OM SYSTEM M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8レビュー|高品位と上質な撮影体験を同時に得ることができるスナップ撮影レンズ
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はじめに
OM SYSTEMのマイクロフォーサーズ用レンズは、それぞれの製品の特性に合わせて三つのラインに分類される。高画質かつ耐候性の高いM.ZUIKO PROレンズシリーズ、軽量かつコンパクトでありながらコストパフォーマンスに優れたM.ZUIKOレンズシリーズ、そして明るい開放絞り値と精緻な造りの金属外装によるクラシカルな印象が特徴的なM.ZUIKO PREMIUMシリーズだ。今回紹介するM.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8は、このなかのM.ZUIKO PREMIUMシリーズに属する単焦点レンズとなる。
2012年にまずシルバータイプが発売されたM.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8は、35mm判換算にして34mm相当、開放絞り値はF1.8ととても明るい大口径レンズであるとともに、金属外装によるシャープなイメージのデザインが特徴的なレンズでもある。2013年にはブラックタイプも発売されており、ユーザーの好みに合わせてセレクトする楽しみもある。発売からすでに10年ほどが経過している製品だが、現在でもその魅力は薄れておらず人気も高い。
もちろん見た目だけでなく35mm判換算34mm相当となる扱いやすい画角により、日常的に持ち歩き使用するレンズとしても最適だ。そこでここではスナップ撮影の定番レンズともなっている、このM.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8の実写画像を基にその実力と魅力に迫ってみたい。
M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8の主なスペック
マウント | マイクロフォーサーズ規格マウント |
焦点距離 | 17mm (35mm判換算34mm相当) |
レンズ構成 | 6群9枚(DSAレンズ、非球面レンズ2枚、HRレンズなど) |
最短撮影距離 | 0.25m |
最大撮影倍率 | 0.08倍(35mm判換算 0.16倍相当) |
フォーカシング機構 | Movie and Still Compatible(MSC)機構 |
絞り羽枚数 | 7枚(円形絞り) |
開放絞り値 | F1.8 |
最小絞り値 | F22 |
大きさ | 最大径57.5mm 全長35.5mm フィルターサイズ46mm |
質量 | 120g(レンズキャップ、レンズリアキャップを除く) |
防塵防滴仕様 | なし |
レンズ外観
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OM-5に装着したM.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8。レンズ鏡筒の最大径が57.5mm、全長が35.5mmと小ぶりで薄いうえフィルターサイズが46mmと小径であることから、OM-5との組み合わせはとても相性がよく、カメラ全体のコンパクトさにも貢献する。このサイズ・形状ならば常にバッグに忍ばせておきたくなる。
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レンズ単体を手にすると更にこのレンズの小ささが際立つ。いわゆるパンケーキレンズと呼ばれるほどの薄さではないが、握った手の中に収まるほどコンパクトなサイズだ。鏡筒にはシンプルな滑り止め溝の入ったフォーカスリングと距離目盛り、絞り値に連動する被写界深度幅を表記した目盛りが刻み込まれている。
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フォーカスリングは比較的軽いトルク感。最短距離から無限遠までの回転角は狭めでクイックな印象。なお、フォーカスリングは手前にスライドするとMFに切り替えることができるようになっている。これを利用することでAFとMFを瞬時に切り替えることができるのだが、同時に事前にMFで設定しておいた距離にフォーカス位置を瞬時に切り替えるといったギミックもあり、この機構をOM SYTEMでは「スナップショットフォーカス機構」と呼んでいる。これは撮影テクニックのひとつである「置きピント」と呼ばれる手法にも便利な機能であり、また被写界深度特性を組み合わせることで可能となるパンフォーカス撮影にも適している。
M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8でのパンフォーカス撮影の手順は、カメラでレンズの絞り値を深めな被写界深度を得られる値(F11~F22の間を目安)にセットしたうえで、フォーカスリングを手前にスライドしMFに切り替えたうえで、鏡筒に刻印された被写界深度目盛りを参考にピントを合わせたい範囲が絞り値ごとの目盛内に収まるようにフォーカス位置を合わせる。これにより目盛内の距離であればフォーカス操作を行う必要もなく軽快なスナップ撮影が可能となる。もちろんMSC機構を採用したAFは高速かつ静粛であるので、撮影状況に合わせてこれらのフォーカス方法を適時選んで撮影を行うとよいだろう。
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■使用機材:OM SYSTEM OM-5 + M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8
■撮影環境:F11 1/80秒 ISO200 絞り優先モード WBオート 仕上がりモードNatural MF単写S-IS Auto
M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8実写作例
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■撮影環境:F1.8 1/8000秒 ISO125 絞り優先モード +1.0EV WBオート 仕上がりモードFlat S-AF 単写S-IS Auto
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■撮影環境:F4.0 1/200 ISO200 絞り優先モード +0.7EV WBオート 仕上がりモードVivid S-AF+MF 単写 S-IS Auto
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■撮影環境:F5.6 1/40 ISO200 絞り優先モード +1.0EV WBオート 仕上がりモードVivid S-AF+MF 単写 S-IS Auto
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■撮影環境:F2.8 1/125 ISO200 絞り優先モード +2.0EV WBオート 仕上がりモードVivid S-AF+MF 単写 S-IS Auto
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■撮影環境:F1.8 1/4000 ISO200 絞り優先モード +0.3EV WBオート 仕上がりモードNatural S-AF 単写 S-IS Auto
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■撮影環境:F2.0 1/2500 ISO200 絞り優先モード +0.3EV WBオート 仕上がりモードNatural S-AF 単写 S-IS Auto
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■撮影環境:F4.0 1/3 ISO200 絞り優先モード +0.7EV WBオート 仕上がりモードVivid S-AF+MF 単写 S-IS Auto
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■撮影環境:F4.0 1/2500 ISO200 絞り優先モード +0.3EV WBオート 仕上がりモードVivid S-AF+MF 単写 S-IS Auto
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■撮影環境:F2.8 1/250秒 ISO200 マニュアルモード WBオート 仕上がりモードNatural S-AF単写S-IS Auto
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■撮影環境:F4.0 1/100秒 ISO200 絞り優先モード +1.3EV WBオート 仕上がりモードNatural S-AF+顔認識 単写S-IS Auto
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■撮影環境:F4.0 1/200秒 ISO200 絞り優先モード +1.3EV WBオート 仕上がりモードNatural S-AF 単写S-IS Auto
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■撮影環境:F5.6 1/640秒 ISO200 絞り優先モード +0.3EV WBオート 仕上がりモードVivid S-AF 単写S-IS Auto
豊かな撮影体験をもたらしてくれる高品位という個性
OM SYSTEMには現在、M.ZUIKO PROレンズシリーズにも17mmの単焦点レンズが存在する。M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.2 PROがそれだ。このレンズも開放絞り値F1.2と明るい大口径レンズであるが、このレンズの特徴は高い画質はもちろんのこと、アウトフォーカス部のぼけの美しさにもこだわったポートレート撮影に特化したレンズといえる。しかしPROレンズが目指す画質最優先かつ耐候性の高さから、マイクロフォーサーズの単焦点レンズとしては大ぶりかつレンズ単体で390gの重量級レンズとなっている。
これに対してM.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8は、同じく明るい単焦点レンズではあるが手のひらに包めるほどの小ささと120gという軽さにより、カメラと組み合わせた状態でも気負うことなく、いつでも持ち歩き気軽に撮影を行うことができるといったメリットがある。もちろん画質に妥協がないことは上に挙げた実写作例をご覧いただければ納得していただけるだろう。
このように明確にされた製品の存在意義はレンズそのもののデザインにも現れており、M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8はデジタル時代のクオリティに合わせた光学設計でありながら、高級感のある金属外装によるクラシカルな装いを纏ったレンズとして、ユーザーの志向を限りなく汲み取ってくれるものとなっている。
35mm判換算にして34mm相当となる焦点距離のレンズは、撮影者が肉眼で目にする画角にとても近く日常的な光景を捉えるのに適した焦点距離であり、かねてからスナップ撮影には人気のレンズだ。それゆえ同じ焦点距離のレンズが、同一メーカーから個性の違う製品として二種類ラインナップされているということは、これこそがOM SYSTEMが提唱する写真の楽しみ方の多様性だといえる。PROレンズが目指す極限での高画質描写と、PREMIUMレンズがもたらす日常のなかでの高品位かつ豊かな撮影の楽しさ。これらが選べるということは写真を愛する我々撮影者にとって、とても幸せなことといえるだろう。
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■モデル:夏弥
■写真家:礒村浩一
写真家。女性ポートレートから風景、建築、舞台、製品広告など幅広く撮影。全国で作品展を開催するとともに撮影に関するセミナーの講師を担当。デジタルカメラの解説や撮影テクニックに関する執筆も多数。写真編集を快適に行うためのパソコンのプロデュースも担当。