OM SYSTEM OM-1 Mark IIで撮影する街スナップ|新宿撮影会レポート

礒村浩一
OM SYSTEM OM-1 Mark IIで撮影する街スナップ|新宿撮影会レポート

はじめに

今回は、先日公開された『OM SYSTEM OM-1 Mark II & OM-5の高い操作性と最新機能を活かして街スナップ撮影という冒険に出かけよう!』で提案させていただいた、街スナップ撮影を実践する機会として開催された撮影会のレポートをお送りします。

三連休初日の賑わいのなかで行われた新宿街スナップ撮影会

撮影会ではOMデジタルソリューションズ株式会社の協力を得て、参加者にはOM SYSTEM OM-1 MarkIIとOM SYSTEMのマイクロフォーサーズ用交換レンズが貸し出されました。当日は新宿北村写真機店イベント会場に集合したのち、新宿の街を参加者のみなさんと講師の私で歩き回りながらスナップ撮影を行いました。

撮影に訪れた東新宿エリアは、日本のなかでも有数の繁華街であると同時に、戦後から現在までの時間が折り重なったユニークな街並みが現存しています。参加者のみなさんには、街に散らばる魅力的な被写体の見つけ方や構図の組み立て方、撮影を行うにあたっての心構えやマナーなどのアドバイスもお伝えさせていただきました。

またこの日は9月後半の三連休初日と新宿の街はいつにもまして多くの人々で賑わっていたことから、その人の多さを写真表現に活かす方法のひとつとして、街スナップ撮影においての大切な要素である「街の雑踏の捉え方=トラブルを避ける人物(第三者)撮影のテクニック」なども実践していただくことができました。

撮影した作品をみんなで見ながらの講評会

撮影終了後は昼食休憩後に新宿北村写真機店イベント会場にて、みなさんが撮影した作品を順番に拝見する講評会を開催いたしました。どの方の作品も新宿の街の魅力を個性的な捉え方で写真に収めた力作揃いでした。そのうえで、作品の意図をより鑑賞者に伝えやすくするためのアングルや構図についてのアドバイスを行わせていただきました。

こちらでは参加者が当日に撮影した作品を一部抜粋して掲載、講評会で私からお伝えさせていただきましたアドバイスを添えさせていただきます。

Y.Kさんの作品

東新宿の裏路地に入ったところに並ぶ飲食店の店構えを撮影していますね。この辺りは昭和の頃の面影を濃く残している建物が多く残っており、新宿という街の独特な雰囲気が魅力的なエリアです。この作品では連なる看板にカメラを向けることで、見る者に夜の街の賑やかさを想起させることができています。レンズはOM SYSTEMの単焦点広角レンズM.ZUIKO DIGITAL ED 12mm F2.0を使用されており、縦位置構図で看板を下から仰ぎ見るように撮影することで広角レンズの特性をうまく活かされています。これにより手前にある丸いHeinekenの置き看板は大きく奥に連なる吊り下げ看板は小さく、また建物は下方から上方に向けて窄ませたことで遠近感のある画となっています。さらに撮影時にはOM SYSTEMカメラに搭載されたアートフィルター「ポップアートII」を適用しコントラストの高いダイナミックな表現とした判断も効果的です。このようにカメラ・レンズの特性をきちんと理解された表現方法を取られている点が非常に評価できます。

T.Kさんの作品

こちらの作品は新宿という巨大な街の一つの側面である、違法駐車という社会問題から派生した街角の光景を、グラフィカルな視点で捉えたユニークな作品です。駐車禁止のサインが連続して壁に掲示されていますが、黒い壁と白地に赤でデザインされたアイコンのようなサインの組み合わせがどこかポップアートのようにも感じられますね。きっと作者もその点に心惹かれたのではないでしょうか。そこに更に通り過ぎる人を1/13秒のスローシャッターで動きをぶらし撮影することで、静と動の対比表現としてある点が非常に面白いです。作者のお話では背景の壁とサインの配色に合わせて、同じく赤と黒の服を着た人が横切るシャッターチャンスを狙ったとのことです。このように雑多な街の姿であってもさまざまな捉え方を行うことで、写真表現の幅を広げることができます。街スナップ撮影には、いつでも自在に思考回路を切り替えて魅力的な被写体を捉えることができるようになるための訓練としての側面もありますので、これからもぜひ様々な表現手法を試してみてください。

N.Nさんの作品

この作品は東新宿の片隅にひっそりと鎮座するとても小さな神社にて撮影されたものです。この神社は雷電稲荷神社と呼ばれており、周辺を大きなビルや駐車場などに囲まれながらも、そこだけは静寂さを感じられるような場所です。普段は訪れる人の数もさほど多くはないのですが、この時はちょうど外国の方が静かにお参りをなされていました。この作品はお参りをお邪魔しないよう、参道の外からM.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4.0-5.6 IIの望遠側の焦点距離で撮影がなされています。街スナップ撮影では一般的に周囲の光景も一緒に画角に収めることで、状況をわかりやすく構成することが求められますが、この作品のようにあえて周囲とは隔絶させるような構図とすることで、この場に充ちる空気感を表現することもできます。特にこの時にお参りされていた方が外国の方であり、かつ車椅子にて訪れていること、それにも関わらず社の前では懸命に自らの足で立ち上がり、神妙に祈りを捧げていらっしゃる様子を目にしたことで、その場に居合わせた我々の心はこの方の思いの強さに惹かれました。その様子がこの作品にも顕されているように感じてしまいます。ただ、人の好奇心というものは貪欲なもので、ついこの方がどのような表情をされているのかを見たくなってしまうのも本心であることから、できることならばこの方の表情の片鱗だけでも見たいなと、つい欲張ってしまいました。

タヒタさんの作品

高級ブランドショップのショウウインドウを捉えた作品です。そこにはガラス越しに見えるショップロゴを模したディスプレイとその鏡面に写った後ろ姿の女性、そしてガラスに写り込んだ街の様子と三重構造で世界が構成されています。一見すると複雑な世界にも思えますが、実はロゴのディスプレイの鏡面には、撮影者自身も写り込んでおり、この入り組んだ光景の世界は撮影者のみが認識できる「セルフポートレート=自認識」表現にもなっていることが判ります。昔からセルフポートレートは自らの存在を確認し、その意義を問いただす表現方法のひとつとして、写真家が必ず一度は通る道だとも言われるほど重要なものです。それをおそらく無自覚ながら、街中のショップの前で撮影を行った作者さんの発想は、これからの撮影においてもアイデアに富んだものを生み出してくれるはずです。なお作者さん曰く、「鏡面に写り込んだ女性の後ろ姿を写真に収めたかった」とのことですが、それこそがきっとご自身の内に秘める羨望の発露であったのではないでしょうか。その想いは撮影の原動力としても力強いものですので、これからも臆することなく自信を持って表現していただきたいです。

K.Wさんの作品

新宿の街中を歩く人々を独特な表現で捉えた作品。今回の撮影実習では、スローシャッター撮影を行うことで交差点を通り過ぎるクルマなどが流れる「ぶらし」撮影も体験していただきましたが、この作品はその応用ともいえる「流し・ぶれ」撮影といえるものですね。通常の撮影では被写体が流れたり、カメラぶれが発生した写真は失敗写真となってしまいますが、この作品では「狙い半分偶然半分」とも言える不思議な効果が生まれています。被写体はおそらく外国からお越しになった方々だと思われますが、それにより見方によっては海外の街中での撮影と捉えることもできそうです。ですがよく見ると日本のパトカーが背後に写っていたり馴染みのある道路標識などが判別できるので、ここは日本であることがわかると思います。ところで「ぶれぼけ」の写真であっても、被写体にはきちんとピントを合わせておくことが肝心です。作品においてはあくまでも捉えたい対象を明確にしておかないと、写真が持つ力が削がれてしまい伝えたいメッセージが受け手に届かなくなってしまうからです。その観点からもこの作品は対象物にピントが合わされており存在が明確になっていることから、ただの偶然の産物で写ったものではないといえます。とてもユニークな表現方法ですので、ぜひともシリーズ化して作品を制作してみてください。

新宿街スナップ撮影会を終えて

今回開催された撮影会はShaShaにおける撮影テクニック記事とカメラのキタムラ店舗の連動イベントとして企画されたものです。そして撮影機材としてOM SYSTEMのミラーレスデジタル一眼カメラOM-1 MarkIIと高性能な交換レンズを参加者のみなさまに使用して撮影していただいたことで、スナップ撮影においても扱いやすく、また画質の高さや強力な手ぶれ補正機能など最新の機能が作品制作において極めて有効な選択となることを体感していただけたことと思います。

そして何より新宿というさまざまな物や建物、人々が溢れる街での撮影体験を通じて、スナップ撮影の楽しさと表現することの奥深さを実感していただけたことでしょう。このレポートをご覧の読者のみなさんも、これを機にぜひ街スナップ撮影にトライしてみてください。普段から見慣れた街であっても、より時間をかけてゆっくりと歩きながらカメラを通して見ることで、きっとこれまでは気が付かなかった面白さや不思議さに出会えるに違いありません。

さあ同士よ!「カメラを携えよ、街に出よう」。

 

■写真家:礒村浩一
広告写真撮影を中心に製品・ファッションフォト等幅広く撮影。著名人/女性ポートレート撮影も多数行う。デジタルカメラ黎明期よりカメラ・レンズレビューや撮影テクニックに関する記事をカメラ専門誌に寄稿/カメラ・レンズメーカーへ作品を提供。国境離島をはじめ日本各地を取材し写真&ルポを発表。全国にて撮影セミナーも開催。カメラグランプリ2016,2017外部選考委員・EIZO公認ColorEdge Ambassador・(公社)日本写真家協会正会員

 

 

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