オリンパス OM-D E-M1 MarkIII レビュー|小型ボディーとプロスペックの融合を追求した最新ミラーレス一眼
プロスペックを凝縮し注ぎ込んだ第3世代E-M1モデル
オリンパスから新しく発表されたOM-D E-M1 MarkIIIは、同社のミラーレス一眼カメラOM-Dシリーズの中では、プロフェッショナルモデルのE-M1Xと並びハイエンドモデルに位置するミラーレス一眼カメラだ。
前モデルであるE-M1 MarkIIの基本デザインを踏襲しつつも、E-M1Xにて実現した先進的な機能が惜しみなく投入された第3世代E-M1モデルである。
OM-D E-M1 MarkIII(以下E-M1 MarkIII)を仔細に見ていく前に、オリンパスOM-Dシリーズのラインナップについて、一度各モデルの立ち位置を確認しておこう。
まず、現在OM-DシリーズにはEVF(電子ビューファインダー)が搭載されたミラーレス一眼カメラとして、エントリークラスのE-M10 MarkIII、ミドルクラスのE-M5 MarkIII、ハイエンドモデルのE-M1 MarkII、E-M1Xの4機種が存在する。
このうちE-M1Xはバッテリーグリップ一体型のプロフェッショナルモデルとして、E-M1Mark IIをベースにより機能が強化されたスペシャルモデルとなっている。
そして今回発表されたE-M1 MarkIIIではE-M1 MarkIIの後継機として、より一層の機能向上がなされた。簡単に言えばE-M1Xで採用された新機能をE-M1系モデルでも使えるようにしたものだといえる。
これまで、E-M1Xの機能は魅力的であるものの、バッテリーグリップ一体型の大きなサイズに導入を躊躇していたユーザーにとっては、まさに待ち望んでいたカメラといえるだろう。
主なスペックと外観
早速、具体的なスペックと外観を見ていこう。
製品スペック
・マイクロフォーサーズ規格マウント 有効画素数約2037万画素4/3型Live MOSセンサー採用
・スーパーソニックウェーブフィルター搭載
・常用ISO感度200-6400 / 拡張ISO感度 L64(ISO64相当)
・L100(ISO100相当)・8000-25600
・連写H 最高15コマ/秒・連写L 最高10コマ/秒
・静音モード連写L 最高18コマ/秒
・プロキャプチャー連写H 最高60コマ/秒
・プロキャプチャー連写L 最高18コマ/秒
・メカニカルシャッター1/8000~60秒・電子先幕シャッター1/320~60秒
・静音シャッター(電子シャッター)1/32000~60秒
・ハイスピードイメージャAF 121点(クロスタイプ位相差AF)/121点(コントラストAF)
・撮像センサーシフト式ボディー内手ぶれ補正 5軸7段分(対応レンズ使用で7.5段分)
・視野率約100%/約1.30倍~約1.48倍 約236万ドット液晶ビューファインダー
・3.0型2軸可動式 約104万ドット背面液晶モニター
・スロット1 UHS-II/スロット2UHS-I対応 SDXC/SDHCダブルメモリーカードスロット
・MOV(MPEG-4AVC/H.264) C4K 24p・4K 30p/25p/24p・FHD・HD、ハイスピードムービー120fps、タイムラプス動画 4K/FHD/HD
・三脚ハイレゾショット(80M画素相当、25M画素相当、RAW 80M画素相当)
・手持ちハイレゾショット(50M画素相当、25M画素相当、RAW 50M画素相当)
・無線LAN・Bluetooth 内蔵
・防塵防滴耐低温(-10℃)仕様
製品外観
E-M1 MarkIIIの外観は、E-M1 MarkIIと一見では見分けがつかないほどにそっくりだ。
実際に両機を手にして見比べても全体の大きさ、重さ、シルエットに違いを見出すことはとても難しい。判別しやすい点は機種名ロゴの位置と大きさの違いくらいだ。
E-M1 MarkIII(左)とE-M1 MarkII(右)を並べて正面から見る。ボディシルエット、グリップの大きさと形状、前ダイヤルの位置、各種ボタンのレイアウトまでほとんど同じだ。
背面から見てもボディシルエットに違いは見出せない。ここでようやく、いくつかのボタンレイアウトの変更に気付く。
E-M1 MarkIIIではE-M1Xで採用された「マルチセレクター」が新たに搭載された。それに伴いその位置にあった「info」ボタンが「MENU」ボタンの位置へ移動し、代わりに「MENU」ボタンが左肩上部に移動、小さくなった「EVF/背面モニター切り替え」ボタンと並び配置された。
また、右肩にあった「AFポイントセレクト」ボタンが「ISO切り替え」ボタンへと変更されている。なお、「AFポイントセレクト」ボタンはマルチセレクターの採用により廃止された。(各ボタンの機能割り当ては設定により変更可能)
E-M1 MarkIII(左)とE-M1 MarkII(右)を上面から見る。こちらもダイヤル、レバー、レリーズボタンや各種ボタンの配置はほぼ変わらず。
変わったのは「マルチファンクション」ボタンが「露出補正」ボタンとなり、「ドライブ・HDR」ボタンの機能割り当てが「ドライブ・フラッシュ」ボタンに変更されたくらい(各ボタンの機能割り当ては設定により変更可能)。
外観としてはアクセサリーシューが黒からシルバーに変更されている。
背面モニターはE-M1 MarkIIからの変更はなく、3.0型約104万ドット液晶を採用した静電タッチ式バリアングルモニターを搭載している。
記録メディアスロットはE-M1 MarkIIからの変更はない。 二枚同時挿しが可能なダブルスロットを搭載。
スロット1がUHS-IIに、スロット2がUHS-Iに対応している。二つのスロットは同時記録、連携記録の選択が可能。
ボディー左手側面に各種端子が用意されている。上からマイク入力、音声出力、HDMI-D、USB-Cコネクター。端子カバーはゴム製で三分割式。
E-M1 MarkIIIを各種レンズと組み合わせ手にした印象は、E-M1 MarkIIのそれとまったく違いを見出せない。
基本的な操作レイアウトは踏襲されているので、今すぐにE-M1 MarkIIからE-M1 MarkIIIに持ち替えても戸惑うことなく撮影ができるだろう。
またマルチセレクターが搭載されたことで、AFポイントのセレクト操作が大幅に改善された。これは筆者も含めE-M1Xを使用しているユーザーにとってはE-M1 MarkIIIでも同じ操作性を得られることになり、とても喜ばしい改善点といえる。
ただし、外付けグリップHLD-9はE-M1 MarkIIと共通であるため、マルチセレクターが用意されておらず、縦位置での撮影時にはE-M1 MarkIIと同様のAFポイントセレクト操作となってしまう。すでにHLD-9を所有している人にとっては買い替えの必要がないメリットがある一方、マルチセレクターが用意されていないことはちょっと残念に思う点でもある。
ようやくE-M1Xと肩を並べたもう一つのハイエンド機
ハイエンドモデルとして第3世代を迎えたE-M1 MarkIII、ここではその実態についてより詳しく見ていくことにしよう。また、もうひとつのハイエンドモデルであるE-M1Xにどれほど追いついたのか、その観点からも見ていこう。
画像処理エンジン
変更点としては、E-M1 MarkIIIより画像処理エンジンが最新の「TruePic IX」に刷新された点が挙げられる。
これまでE-M1 MarkII、E-M5 MarkIIIは「TruePic VIII」を一基、E-M1Xはこれを二基搭載していた。
特にE-M1Xは「TruePic VIII」を二基併用し処理能力を高めることで先進の機能を実現していたのだが、このE-M1 MarkIIIではこれまでよりも処理能力を高めた「TruePic IX」一基のみの投入で、これらを実装することができたという。
TruePic IXの採用により、これまでバッテリーグリップ一体型のE-M1Xにしかなかった機能がE-M1 MarkIIIにも搭載されることとなった。「ライブND」や「手持ちハイレゾショット」などがそれだ。
ライブND
「ライブND」は擬似的にNDフィルターの効果を得ることができる機能だ。これは撮影時にスローシャッターの効果を持たせた複数の画像をリアルタイム合成することで、擬似的に露光時間を延ばすことができる技術だ。
使用できるND効果はND2(-1EV)~ND32(-5EV)までの5段階となる。ただ、最高でND32相当までしかないため、日中の長秒撮影では最小絞りまで絞っても露出オーバーになってしまうことがある。
そのような場合はこれまで通りにレンズへNDフィルターを装着すると同時にライブND機能を組み合わせて使用するなどすると相乗的な効果が望める。
ハイレゾショット
ハイレゾショットには三脚にカメラを固定して撮影する「三脚ハイレゾショット」とカメラを手持ちで撮影する「手持ちハイレゾショット」の二種類がある。
三脚ハイレゾショットは一度の撮影でイメージセンサーをわずかにずらしつつ8ショットの画像を得て、その情報を基に画素間の情報を補完することによりJPEG記録で約8000万画素もしくは約2500万画素相当(RAW記録も約8000万画素相当)の画像の生成を可能とする機能だ。
一方、「手持ちハイレゾショット」は手持ち撮影では僅かながらでも必ず1コマごとにフレーミングがずれることを利用し、一度の撮影で16ショットの微妙に異なる画像を得て補完、JPEG記録で約5000万画素もしくは約2500万画素相当(RAW記録では約5000万画素相当)の画像が生成されるという機能である。
これまで「手持ちハイレゾショット」は高速な画像処理能力を必要とするためE-M1Xにしか搭載されていなかったものだが、今回のモデルチェンジによりE-M1 MarkIIIにも搭載されることとなった。
AFシステム
E-M1 MarkIIIのAF機構は基本的にはE-M1 MarkIIのそれをそのまま受け継いだものとなっている。像面位相差AFとコントラストAFの両方式に対応した121点のクロスセンサーAFポイントが搭載されており、大口径レンズ使用時でも高いAF精度を得ることができる。
AFポイントの選択はシングルの1点、全面自動の121点に加え、グループターゲット(5点、9点、25点)、よりスポット的な測距点となるスモールターゲットが選択可能。AFポイントは画面全面の縦75%、横80%の広い範囲をカバーしているのも特徴だ。
このAFポイントの選択にはE-M1 MarkIIIにも搭載されたマルチセレクターを使用することで、瞬時のAFポイントの移動・選択が可能となった。さらにカスタムAFターゲットモードにも対応しており、縦11点、横11点から任意の奇数AFポイントを組み合わせたオリジナルのAFターゲットを組み上げることもできる。これにより被写体の形状や動く範囲に合わせた自分好みのAF撮影が行える。
さらにE-M1 MarkIIIではAF動作のアルゴリズムを改良したことで、E-M1X同等のレスポンスを実現したという。また、これまでにも搭載されていた顔認識AFがより認識精度を上げて搭載されるなど改良点も多い。
ただE-M1Xに搭載されている被写体認識AFは残念ながら搭載されていない。やはり画像処理エンジンがTruePic IXになったとはいえ、被写体認識AFの処理は画像エンジン一基では難しいらしい。その点ではやはりE-M1Xに優位性があるといえる。
星空AF
またE-M1 MarkIIIでは星空撮影の際に使用できる「星空AF」がOM-Dシリーズに初めて搭載された。これは夜空の星にピントを合わせる際にもAFを可能とする機能だ。
これまでは星などあまり明るくない光の点にAFでピントを合わせるのは難しく、また合わすことができたとしても、その精度はさほど高くなかった。この「星空AF」には速度優先モードと精度優先モードが用意されており、速度優先モードでは強力な手ぶれ補正機能と組み合わせることで、手持ちでの星空撮影が可能になるという。
また精度優先モードではカメラを三脚などで固定する必要はあるが、より正確なピント合わせを行うことができる。
手ぶれ補正機能
E-M1 MarkIIIにはE-M1Xと同等となる強力な手ぶれ補正機構が搭載された。角度ぶれ補正(ヨー、ピッチ)、シフトぶれ補正(上下、左右)、回転ぶれ補正に対応したボディー内5軸手ぶれ補正に対応しており、ボディー単体でシャッタースピードにして最大約7.0段分の効果を実現している。
また「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO」のようにレンズ内に手ぶれ補正ユニットを内蔵した対応レンズとの組み合わせでは、より強力な5軸シンクロ手ぶれ補正となり最大7.5段分の補正効果となる。
シャッター性能
メカニカルシャッターはE-M1 MarkII同様に現在機構的に限界値とも言われている1/8000秒の高速シャッターに対応。
連写速度はAF/AE追随で最高で約15コマ/秒。メカニカルシャッターを使用しない電子シャッターでの撮影では最高1/32000秒、連写速度はAF/AE追従で最高約18コマ/秒、AF/AE固定では最高で約60コマ/秒となっている。
またシャッターボタン半押しで記録を開始し、全押しをした時点からさかのぼって最大35コマを記録することができる「プロキャプチャーモード」も引き続き搭載されている。
その他、特徴的な機能
E-M1 MarkIIIはE-M1 MarkIIおよびE-M1Xに搭載されている多くの機能を引き継いでいる。
夜景撮影において星や飛行機のライトなど暗い中で移動する輝点を比較明合成によって輝線として表現することができる「ライブコンポジット」、長秒撮影の効果をリアルタイムにモニター画面で確認できる「ライブバルブ/ライブタイム」、被写体のピント位置をずらしながら複数回撮影を行うことができる「フォーカスブラケット機能」や、さらには、その機能を活かし最大15枚の画像をカメラ内で合成する「深度合成機能」も引き続き搭載されている。
さらに室内の蛍光灯照明やLED照明の明滅周期とシャッター速度の関係で、撮影画像に露出ムラや色ムラが出るフリッカー現象を軽減する「フリッカーレス撮影」および「フリッカースキャン機能」も搭載されている。
E-M1 MarkIII 実写作例
画質に妥協することなく用途で選べるシステムの完成形
オリンパスOM-Dシリーズには大きく分けると三つのカテゴリーが存在する。E-M10シリーズのエントリー機、E-M5シリーズのミドル機、そして E-M1シリーズのハイエンド機だ。
そして今回、E-M1 MarkIIIが登場したことで、プロフェッショナルスペシャルモデルのE-M1Xを含め、全てのラインナップがMarkIIIとして第3世代への移行が完了した。このうち小型軽量を主眼に置いたエントリー機であるE-M10 MarkIIIを除けば、E-M5 MarkIII、E-M1 MarkIII、E-M1Xの三機種のイメージセンサーはいずれも約2037万画素と同じ解像度で揃い、画質の面ではどの機種を選択しても同等の画像を得ることができる。
また、全てのモデルがマイクロフォーサーズ規格で揃えられていることから、どのカメラを選択しても同じレンズを使用すれば、自ずと同じ画角となるわけだ。
つまり、他のカメラメーカーのラインナップのようにカメラのグレードで画像の画質・画角が変化するものとは異なり、純粋にカメラの大きさ重さとパフォーマンスの違いでモデルをセレクトできる。
実はこれこそがOM-Dというシステムカメラの利点であると筆者は考えている。 例えば、被写体が動物やスポーツ、電車・飛行機、ファッションモデルなどの動きが激しい被写体では望遠レンズでの撮影でも安定した撮影が可能なバッテリーグリップ一体型で。かつ被写体認識機能も用意されたE-M1Xを選択し、風景や登山・旅先での撮影など機動力やコンパクトさを重視したい撮影ではE-M1 MarkIIIやE-M5 MarkIIIを選択するといった方法が、画質に妥協することなく行える訳だ。
現に、今回のE-M1 MarkIIIのレビューは筆者の小笠原諸島取材に携行して、撮影と機材評価を行なっている。この取材では他にも複数のカメラ機材を持ち込んでいるため、日頃使用しているE-M1Xよりも、たとえ僅かな大きさ重さの違いであったとしても、小さく軽くなるE-M1 MarkIIIという選択肢はとてもありがたい。
しかも、これら3機種はいずれも強力な防塵防滴耐低温機能を備えており、雨天や波しぶきがかかるような海辺の撮影、降雪時の屋外での撮影などでも安心して使用することができる。
E-M1 MarkIIIはまさに画質を妥協することなく、最適なカメラパッケージを選ぶことができる、OM-Dというカメラシステムの要とも言える一台だ。
撮影協力 小笠原母島観光協会 https://hahajima.com
小笠原村観光局 https://www.visitogasawara.com
カメラのキタムラ公式サイトで特設サイトを公開中
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