フルサイズとの併用も視野に。 OM SYSTEMで増える、広がる作品づくり。前ボケ・後ろボケ「花」撮影・テレコン活用術
マイクロフォーサーズシステムだからこそ得られる撮影領域
「望遠レンズで花を撮っていて、もう少し寄りたい」
よくある経験です。前回の記事『小さくて軽いだけではないんだ!フルサイズとの併用も視野に。OM SYSTEMで増える、広がる作品づくり』で、小型のイメージセンサーで高画質を実現しているマイクロフォーサーズシステムのしくみ、フルサイズ(35mm判)とは違った最短撮影距離で得られる撮影領域や、寄れることでの浅い被写界深度など、小さくて軽いということだけではないOM SYSTEMの魅力をご紹介しましたが、今回は、テレコンバーターでより広がる撮影領域を解説します。もともとフルサイズ(35mm判)に対して同じ画角で近く寄れる望遠レンズに、さらにテレコンバーターを装着することで、より最大撮影倍率を高く撮影することができます。テレコンバーターで広がる撮影の魅力を、作例を使ってご紹介しましょう。
テレコンバーターってどういうもの?
「そもそもテレコンバーターって、遠くを大きく撮りたいときに使うものではないの?」
確かに持っている望遠レンズで、より望遠で遠くを大きく撮りたいときに使える手段のひとつです。手持ちの望遠レンズがテレコンバーター対応であれば、より長い焦点距離の望遠レンズとして使うことができます。テレコンバーターを装着した焦点距離と同等の焦点距離の望遠レンズを併用するよりも、小型で軽く持ち歩けることも魅力です。OM SYSTEMでは1.4倍と2倍の2種類のテレコンバーターがあり、6種類のレンズに装着できます。(2024年11月現在)
(1) 焦点距離を1.4倍、2倍にできる。離れているものをより大きく撮れる
(2) レンズの開放F値はテレコンバーター1.4倍で1絞り(1EV)、2倍で2絞り(2EV)分暗くなる
(3) 装着するレンズの最短撮影距離のままで撮れるので、最大撮影倍率が上がる
(4) 焦点距離が長くなることで、被写界深度がより浅くなり、手前や背景のボケが大きくなる
テレコンバーターで広がる撮影領域と撮影倍率の変化
テレコンバーターの装着での最短撮影距離はマスターレンズとほぼ変わらないため、同等の焦点距離のレンズよりも近距離の撮影領域が可能です。例えば、フルサイズ(35mm判)換算300mm相当で約70cmまで寄ることができる「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO」は、テレコンバーターを装着することで、フルサイズ(35mm判)換算420mm、600mm相当で最短撮影距離約70cmまで近寄って撮影することができます。焦点距離を長く、被写体まで近寄って撮影することで、被写界深度を浅く、前ボケ、後ろボケを大きく表現することができます。
【例】M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO 望遠側での比較
35mm判換算600mm相当での最短撮影距離・最大撮影倍率の比較イメージ
テレコンバーターを装着した際に最短撮影距離がほぼ変わらないという特性から、ED 40-150mm F2.8 PRO に2倍テレコンバーターMC-20を装着した300mm(35mm判換算600mm相当)と、単焦点レンズED 300mm F4.0 IS PRO での300mm(35mm判換算600mm相当)とでは開放F値だけではなく、最短撮影距離、最大撮影倍率にも違いがでてきます。また、ED 300mm F4.0 IS PRO も2倍テレコンバーターを装着すると、最大撮影倍率は35mm判換算0.96倍、等倍に近い撮影が可能になります。
狭い画角による背景コントロールテクニック
被写体まで近寄れない時など、望遠レンズでの撮影時に、もう少し望遠側の焦点距離が欲しいな、と思うことがあるかと思います。そんなとき、テレコンバーター対応のレンズであれば、撮影領域が広がります。被写体を大きく撮れるだけではなく、画角が狭くなる分、背景の不要な部分が入らないように構成上の調整ができます。
浅い被写界深度で後ろをボカすテクニック
きれいな花を見つけたときに、その背景を気にかけたいところ。テレコンバーターの装着による浅い被写界深度で、すぐ後ろにある花もボケます。背景のボケている花も含めて構図を決めて撮影します。
浅い被写界深度のよる前ボケテクニック
テレコンバーターの装着による浅い被写界深度で、被写体の前後にある花もボケます。被写体をきれいに撮るだけではなく、手前の花や葉っぱを前ボケにして、ファンタジックなイメージで撮影するのもいいでしょう。
近寄れない昆虫にも使えるテレコンバーター
近寄ると逃げてしまう昆虫の撮影では、最大撮影倍率の高い望遠レンズでの撮影が有利です。テレコンバーターを装着して、より拡大率を上げることで、離れていても昆虫の表情まで表現できます。
まとめ
テレコンバーターを装着して広がる撮影領域は伝わりましたでしょうか。今回の作例で見た目の情景との比較を入れていますが、テレコンバーターの装着で画角がより狭くなり、被写界深度が浅くなっての近距離撮影では、元のレンズを通して覗いたイメージとずいぶん異なります。すてきな花や被写体をみつけたときに、背景や手前の障害物など、目視で判断をせず、レンズを通して覗いてみることが重要です。テレコンバーターを装着した撮影の経験が増えてくると、見た目の情景から撮影のイメージが見えてくるかと思います。これまでは見送っていたシャッターチャンスなど、まだまだ発見があるかと思います。ぜひチャレンジしてください。
■写真家:高橋渉
1988年より写真業界に従事。雑誌・Webメディアなどへの執筆、カメラメーカーでの作例の撮影や展示、トークイベントや動画コンテンツ出演などを行っている。主な撮影のテーマは鉄道や乗り物、風景・花など。2019年11月より箱根・芦ノ湖で運航されている箱根海賊船の絶景に魅了され、2023年10月には「Hakone Pirate Ship 写真集・箱根海賊船」を発売、2024年4月には箱根海賊船をテーマにした写真展を開催。
・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
・公益社団法人 日本広告写真家協会(APA)会員
・公益社団法人 日本写真協会(PSJ)会員