小さくて軽いだけではないんだ!フルサイズとの併用も視野に。OM SYSTEMで増える、広がる作品づくり
マイクロフォーサーズシステムを採用しているOM SYSTEM
「山に登るので軽くて小さいカメラがいい・・・」
「最近、重たい機材を持ち歩くのがしんどくなってきた・・・」
というきっかけで興味を持たれることも多いマイクロフォーサーズシステムですが、その魅力は小さく軽いということだけではありません。撮影領域や被写界深度にも違いがあることはご存知でしょうか。マイクロフォーサーズだから撮影できる領域や、さらには、強力な手ぶれ補正、防塵防滴、新しい写真表現につながるコンピュテーショナルフォトグラフィ機能など、フルサイズ機(35mm判)との併用も視野に入れたくなるOM SYSTEMの魅力をご紹介しましょう。
小型のイメージセンサーで高画質をつくり出すしくみ
イメージセンサーが小さいことでの画質への影響に疑問を抱かれる方がおられますが、一方でA0サイズやA1サイズに引き伸ばされた作品を前に「これマイクロフォーサーズなの?」「これだけ大きく引き伸ばせるのですね。」という会話を耳にすることもあります。デジタルカメラにおいては、フィルムと違い、面積が小さい分、画質が粗くなるわけではありません。マイクロフォーサーズのイメージセンサーは35mm判と比較して面積比では約1/4ですが、約2000万画素のイメージセンサーを搭載している機種では、300dpiでのカラープリントにおいて全紙サイズに引き伸ばす推奨解像度を満たしており、トリミングを常用しない限り十分な画素数と言えます。
また、写真の画質はイメージセンサーの画素数だけによるものではありません。交換レンズを通して入ってくる映像のコントラストや解像度などのクオリティも大きく影響します。マイクロフォーサーズシステムは、小型のイメージセンサーで高画質を実現するために、イメージサークルに対して2倍の大きさのマウントを採用したことに始まります。これにより画面周辺部の画質劣化を排除し、周辺部までの解像度が高く、歪みの少ない映像を実現しています。
焦点距離
マイクロフォーサーズの焦点距離をフルサイズ(35mm判)の焦点距離に換算する場合、2倍でほぼ同じ画角になります。例えばマイクロフォーサーズの25mmが、フルサイズ(35mm判)での標準50mmに相当します。イメージセンサーの小型化により、同じ画角の交換レンズで約半分ぐらいの小型化を実現しています。機材が小さく、軽くなれば、カメラバッグや三脚のサイズダウンにもつながり、持ち歩く機材一式でずいぶん軽量化が図れます。総重量が軽くなれば、機動性が高まり、撮影ポイントを多くまわることにもつながります。
最短撮影距離と被写界深度
焦点距離は2倍でフルサイズ(35mm判)と同等の画角になりますが、最短撮影距離は2倍相当にはなりませんので、全般的に同じ画角のレンズの比較で最短撮影距離が近いことが特徴です。フルサイズ(35mm判)と同じ立ち位置から撮影する場合に被写界深度が約2段分深くなります。暗い場所で、明るい絞り値での撮影で、被写界深度を深くしたい場合はマイクロフォーサーズが有利です。人物など被写体までの距離を空けて撮影する際に、背景をぼかしたい場合はフルサイズ(35mm判)の方が被写界深度を浅く撮影できますが、OM SYSTEM の場合でも、例えば開放絞り値F2.8のズームレンズより2絞り(2EV)分より明るいF1.2シリーズの単焦点レンズを使うことで、被写界深度が浅くなり、背景のボケを強調することができます。
マイクロフォーサーズで得られる撮影領域
より近く寄れる撮影領域と浅い被写界深度
マイクロフォーサーズではより被写体まで近寄れる分の撮影領域が広がります。中にはレンズの先端近くまで寄って撮れる広角域や、70cmまで寄れる望遠域、約1.3mまで寄れる超望遠域をカバーできる交換レンズもあり、近寄れることでの浅い被写界深度も実現、フルサイズ(35mm判)とは違った作品づくりにもつながります。被写体を目視で判断せず、レンズを通して見ていただきたい撮影領域です。
雨上がりのあじさい、背後からの光で透過しているお花をねらいます。35mm判換算16-50mm相当をカバーする広角ズームレンズの最短撮影距離はズーム全域で約23cm。開放絞り値がF4.0ですが、最短撮影距離まで近づくことで、背景をぼかして表現できます。
ネモフィラの花に近寄りつつ、背景を広く入れての撮影。35mm判換算24-90mm相当をカバーし、ズーム全域で最大撮影倍率が35mm判換算約0.5倍で撮影できる標準ズームレンズの広角側で撮影します。最短撮影距離約12cmでの撮影は、実質レンズフードが被写体に当たるぐらいの距離。開放絞り値はF4.0ですが、最短撮影距離での浅い被写界深度で背景をぼかして表現できます。
あじさいで有名な神奈川県開成町の駅前での撮影です。35mm判換算24-400mm相当をカバーする高倍率ズームレンズの広角で、背景に鉄道車両を入れながら目の前のあじさいに近づいて撮影します。背景の鉄道車両がボケすぎないよう、カメラ本体のプレビューボタンを押して、被写界深度を確認しながらF8.0で撮影しました。
35mm判換算50mmで開放絞り値F1.2の単焦点レンズ。ガクアジサイの花を上からねらい、隙間から下にある花にピントを合わせて撮影します。大口径F1.2による柔らかいボケにより、ピントを合わせた主役の花が引き立ちます。
35mm判換算24-90mm相当をカバーし、ズーム全域で最大撮影倍率が35mm判換算約0.5倍で撮影できる標準ズームレンズの望遠側であじさいをねらいます。背景に他の花が入る角度で手前の花にピントを合わせます。被写体に近寄ることで背景の花がボケ、色になります。背景の色を見ながら構図を決めて撮影しました。
M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO は35mm判換算80-300mm相当の望遠でありながら、最短撮影距離70cmまで近寄れるので花の撮影にも向いています。近寄ることで被写界深度は浅くなり、背景の花がボケます。背景の花の位置を見ながら構図を決めて撮影しました。
M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO に2倍のテレコンバーターを装着、35mm判換算約600mmでの撮影です。テレコンバーターは、焦点距離は長くなりますが、最短撮影距離のままです。超望遠となることで背景にある別の花が大きくなり、色になります。肉眼で見る光景とはずいぶん違いますので、ぜひレンズを通して見ていただきたく思います。
OM SYSTEMを持つことで増える作品のバリエーション
近距離で深い被写界深度を実現!「深度合成」モード
ピント位置をずらしながら複数枚を撮影した写真を合成して、被写界深度の深い写真に仕上げる機能です。過剰に絞り込むことなく被写体に応じた被写界深度で撮影ができます。マクロ撮影や風景の撮影に有効な機能です。
明るいところでスローシャッターを実現!「ライブND」機能
高輝度下でもスローシャッターを実現できる「ライブND」機能。カメラ内に搭載されたことで、フィルターを取り付けることができない超広角ズームレンズやフィッシュアイレンズでも使えます。撮影条件に合わせてNDの段数(2, 4, 8, 16, 32, 64, 128)が選べます。
搭載機種:OM-1 Mark II(ND2~128)、OM-1(ND2~64)、OM-5(ND2~16)、E-M1X・E-M1 Mark III(ND2~32)
カメラ内で実現!明暗差の調整ができる「ライブGND」機能
明暗差がある撮影シーンで明るさを調整し、美しく表現できる「ライブGND」機能。カメラ内に搭載されたことで、フィルターを取り付けることができない超広角ズームレンズやフィッシュアイレンズでも使えます。GNDの段数(2, 4, 8)と、フィルタータイプ(Soft, Medium, Hard)が選べるほか、フィルター効果の境界位置、傾きなど自由自在に調整できます。
搭載機種:OM-1 Mark II
光跡を見ながら撮影できる「ライブコンポジット」機能
カメラ内で比較明合成(コンポジット)撮影ができる機能です。バルブ撮影とは違って、長時間露光で光っている部分が露出オーバーにならないように撮影できます。星景や花火、ホタルなど、光跡の変化を見ながら撮影ができます。
まとめ
軽くて小さいだけではないOM SYSTEMならではの特長は伝わりましたでしょうか。イメージセンサーが小さいマイクロフォーサーズシステムによる焦点距離、最短撮影距離、被写界深度の違いをどう活かせるかは、まず撮影で経験してみることです。さらに、強力な手ぶれ防止や防塵防滴、コンピュテーショナルフォトグラフィ機能で、これまでにはない作品をつくり出せます。フルサイズ(35mm)をお使いの方も、まずはカメラ1台レンズ1本をカメラバッグに入れていただくと撮影意欲も高まります。これまでカメラを持ち歩くほどではなかった、ちょっとしたお出かけでも持ち歩きたくなります。ぜひ、新たな発見にチャレンジしてください。
■写真家:高橋渉
1988年より写真業界に従事。雑誌・Webメディアなどへの執筆、カメラメーカーでの作例の撮影や展示、トークイベントや動画コンテンツ出演などを行っている。主な撮影のテーマは鉄道や乗り物、風景・花など。2019年11月より箱根・芦ノ湖で運航されている箱根海賊船の絶景に魅了され、2023年10月には「Hakone Pirate Ship 写真集・箱根海賊船」を発売、2024年4月には箱根海賊船をテーマにした写真展を開催。
・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
・公益社団法人 日本広告写真家協会(APA)会員
・公益社団法人 日本写真協会(PSJ)会員