M.ZUIKO DIGITAL ED 12-200mm&20mm F1.4|旅のお供はこの2本!旅のススメに高倍率ズームと単焦点レンズ【OMシステム編】
はじめに
日頃から写真教室などで、「旅行の際のレンズ選びにいつも迷う」「他に荷物があるから機材はできるだけ少なく(軽く)したい」こういったお話をよく耳にします。撮影目的での旅行なのか、旅の記録的に写真を撮りたいのかで機材選びは大きく変わってきますが、日頃、カメラ初心者さんと接する機会も多い筆者がよく耳にする「旅行の際の荷物を減らしたい」「レンズはできるだけ少なく、軽くしたい」という願いを叶えるとしたら……「高倍率ズームレンズ」+「使いやすい画角(換算35〜50mm付近)の単焦点レンズ」の2本をお勧めしています。
そこで今回、私自身がカメラ(OM SYSTEM OM-1)に、高倍率ズームレンズ(MZD ED 12-200mm F.3.5-6.3 = 換算24-400mm)と単焦点レンズ(MZD ED 20mm F1.4 PRO = 換算40mm)の3点で東北旅行に出掛けた体験を元に検証してみました。
単焦点レンズの画角については、室内での食事他、暗い場所での撮影を補ってくれる存在として広すぎず狭すぎない画角……つまり標準の画角と言われる換算50mmまでの、個人的に使いやすいものを選ぶと良いのではないかと思います。(私自身50mmの画角は少々狭く感じられること、また手持ちのレンズの中で開放F値が明るいという理由で今回のレンズを選びました)
移動中のスナップに便利な高倍率ズームレンズ
電車やバス、飛行機などから眺める景色は旅行気分を高めてくれます。日常では見慣れない光景はやはりシャッターを切りたくなるもの。広めの風景から、咄嗟の望遠まで、レンズ交換なく撮影できる高倍率ズームレンズはやはりとても重宝します。
今回はまず新幹線で東京へ移動。快晴の下出発したものの、あいにくと伊吹山(滋賀と岐阜の県境)も富士山も、雲に隠れて綺麗な姿を見ることができませんでしたが、真夏の青々とした水田の上に広がる雲の表情が綺麗で、一番広角でシャッターを切りました。
関西に住んでいるとなかなか乗る機会のない東北新幹線に思わずレンズを向けてしまいました。どんどん近づいてくる車体にはやはりズームレンズが便利です。
弘前駅に到着、降り立ったホームに停まっていた普通列車越しに乗ってきた特急列車を見送る際、今度はどんどん遠ざかる列車を望遠で撮影。走り去る列車に向けてとっさに望遠にできるのはやはりありがたいですね。
のんびりと風情のあるローカル線では、改札で切符に鋏を入れてくれました。今ではなかなか見かけないものなので記念に撮影。最短撮影距離が近いレンズだと、手に持った被写体にピントを合わせつつ、被写体を画面内に大きく入れることができます。ズームは一番広角側にして、背景もしっかり入れて撮影。
先頭車両から前方を撮影中、停車した駅で降りた方が踏切を渡る姿は換算80mmの中望遠で、対向列車はぐるんとズームを回して換算160mmの望遠で。上記の切符の撮影からこれらをすべてレンズ交換なく撮影することができました。
帰路の青森から関西までは飛行機で。人生初のプロペラ機に搭乗、あいにくと機窓撮影向きの席ではなかったものの、初めて見るプロペラの様子を楽しむことができました。
お祭りで活躍してくれた高倍率ズームと明るい単焦点
弘前を訪れた日はちょうど弘前ねぷた祭りの初日でした。たまたま地元の方と少しお話をしたことがきっかけで、その日のねぷた合同運行を沿道の良い場所で見せていただけることに。天気予報では雨マークが続く中、晴れ女パワーを発揮してか、ほぼ雨に降られることなく傘要らずで鑑賞・撮影ができました。
総勢約50団体のねぷた合同運行のスタートはちょうど日没直後。夕闇が迫る中、津軽情っ張り大太鼓を先頭に、初めて見るねぷたの灯籠は、とても迫力があり壮観なものから小ぶりで可愛らしいものまで、見応えたっぷりでした。ただ、どうしてもシャッター速度が遅くなり、意図しないブレ(手ブレや被写体ブレ)が起こりやすいため、ISO感度をうんと上げてブレを抑えています。
薄暗い中、どんどん進むねぷたをブラさないように撮るのはなかなかに大変!それならばむしろ、スローシャッターを活かして流し撮りでスピード感を。この時はAモードのまま希望のシャッター速度になるように、操作性を優先して絞りで調整しましたが、ISO感度を下げて希望のシャッター速度に持っていく、という方法もあります。
内側から煌々と照らされた灯籠に描かれた絵を背景に、人物はシルエットで。明るい単焦点レンズだとやはり感度をそこまで上げずとも速いシャッター速度での撮影が可能です。
大きな扇形のねぷたは、ギリギリまで近づいてきたところで広角(換算24mm)で。
次々と続く大きな灯籠は、望遠で圧縮効果を利用して賑わいを感じさせるように撮影。
りんご公園で広角と望遠の良さを活かす
ねぷた祭りの翌朝に訪れた弘前りんご公園。まだ小ぶりのまぁるいリンゴたちがポコポコ実っている姿はなんとも可愛らしく、写真に収めたくなります。
絞りは開放(F6.3)でズームを一番望遠側にして主役となるリンゴをひとつ選んで撮影。望遠による圧縮効果で背景の木々が近く感じられるとともに、背景の赤いリンゴはまぁるい玉ボケとなりました。
同じく絞りはF6.3に設定し、今度は一番広角側で主役となる被写体のリンゴにぐっと寄って撮影。広角ゆえに背景が広く入り、リンゴ園の奥行きが感じられる写真となりました。上記の望遠と絞り値は同じF6.3ながらも、広角では被写界深度が深くなるため、背景も望遠の時のようなボケを得られることはなく、リンゴたちが実っている様子がしっかり見て取れます。
園内に可愛らしい時計がありました。リンゴに囲まれた中に立っている様子を伝えるために、望遠の圧縮効果を活かして撮影。
天気予報は雨だったにもかかわらず、私の頭上は晴れてくれました笑。岩木山の頂上はあいにくと雲がかかっていますが、広角で空を広く入れ、また手前から奥までの空の様子を伝えるためにタテ構図で撮影。
ランチにリンゴの冷麺とリンゴから造られた醸造酒であるシードルをいただきました。室内でのテーブルフォトには換算35〜50mmくらいの、明るい単焦点レンズがあるとやはり便利です。
ランプの宿では明るい単焦点レンズが大活躍!
今回、旅の最後に訪れたのが、弘前と十和田湖のちょうど中間あたりの山の中にある「ランプの宿」。もちろん宿に電気が引かれていないわけではないものの、宿泊する部屋と4つある温泉の浴場には電灯がなくランプのみ。もちろん部屋にテレビはなく、携帯電話の電波も届かないという秘境の宿。デジタルデトックスやなぁ~などと呑気に到着して早々、スマートフォンの電池残量が28%!なのに部屋にコンセントがないと気付いて少々青ざめたというのは内緒の話です。(宿のホームページにちゃんと書いてあったことに気付いたのは帰宅後でした)
この日、午前中のリンゴ公園、そしてこの宿に向かう途中の町の黒石までは晴れていたものの、山奥のこの宿に到着する手前から雨が降り出し、その後かなりの大雨に。到着したのが夕方な上に雨という天候で、通された部屋は既に薄暗く……。すぐにレンズは明るい単焦点に交換してまずは一枚。部屋の明かりはこのランプひとつのみ!
夜になると……本気で暗いです笑。ISOを2500まで上げて絞りは開放のF1.4、そして室内で唯一の明かりであるランプに近づいてようやくこの通り。焦点距離によって開放F値が変わる(暗くなる)ズームレンズだとさすがにこの環境での撮影は厳しいもの。もちろん、ISO感度を25600くらいに上げたら同程度のシャッター速度で撮ることは可能ですが、高感度ノイズによる画質の低下が気になったことでしょう。その点、やはり開放F1.4のレンズを持参してよかったです。
館内はレトロな電話機があったり「でんどご(台所)」「めんじゃ(洗面所)」などと津軽弁での表記が書かれていたりする上に照明は基本的にランプ。なんともほっこりする空間ですが、何しろ暗い……!とりあえず、外が真っ暗になる前に館内を探検。
母屋となる本館からは吊り橋を渡って離れのふたつの温泉へ行くことができました。日没前、少し雨が弱まったタイミングでズームレンズとともに外へ。
食事時、ただでさえ朝夕の室内はどうしても暗い上に天候もよろしくなく、本当にカメラ泣かせなシチュエーション。ここでも開放F1.4という明るいレンズを選んでおいてよかったと実感した場面でした。
品数の多い旅館のお膳などは特にそうですが、食事の記録撮影にはもう少し広めの換算35mmの方が理想です。換算40mmの今回は座った状態のまま、ファインダーを覗かずにカメラを目の高さより上から見下ろすアングルで、モニターを見ながら撮影することでなんとか収めることができました。バリアングルのモニターはこういった場面でとても重宝しますね。
夜半からの大雨が続く中、翌朝起き抜けに窓の外を見てびっくり!前日はちょっと水量が多いかなぁという程度の、きっと日頃は綺麗なせせらぎであろう川が溢れんばかりの濁流に。流石に危険だからと吊り橋は立ち入り禁止となり、川向こうの温泉へは行けなくなっていました。
この日は宿の方々も慌てるふうでなく、私も無事下山しましたが、関西へ戻った直後に北東北を襲った豪雨の影響によりこの川は氾濫、吊り橋も破損して宿は1週間の営業休止を余儀なくされたとのこと。2022年9月現在、無事だった本館側のみでふたつの温泉とともに営業をされているとのことですが、1日も早い完全復旧が望まれます。
旅のスナップあれこれ
カバンにカメラ一台とレンズ2本。この軽装備で歩き回った弘前でのあれこれをご紹介します。
今回、青森の中でも弘前を訪ねた理由のひとつがレトロな建物が多くあること。そのうちのひとつ、弘前市立図書館を、入口の看板と象徴的な屋根が少し入るように見上げて一番広角で撮影。
この日の夜のねぷた祭りのために、旧図書館の隣で情っ張り大太鼓がメンテナンスされていました。弘前を象徴するこれらのふたつを収めつつ、余計なものが入らないようにフレーミング。
渦を巻くように上る螺旋階段は一番広角で。建物の水平には気をつけて撮影
上下に開閉する、いかにも洋館らしい窓と綺麗なドレープを描くカーテン、そして窓の外の光景に惹かれて。部屋の角であることがわかるように、左側の窓も入れて。
リンゴの町、弘前へ来たからにはやはり食べたいアップルパイ。ここはやわらかなボケを得るために単焦点レンズで。
ねぷた祭りを見せていただくお宅へ向かうために乗ったバスが、お祭りの影響で思わぬ迂回ルートを通り思いもよらぬ場所で下車することに笑。ところが降りたバス停からの景色にロックオン。約束の時間が迫って焦る中で2枚だけシャッターを切りました。ここでも、とにかく時間がない中でレンズ交換の必要なくすぐに撮影ができたことは大きかったです。
まとめ
旅の装備としてどんな機材を持っていくか。私自身、日頃は最低3本(標準域のズーム+望遠+単焦点と状況によって超広角など)は持って出るのですが、本当に人それぞれだと思います。
標準ズームレンズだけだと、やはり遠くのものを大きく撮りたい時に撮れないですし、望遠ならではの圧縮効果も使えません。そこで標準域と望遠域が1本にまとまった高倍率ズームレンズはとても実用的ですが、どうしても開放F値が暗くなりがちです。手ブレなどを起こしやすい暗所や、大きなボケが欲しい時に助けてくれる「使いやすい画角の明るい単焦点レンズ」が1本あるとこれらが一気に解決します。
このような理由から、今回の2本の組み合わせは、こだわった画質の良さを求めるよりも軽装備を重視する方にはとても理にかなった組み合わせではないかと改めて実感した旅でした。
■写真家:クキモトノリコ
学生時代に一眼レフカメラを手に入れて以来、海外ひとり旅を中心に作品撮りをしている。いくつかの職業を経て写真家へ転身。現在はニコンカレッジ、オリンパスカレッジ講師、専門学校講師の他、様々な写真講座やワークショップなどで『たのしく、わかりやすい』をモットーに写真の楽しみを伝えている。神戸出身・在住。晴れ女。
公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員