:9mm, F4, 1/10秒, -1.0段, ISO 800, WB オート, Natural

超広角レンズなのにフィルター装着が可能!

同じOM SYSTEMのもうひとつの超広角ズームM.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PROは、焦点距離と開放F値の違いもありますが、レンズの前玉が丸く大きく迫り出したいわゆる出目金となっており、レンズの前面にフィルターを装着することができません。一方で本レンズはワイド端の差が1mmあるものの、前玉が出目金になっておらず、PLフィルターやNDフィルター、また保護フィルターといったフィルター類の装着が可能なことも特筆すべき点です。

PLフィルターを使用することで、葉の表面の反射(テカリ)を抑えて紅葉の色彩が鮮明で鮮やかな描写となりました。

▼フィルターなし

■撮影機材:OM SYSTEM OM-1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
■撮影環境:8mm, F8, 1/125秒, -0.3段, ISO 400, WB 5600K, Natural

▼PLフィルター使用

■撮影機材:OM SYSTEM OM-1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
■撮影環境:8mm, F8, 1/80秒, -0.3段, ISO 400, WB 5600K, Natural

こちらはクロスフィルターを用いたことで、大階段のライトアップのひとつひとつに光条が現れ、まるで舞台装置のような雰囲気となりました。また、街のイルミネーションも広角による遠近感で多少間延びしがちなところ、キラキラ感が増して華やかな印象となりました。

▼クロスフィルター「トゥインクル・スター 6X」使用

■撮影機材:OM SYSTEM OM-1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
■撮影環境:8mm, F4, 1/5秒, +0.3段, ISO 1000, WB 5800K, Natural

▼クロスフィルター「トゥインクル・スター 6X」使用

■撮影機材:OM SYSTEM OM-5 + M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
■撮影環境:8mm, F4, 1/15秒, -1.0段, ISO 800, WB オート, Natural

ちなみに前述のM.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PROと比較すると、本レンズは120gほど軽いので、レンズの前玉の飛び出しが少ないこととあわせて、携行性やレンズ交換時の取り扱いのしやすさが格段に上がっている印象です。

ズーム全域で最短撮影距離0.23mの優れた近接撮影性能

本レンズの最短撮影距離は0.23m(23cm)で、これは被写体にギリギリまで近づいての撮影が可能な距離です。また、この最短撮影距離0.23mはズーム全域においての距離となっているため、被写体を大きく捉えつつ超広角で背景も広く入れるなど、マクロレンズによる近接撮影とはまた違った撮影が楽しめます。

ワイド端の8mmでピントが合うギリギリまでモミジの葉に近づいて撮影。葉は大きく捉えつつ、背景も周囲の状況がしっかり掴めるほどに写り込んでいます。

■撮影機材:OM SYSTEM OM-1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
■撮影環境:8mm, F5.6, 1/125秒, +0.3段, ISO 400, WB 4900K, Natural

反対にテレ端の25mmで同じくピントが合うギリギリまで近づいて撮影。背景が狭くなると同時に、絞りを開放にしたことで背後の緑をかなりぼかすことができました。

■撮影機材:OM SYSTEM OM-1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
■撮影環境:25mm, F4, 1/80秒, -1.0段, ISO 400, WB 5800K, Natural

日々のスナップあれこれ

最後に日々のスナップをいくつかご紹介します。

2017年1月の神戸港開港150年記念に神戸市によって設置された「BE KOBE」というモニュメントが、現在では神戸市内のあちこちに設置されている(年を追うごとにどんどん増えている)のですが、これは明らかに私設のもの……(笑)。ちょうど南京町(中華街)の入口そばだったので、西安門の全景と一緒に……撮るには、8mmの超広角が必要でした。

■撮影機材:OM SYSTEM OM-1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
■撮影環境:8mm, F8, 1/20秒, +1.0段, ISO 1250, WB 晴天, Natural

上の西安門そばの中華料理屋さんの外壁に可愛いイラストが描かれており、待合用にこれまた可愛い椅子が置かれていました。壁一面を画面内に収めるにはやはり8mmで何とか!

■撮影機材:OM SYSTEM OM-1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
■撮影環境:8mm, F5.6, 1/30秒, +1.0段, ISO 800, WB 晴天, Natural

京都・今宮神社名物のあぶり餅をお店でいただきました。なんと1人前が10本というボリューム!卓上のお茶、そして和室の雰囲気と丸い窓を背景に入れるには14mm(換算28mm)がピッタリでした。これは標準ズームレンズのワイド端と同等ですが、背景の広さを自在に変えつつ、被写体に寄ることも可能な点に使いやすさを感じます。

■撮影機材:OM SYSTEM OM-1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
■撮影環境:14mm, F4, 1/80秒, -0.3段, ISO 800, WB 4800K, Natural

あぶり餅をいただいたのち、お店の軒先で焼いておられる手元を撮らせていただきました。短時間で撮影させていただくにあたり、ここでも超広角から標準域というズーム幅が役に立ちました。

■撮影機材:OM SYSTEM OM-1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
■撮影環境:16mm, F4, 1/200秒, -0.7段, ISO 400, WB オート, Natural

神戸・ハーバーランドのすぐお隣には潜水艦のドックがあり、割と頻繁に潜水艦を目にすることができます。この日も潜水艦がいたので、ハーバーランドのシンボル的な旧神戸港信号所、そして赤い神戸大橋と共に画面内に収めることで神戸らしい一枚となりました。

■撮影機材:OM SYSTEM OM-1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
■撮影環境:14mm, F9, 1/500秒, 0段, ISO 200, WB 晴天, Natural

赤レンガ倉庫のガラス戸の映り込みで神戸らしさを。必要なものを入れて、必要のないものは外すと21mmがちょうどとなりました。

■撮影機材:OM SYSTEM OM-1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
■撮影環境:21mm, F9, 1/100秒, -1.3段, ISO 200, WB 晴天, Natural

神戸港が貿易港として栄えていた当時、輸出入の手続きを請け負う会社が並んでいた通りには、当時のレトロモダンな建物が残っており、今ではさまざまなお店として利用されています。このような街中スナップではやはり標準域が活躍してくれます。

■撮影機材:OM SYSTEM OM-1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
■撮影環境:22mm, F11, 1/15秒, 0段, ISO 400, WB 5600K, Natural

カフェでのテーブルフォトで、店内などの背景を入れないのであれば超広角は広過ぎます。このような場面ではやはり標準の画角くらいが使いやすいですね。

■撮影機材:OM SYSTEM OM-1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
■撮影環境:23mm, F4, 1/400秒, +0.7段, ISO 400, WB オート, Natural

まとめ

私自身、本レンズより6年も前に発売されていたM.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PROを所持していたことから、フィルターが装着できるという点には惹かれつつも発売当初からしばらくは購入を見送っていました。しかし、標準ズームレンズとしても活躍してくれる使い勝手の良さを見聞きした結果手に入れた、そんな1本であり、実際に使ってみてやはり買ってよかったと思えるレンズです。風景を撮る方はもとより、広めのスナップ撮影が好きな方にはぜひおすすめしたい1本です。

■撮影機材:OM SYSTEM OM-1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
■撮影環境:8mm, F4, 1/13秒, 0段, ISO 400, WB オート, Natural

 

 

■写真家:クキモトノリコ
学生時代に一眼レフカメラを手に入れて以来、海外ひとり旅を中心に作品撮りをしている。いくつかの職業を経て写真家へ転身。現在はニコンカレッジ、オリンパスカレッジ講師、専門学校講師の他、様々な写真講座やワークショップなどで『たのしく、わかりやすい』をモットーに写真の楽しみを伝えている。神戸出身・在住。晴れ女。
公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員

 

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