『OM SYSTEM M.ZUIKO DIGITAL PROレンズセレクトガイド 現行ラインナップ全レンズの特徴と使い所を解説』第一回 標準焦点距離域レンズ編
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はじめに
OM SYSTEMのミラーレス一眼カメラは、マイクロフォーサーズ規格を採用することで高い画質と小型軽量なシステムカメラとして絶妙なバランスを獲得している。交換レンズには魚眼レンズ・超広角レンズから35mm判換算にして1000mm相当を超える超望遠レンズまで幅広くラインナップしており、さまざまな被写体に対応できるシステムが構築されている。そのなかでもM.ZUIKO DIGITAL PROレンズシリーズは、画質の高さや優れた描写性能にこだわった高品位なレンズとしてプロ写真家のみならず、多くのマイクロフォーサーズユーザーに支持されている。
なおマイクロフォーサーズ規格ではセンサーサイズの関係で、レンズの実焦点距離を2倍にしたものが35mmフルサイズセンサーでのレンズ画角と同等となる。例えばマイクロフォーサーズの50mmレンズは35mmフルサイズ判に換算すると100mm相当の画角となる。
M.ZUIKO DIGITAL PROレンズシリーズは特殊低分散のEDレンズや非球面のDSAレンズなどを効果的に配置する設計により、高い描写力と速さと精度の高さを兼ね備えたAFを実現している。また防塵防滴・耐低温性能も兼ね備えており、同じく防塵防滴・耐低温性能を持つOM SYSTEMのカメラボディとの組み合わせにより悪天候など厳しい条件下での撮影でも安心して撮影することができる。まさにプロユースを前提とした設計のレンズシリーズだといえるだろう。
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2024年11月現在、PROレンズシリーズの現行モデルには焦点距離別にして標準域5本、広角域6本、望遠域4本のレンズがラインナップされている。いずれも際立った特徴を持った製品となっており、被写体および撮影シーンに合わせて的確にレンズをセレクトすることで、その実力を最大限に活かした撮影が可能だ。
そこで今回は『標準域編』『広角域編』『望遠域編』の三回にわけて、実写画像を交えつつPROレンズ各モデルの特徴と使い所について解説していこう。
PROレンズ 標準域編
PROレンズシリーズには標準域をカバーするズームレンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II」「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO」「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO」の三本と、単焦点レンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 20mm F1.4 PRO」「M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO」の二本がラインナップされている。
各標準ズームレンズの広角側は、いずれも使用頻度の高い12mm(35mm判換算24mm相当)からのスタート。風景撮影や建物の外観・内観撮影など多くのシーンで十分な広さを得ることができる画角だ。一方、望遠端は各レンズで設定値が異なっており、特にM.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PROでは100mm(35mm判換算200mm相当)と、もはや望遠レンズの域にまで及んでいる。
また、レンズの開放絞り値はM.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PROとM.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PROはともにF4.0となっているが、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO IIはF2.8と明るい絞り値である点が特徴的だ。開放絞り値が1段分明るいことで、限られた光量の下での撮影でも、開放絞り値F4.0のレンズよりもより多くの光を取り入れることができる。これによりシャッタースピードを1段分速く設定することが可能だ。また被写体との距離が一定かつ、同じ焦点距離での撮影であれば、F4.0よりF2.8の方がより浅い被写界深度となるため前景・背景ボケを大きくすることができるなど写真の表現の幅が拡がる。
一方、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II とM.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PROを比べると、開放絞り値をF4.0に抑えたことでM.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PROはよりコンパクトかつ軽量なサイズとなっている。それにより長時間カメラを持ち歩くスナップ撮影や山登りやトレッキングなどの撮影など、機材の大きさと重さを最小限にしたい時などには最適だ。
なおM.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PROも開放絞り値がF4.0となっているが、こちらは望遠端100mm時でもF4.0となるよう、レンズ前玉を大きくする必要があるためフィルター径72mmとなっている。このことからPROレンズの標準ズームレンズのなかでは最も大きく重いレンズだ。とはいえ一本のレンズで35mm判換算24mm相当から200mm相当までをカバーできるという便利さを考えると、他に替えが効かないレンズと言えるだろう。またレンズ自体に手ぶれ補正機構が搭載されており、対応カメラとの組み合わせではより強力な5軸シンクロ手ぶれ補正機能を活かした撮影を行える点も魅力的だ。
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このように一言で標準ズームレンズといっても三者三様の特徴がはっきりしており、撮影者が重要視する点に沿ってレンズを自らセレクトすることができる。もちろんどのレンズであっても解像力や描写力は極めて高いので、画質の違いを心配する必要はない。
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II
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PROレンズのなかでは最も基本となる標準ズームレンズ。35mm判換算で広角24~中望遠80mm相当の画角はとても扱いやすく、さまざまな被写体に向く。全焦点域で開放F2.8。レンズ表面には反射防止のZEROコーティングが施されておりレンズ表面や鏡筒内で起こる光の散乱などを抑制することでフレアの発生を最小限に抑える。
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■撮影環境:F11 15秒 ISO200 マニュアルモード WB晴天 仕上がりモードVivid MF 単写S-IS Auto H&Y DROP IN CPL/ND1000使用
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■撮影環境:F2.8 1/320秒 ISO400 絞り優先モード+0.7EV WBオート 仕上がりモードVivid S-AF 単写 S-IS AUTO
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■撮影環境:F2.8 1/320秒 ISO400 絞り優先モード-0.3EV WBオート 仕上がりモードNatural S-AF 単写 S-IS AUTO
■モデル:夏弥
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■撮影環境:F2.8 1/30秒 ISO200 シャッター優先モード+0.3EV WBオート 仕上がりモードNatural S-AF 単写 S-IS2
■撮影協力:ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO
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35mm判換算で広角24~中望遠90mm相当の画角を持ちながら、開放絞り値をF4.0に抑えることでコンパクトかつ軽量なレンズとなっている。同じく標準ズームとなるM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO IIと比較すると、ひとまわり半ほどコンパクトで128g軽い。OM SYSTEMの軽量なカメラボディOM-5やE-M10 Mark IVなどと組み合わせると極めて軽量なカメラシステムとすることができる。
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■撮影環境:F4.0 1/2000秒 ISO200 絞り優先モード WBオート 仕上がりモードNatural S-AF 単写 S-IS AUTO
■撮影地:静岡県伊東市
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■撮影環境:F5.6 1/1600秒 ISO200 絞り優先モード WBオート 仕上がりモードNatural S-AF 単写 S-IS AUTO
■撮影地:静岡県下田市
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■撮影環境:F5.6 1/400秒 ISO200 絞り優先モード+0.3EV WBオート 仕上がりモードNatural S-AF 単写 S-IS AUTO
■撮影地:静岡県下田市
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■撮影環境:F11 1/50秒 ISO200 絞り優先モード+0.7EV WBオート 仕上がりモードNatural S-AF 単写 S-IS AUTO
■撮影地:宮城県仙台市
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
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PROレンズおよびスタンダードクラスのレンズを含めOM SYSTEMの標準ズームのなかでは最も大きく重いレンズだが、35mm判換算で広角24~望遠200mm相当の画角を持つことで、実質的にレンズ二本分の画角をこのレンズ一本でカバーしていることを考えるとその価値は高い。
高倍率ズームレンズだが画質はM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO IIと比べても全く遜色ないので、画質に妥協は不要。開放絞り値はF4.0となるが強力なレンズ内手ぶれ補正機構の搭載など、このレンズの戦闘力は極めて高く、風景・スナップ・人物撮影から旅行先での撮影など幅広く活躍してくれる。
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■撮影環境:F5.6 1/250秒 ISO200 絞り優先モード +0.3EV WBオート 仕上がりモードVIVID S-AF 単写 S-IS AUTO
■撮影地:小笠原諸島父島
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■撮影環境:F5.6 1/60秒 ISO200 絞り優先モード +0.3EV WBオート 仕上がりモードVIVID S-AF 単写 S-IS AUTO
■撮影地:沖縄県由布島
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■撮影環境:F5.6 1/160秒 ISO200 絞り優先モード +1.0EV WBオート 仕上がりモードNatural S-AF 単写 S-IS AUTO
■撮影地:北海道利尻島
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■撮影環境:F6.3 1/200秒 ISO200 絞り優先モード +0.7EV WBオート 仕上がりモードNatural S-AF 単写 S-IS AUTO
■撮影地:沖縄県波照間島
M.ZUIKO DIGITAL ED 20mm F1.4 PRO
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35mm判換算40mm相当の単焦点レンズ。準標準レンズとも言われる画角で、被写体との距離感が程よくスナップ撮影や近距離のポートレート撮影にもおすすめ。開放絞り値はF1.4と極めて明るいので、近接撮影と組み合わせることで浅い被写界深度を活かした撮影も可能。なおマニュアルフォーカスクラッチ機構は省かれている。
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■撮影環境:F5.0 1/1000秒 ISO200 絞り優先モード +0.3EV WB晴天 仕上がりモードVIVID S-AF 単写 S-IS AUTO
■撮影地:千葉県木更津市
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■撮影環境:F4.0 1/500秒 ISO200 絞り優先モード +1.0EV WBオート 仕上がりモードVIVID S-AF 単写 S-IS AUTO
■撮影地:沖縄県石垣島
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■撮影環境:F4.0 1/500秒 ISO200 絞り優先モード -1.0EV WBオート 仕上がりモードNatural S-AF 単写 S-IS AUTO
■撮影地:沖縄県石垣島
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■撮影環境:F2.8 1/1250秒 ISO200 絞り優先モード +1.0EV WBオート 仕上がりモードNatural S-AF 単写 S-IS AUTO
■撮影地:沖縄県波照間島
M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO
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35mm判換算50mm相当の単焦点標準レンズ。画角が人の目で見るものに近く被写体との距離感が自然なものとなるため、スナップやポートレート撮影に最適。開放絞り値F1.2と極めて明るいので暗所での撮影に有利。またごく浅い被写界深度を活かし被写体の前後ぼけを強調した撮影が可能だ。
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■撮影環境:F2.8 1/50秒 ISO1600 絞り優先モード +1.0EV WBオート 仕上がりモードNatural S-AF 単写 S-IS AUTO
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■撮影環境:F8.0 1/15秒 ISO400 絞り優先モード +0.7EV WB晴天 仕上がりモード VIVID S-AF 単写 S-IS AUTO
■撮影地:千葉県南房総市
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■撮影環境:F2.2 1/25秒 ISO200 マニュアルモード WBオート 仕上がりモードNatural S-AF 単写 S-IS AUTO
■モデル:夏弥
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■撮影環境:F4.0 1/500秒 ISO200 絞り優先モード -0.3EV WBオート 仕上がりモード VIVID S-AF 単写 S-IS AUTO
■撮影地:北海道札幌市
次回はPROレンズ広角域レンズ編
OM SYSTEMのPROレンズシリーズは、いずれも優れた光学性能と堅牢な造り、そして耐候性の高い製品となっており、どのレンズをセレクトしても妥協すべき点がほとんどない。それだけにどのレンズを選ぶのがよいのか迷ってしまうケースもあるだろう。そこでこの記事に記した各レンズの特徴から、想定される被写体に合わせてセレクトする参考としていただけると幸いだ。
なお今回取り上げた各レンズの詳細な情報は過去の以下記事にてレポートしているので、気になるレンズがあればぜひこちらを参考としていただきたい。
▼M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II
▼M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
▼M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO
▼M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO
さて今回は標準のレンズを紹介したが、次回は広角域の画角を持つレンズを、その次は望遠域画角の各レンズの特徴と実写作例を交えて解説する予定だ。ぜひ次回もご期待いただきたい。
■モデル:夏弥
https://ameblo.jp/beautiful-summer12/
■撮影協力:ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム
https://saitama-criterium.jp/
■写真家:礒村浩一
広告写真撮影を中心に製品・ファッションフォト等幅広く撮影。著名人/女性ポートレート撮影も多数行う。デジタルカメラ黎明期よりカメラ・レンズレビューや撮影テクニックに関する記事をカメラ専門誌に寄稿/カメラ・レンズメーカーへ作品を提供。国境離島をはじめ日本各地を取材し写真&ルポを発表。全国にて撮影セミナーも開催。カメラグランプリ2016,2017外部選考委員・EIZO公認ColorEdge Ambassador・(公社)日本写真家協会正会員