OM SYSTEM M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 II|クラスを超える画質と圧倒的な望遠効果を兼ね備えた 軽量コンパクトな超望遠ズームレンズ
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はじめに
写真を楽しむ者たちにとって、昔から超望遠域の撮影を可能とする望遠レンズは、鳥や飛行機、動物などを大きく捉えることができる憧れの機材であった。だが同時に、その極端に長い焦点距離から「レンズ自体が大きく重く、また高価となる」という理由でなかなか手にするのが難しいレンズでもあった。しかし、デジタル一眼カメラのミラーレス化が進んだ現在、その常識に捉われることなく憧れの超望遠域撮影をとても身近なものとしているシステムがある。OM SYSTEM(旧オリンパス)やパナソニックなどが展開しているマイクロフォーサーズ規格もそのひとつだ。
マイクロフォーサーズ規格はその特徴から、35mm判フルサイズ用レンズの焦点距離と同等の画角を、1/2の実焦点距離を持つマイクロフォーサーズ用レンズで再現することができるといった特性がある。たとえば焦点距離300mmのフルサイズ用レンズの画角は、マイクロフォーサーズ用の150mmレンズで同等の画角とすることができるのだ。この特性を活かすことにより、同じ画角を持つ超望遠レンズであっても、マイクロフォーサーズ用ではより小型で軽量なレンズとすることが可能となる。
OM SYSTEMが展開するマイクロフォーサーズ規格のレンズには、大きく分けて三つの製品クラスが存在する。プロユースを想定し高画質を第一としたPROクラスレンズ、明るく特徴のある描写を得意とする単焦点レンズを、高品位でデザイン性の高い筐体に組み込んだPREMIUMクラスレンズ、そして使いやすさと軽量コンパクトさにより高いユーザーフレンドリーを実現しているスタンダードクラスレンズだ。
今回紹介する「OM SYSTEM M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 II」は、これらのうちスタンダードクラスに属するズームレンズだ。鏡筒はスリムかつ長すぎないコンパクトサイズでありながら、広角端75mmから望遠端300mmまでをカバーしており、35mm判に換算すると最大で600mm相当にもなる超望遠撮影を可能とする。相反する特徴を絶妙なバランスで実現しているのが、このレンズの大きな特徴である。
M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 IIの主なスペック
■マイクロフォーサーズ規格マウント
■広角端75mm~望遠端300mm (35mm判換算150~600mm相当)
■レンズ構成 13群18枚(スーパーEDレンズ、EDレンズ2枚、HRレンズ3枚含む)
■最短撮影距離 0.9m(焦点距離75mm) / 1.5m(焦点距離75mm以外)
■最大撮影倍率 0.18倍(35mm判換算 0.36倍相当)
■フォーカシング機構 ハイスピードイメージャAF(MSC)機構
■絞り羽枚数 7枚(円形絞り)
■開放絞り値 75mm時 F4.8 / 300mm時 F6.7
■最小絞り値 F22
■大きさ 最大径69mm 全長116.5mm フィルターサイズ58mm
■質量 423g (レンズキャップ、レンズリアキャップを除く)
■防塵防滴仕様 なし
M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 IIの外観
M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 IIの鏡筒の径は最大で69mm、長さは最小で116.5mmと、超望遠ズームレンズとしては圧倒的にコンパクトで軽量となる(広角端75mm時)。フィルターサイズは58mm径と、M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4.0-5.6 IIやM.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0-5.6 Rと同じサイズなので、PLフィルターなどの円形フィルター類をこれらのレンズと共用できる点もメリットといえる。
マウント側に幅広いズームリングが、レンズ先端側にはフォーカスリングが設けられている。表面パターンは浅めではあるが操作時に不用意に滑ることもない。最短撮影距離は広角端の75mmで0.9m、それ以外の焦点距離では 1.5m。最短撮影倍率は0.18倍(35mm判換算0.36倍)となる。レンズフードは付属しておらず、別売りのレンズフード LH-61Eが使用できる。
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M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 II はズーミングと共に鏡筒の長さが変化する。75mm時(左)から左手側に回転すると焦点距離と共に鏡筒が伸び、300mmで最長となる(右)。ただレンズ自体が軽量なため、カメラ全体では鏡筒が伸びても重心移動による影響は少なめだ。
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OM-1にM.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 IIを装着。ハイエンド機との組み合わせでもバランスは良好。PROレンズではないスタンダードクラスのレンズだが小さすぎるということもなく、男性の手のサイズでもしっかりとグリップできる。携行性を重視した望遠レンズとしては太すぎず細すぎず、ちょうど良いサイズ感だ。
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M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 IIの広角端75mmと望遠端300mmの画角比較。同じ位置から遠景となる対岸の島をそれぞれの焦点距離で撮影した。75mmでは島全体をフレームに収める程度の画角となるが、35mm判換算で600mm相当となる300mmであれば、島の中心に立つ展望台の様子がよく見て取れるほどまでクローズアップが可能だ。
M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 IIの実写で解像力を確認
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望遠端300mm、開放絞りF6.7にて海岸の岩場を撮影。このレンズの解像力を確認する。超望遠での撮影では空気中の水蒸気などの影響を受けて白く霞みやすいのだが、この画像ではコントラストも解像感も十分に高く、岩場の質感やそこに生える苔などもしっかりと描写している。周辺部になると若干流れるような描写も見られるが、被写界深度から外れたアウトフォーカスであることも考慮すると問題とはならないだろう。
ところでこのED 75-300mm F4.8-6.7 IIにはひと世代前のモデルとしてED 75-300mm F4.8-6.7という初代モデルが存在する。このモデルは現在でも中古市場にて手に入れることが可能だが、これら二つのレンズの違いは、主に外観デザインの変更とレンズ表面のコーティングの刷新による逆光耐性の向上であり、基本的なレンズ構成などは共通のものとなる。
M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 II実写作例
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■撮影環境:F6.7 1/800秒 ISO200 絞り優先モード WBオート 仕上がりモードVivid C-AF 静音連写L S-IS Auto
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■撮影環境:F6.7 1/1000秒 ISO3200 絞り優先モード +0.3EV WBオート 仕上がりモードVivid S-AF 単写 S-IS Auto
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■撮影環境:F6.3 1/2500秒 ISO3200 絞り優先モード +0.3EV WBオート 仕上がりモードVivid S-AF 単写 S-IS Auto
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■撮影環境:F6.7 1/5秒 ISO200 絞り優先モード -0.3EV WB晴天 仕上がりモードVivid S-AF 単写 S-IS Auto
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■撮影環境:F6.7 1/1250秒 ISO3200 絞り優先モード +0.3EV WB晴天 仕上がりモードVivid S-AF 単写 S-IS Auto
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■撮影環境:F6.7 1/200秒 ISO200 絞り優先モード +0.3EV WBオート 仕上がりモードVivid S-AF 単写 S-IS Auto
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■撮影環境:F6.3 1/640秒 ISO200 絞り優先モード WB晴天 仕上がりモードVivid S-AF 単写 IS OFF 手持ちハイレゾショット
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■撮影環境:F5.5 1/100秒 ISO200 絞り優先モード +1.3EV WBオート 仕上がりモードNatural S-AF+顔検出 単写 S-IS Auto
■モデル:夏弥
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■撮影環境:F6.7 1/160秒 ISO200 絞り優先モード +0.7EV WB晴天 仕上がりモードi-Finish S-AF 単写 S-IS Auto
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■撮影環境:F6.3 1/640秒 ISO200 絞り優先モード WBオート 仕上がりモードViVid S-AF+MF 単写 S-IS Auto
超望遠レンズは大きく重いという常識を塗り替えたズームレンズ
M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 IIはスタンダードクラスレンズの「軽量コンパクトなカメラシステムで軽快な撮影を実現する」という命題を第一とすることで、これまでにない手軽な超望遠撮影を実現したレンズだ。これにOM SYSTEMのカメラに搭載された強力な手ぶれ補正による手持ち撮影でのぶれ軽減や、速くて正確なAFシステムを組み合わせることで、ユーザーはこれまでは叶わなかった、遠くのものをより大きくクローズアップするという、ダイナミックな撮影を行うことができる。これは写真を楽しむ上でとても大きなアドバンテージとなる。
そしてなにより、このレンズはOM SYSTEMのレンズのなかでは比較的手にしやすい価格設定のスタンダードクラスであるという点も忘れてはいけない。このレビュー執筆時(2023年1月)では新品で3万円台半ば、中古品であれば2万円台から手に入れることができることも大きなメリットである。望遠撮影に興味がある者であれば、初めての望遠ズームレンズとしてセレクトしても後悔しないはずだ。さらには、すでにマイクロフォーサーズカメラのユーザーとなっている者のみならず、このレンズでの超望遠撮影を目的として、新たにマイクロフォーサーズシステムを選択するという考え方もあってもよい。それだけの理由と価値のあるレンズであることは間違いないはずだ。
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■写真家:礒村浩一
写真家。女性ポートレートから風景、建築、舞台、製品広告など幅広く撮影。全国で作品展を開催するとともに撮影に関するセミナーの講師を担当。デジタルカメラの解説や撮影テクニックに関する執筆も多数。写真編集を快適に行うためのパソコンのプロデュースも担当。