オリンパス M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO レビュー|シャッターチャンスに強いニュースタンダードレンズ
はじめに
標準ズームレンズと聞いて思い浮かべるのは35mm判換算で24〜100mm前後をカバーした便利ズームを思い浮かべる人も多いのではないだろうか。少し前まではワイド端が28mmや35mmの標準ズームが一般的だったが、年々ワイド端の焦点距離はより広角側にシフトしている。そして、先日OMデジタルソリューションズから発売されたM.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PROはなんとワイド端が35mm判換算で16mmにもかかわらず、テレ端は35mm判換算で50mmまで一本でカバーしている「新しい標準レンズ」だ。
今回はこれからの「ニュースタンダード」になるであろうM.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PROについてご紹介したいと思う。
広角レンズか標準レンズか
M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PROは広角レンズか標準レンズか使う人によって捉え方が違う面白いレンズだ。私の場合、このレンズは「標準レンズ」として考えており、あくまで35mm判換算で16mmが使える標準ズームレンズとして捉えている。オリンパスのPROレンズにはすでにM.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PROという35mm判換算で14-28mmをカバーする超広角ズームレンズがラインナップに入っており、M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PROとどちらを購入するかで悩んでいる人も少なくないのではないだろうか。
しかし、焦点距離だけで比べてみると35mm判換算で「14-28mm」「16-50mm」と、実際にはカバーする焦点距離が全くの別物であり、私の場合は広角として使うならM.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PROを、標準として使うならM.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PROという考えだ。
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■撮影機材:オリンパス OM-D E-M1 Mark III+M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
■撮影環境:f/4.0 1/640秒 ISO200 焦点距離8mm(35mm判換算 16mm)
(右)
■撮影機材:オリンパス OM-D E-M1 Mark III+M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
■撮影環境:f/4.0 1/1000秒 ISO200 焦点距離25mm(35mm判換算 50mm)
ズーム倍率としては3.1倍と標準的なズーム倍率だが、35mm判換算で16mmから50mmまでズームすると見た目の変化もかなり大きい。本来であれば2本のレンズが必要なシーンを1本でカバーできるのは画期的だ。
M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PROはカバーする焦点距離だけではなく、軽量コンパクトなサイズにPROレンズならではの描写性能と防塵・防滴性能、そしてテレ端ではハーフマクロ並みの近接撮影が可能であり隙のないスペックに仕上がっている。また、このレンズは沈胴式となっていて、撮影するときにはズームリングを8mmまで回すと撮影可能となる。移動中や使用していない時は、沈胴させておくとコンパクトに収まる。
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■撮影環境:f/4.0 1/1000秒 ISO200 焦点距離8mm(35mm判換算16mm)
レンズ交換が不要なので旅行などでは重宝する。旅を楽しみつつ写真も撮る、まさにカメラの理想型ではないだろうか。
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■撮影環境:f/4.0 1/250秒 ISO200 焦点距離18mm(35mm判換算36mm)
ズーム全域で安定した描写を楽しむことができる。1本のレンズで広角〜標準まで調整しながら最終的な画角を決められるので、初めての交換レンズとしてもオススメしたい。
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■撮影環境:f/4.0 1/500秒 ISO200 焦点距離25mm(35mm判換算50mm)
広角で撮影していたシーンだが、途中、標準画角で撮影したくなったので25mmまでズームして撮影。
キレの良い描写と階調表現
PROレンズということもあり、使う前から描写が良いのは分かってはいたが、実際にOM-Dと組み合わせて撮影してみるとキレの良さに驚く。開放F4.0ですでに解像感がピークに達しており、あとは狙った被写界深度に合わせてF値を変えるくらいだろう。画質のために絞るというのはこのレンズの場合は必要なく、中央から周辺まで気持ちの良い写りだ。また、超広角が苦手な逆光のシーンでも目立ったフレアやゴーストがほとんど発生しないため、安心して太陽をフレーミングして撮影することもできる。
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■撮影環境:f/4.0 1/60秒 ISO200 焦点距離9mm(35mm判換算18mm)
手持ちハイレゾショットで撮影。絞り開放で撮影しても解像感が高くパンフォーカス撮影も得意だ。5000万画素相当の結果を得られる手持ちハイレゾショットにも十分耐えうる描写力。細かいディティールの風景を撮影すると気持ちがいい。
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■撮影環境:f/4.0 1/20秒 ISO200 焦点距離8mm(35mm判換算16mm)
解像感だけではなく階調表現も素晴らしい。ハイライトからシャドウまで丁寧に写し撮ってくれる。35mm判換算16mmは超広角を普段使わない人でも使いやすい焦点距離であり、さらに50mmまでカバーしているので超広角デビューにはちょうど良い一本かもしれない。
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■撮影環境:f/4.0 1/1600秒 ISO200 焦点距離25mm(35mm判換算50mm)
日の出をセンターにフレーミングして撮影。今まではフレアやゴーストに悩まされていたシーンだが、非常にクリアな結果を得ることができた。
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■撮影環境:f/6.3 1/8000秒 ISO200 焦点距離25mm(35mm判換算50mm)
富士山と日の出をアンダー露出で撮影。富士山をシルエットで表現した。
OM-Dシリーズの一部の機種では8000万画素相当の画素数で撮影ができるハイレゾショットも搭載されているので、レンズの性能をさらに引き出すことが可能だ。また、OM-D E-M1 Mark IIIやOM-D E-M1Xであれば5000万画素相当の手持ちハイレゾショット撮影も可能なので積極的に使っていきたい。テレ端の焦点距離が足りない時は、ハイレゾショットで撮影してトリミングで焦点距離を稼ぐのも一つの手だ。
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■撮影環境:f/4.0 6.0秒 ISO200 焦点距離8mm(35mm判換算16mm)
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■撮影環境:f/4.0 1/2500秒 ISO200 焦点距離8mm(35mm換算16mm)
超広角が苦手なシチュエーションである逆光撮影だが、フレアやゴーストも最小限に抑えられている。
私は風景写真を撮ることが多く、風景写真は解像感が重要である。そのため、自分の目で見た景色をどれだけ鮮明に写し撮ってくれるのかに注目する。焦点距離が35mm判換算で16mmスタートであるため、ワイド側ではF値開放ですでにパンフォーカス撮影が可能である。そのため、薄暗い山でのパンフォーカス撮影でもシャッタースピードを稼ぎやすいのはマイクロフォーサーズならではの楽しみだ。またOM-Dの強力な手ぶれ補正もサポートしてくれるおかげで、誰でも気軽にブレを抑えたシャープな結果を得ることができる。
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■撮影環境:f/4.0 1/640秒 ISO200 焦点距離8mm(35mm判換算16mm)
35mm判換算16mmの焦点距離が生み出すパース効果を活かして空の広がりを強調した。
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■撮影環境:f/4.0 1/800秒 ISO400 焦点距離8mm(35mm判換算16mm)
砂丘での撮影は砂埃がボディ内に入る恐れがあるためレンズ交換を避けたいシチュエーションの一つだ。M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PROの登場により超広角から標準域をカバーできるため、レンズに迷うことがなくなった。
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■撮影環境:f/4.0 1/640秒 ISO200 焦点距離8mm(35mm判換算16mm)
見慣れた街の景色も35mm判換算16mmで撮影することでいつもと違った景色に見える。歪曲もかなり抑えられているので街撮りにも良い。
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■撮影環境:f/4.0 1/1000秒 ISO200 焦点距離8mm(35mm判換算16mm)
普段はあまりスナップを撮らないが、M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PROを使っていると普段とは違う被写体に目が行くことが多い。超広角なら肉眼で見るよりもひと回り広く写せるのでいつもより一歩近づいてシャッターを切れる。
焦点距離だけじゃない、マクロ撮影もカバー
広角から標準域をカバーしつつさらにマクロ撮影までカバーが可能なM.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PROのおかげで、レンズ交換をすることなく様々なフィールドに対応することができ、シャッターチャンスにも強くなった。特に山や森を散策していると、広い景色から足元の植物など様々な被写体にレンズを向けることが多い。そのため、花を撮影している途中で昆虫を撮りたくなった場合でも、そのまま撮影を続けることが可能となり、撮り手のモチベーションが上がる。
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■撮影環境:f/4.0 1/5000秒 ISO400 焦点距離8mm(35mm判換算16mm)
ズーム全域で近接撮影ができるため広角マクロレンズとしても楽しむことができる。
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■撮影環境:f/4.0 1/8000秒 ISO800 焦点距離8mm(35mm判換算16mm)
最短距離での撮影はAFではなく、MFでピントを最短に固定してカメラを前後させてピントを合わせる。素早く動く被写体の場合、AFでは間に合わないことが多いのでピント固定でカメラを動かして撮影してみよう。
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■撮影環境:f/4.0 1/640秒 ISO200 焦点距離8mm(35mm判換算16mm)
35mm判換算で16mmの焦点距離なら背景を活かしたマクロ撮影が可能だ。超広角のF4.0でも最短撮影距離だと背景はかなりボケる。
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■撮影環境:f/4.0 1/400秒 ISO200 焦点距離25mm(35mm判換算50mm)
テレ端25mmでは35mm判換算の撮影倍率0.42倍相当と、ほぼハーフマクロと変わらない撮影が可能だ。背景をボカして被写体を引き立てて撮影したい場合は25mmにズームして撮影しよう。
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■撮影環境:f/4.0 1/640秒 ISO800 焦点距離25mm(35mm判換算50mm)
絞り開放で撮影すると被写体の前後の綺麗な玉ボケを楽しむことができる。
テレ端で35mm判換算最大撮影倍率0.42倍とハーフマクロレベルの倍率を実現しており、花や昆虫のクローズアップにも対応できる。ワイド端でも近接撮影を楽しむことができるため、パース効果を取り入れるなどロケーションを活用したマクロ撮影も可能だ。
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■撮影環境:f/4.0 1/40秒 ISO200 焦点距離25mm(35mm判換算50mm)
旅行に出かけたら景色だけでなく、旅先で食べる食事も撮影しておきたいところだ。25mmの焦点距離はテーブルの上の料理や小物を撮影するのにちょうどいい焦点距離だ。レンズ交換不要で景色からテーブルの上まで撮影できるのは実に楽しい。
旅行にもオススメの一本で景色からテーブルの上の料理までレンズ交換なしで対応できる。レンズ交換が減るということは、機材も減らせて旅の邪魔にもならないということだ。また、レンズ交換時にレンズを落としてしまった、センサーにゴミが入ってしまった、というリスク回避にもつながる。特に旅行などではコンパクトなOM-D E-M5 Mark IIIと組み合わせると、より気軽に持ち出すことができるのでオススメの組み合わせだ。
超広角ズーム×フィルターワーク
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これまでPROレンズにはM.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PROが超広角ズームレンズとしてラインナップされていたが、前玉が出っ張っているためフィルターを装着するにはそのレンズ専用のフィルターシステムを使う必要性があった。そのため、他のレンズと共用が難しかったり、コスト的にも少し躊躇してしまったりすることもあり、フィルターワークを気軽に楽しむことが難しかった。
今回新たに登場したM.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PROは72mmのフィルターが装着できるため、特殊なアダプターがなくても市販の円形フィルターや角形フィルターを装着できる。72mmのフィルター径は出番の多いM.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PROと同じ大きさで、フィルターの共用がしやすいのは嬉しいポイントだ。NDフィルターやPLフィルターを装着できるので、超広角の画角で日中のスローシャッターも簡単に行える。風景写真ではフィルターを使う機会が多く、このレンズによって表現の幅がこれまで以上に広がった。
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■撮影機材:オリンパス OM-D E-M1X+M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
■撮影環境:f/4.0 1/400秒 ISO100 焦点距離8mm(35mm判換算16mm)
(右)NDフィルターあり
■撮影機材:オリンパス OM-D E-M1X+M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
■撮影環境:f/4.0 0.5秒 ISO100 焦点距離8mm(35mm判換算16mm)
超広角の焦点距離をカバーしているにもかかわらずNDフィルターを装着できるため、日中でも簡単にスローシャッターを切ることができる。
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■撮影環境:f/4.0 1.0秒 ISO200 焦点距離8mm(35mm判換算16mm)
水はシャッタースピードで表情が大きく変化する。NDフィルターが使えることで表現の幅がグンと広がった。
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■撮影環境:f/4.0 20秒 ISO200 焦点距離8mm(35mm判換算16mm)
ハーフNDを使用して砂丘のオアシスがドラマチックな一枚に。輝度差が大きいシーンはRAW現像やレタッチだけでは対応することができないことも多いので、できるだけ現場で完成させておきたい。
まとめ
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M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PROはこれまでにないスペックのPROレンズだ。間違いなく今後のニュースタンダードレンズになっていくだろう。今まではM.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PROとM.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PROの2本をメインで使用していた。12mmの焦点距離を境にレンズ交換をする必要があったが、オリンパスのマイクロフォーサーズシステムはM.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PROの登場により、益々シャッターチャンスに強いシステムに進化した。
絞り開放から卓越した描写性能に、超広角から標準域をカバーする焦点距離、防塵・防滴性能、マクロ撮影にフィルターワークも楽しめる全部入りのズームレンズ…。これだけのスペックをレンズ交換なしで楽しめるのはマイクロフォーサーズ規格ならではであろう。OMデジタルソリューションズが作り上げていく今後のニュースタンダードに期待したい。
■写真家:木村琢磨
1984年生まれ。岡山県在住のフリーランスフォト&ビデオグラファー。広告写真スタジオに12年勤務したのち独立。主に風景・料理・建築・ポートレートなどの広告写真の撮影や日本各地を車で巡って撮影。ライフワーク・作家活動として地元岡山県の風景を撮影し続けている。12mのロング一脚(Bi Rod)やドローンを使った空撮も手がけ、カメラメーカー主催のイベントやセミナーで講師を務める。