OM SYSTEM OM-1で描くプチ旅と日々|クキモトノリコ
はじめに
2022年3月に発売されたOM SYSTEMの新フラッグシップモデルであるOM-1は、センサーが新しくなったことによる高画質性や全体的なスペックの向上など、このカメラがいかに進化したのかという数値的な詳細は既にご存知の方も多いかと思います。
故にそのあたりのお話は別記事などにお譲りすることにして、発売後3ヶ月の間に撮影した写真とともに、特殊な環境や高度な技術を用いた撮影というよりは日常使いとちょっとした遠出など、私の周りにも多くおられる比較的ライトユーザー的な目線でのレビューを、設定のポイントとともにお届けします。
日中に手持ちでのスローシャッター撮影を楽しむ
NDフィルター装着の手間が省ける、カメラに内蔵されたNDフィルターとも言うべき「ライブND」が、OM-1はND64(取り込む光を1/64に減らす=6段分の効果)まで搭載されているため、明るい日中でのスローシャッター撮影を手軽に楽しむことができます。シャッター速度が遅くなると心配なのが手ブレですが、OM SYSTEMの強みである5軸のボディー内手ブレ補正により、手持ちでの撮影も安心です。
尚、このライブND機能はSモードまたはMモードで有効となり、それ以外のモードではメニュー画面で選択できないようになっていますのでご注意を。
水に浮かべられたバラをスローシャッターで撮影。シャッターを切ると同時にカメラをぐるん!と回してみたり、ズームを動かしてみたり(露光間ズーミング)。この際、広角側から望遠側にズームを動かすと被写体が飛び出すように写すことができます。
青空を背景に気持ちよさそうに泳ぐ鯉のぼりが風に揺れるさまを表すために、敢えてブラして撮影。人物や背景などはブレないようにしっかりカメラをホールドしながら撮影し、動と静の対比でメリハリをつけました。
明部から暗部まで階調豊かな表現を実現
画角内に日なたと日陰、つまり明るい部分と暗い部分が同時にある場合、肉眼では明暗差を理解しつつもディテールまでしっかり認識することができますが、写真に撮るとどちらかを優先するともう一方が犠牲になりがちです。OM-1は新しいLive MOS センサーと画像処理技術により、明部から暗部まで豊かな階調で肉眼に近い表現をしてくれました。
また、これまでのOM SYSTEM機はホワイトバランスの微調整が視覚的にわかりづらいという点があったのですが、OM-1はそれが解消!他メーカーと同様に、グリーン、マゼンタ、ブルー、アンバーの調整がひとつのチャート上にまとまり、直感的に操作しやすくなった点もとても嬉しいポイントで、これは桜の撮影時に非常に重宝しました。
暗所での高感度撮影
これまでマイクロフォーサーズ機はセンサーサイズが小さいこともあり、どうしても高感度での撮影はノイズが多く気になる……という声を聞くことが多かったように思います。私自身も正直なところISO1600(できればISO1250)以上の設定は躊躇うことが多かったのですが、今回、暗い室内で思い切ってISO6400にしてみましたが、以前ほど気になるノイズは感じられず、非常に満足な仕上がりでした。
尚、今回非常に暗い環境下での撮影でしたが、相手が生き物ゆえオートフォーカスを助けてくれるAF補助光はOFFにして、AF+MF(オートフォーカスを使いつつ、マニュアルフォーカスで調整をする設定)で撮影しています。
どうぶつ撮影が楽しくなる!AI被写体検出AF
OM-1を手に入れて以来、何より撮影が楽しくなったシチュエーションというのがどうぶつ撮影でした。動く動物はピント合わせが難しく難易度の高い撮影となりがちですが、OM-1はモータースポーツ、飛行機、鉄道、鳥、犬・猫の5パターンから選んで設定することで、画面内を動く被写体を追尾してくれます。そしてその中でも「犬・猫」の設定が、意外にも犬と猫に限らず、動物園にいるどうぶつたちの多くに反応してくれたことが、どうぶつ撮影を非常に楽しくしてくれることとなりました。
設定としては、私はボタン設定(カスタマイズ)でシャッターボタンのすぐ近くにある露出補正ボタンに「被写体検出」を割り当てています。これにより、露出補正ボタンで被写体検出機能のON/OFF、また露出補正ボタンを押しながら背面液晶側のダイヤルを回すことで5パターンの被写体+OFFの設定変更ができます。
トラはネコ科であるため、「犬・猫」設定で対応できることには納得。その一方で、クマ、サル、さらにカバやゾウに至っては、画面内でまず身体・顔周辺に白い四角が現れて目標の被写体であることをカメラが認識していることを示し、さらに小さな緑の四角が眼を検出し、追いかけようと奮闘するさまには正直驚きました。
バードショーで飛び回る鳥たちもしっかり捉えてくれました。高速で飛ぶ鳥を速いシャッター速度で止めて写したら、次はシャッター速度を落として流し撮りをしたい……。そんな時はあらかじめそれぞれの設定を決めて、モードダイヤルにあるC1〜C4(カスタムモード)に登録しておくとスムーズに切り替えが行えます。
プチ旅と日々のスナップあれこれ
新型コロナによる諸々の自粛もようやく緩み、移動の自由も徐々に緩和されてきましたが、あまりの遠出はまだ躊躇われたこの春。居住している関西圏内でのお出かけと日々の写真をご紹介します。
春の不安的なお天気のある日。陽がさしていながらの通り雨に遭遇、柳越しの雨粒が綺麗でした。OM-1もOM SYSTEMが誇る防塵防滴機能を備えているため、急な雨にも安心です。
普段、晴れ女のワタシですが、そりゃまぁ雨の日だってあります(笑)。見頃の藤園に出かけた日はあいにくの雨。こんな日の機材選びは雨に濡れても安心なカメラ一択ですね。
満開の桜を狙って兵庫県にある丹波篠山城跡へ。平日の朝ともあってほぼ人がおらず、ちょうど風がやんでお堀が水鏡となりました。日陰側の石垣や水面に映った桜もしっかり描写してくれています。
近江八幡の八幡堀と、尾道での一コマ。わずかな時間で変わりゆく光を追いかける夕方や、向かってくる渡船とそれを待つ女性にふと気づいてシャッターを切るスナップ撮影に、ボタンやダイヤルの多いカメラは操作に慣れさえすれば非常に頼もしい相棒となります。
OM-1はピント合わせのターゲットが大幅に変更されました。以前よりターゲットの枠が小さく、細かくなった一方で、初期設定の「シングル」だとターゲットとターゲットの間に隙間があり、緻密なピント合わせをしづらい点がストレスに感じていました。しかし最近になって解決方法を知りストレスフリーに!その設定方法をご紹介いたします。
AFターゲットモード設定で、移動ステップのサイズ(幅)を「1」に設定すると、隙間なくピントターゲットを移動させることができます。
お花の中心にピントを合わせたいのに、狙いたい位置がちょうどターゲットの隙間に来てしまう……。そんな悩みが一気に解決しました!
紫陽花と五色幕で露出差があり紫陽花が暗くなってしまったため、付属の小さな外付フラッシュ(FL-LM3)を弱く発光して全体の露出はそのままに紫陽花を明るく撮影。この小さなフラッシュは発光部が回転して光をバウンスさせることもできるのが大きな特徴です。それでいてとても小さく嵩張らないサイズゆえに常に鞄に忍ばせておくことができ、このような「ちょっと光を足したい」ときにとても助かります。
まとめ
被写体検出機能や高感度に強くなったことなど、様々な点で手に入れるのが楽しみだったOM-1。3ヶ月間実際に使ってみて、ハイレゾショットや深度合成といった非常に緻密な描写や高度な技術が求められる撮影でなくとも色々な場面で手助けをしてくれる機能が多く、それでいて小型軽量であるがゆえに中級者さん以上であればむしろどんどん使ってみてほしいカメラです。中でもどうぶつ撮影が個人的にはとにかく楽しくて仕方がなく、これはぜひ多くの方にも体験してもらいたいポイントです。
■写真家:クキモトノリコ
学生時代に一眼レフカメラを手に入れて以来、海外ひとり旅を中心に作品撮りをしている。いくつかの職業を経て写真家へ転身。現在はニコンカレッジ、オリンパスカレッジ講師、専門学校講師の他、様々な写真講座やワークショップなどで『たのしく、わかりやすい』をモットーに写真の楽しみを伝えている。神戸出身・在住。晴れ女。
公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員