より身軽に、より軽快に写真を楽しむためのカメラ|OM SYSTEM OM-3×写真家 木村琢磨
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はじめに
良いものは時代を超える。
その言葉を体現したタイムレスなデザインのOM-3は、今までのOMシリーズとは全く異なるコンセプトのカメラだ。
近年、クラシック&ビンテージデザインのデジカメがいくつか登場しており、銀塩OMライクなデザインのカメラを待ち望んでいた人も多いのではないだろうか。
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OM SYSTEMといえば過去にPEN-Fが近いコンセプトで開発され今でも高い人気を誇っているが、ついにOMシリーズでも登場という事で注目している人も多いだろう。
今回はそのデザインとデザインがもたらすスタイルの変化、そして撮影スペックについてレビューしていく。
デザイン
写真を撮影する上でセンサースペックや搭載されている機能は大切な要素だが、カメラのデザインやサイズ感も同じくらい大切な要素だ。
私は小型軽量なカメラを好んで使用しており、カメラのボディサイズに合わせて使用するレンズも決定している。
OM SYSTEMにはPROレンズとの組み合わせに最適化されたボディにコンピュテーショナルフォトグラフィ機能が全部入りの1シリーズと、フラグシップ並みの性能を小型軽量のボディに詰め込んだ5シリーズのラインがあり、今回その2シリーズの間に新たにOM-3がシリーズに加わった。
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OM-3の特徴はその見た目からも分かる通り1シリーズと5シリーズとは明らかにコンセプトが違うデザインであり、その姿は銀塩OMシリーズを彷彿とさせる。実際に銀塩のOM-1と見比べてみるとデジタル化されたOM-1そのものと言っても良いくらいだ。スペックに関してはOM-1 Mark II相当となっておりこれはサプライズと言っても過言ではないだろう。小型軽量とハイスペックを両立している事に正直驚いた。バッテリーもOM-1シリーズと同じくBLX-1が採用されておりOM-1シリーズのユーザーにとっては嬉しい仕様だ。カードスロットはOM-1シリーズとは違いシングルスロットに。これはボディのサイズからすると仕方がない仕様だ。デュアルスロットにしてボディサイズが大きくなってしまうと意味がないので英断だ。
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OM-5のコンパクトさが際立つがOM-1 Mark II同等のスペックがOM-3のボディに凝縮されていることを考えると凄い事だ。
こうして一覧で見てみると3シリーズとも違うコンセプトで開発されていることがよくわかる。
OM-3はグリップレスデザインということもあり一番スッキリして見える。
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OM-1シリーズはボディが少し大きく感じる…でも撮影機能は欲しいという人にぴったりの一台だ。私も普段はOM-5のサイズ感が気に入っているのでよく持ち出しているが、実際現場ではOM-1 Mark IIの機能を使いたいというシーンも多いのでOM-3は待ちに待った一台と言っても良いだろう。きっと私以外にも「こういうのが欲しかった」と思っている人は多いはずだ。
また、OM-3と同時発表されたM.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 IIとM.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8 IIはOMシリーズとの組み合わせに最適化されたデザインにブラッシュアップされ、さらに防塵・防滴仕様にアップデートされている。この2本の防塵・防滴化を望んでいた人も多いと思うのでこちらもサプライズだ。同シリーズには12mmと45mm、75mmもラインナップされているので同じくアップデートされるのでは……?と淡い期待を抱いてしまう。特に私はM.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8は元祖PROレンズだと思っているので今回の2本の様にOM寄りのデザイン+防塵・防滴化されてほしいと思っている。
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個人的に今まで苦手な焦点距離だったがOM-3と組み合わせると非常に使い勝手が良いレンズ。
デザインがブラッシュアップされたことでOM-3との見た目の相性は抜群だ。OM-3のボディデザイン的にズームレンズよりも単焦点を組み合わせたくなるので、多くの人にとってこの2本がメインレンズとなるだろう。実際私がOM-3を使って撮影するときの大半がこの2本のレンズで、OM-1シリーズやOM-5だとPROレンズのズームレンズを組み合わせることが多いのだが、OM-3の場合はコンパクトな単焦点レンズやスタンダードクラスの小型ズームとの相性が非常に良いので、いつもと違った撮影スタイルを楽しめる。使うレンズが変わることで被写体の探し方にも変化が生まれ、いつもと違った写真が撮影できる。
ボディ前面にはクリエイティブダイヤルが搭載されており通常撮影からカラークリエーター、アートフィルター、カラープロファイルコントロール、モノクロプロファイルコントロールと瞬時に切り替えることができる。2016年に発売されたPEN-Fに搭載されていたクリエイティブダイヤルと役割は同じだ。
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もう一つ今までと違うのは軍幹部にスチルとムービーの切り替えダイヤルが搭載されたことだ。ダイヤルを切り替えることでスチル、ムービー、S&Qモードに設定することができるため、より直感的に撮影モードを切り替えることが可能となった。
背面にはバリアングルモニターが左側にオフセットされた位置に配置されており、右側に余裕のあるデザインとなっている。今までのOMシリーズからするとボタン配置にかなりの余裕を感じるので最初は少し違和感を感じたが、使い込んでいくとこれが適度な間隔で操作性も良いと感じた。背面デザインで言うと「CP」と書かれたコンピュテーショナルフォトグラフィ機能専用のボタンが新設されており、ハイレゾショットやライブND、ライブGNDなどを瞬時に呼び出せる様になった。OM SYSTEMがコンピュテーショナルフォトグラフィ機能に力を入れているのがよくわかる。
街や自然に繰り出したくなるカメラ
OM-3は今までのOM SYSTEMのカメラとは全く違うコンセプトのカメラであり、OM-1シリーズやOM-5はアウトドアシーンを全面的に押し出していたが、OM-3ではより「日常」のシーンでの使用をメインに考えられたカメラだ。ちょっとしたお出かけの時や、本格的すぎないアウトドア撮影など気軽に撮影をしたいときにOM-3は活躍してくれる。もちろん本格的な撮影でも使うことができるため、ある意味ではOMシリーズの中で最もオールマイティなカメラなのかもしれない。グリップレスデザインであるため大型のレンズとの相性はOM-1シリーズのホールド性には劣るが、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PROやM.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PROの様な比較的コンパクトなPROレンズとの相性は許容範囲内だ。実際、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PROはよく組み合わせて撮影しておりバランスも良い。
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今回リニューアルされた17mmと25mmはもちろん12mmや45mm、75mmはOM-3との相性が素晴らしい。
少し前にリニューアルされたM.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6 IIも小型軽量でOM-3とのバランスもよくリーズナブルなので、最初の広角レンズとしてもおすすめ。
PROレンズはM.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PROやM.ZUIKO DIGITAL ED 20mm F1.4 PROはちょうど良い組み合わせだ。
M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PROもいい組み合わせだがOM-3のボディには少し大きく感じられるかもしれない。
OM-3を使っていて無意識にいつもと違う使い方をしているなと感じたことがある。それはシャッター方式の選び方で、OM-1シリーズやOM-5では基本的に電子シャッターをメインに使用しているのだがOM-3ではメカシャッターで撮影する方が「写真撮ってるな〜」という気分が強まる。せっかくこの様なデザインのボディを使っているということもあり、やはりシャッターを切った時のあの「チャキッ」という小気味良い音と仄かな振動を感じたいと思ってしまうのだ。またOM-3での撮影は積極的にファインダーを覗いて撮影したくなる魅力があり、これもデザインの力によるものなのかもしれない。
カラープロファイルコントロール
OM-3はOMでは初のカラープロファイルコントロールとモノクロプロファイルコントロール機能が搭載された。
カラープロファイルコントロールを使うことで12色の彩度の調整、シェーディング補正、ハイライト&シャドウコントロールの調整が可能となり自分好みの色合いの一枚を撮影することができる。
モノクロプロファイルコントロールではカラーフィルター効果、シェーディング補正、ハイライト&シャドウコントロール、粒状フィルム効果を組み合わせたモノクロ撮影が可能だ。
OM-3はデジタルカメラならではの機能がたくさん盛り込まれており表現の自由度がかなり高い。自分の表現したい仕上がり設定を作り込む作業からすでに楽しい。
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■撮影環境:f/4.0 1/25秒 ISO200 焦点距離29mm(35mm判換算58mm) カラープロファイルコントロールにて撮影
OM-3をハイキングコースに持ち出して撮影。
OMシリーズは気軽に写真を楽しむことができるのが強みだ。OM-3はPENシリーズに近い気軽さを感じるのでいつも以上にリラックスして撮影できている。
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■撮影環境:f/5.6 1/100秒 ISO200 焦点距離12mm(35mm判換算24mm) カラープロファイルコントロールにて撮影
OMシリーズでは初搭載となるプロファイル機能。
カラープロファイルコントロールで撮影することにより特定の色味を調整したりすることが可能なので、自分好みの色を楽しむことができる。
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あらかじめプリセットが4つ登録されており好みの仕上がりを選んで撮影できる。
プリセットだけでなく自分好みに色の調整をしたり、トーンカーブの役割を果たすハイライト&シャドウコントロール機能を使ってオリジナルのプロファイルを作ることも可能だ。シェーディング機能やシャープネス、コントラストも調整が可能だ。
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■撮影環境:f/4.0 1/400秒 ISO800 焦点距離28mm(35mm判換算56mm) カラープロファイルコントロールにて撮影
カラープロファイルコントロールを使って水面の映り込みの青色を強調。特定の色味の強弱が可能なので思い通りの仕上がりを狙うことができる。
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■撮影環境:f/1.8 1/2000秒 ISO200 焦点距離17mm(35mm判換算34mm) カラープロファイルコントロールにて撮影
M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 IIはスナップ撮影に最適だ。F1.8とF値も明るく私のOM-3の常用レンズの一つだ。
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■撮影環境:f/1.8 1/8000秒 ISO200 焦点距離17mm(35mm判換算34mm) カラープロファイルコントロールにて撮影
私の住む岡山県の観光名所の一つである倉敷美観地区にて。いつもならこの様な切り取り方はしないがカメラとレンズが変われば視点も変わる。
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■撮影環境:f/1.8 1/6400秒 ISO200 焦点距離17mm(35mm判換算34mm) カラープロファイルコントロールにて撮影
川舟にひだまり。換算34mmの焦点距離は自分の視野に近いものを感じる。実は以前は苦手な焦点距離の一つだったがOM-3で撮影していくうちにどんどん楽しくなって今では好きな焦点距離の一つに。
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■撮影環境:f/1.8 1/8000秒 ISO200 焦点距離17mm(35mm判換算34mm) カラープロファイルコントロールにて撮影
スイレンにギリギリまで近づいて撮影。水面ギリギリのアングルでの撮影はバリアングルモニターが便利。
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■撮影環境:f/1.8 1/320秒 ISO200 焦点距離17mm(35mm判換算34mm) カラープロファイルコントロールにて撮影
ハイキングコースで有名な原生林にて。カラープロファイルで彩度をマイナス側に調整して深い森の雰囲気を演出。
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■撮影環境:f/5.6 1/30秒 ISO200 焦点距離25mm(35mm判換算50mm) カラープロファイルコントロールにて撮影
今回リニューアルされたM.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8 IIは中央から周辺まで驚くほど解像するレンズだ。
防塵・防滴化されたことでネイチャーシーンでも安心して使える様になった。ネイチャーシーンでPROレンズ以外の選択肢が増えたことで撮影の自由度も増した。
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■撮影環境:f/4.0 1/13秒 ISO200 焦点距離25mm(35mm判換算50mm) カラープロファイルコントロールにて撮影/手持ちハイレゾショット使用
OM SYSTEMの代表的なコンピュテーショナルフォトグラフィ機能といえばハイレゾショット。OM-3にももちろん搭載されている。
手持ちハイレゾショットの処理時間もOM-1 Mark II同等の処理速度なので気軽に楽しめる。
M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8 IIはハイレゾショットで撮影することでさらに解像感が増す。
■撮影環境:f/5.6 1/500秒 ISO200 焦点距離17mm(35mm判換算34mm) カラープロファイルコントロールにて撮影
カラープロファイルコントロールで彩度を強調。バリアングルモニターを使うことで水たまりギリギリのローアングルで撮影することができた。
モノクロプロファイルコントロール
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■撮影環境:f/1.8 1/2500秒 ISO6400 焦点距離25mm(35mm判換算50mm) モノクロプロファイルコントロールにて撮影
モノクロプロファイルコントロールを使って雨が水溜りに作り出すクラウンを撮影。夜の街中での撮影で光量が少ないためISOを6400まで上げてシャッタースピードを稼いだ。モノクロプロファイルコントロールは高感度撮影との相性がよく、高感度ノイズが絶妙な粒状感を演出してくれる。
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■撮影環境:f/1.8 1/400秒 ISO200 焦点距離17mm(35mm判換算34mm) モノクロプロファイルコントロールにて撮影
モノクロプロファイルコントロールはネイチャーフォトでも活躍してくれる。色情報がなくなる分、より被写体の本質が浮き彫りになる。この滝は「布滝」と呼ばれる滝で、その名の通り白い布を晒した様な見た目をしている。モノクロで撮影することでその質感を強調した。
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■撮影環境:f/5.6 1/320秒 ISO100 焦点距離17mm(35mm判換算34mm) モノクロプロファイルコントロールにて撮影
モノクロプロファイルコントロールで撮影することで赤い彼岸花を白く表現した。ただモノクロで撮影するだけだと赤色はグレーや黒に写ってしまうが、カラーフィルター効果を赤に設定して撮影することで赤いものを薄いグレーや白に写すことができる。今回の作品はモノクロならではの彼岸花の表現ができた。
カラークリエーター
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■撮影環境:f4.0 1/5000秒 ISO200 焦点距離17mm(35mm判換算34mm) カラークリエーターにて撮影
OM-3にはカラープロファイルコントロールの他にカラークリエーターも搭載。色を楽しむモードが多く搭載されているため自分色の写真表現が可能だ。
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カラークリエーターを使うことでより直感的に色を調整することができる。
カラープロファイルコントロールは被写体の持つ色味をベースに色味を調整するが、カラークリエーターは根本的に色を変えてしまう機能なのでより変化が大きい。Photoshopの色相・彩度に近い機能だ。
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■撮影環境:f5.6 1/640秒 ISO200 焦点距離45mm(35mm判換算90mm) カラークリエーターにて撮影/手持ちハイレゾショット使用
カラークリエーターを使って夕日の色を演出。単純に彩度を高めるだけでなく色相も調整することでカラーフィルターを使用した様な表現が可能となる。
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■撮影環境:f5.6 1/400秒 ISO200 焦点距離59mm(35mm判換算118mm) カラークリエーターにて撮影/手持ちハイレゾショット使用
カラークリエーターは色の自由度が高い分、使い方が難しい。初めてカラークリエーターを使う場合は夕日など暖色系の色味を強調する仕上がりに挑戦してみよう。
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■撮影環境:f5.6 1/30秒 ISO800 焦点距離21mm(35mm判換算42mm) カラークリエーターにて撮影
カラークリエーターはWBとの組み合わせでさらに自由度が増す。ベースの色をWBで調整してカラークリーターで色をのせていく様な感覚だ。今回は白熱灯。
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上の作品はWBとカラークリエーターの組み合わせで成立している。
WB太陽光で撮影した場合を参考に、単純にカラークリエーターでブルートーンにする場合、WBで全体をブルートーンにする場合、WBとカラークリエーターを組み合わせて仕上げた場合と、仕上がりの差がわかりやすい様に並べてみた。
特に私がこだわっているのは葉っぱの色や日陰や木漏れ日の色味なので、差がわかりやすい様に各仕上がりイメージの上部にクロップした一部分を表示している。
これはカラープロファイルコントロールでも応用が効く方法なので自分の好みにあった仕上げ方を探してみよう。
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■撮影環境:f8.0 1/1000秒 ISO200 焦点距離22mm(35mm判換算44mm) カラークリエーターにて撮影
長野県の諏訪湖にて撮影。この日は撮影ができないほどの大雨だったが一瞬だけ雲の隙間から日が射した瞬間に撮影。私の目はその時の空の色を優しくも力強い暖色として捉えた。カラークリエーターを使って私のフィルターを通じて見えた夕焼けの色を再現。記憶色を全面に押し出した一枚に仕上げた。
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■撮影環境:f8.0 1/1000秒 ISO200 焦点距離22mm(35mm判換算44mm) カラークリエーターにて撮影
先ほどの大雨の後の雨上がりのシーンから数分後、強いスポットライトが諏訪湖に射した。色もシチュエーションもまるで一枚の絵画を見ている様な光景だった。
カラークリエーターは絵画を描く時の様に理想の色を作って写真に反映させる機能だ。写真は記録でありアートでもあるのだと実感する。
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■撮影環境:f1.8 1/1250秒 ISO200 焦点距離25mm(35mm判換算50mm) カラークリエーターにて撮影
水面の青と植物の緑を抜け感の良いクールトーンに。OM-3で撮影していると後処理やレタッチが必要ないくらい理想のイメージがカメラの中で再現できる。
ライブ機能(ND/GND)
OM-3にはOM-1 Mark IIで採用されたライブGND機能が備わっている。ライブGNDとはグラデーションND(フィルターの半分がND、半分が透明のフィルター)をデジタル処理で再現している機能であり、どのレンズでもGNDフィルター効果を得ることができる機能のことだ。
GNDフィルターは逆光などの輝度差の大きなシーンでよく使われるツールだが、物理フィルターはレンズの手前に来ることで影響が全くのゼロというわけではない。
ライブGNDは物理フィルターを使う必要がないため画質への影響もなく、さらに超広角レンズや魚眼レンズでも使用可能だ。
ソフト、ミディアム、ハードのフィルター効果に対してそれぞれ2(−1EV)、4(−2EV)、8(−3EV)の濃度が用意されており合計で9枚分のフィルター効果を得ることができる。
GNDフィルターは高価なものが多く、使ってみたいけどなかなか手が出ない…という人には願ったり叶ったりの機能だろう。
なによりボタンひとつで機能を呼び出せるのでフィルターの着脱も必要なく、焦って着脱してフィルターを落として割ってしまう……という心配もなくなる。
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■撮影環境:f/8.0 1.6秒 ISO400 焦点距離17mm(35mm判換算34mm) カラークリエーターにて撮影/ライブGND8 Medium使用
岡山県備中国分寺の古代米の田園風景。真っ赤な稲穂が頭を垂れる夕暮れ時、通常の撮影では空と稲穂の輝度差が大きく撮影が難しいシーンだ。
OM-3にはOM-1 Mark IIで搭載されたライブGND機能が備わっており、輝度差のあるシーンでもレタッチすることなく適正露出で撮影することが可能だ。
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今回は稲穂と空の境目にGND効果のポイントを配置。このラインを境に上側にGND8(-3EV)の減光効果が適用されている。
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■撮影環境:f/8.0 1/60秒 ISO200 焦点距離17mm(35mm判換算34mm) カラークリエーターにて撮影/ライブGND8 Medium使用
ライブGNDは空の色や雲のディテールを強調したい時に有効だ。特に夕焼けのシーンでは色味を強調することができるのと、カラークリエーターやカラープロファイルコントロールと組み合わせることでより印象的な一枚に仕上げることができる。
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■撮影環境:f/5.6 1/400秒 ISO200 焦点距離17mm(35mm判換算34mm) カラークリエーターにて撮影/ライブGND8 Hard使用
フィルター効果がもっとも強いGND8 Hardを使って海と空を境に意図的に輝度差を作り、海が輝いている様に演出。通常撮影では海と空の輝度差がほとんどなくシームレスな状態だがライブGNDを使って空を暗く、海を明るくして非現実的な印象に。
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■撮影環境:f/4.0 1/50秒 ISO200 焦点距離17mm(35mm判換算34mm) カラークリエーターにて撮影/ライブGND8 Soft使用
フィルター効果がもっともなだらかなSoftを使って撮影。手前の街並みが黒潰れすることなく夕焼けの色味を強調することができた。
フィルターのグラデーションが強すぎると建物の途中でGNDの境目が目立ったりすることがあるので景色や被写体に合わせてSoft、Medium、Hardと使い分ける必要がある。
ライブ機能にはND効果を再現したライブNDが備わっている。NDフィルターを使用したことがある人、普段から常用している人も多いのではないだろうか。
NDフィルターは部分的に減光するGNDフィルターと違い画面全体を減光させるフィルターのことだ。簡単に言えばサングラスの様なもので、レンズに入ってくる光を物理的に減らしてしまうのがNDフィルターの役割だ。
NDフィルターを使うことで日中でもスローシャッターを切ることが可能となり、渓流や滝など流れるものを抽象化することが可能となる。
OM-3ではライブNDを使うことでND64相当までの効果をカメラ内で再現することが可能だ。
一点、ライブNDで注意したいのはシャッタースピードの上限が決まっており設定段数がND2(-1EV)の時はシャッタースピード上限が1/60秒、ND64(−6EV)の場合は1/2秒となる。つまりシャッタースピード1/125秒より早い場合は強制的にシャッタースピード1/125秒に対してND効果が適用されることになる。
私のおすすめは日中ライブNDを使用する場合は物理フィルターのND(ND8〜16)を1枚持っておくことで使いやすくなるのと、手持ちのNDフィルターとライブNDの効果を掛け合わせ、効果を増大させることも可能なのでそういう使い方がベストかもしれない。
日陰や森の中では必然的にシャッタースピードが遅くなるので物理NDフィルターなしでも十分使える。
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■撮影環境:f8.0 13秒 ISO200 焦点距離45m(35mm判換算 90mm) カラープロファイルコントロールにて撮影/ライブND64使用
スローシャッターの効果が一番出やすい渓流でライブNDを使用して撮影。一番効果の強いND64を使うことで日中でもシャッタースピード13秒のスローシャッター(ND無しだと1/15秒)を切ることができた。スローシャッターで撮影することで水流が抽象化され幻想的な一枚に仕上がった。
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■撮影環境:f5.6 20秒 ISO200 焦点距離26m(35mm判換算 52mm) カラープロファイルコントロールにて撮影/ライブND64使用
水流を抽象化させることで写真的な表現から絵画的な表現に。ライブNDは基本的にスローシャッターになるので三脚を使用した撮影がおすすめ。OM-3はボディが小さいので三脚もそこまで大きなものは必要なく、トラベル三脚が1本あれば作品のクオリティが一気に高まる。
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■撮影環境:f5.6 5秒 ISO200 焦点距離12m(35mm判換算 24mm) カラープロファイルコントロールにて撮影/ライブND64使用
ライブNDを使うことで物理NDフィルターを使うよりもクリアな結果を得ることができる。思い立ったら機能を呼び出して使うことができるためシャッターチャンスにも強くなる。
私がOM-3を使っていて最も相性が良いと感じたレンズはM.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 IIで、サイズ感と焦点距離が非常にマッチしていると感じる。実は私の場合OM SYSTEMのカメラでは単焦点を使用しての撮影はほとんどなく、M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PROやM.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PROでの撮影が9割くらいを占めている。OM-3がラインナップに加わったことで今まで出番が減っていた単焦点やスタンダードクラスのレンズの出番が間違いなく増えると感じた。
ボディ選びの自由度が増えたことで撮影スタイルに合わせたものを選び、レンズに合わせたボディ選びができるため隙のないラインナップとなった。さらにOM SYSTEMのラインナップの良いところはセンサーサイズが統一されているため3つのラインナップが上下関係ではなく横並びの関係として考えることができる。
誰でもシネマチックを体験できるOM-Cinema
スチル撮影と比べてムービー撮影ってちょっとハードルが高いな……気軽さが無いなと思っている人は多い。私の周りでもムービーが撮れるカメラを使っていても一度もムービー機能を使ったことがないという人は案外多い。
OM-3にはより気軽に動画を楽しんでもらえる様に撮影モード切り替えダイヤルが新設され、スチルで撮影した後にそのままムービー撮影に切り替えられる様になっている。またOM-3には新たにOM-Cinemaというモードが搭載されており、その名の通り誰でも簡単に「シネマチック」な映像を撮影することができるのだ。
OM-Cinemaには1と2の2つのモードがあり、それぞれ違った絵作りを楽しむことができる。実際に撮影してみて感じたのはOM-Cinema1は風景、OM-Cinema2は人物の入ったシーンが向いている。特にOM-Cinema2は絵作りの変化が大きく、色味の被りやコントラストを一般的なシネマチックの雰囲気に自然と寄せてくれる。通常であれば撮影後にカラコレと呼ばれる編集作業で仕上げていくのだが、OM-Cinemaは撮影時にシネマチックな絵作りになっているので雰囲気を手軽に楽しみたい人にはもってこいだ。
今回はOM-Cinema1で風景をOM-Cinema2で人物をメインにしたショートムービーを撮影している。
「シネマチック風」の仕上がりには答えがいくつもあり、今回は数ある仕上がりの中から2つ搭載されたという感じだ。
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OM Cinema2で撮影すると写真の仕上がりとは随分と違う印象となる。OM Cinemaは動画用アートフィルター的存在と言ってもいいかもしれない。
私のお気に入りはOM-Cinema2で、まさに動画版アートフィルターとして積極的に使っていきたいと思っている。
本格的に絵作りを極めたいという人はOM-Log400や外部ProResRAW収録も選択肢としてあるので、自分がどの様な仕上がりをイメージしているのかで収録方法を選ぶと良い。OM-Cinemaが搭載されたことで「ムービーは難しい」というハードルが少し下がるのではと思っている。
シネマチック感をより強調したい場合はフレームレート(1秒間のコマ数)を24fps(24コマ)にするとより「映画的」な質感になる。理由としては映画で主に使用されているフレームレートが24fpsと1秒間のコマ数が少ないためで、このコマ数が映画的な雰囲気を生み出している。また動画の場合はフレームレートに対して適切なシャッタースピードが要となっていて、一般的にはフレームレートの2倍分の1となっている。フレームレート24fpsでの撮影の場合は「1/48秒」が適切だ。このシャッタースピードはスチル撮影では見ることがない数値で、普段は1/50秒が最も近い数値となる。OMのカメラは動画モードにするとこの「1/48秒」が選択できる様になるのが面白い。シャッタースピードが少し遅めになることで動きのある被写体が少しブレる(モーションブラー)ためそれが映画的な質感にもつながっているのだ。
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写真だと被写体ブレとしてNGになることも多いが動画の場合はこのブレが滑らかな映像の要となる。
24fpsの場合1/48秒のシャッタースピードでの撮影となるので動いている被写体は基本的にぶれていると考えてもいい。
フレームレートが高くなるほど設定するシャッタースピードが速くなるため、あとで切り出して静止画として使いたい場合などはフレームレート60fpsに設定しておくと良い。
ちなみに日中このシャッタースピードで撮影することは非常に難しく、特にF値を開けた撮影を行う場合は必然的にNDフィルターが必要となってくる。風景を撮影している人であればNDフィルターを持っている人も多いかもしれない。私は動画撮影用にバリアブルND(可変ND)を使用しており日中の動画撮影であればND32あたりは必要となってくる。
まとめ
カメラを選ぶ時に最初に注目するのは画質を左右するセンサースペックや連写の速度など所謂カタログスペックだが、気軽に持ち出せるサイズ感や重量、モチベーションが上がるボディデザインなど実際に現物を見てみないと伝わりにくい「スペック」もある。もちろん撮影スタイルは人によって異なるためカメラのどこに重きを置くかは人それぞれだが、私のライフワークであるネイチャースナップの様に気軽さが重要なジャンルだと、ボディサイズは画質よりも重要だったりするのだ。
そしてモチベーションが上がるボディデザインも大切で、OM-3の様なレガシーデザインは所有感も高くカメラを操作する楽しさもあり、小型レンズとの相性もいいのでカメラを持ち出すことが楽しくなる。これは道具として考えた場合もっとも重要な要素であり、写真はカメラを持ち出さないと撮ることができないという根幹に関わることでもある。
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機能美という言葉がぴったりなOM-3のボディデザイン。
とにかく持ち出したくなるのがOM-3の魅力だ。
組み合わせるストラップや持ち運び用のカメラバッグにも拘りたくなる。
OM-3は単純に懐古的なデザインだけではなく、機能性は最新のものを搭載することで多くのユーザーの願望を叶えるカメラとなるはずだ。これはOM-3だけの話ではなくOM SYSTEMのカメラは撮影体験を楽しむための機能が豊富に盛り込まれているためユーザーがさまざまなジャンルに挑戦しやすい。OM-3ではスチル向けのコンピュテーショナルフォトグラフィはもちろん、OM-Cinemaの様にムービー向けの機能も新たに搭載することでより手軽にムービー撮影に挑戦しやすくなっている。
良いものは時代を超える。
OM-3が登場したことで、この先もOMのデザインは継承され進化して行くのだろうと期待が高まった。
このワクワクと感動を一人でも多くの人に体験してもらいたいと思っている。
■写真家:木村琢磨
1984年生まれ。岡山県在住のフリーランスフォト&ビデオグラファー。広告写真スタジオに12年勤務したのち独立。主に風景・料理・建築・ポートレートなどの広告写真の撮影や日本各地を車で巡って撮影。ライフワーク・作家活動として地元岡山県の風景を撮影し続けている。12mのロング一脚(Bi Rod)やドローンを使った空撮も手がけ、カメラメーカー主催のイベントやセミナーで講師を務める。