昼なのにまるで夜のような写真が撮れる!?強い光を利用した疑似夜景撮影テクニックをご紹介
はじめに
皆さんこんにちは。写真家の虫上です。私は普段複数のテーマで撮影をしていますが、その中でも「心象風景」をテーマとした作風は暗い表現が多くなるため、時には人工的な光を利用して作画することがあります。ですので今回は明るい時間帯で撮影したにもかかわらず、夜に撮影したようなとても印象的な作風になる「疑似夜景写真の誘い」というテーマで話していこうと思います。この表現方法はとても印象的な作品が出来るので、ぜひ参考にしてみてください。
疑似夜景撮影とは?
まず、皆さんは夜の写真というとどんなイメージを想像しますか?夕暮れはこんな感じの写真をよく見ますよね。シルエットがオレンジ色の背景に浮かび上がっていて印象的です。
次に暗い水中洞窟の中で人工的な光を使用して、あたかもライトを月灯りのように見立てて撮影したものがこちらの写真です。ちなみにこの写真は水中でミニチュアを置いて撮影したものです。
また夜の街は背景が暗く、下の作例のような写真が思い浮かぶと思います。こちらは岡山市内の夜景。誰もが想像がつく夜景写真です。
そして気になった被写体をアップで撮影するとこんな感じに。
次に夜景で有名な撮影ポイントに行ってみましょう。この写真は山形県・銀山温泉の夜です。日が暮れた後にライトアップされた温泉街は美しいですね。
ちなみに明るい時間帯に撮影したらこんな感じです。同じ場所なのに全く風景が違いますね。
こちらは倉敷市の児島にあるジーンズストリートの夜です。街灯の灯りでジーンズが宙に浮かび上がっていて、とても印象的ですね。
しかし、明るい時間でしたら普通の商店街に見えてしまいます。
このように夜に撮影したほうが背景が真っ暗になり、ライトアップされた主役が引き立ち、印象的な作品が撮影できるということがお判りいただけると思います。
今回はこのような夜のライトアップを、明るいうちに人工的に行うことで疑似的な夜景写真表現が出来ますよ!という技法をご案内します。
疑似夜景撮影のテクニックあれこれ
露出補正とWB
まず疑似夜景の表現として簡単な方法は、カメラについている露出補正とWB(ホワイトバランス)を調整することです。夜のような雰囲気を手軽に作りだすことができます。たとえば下のような写真です。
この写真は池に泳ぐアメンボをお昼頃に撮影したものです。WBをタングステン(電球マーク)にすると青色が強くなり、夜に撮影したかのようにも見えると思います。
こちらは面白いモニュメントを撮影しました。露出を-1.0EVのアンダーにすることで背景が暗くなり印象的になりました。
この写真は背景が山で、強い光の逆光線がトンボに当たっている状態です。露出補正を-2.3EVのアンダーで撮影しています。夜のようにも見えますね。
被写体を照らしてみる
次に人工的な光を発生する道具を用意して撮影してみます。たとえばLEDライトやストロボ、鏡などがおすすめです。
明るい環境で強い光を当てるということは、かなり強い照明が必要ですので、強い光のLEDライトや大型のストロボ、太陽の光を反射できる鏡などを使用します。
光量が少ないライトを使用する場合は、被写体となる対象物はなるべく近く、また小さいものであれば良いです。注意点としては、生物などに強い光を当てるとストレスやダメージを与えることがありますので、このような被写体はできるだけ避けるように心がけましょう。
光をあてて撮影してみる
まずは明るい部屋でゆっくり造花などを使用して撮影してみましょう。下の写真は室内で正面から普通に撮影したもの。背景が白いので昼のように見えます。
ヒマワリにLEDライトをあてて逆光になるように撮影したもの。こちらは背景が黒いので夜のように見えます。ライトの当て方次第で、昼のようにも夜のようにも表現できるということが判ると思います。
こちらはホワイトバランスを3800ケルビン(タングステン電球)にして、かつ背後にライトをあてて撮影したもの。WB(ホワイトバランス)を変えることで月灯りの夜のような雰囲気で撮影できました。
こちらもテーブルフォトでの撮影。植物やホオズキなどを被写体にして左上からのライティングで撮影しました。
次に銀蒸着ミラーを使用して太陽の反射光を利用した作例です。光を照らさないとこんな感じに。
ミラーに太陽光を反射させて、この植物に光を当てると・・・背景が真っ黒でとても印象的に表現できました。
凹んだ缶コーヒーを昼間に逆光で撮影した作例。
同時刻に今度はミラーで太陽の光を反射させて、缶コーヒーに光を当てて露出補正をマイナスにすると周りがかなり暗くなり、こんな感じに撮影できました。片手で使えるサイズのミラーは光を反射する面積も少ないので、小さい被写体を狙うのがおすすめです。
ストロボを使ってみる
次に外でストロボを使用した作例をご紹介します。基本的にはストロボはフル発光を使用します。以前、香川県のお祭り撮影でストロボを使用した写真と、使用しなかった写真がありましたのでご紹介します。
この写真はストロボを使用しなかったときの作例です。自然でいい感じなのですが、何かインパクトが欲しかったのでストロボを使ってみることにしました。
この写真はストロボをフル発光で光らせたものです(本人了解済みです)。大型のクリップオンストロボは照射角度も変更できますので、出来るだけ狭い角度(望遠側)にするとより周辺を暗くすることが出来ます。最終的にこの作例は夜の雰囲気にはならなかったのですが、印象的な作品が出来ました。
次に人工物を撮影してみました。こちらは天気の悪い雨の日に撮影しました。空の部分が今一つです。
ストロボを光らせると雨も写り、ストロボ光が届いていない背景の看板もシルエットになり、夜のような感じに表現できました。
まとめ
最後まで読んでいただきありがとうございました。太陽光や人工的な光をうまく使用した疑似夜景の表現方法は、主役がとても引き立ち印象的な作品に仕上げることができます。見る人の足をとめる要素が高いので、展示会などでは注目される可能性も高くなりますね。紹介した内容を参考にして、皆さんもぜひ挑戦してみてください。
■写真家:虫上智
1968年岡山県生まれ。高校を卒業後、写真家 緑川洋一氏に師事。地元のカメラ店で撮影業務などを学び2000年に独立。現在はスタジオ撮影、フォト講座、執筆、フォトコン審査、講演等を受け持つ。ライフワークでは心象風景、自然写真、水中写真を撮影。
日本写真家協会(JPS)会員、日本写真講師協会 認定フォトインストラクター、OM SYSTEMゼミ講師、フォトカルチャークラブ講師、フォトマスターEX(総合)一級