完成されたフラッグシップ OM SYSTEM OM-1 Mark II
ブラッシュアップされたOM-1 Mark II
皆さんこんにちは、写真家の虫上です。今回は私の所有しているOM SYSTEM OM-1 Mark IIをレビューしていきます。私は以前からOMデジタルシリーズのフラッグシップ機を順に愛用してきました。初代から順番に買い替えてきたので、E-M1>E-M1 Mark II>E-M1 Mark III>OM-1>OM-1 Mark IIという感じになります。モデルチェンジするごとに機能がパワーアップして、現在のOM-1 Mark IIは一眼レフカメラ以上の使い勝手のよさを感じさせてくれます。
特にミラーレスのオートフォーカスの改善は目覚ましいものがあり、AF速度はもちろん、AFの測距点が1053点(しかもオールクロス像面位相差)だったり、AI被写体認識AFが搭載されていたりと、AFは一眼レフ時代よりも大幅に進化していて、意図した被写体にばっちりピントを合わせることが容易になりました。
前機種OM-1からの改良点
前機種のOM-1と比べるとロゴマーク以外の外観はほぼ同じですが、コマンドダイヤルの表面がラバー素材になっており、とても操作しやすくなりました。これは地味な改良点ですが、夜間撮影やとっさの撮影などでの操作感が素晴らしいです。また、心配されていた軍艦部のブランドロゴもなかなかいい感じで、個人的には外観のチープさはまったく気になりませんでした。
内部は地味ながら様々な変更点がありました。まずはEVFですがドット数などスペックは変わらないものの、オートホワイトバランスが改良されたためかOM-1に比べると自然で見やすくなっていました。ボディ内手ブレ補正も7.0段から8.5段へと進化していて、夜景撮影などで三脚を持ち出すことがかなり少なくなりました。私の腕では広角レンズでシャッタースピードが3秒くらいなら、ブレなく手持ちで撮影できました。
ライブND機能も従来のND2、4、8、16、32、64に128が加わり7種類へ。1つ増えたのも嬉しい変更点です。これによって、より明るい状況下でもスローシャッターを切ることが出来るようになりました。
被写体認識AFはOM-1の時にはモータースポーツ、飛行機、鉄道、鳥、動物(犬・猫)の5種類だったのですが、OM-1 Mark IIでは新たに「人物」が加わったことが嬉しいポイントです。実はこの被写体認識AFは、水族館の魚などの撮影にも大いに役立ってくれます。ちなみに私のよく撮影する水族館内で、水槽の魚を認識しやすいのは「鳥」認識モードです。皆さんも水族館に行かれましたら是非試していただきたい機能です。
新機能「ライブGND」
ハーフNDのようなグラデーションの減光効果をカメラ内でかけることができる「ライブGND」。私は普段から太陽の光や人工光などを使用して撮影することが多いので、必然的に明暗差が大きな被写体を撮影することが多く、黒潰れや白飛びする場合が多くなりがちでしたので、この機能はライブNDが搭載されてからいつか搭載されないかとずっと望んでいました。
GND段数(2, 4, 8)とフィルタータイプ(Soft, Medium, Hard)を組み合わせた計9種類のフィルター効果を、ファインダーを覗きながら選べるのでとても使いやすいです。フィルター効果の境界線の位置や角度も構図に合わせて調整することができます。また、画像処理でどこまでアナログに近く表現できるのか心配でしたが、全く問題なく自然な感じに表現できました。
パワーアップした連写性能
OM-1から受け継がれた最高120コマ/秒の連写性能を誇り、そこに加え撮り逃した瞬間も遡って記録できるプロキャプチャーモードも野鳥の撮影では特に重宝する機能です。ただ、従来のOM-1ではずっとシャッターを押しているとすぐバッファが一杯となり、途端に記録が遅くなる現象がありました。
しかしOM-1 Mark IIになってこのバッファが増強されており、前機種より連続撮影可能枚数が多くなりました。私のカメラでテストしたところ、300MB/sのSDカードでJPG:240コマ、RAW:210コマまでSH1モードの秒間120コマでほぼ動画並みの連続撮影ができました。これにより鳥などの決定的瞬間の撮り逃しがより少なくなったかと思います。
実際に鳥の撮影をM.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PROの望遠レンズで試してみました。鳥認識AFで常にAF/AE追従してくれるSH2モード(秒間50コマ)で撮影してみると、このような状況下でも難しい背景以外はしっかり被写体に合焦してくれました。
OM-1シリーズの素晴らしい機能
E-M1 Mark IIIからOM-1シリーズになった時点で多くの機能がパワーアップされましたが、個人的に良かったと思う点をいくつかピックアップします。
【1】常用ISO感度がアップ
OM-1でセンサーが新しくなったことで高感度での写りが抜群に良くなりました。E-M1 Mark IIIと比べたときに同じISO感度でもノイズが少ない印象です。また、ライブビューブースト機能も名称がナイトビューモードに変わり、より暗いところでも明るく見えて、肉眼では見えないような暗い部分もピントが合わせやすくなりました。
【2】進化したEVF
EVFもE-M1の液晶ビューファインダー約236万ドットからOLEDビューファインダー約576万ドットの高精細になり、OM-1 Mark IIに至っては見え方もチューニングされ、より光学ファインダーの見え方に近くなってきているように感じました。また、ファインダー内部でのピントの拡大もしやすいです。
【3】進化した液晶モニター
実はあまり注目されていませんが、液晶モニターも地味に高精細になっていて、再生画像のピント拡大などがしやすくなっています。
E-M1シリーズ:3.0型2軸可動式液晶、約104万ドット
OM-1シリーズ:3.0型2軸可動式液晶、約162万ドット
【4】USB給電
寒冷地などでPD充電対応の外部バッテリーを使用できるほか、車での移動中やホテル内のUSB電源しかない状態で充電器を忘れた時などに重宝する機能です。ちなみに車のシガーソケットからのUSB充電は2.1A出力のソケットを推奨します。
【5】進化したクロスタイプ1053点のAF測距点
E-M1シリーズと比べてなんと10倍近い測距点の数となり、マクロ撮影や細かい部分のAFがとても正確にピントを合わせしやすくなっています。ただ注意点として、測距点が多すぎて移動させるのが大変です。デフォルトでは1053点の選択モードになっていませんので、1053点の測距点を使用するにはAFカスタム設定が必要となります。
E-M1シリーズ:クロスタイプ位相差AF(121点)
OM-1シリーズ:クロスタイプ位相差AF(1053点)
まとめ
いかがでしたでしょうか。さすがフラッグシップ機なだけあってたくさんの便利な機能が搭載されており、フォトグラファーの様々な意見を取り入れ、ブラッシュアップしてきたのがわかります。現在ではマイクロフォーサーズのレンズの種類も、欲しかった焦点距離のラインナップはほぼ羅網されており、私のメイン機種としても十分使用できています。
また、最近私は腰痛で困ることがあるので軽くて小さいOM SYSTEMのカメラがとても役に立っています(特にマイクロフォーサーズのレンズはどれも軽くて小さいのです!)。ひとつだけ気になるところとすれば、画素数が約2037万画素なのが惜しい点ですが、ここもいずれは増えていくのではと勝手に思っています。
■写真家:虫上智
1968年岡山県生まれ。高校を卒業後、写真家 緑川洋一氏に師事。地元のカメラ店で撮影業務などを学び2000年に独立。現在はスタジオ撮影、フォト講座、執筆、フォトコン審査、講演等を受け持つ。ライフワークでは心象風景、自然写真、水中写真を撮影。
日本写真家協会(JPS)会員、日本写真講師協会 認定フォトインストラクター、OM SYSTEMゼミ講師、フォトカルチャークラブ講師、フォトマスターEX(総合)一級