OM SYSTEM M.ZUIKO DIGITAL ED 12mm F2.0 レビュー|上質を所有する喜びと、日常を作品に昇華する楽しさを教えてくれる プレミアム単焦点広角レンズ
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はじめに
OM SYSTEM M.ZUIKO DIGITAL ED 12mm F2.0は、マイクロフォーサーズ規格に準拠した単焦点レンズだ。35mm判換算にして広角24mm相当、開放絞り値はF2.0ととても明るい。精緻な造りとクラシカルな印象の金属外装が特徴的で、PENシリーズカメラとの見た目の相性も格別だ。OM SYSTEMのレンズラインとしてはPREMIUMシリーズに属しており、高画質とデザインを融合したハイグレードなレンズとして発売以来人気を博している。
M.ZUIKO DIGITAL ED 12mm F2.0の主なスペック
■マイクロフォーサーズ規格マウント
■広角端12mm (35mm判換算24mm相当)
■レンズ構成 8群11枚(DSAレンズ1枚、非球面レンズ1枚、スーパーHRレンズ1枚、EDレンズ1枚など)
■最短撮影距離 0.2m
■最大撮影倍率 0.08倍(35mm判換算 0.16倍相当)
■フォーカシング機構 Movie and Still Compatible(MSC)機構
■絞り羽枚数 7枚(円形絞り)
■開放絞り値 F2.0
■最小絞り値 F22
■大きさ 最大径56mm 全長43mm フィルターサイズ46mm
■質量 130g (レンズキャップ、レンズリアキャップを除く)
■防塵防滴仕様 なし
レンズ外観
PEN E-P7に装着したM.ZUIKO DIGITAL ED 12mm F2.0。カメラのマウント部からレンズ先端へかけて絞り込まれていくフォルムと、メタリックな外装が特徴的。シンプルな刻みの入ったフォーカスリングと距離目盛り、絞り値に連動する被写界深度を表記した目盛りの刻印が、クラシカルなイメージを引き立てる。ブラックとシルバーのカラーバリエーションが用意されており、ユーザーの好みで選択できる点も嬉しい配慮だ。
レンズの開放絞り値はF2.0と極めて明るいが、焦点距離との関係で筐体のサイズは最大径56mm 全長43mmと手のひらで包み込めるほどに小さく纏まっている。フィルター径は46mm。AFにはMSC機構を採用することで、高速なAFでありながら駆動音を感じることはほとんどない。また、AF駆動時でも鏡筒が伸び縮みしないインナーフォーカス機構を採用している。
PEN E-P7との組み合わせは見た目、大きさともにとてもマッチする。女性が手にしても大きすぎず、それでいてクラシカルな見た目からカメラに対するこだわり感を演出してくれる。普段カメラに馴染みがない女性に手渡しても、見構えることもなく撮影を楽しんでもらえるのではないだろうか。
フォーカスリングはスムーズでありながら適度にトルク感もあり、心地よい操作感だ。フォーカスリングを手前にスライドするとMFに切り替わる「MFクラッチ機構」が搭載されている。この機構と35mm判換算24mm相当という広角レンズの深い被写界深度特性を組み合わせることで、パンフォーカス撮影が手軽に行える「スナップショットフォーカス撮影」が可能だ。
パンフォーカス撮影とは、ピントを合わせたい距離にMFであらかじめフォーカス位置をセットしておき、その前後の被写体は被写界深度の範囲に収まるようにと絞り値をセットするという撮影テクニックである。これにより、ピント合わせの手順と時間を省くことで即写性を高めた撮影を可能とする。主にスナップ撮影のような、瞬間の光景を切り取ることを目的とした撮影に用いることが多く、ノーファインダー撮影を行う際にもよく用いるテクニックだ。
M.ZUIKO DIGITAL ED 12mm F2.0でのスナップショットフォーカス撮影の手順は、まずMFクラッチ機構でMFに切り替えたうえで、カメラをマニュアルモードもしくは絞り優先モードにセットし、深めな被写界深度を得られる絞り値(F11〜F22の間を目安)にセットする。次に鏡筒に刻印された被写界深度目盛りを参考に、ピントを合わせたい範囲のカメラからの距離を絞り値ごとの目盛内に収まるように、フォーカス位置を合わせる。この状態でパンフォーカス撮影が可能となる。
ただし絞り値を大きくするとそれに伴いシャッタースピードが遅くなるので、カメラぶれや被写体ぶれには注意が必要だ。その際にはISO感度をあげて適時補うようにするとよい。ISOオートを利用するのもよいだろう。
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■撮影環境:F11 1/320秒 ISO200 絞り優先モード -0.3EV WBオート 仕上がりモードFlat MF単写S-IS Auto
M.ZUIKO DIGITAL ED 12mm F2.0をF11まで絞りスナップショットフォーカス撮影を行った。フォーカス位置を1〜2m程度に合わせることで、近景から遠景までを被写界深度内に収めることができている。画質を確認すると画面中央部から周辺部まで均一な描写となっていることがわかる。ここではF11まで絞っているのでカリカリな解像感とはならないが、AF操作を行うことなく軽快なスナップ撮影が楽しめるのはこのレンズの大きな魅力と言えるだろう。
M.ZUIKO DIGITAL ED 12mm F2.0実写作例
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■撮影環境:F22 1/15秒 ISO125 シャッター優先モード +0.3EV WBオート 仕上がりモードNatural MF 単写S-IS Auto
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■撮影環境:F2.0 1/125秒 ISO200 絞り優先モード +1.0EV WB晴天 仕上がりモードNatural S-AF 単写 S-IS Auto
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■撮影環境:F2.0 1/80秒 ISO200 絞り優先モード +1.3EV WBオート 仕上がりモードNatural S-AF+MF 単写 S-IS Auto
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■撮影環境:F2.8 1/1000秒 ISO200 絞り優先モード +1.0EV WBオート 仕上がりモードNatural S-AF 単写 S-IS Auto
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■撮影環境:F5.6 1/8秒 ISO200 絞り優先モード +0.7EV WBオート 仕上がりモードNatural S-AF 単写 S-IS Auto
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■撮影環境:F2.0 1/13秒 ISO200 絞り優先モード +0.3EV WBオート 仕上がりモードNatural S-AF 連写H S-IS Auto
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■撮影環境:F5.6 1/125秒 ISO200 絞り優先モード -0.7EV WB晴天 仕上がりモードVivid S-AF 単写 S-IS Auto
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■撮影環境:F2.0 1/2秒 ISO200 絞り優先モード +0.3EV WB晴天 仕上がりモードVivid S-AF 単写 S-IS Auto
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■撮影環境:F2.0 1/320秒 ISO1600 絞り優先モード +0.7EV WBオート 仕上がりモードVivid S-AF 単写 S-IS Auto
上質なモノとしての魅力と実戦力の高い画質が凝縮したレンズ
M.ZUIKO DIGITAL ED 12mm F2.0のクラシカルなメタル外装は、やはりかつての銀塩フィルムカメラのテイストを残しているOM SYSTEMのカメラとの組み合わせにより、とても落ち着いた見た目の「オトナのアイテム」として魅力を発揮する。
このレンズを手にすると、デザインや手にした時の触感および操作フィーリングも大切な性能であることを思い起こされる。それはきっと、所有する喜びにつながるものだろう。スタンダードクラスのような便利さやPROレンズのような最高性能&耐環境性能とは違うスタンスである「いつの間にか気がつくと手にしていて、気負うことなくスマートに撮影を楽しむ」そんなライフスタイルを提案してくれるレンズだ。
だが、やはりこのレンズの真価は35mm判換算にして広角24mm相当という、撮影感覚的に扱いやすい画角とF2.0の極めて明るいレンズであるという点、そしてPREMIUMの名に相応しい画質にある。決してスタイリングだけに頼ったレンズではないことは、実際に撮影するとすぐに判るはずだ。上質なモノとしての魅力と実戦力の高い画質。これらを手のひらサイズに凝縮したM.ZUIKO DIGITAL ED 12mm F2.0は、実に欲張りな一本なのである。
■モデル:夏弥 https://ameblo.jp/beautiful-summer12/
■写真家:礒村浩一
女性ポートレートから風景、建築、舞台、製品広告など幅広く撮影。全国で作品展を開催するとともに撮影に関するセミナーの講師を担当する。デジタルカメラの解説や撮影テクニックに関する執筆も多数。写真編集を快適に行うためのパソコンのプロデュースも担当。